〇骸骨
十六夜弦之丞「「芸能界は運が全て」 強運を持った者が売れる世界！」
十六夜弦之丞「九死に一生の経験を持つ 強運の持主を集めてグループを作るのだ！」

〇コンサートホールの全景
「202x年、大晦日の国民的歌番組は ジェンダー及び多様性の観点から」
「その名を「源平歌合戦」へと変えた」
「この物語は、元大衆演劇劇団の一家が 九死に一生を得た4人を揃え」
「その強運だけで、源平歌合戦を目指す 汗と努力の記録である」

〇昔ながらの銭湯
「そして今、彼女達にかつてない」
「試練が訪れていた」

〇怪奇現象の起きた広間（血しぶき無し）
　　スーパー銭湯「ぬばたまの湯」
　　超高齢者で満員の大広間

〇屋敷の大広間
中占地なめ子「あ、あかんわ、これは…コミュ不能？」
海野幸「…完全なアウェー」
雷紋響「ちょ、無理ムリ…マジ無理なんですけど」

〇店の休憩室
十六夜鶴子「このカオス極まる状況 まだ彼女達には厳しいか──」
十六夜幻夜「どうする？チーフマネージャー 彼女たち、ジジババワールドに呑まれて 固まっちまったぜ」
十六夜鶴子「どうするも、こうするも 出すっきゃないでしょ ヘルプシップを」
十六夜幻夜「ヘルプシップ── それって、ひょっとして 助け舟ってこと？」
十六夜鶴子「まあね！ 幻夜、このオケ 合図したらすぐかけて！」

〇屋敷の大広間
　　スーパー銭湯のハッピを羽織り
　　スカートを膝上まで上げ
　　舞台へ飛び出す鶴子
十六夜鶴子「は〜い皆さま、本日はご来場、誠に誠に ありがとうございます！ ベスト歌謡オンステージ まずはこの曲から！」

〇海辺
　　♪誰もいない海、二人の愛を確かめたくて〜
　　▶︎鶴子が華麗に歌い踊る

〇ハート
老人1「ほわ〜すんばらすぃ脚線美じゃ〜」

〇海辺
海野幸（これは南沙織のキラーチューン、17才 この曲でアガらない者はない…）

〇風
雷紋響（さすが元天才少女歌手 一瞬でざわめく会場を支配したわ）

〇屋敷の大広間
　　鶴子、歌いつつ背中で
　　👍サインを出す

〇水玉2
観桜寺未散「あのサインはプランG！」
中占地なめ子「プランGすなわち グループサウンズメドレーってことやな！」

〇海辺
　　♪夕焼け、海の夕焼け
　　　真っ赤な別れの色だよ
　　　▶︎スパイダース

〇数字
海野幸「グループサウンズ 1965年から69年にかけて 日本を席巻したムーブメント」
海野幸「ポップス、ロック、ダンス、王子様など ジャンルを横断したスーパーエンタメ」
海野幸「ここでハマること必至！」

〇草原の道
　　♪亜麻色の長い髪を風が優しく包む
　　　▶︎ヴィレッジシンガーズ

〇店の休憩室
十六夜鶴子「ふぅ、何とかサマになったわね」
十六夜幻夜「僕ならもっと、ご婦人方を喜ばすことが できるけどね」
十六夜鶴子「アンタがいうと金の匂いしかしないのよね それってアイドルには あるまじき資質じゃないの」
十六夜幻夜「元々が大衆演劇の出だからねぇ」
十六夜鶴子「ダメ押しでアレいくわよ！」
十六夜幻夜「アレか」
　　鶴子、四人にご飯を食べる
　　サインを送る

〇風
中占地なめ子「アレを出すんか!? 伝家の宝刀！青い核弾頭！」
観桜寺未散「皆さん、ご存じでしたら 子供に戻って一緒に歌って下さ〜い！」
観桜寺未散「ブルコメの大ヒット曲 ブルー・シャトー、カモン！」

〇果物
中占地なめ子「♪森とんかつ、泉ニンニク〜」
海野幸「かコンニャク、まれ天丼 静かニンニク、眠ルンペン」
雷紋響「♪ブルーブルーブルーシャトー」

〇怪奇現象の起きた広間（血しぶき無し）
　　♪森とんかつ、泉ニンニク〜
　　楽しそうに肩を組み合唱する老人達

〇幻想空間
海野幸「皆さん、こんにちわ 私たち運の良さだけが取り柄のアイドル 九死に一生倶楽部で〜す」
雷紋響「せっかくなので、 顔とマイナンバーだけでも 覚えて帰って下さいね♪」
中占地なめ子「何で、個人情報さらさなアカンねん！」

〇サイバー空間
海野幸「では、自己紹介いきま〜す」
海野幸「はい、担当カラーは硫酸銅溶液のブルー 水平リーベ僕の船、恋の波間で揺られたい」
海野幸「九クラのリケ女担当、海野幸です よろしくお願いしま〜す」

〇新緑
雷紋響「はい、担当カラーは目はり鮨のグリーン 地震、雷、火事、親父、雷門は恋の門 九クラのイナズマロックフェス担当」
雷紋響「サンダーボルト、雷紋響です よろしくお願いしま〜す」

