エピソード3(脚本)
〇稽古場
北澤瑛士「まずは見学だけでいい?」
松山紫苑「あ、いや・・・本当は私・・・」
北澤瑛士「あ? あー眼鏡?」
北澤瑛士「ごめんごめん! 追いかけて来てくれるかと、つい。 待ってね~」
紫苑が稽古場を見渡すと、体操着を来た女の子達がストレッチや発生練習をしている。
松山紫苑「本当に芸能事務所なんだ・・・」
稽古をする生徒の中には、歌とキレキレのダンスを踊る小学生らしき女の子もいた。
松山紫苑「すごい!」
北澤瑛士「はい、眼鏡」
北澤瑛士「あの子、すごいだろ」
北澤瑛士「でもな、もっとすごい子が居る。 ダイヤの原石が」
大野菜々美「おはようございまーす!」
松山紫苑(あ! あの女子高生!!)
北澤瑛士「お! 原石きた!」
ウォーミングアップを始める菜々美。
紫苑はその様子を見惚れるように見ている。
北澤瑛士「でもさ、眼鏡だけならなんでオーディションとか言ったの?」
松山紫苑「えと、それは・・・」
北澤瑛士「始めはアイドルになりたいとか言うの恥ずかしいし、色々不安だよね」
北澤瑛士「みんなそうだから、ダイジョブ!」
松山紫苑「あの、でも私・・・」
北澤瑛士「とりあえず、まずは見学してってよ」
松山紫苑「・・・じゃ、じゃあ。せっかくなので」
北澤瑛士「はーい集合! 今日は見学者居るので、練習も兼ねてまず自己紹介しましょう!」
北澤瑛士「はい、じゃあまず菜々美!」
大野菜々美「シャキーン!」
大野菜々美「じゃあ、合いの手お願いしまーす!」
大野菜々美「はい、ちょっぴり強気な!」
ななみ節!
大野菜々美「たこやきかけるの!」
かつお節!
大野菜々美「絶世の食いしん坊☆ナナミンゴこと、大野菜々美です!」
大野菜々美「宜しくお願いします!」
松山紫苑「・・・・・・」
松山紫苑(こ、これは??)
大野菜々美「特技の逆立ちします!」
大野菜々美「今日は、逆立ちした足でシュークリームを掴んで!」
菜々美は足でシュークリームを掴むと、そのまま口へと運ぼうとする。
大野菜々美「ゴホゴホ! ・・・はぁはぁ・・・ふぅ」
北澤瑛士「特技あると良いからさ、さっき初めてやってみたんだけど・・・やっぱ無理か」
松山紫苑「え、じゃあ、さっきの過激で出来ないって言ってたのってコレ?」
松山紫苑「脱いだのは・・・靴下?」
北澤瑛士「ん?」
松山紫苑「いえ」
大野菜々美「あーおいしかったニャ~☆」
松山紫苑「・・・・・・」
北澤瑛士「うちの事務所はコンセプトのあるアイドルを育成しててね、彼女は大食いアイドルなんだ」
北澤瑛士「はい次、後ろチャック!」
城田咲(しろたさき)をリーダーに、三人の着ぐるみの少女が現れ、自己紹介を始める。
北澤瑛士「彼女たちは『うしろチャック引かれ隊』」
北澤瑛士「劇場でしか着ぐるみを脱がない。 皆、彼女の素顔が見たくて劇場まで足を運ぶ」
城田咲「それで、チャックはチャックでも、前チャックが開いてたんですよぉ!」
松山紫苑「ふふふ、アイドルなのに面白い!」
松山紫苑「あの、彼女たちはいつも着ぐるみを?」
北澤瑛士「まぁ、そうだね。 あれ、けっこう慣れがいるから」
松山紫苑「他にはどんなグループが居るんです?」
北澤瑛士「ん~、ぽっちゃりさんばっかり集めた『ころりんず』とか、スケバンの恰好した『NA・MENNA!』とか・・・」
松山紫苑「ふふ、すごい濃い・・・」
北澤瑛士「まぁ、アイドル戦国時代を生き残るには、これくらいしないとね」
大野菜々美「北澤っち〜! やっぱりもぅ限界!」
北澤瑛士「どうした? さっきの良かったよ?」
大野菜々美「菜々美もソロじゃなくてグループがいい! 一人でスベるのもぅ嫌!」
北澤瑛士「そんなぁ。ワガママ言わないで」
菜々美が北澤の隣に立っている紫苑の方をなめるように見つめる。
大野菜々美「ふーん、色白で結構いいじゃん?」
大野菜々美「北澤っち、菜々美決めた!」
松山紫苑「へっ!?」
大野菜々美「菜々美、この子と組む!」
「えええええええええ!?」
北澤瑛士「菜々美はそうやってすぐ直感でモノを言う」
大野菜々美「ダメ?」
北澤瑛士「ダメじゃないけど・・・」
大野菜々美「ねぇ、病弱アイドルでどう? 一度やってみたかったの」
北澤瑛士「菜々美が病弱? この、絵に描いたような健康優良児が?」
北澤瑛士「ブハハハハハ!」
笑い転げる北澤に、菜々美はムッとした顔で彼の足を蹴る。
北澤瑛士「いたぁっ」
大野菜々美「ほら、学校系はよくあるけど、患者って無いでしょ」
大野菜々美「お客さんをドクターと呼び、ライブは検診と呼ぶ」
大野菜々美「コンセプトとしてはアリじゃない?」
北澤瑛士「面白いです、そして菜々美チャンにピッタリです・・・うう」
大野菜々美「あ・り・が・と❤」
北澤瑛士「でも、紫苑はまだ所属が決まった訳じゃ無いんだ、オーディションもまだだし」
大野菜々美「そぅなの? もぅパスで良くない?」
北澤瑛士「そういう訳には・・・」
大野菜々美「菜々美、この子じゃなきゃ嫌!」
大野菜々美「ダメなら他の事務所に移籍する! ヤダヤダヤダ!!」
北澤瑛士「もう~わかった、社長に話してみよう!」
大野菜々美「そぅこなくっちゃ!」
松山紫苑「え? ちょ、ちょっと!?」