〇黄色（ライト）
中占地なめ子「はい。担当カラーはエノキ茸のイエロー キノコ、どこの子、元気の子 恋のマジックマッシュルーム」
中占地なめ子「九クラのキュートなマタンゴ娘 中占地なめ子です よろしくお願いしま〜す」

〇ハート
観桜寺未散「はい、担当カラーは情熱の炎のレッド チルチルミチルは幸せ探す あなたを求めてどこまでも」
観桜寺未散「九クラのラブ・イズ・ミステリー 観桜寺未散です よろしくお願いしま〜す」

〇屋敷の大広間
十六夜鶴子「はい、お約束の自己紹介が済んだ所で ここからは、ふれあいターイム！」
十六夜鶴子「メンバーが客席に伺い 皆様の肩をお揉みします」
十六夜鶴子「ただし男性のお客様 メンバーの体などには、決してお触れに ならぬようお願いいたします」
十六夜鶴子「もしセクハラまがいの行為が発覚した場合 現役警察官である、この私が躊躇なく 逮捕、送検することをお忘れなく！」
老人1「逮捕って…」

〇緑（ディープ）
　　肩を揉む響
老人3「アンタの肩揉みは最高だねえ！ なんか接骨院の電気マッサージを 受けてるようだよ」
雷紋響「ふふっ実際、電気出てますからねえ」
老人3「えっどういうことだい？」
雷紋響「おばちゃん、私達メンバーみんな 九死に一生の体験をしてるのね」
老人3「へえ、そうなの」
雷紋響「で、私は幼い頃、ゴルフ場で雷に直撃されたの それ以来」
雷紋響「体に電気が溜まるようになって 私が近づいただけで 携帯のデータが消える位になっちゃったの」
老人3「それで、肩にピリピリ刺激が来るんだ」
雷紋響「今は電圧も自分で調整できるようになったんだ どう、気持ち良いでしょ」
老人3「便利な体質だねえ」

〇広い和室
　　肩を揉むなめ子
老人2「ありがとね」
中占地なめ子「おばちゃん、私 中占地なめ子って言うねん」
老人2「なめちゃんね」
中占地なめ子「私な、幼い頃、アレルギーが色々あって 虚弱体質だったんや、正味な話。」
老人2「へー」
中占地なめ子「ある日な、間違って毒キノコを食べて 瀕死の重症になったんや、親は蒼白やで」
老人2「そりゃ大変だったねえ」
中占地なめ子「でも例の「今夜がヤマだ」ってのを 乗り越えて回復したら、体が丈夫になって アレルギーものうなったの」
老人2「ほ〜キノコ様さまだね」
中占地なめ子「そんで、ハハハ、そこからキノコにハマって、ふふふ、自分で色々研究をはじめてね ひひひ、今やキノコ専門家ってわけ」
老人2「ほう？」
中占地なめ子「これな、ハハハ、私が作った、へへへ キノコの佃煮なんだけど、笑いが、フフ 止まらんほど美味しいの。フフ、食べてみて」
老人2「──笑い茸？ アンタの笑顔がちょっと気になるねぇ」
中占地なめ子「え」

〇ハート
老人1「あ〜極楽、極楽 こんな可愛い子に肩を揉んでもらう日が 来るとはね。長生きも悪くないのお」
観桜寺未散「フフ、本日は応援ありがとうございます」
老人1「ところで、アンタらは何で 九死に一生なんて物騒な名前を 名乗っとるんじゃ？」
観桜寺未散「それはですね、うちの社長が── ご存知ですかね、大衆演劇で人気だった 元女形の十六夜弦之丞っていうんですけど」

〇骸骨
十六夜弦之丞「「芸能界は運が全て」 強運を持った者が売れる世界！」
十六夜弦之丞「九死に一生の経験を持つ 強運の持主を集めてグループを作るのだ！」

〇ハート
観桜寺未散「というような成り行きで 私たちが選び出されたのです」
老人1「なるほどのう！じゃ その強運で今、めっちゃ売れとるのか？ 最近の芸能界、良く知らんのじゃが」
観桜寺未散「それ、聞いちゃいます？ 実はまだまだ、っていうか ぶっちゃけ、まるで売れてないんですよ」
老人1「何でじゃろうな？」
観桜寺未散「まあ、私達の歌と踊りがまだまだ 未熟ってこともありますが──」
老人1「──ありますが？」
観桜寺未散「九死に一生で助かった時点で もう運を使い果たしているのでは・・・ と、メンバー達とひそかに話してます」
老人1「はは…」

〇屋敷の大広間
capa社長「アナタ達、なかなか良かったわよ！」
十六夜鶴子「ありがとうございます！」
中占地なめ子「あれ、誰だっけ？見たことあるオバはんや」
雷紋響「Capaホテルの有名な女社長だよ！」
capa社長「私の系列店でGSライブをやってくれないかしら」
十六夜鶴子「はい！喜んで！」
中占地なめ子「やった〜！」
雷紋響「やっぱり私達、強運かも！」

〇ガソリンスタンド
　　一週間後─
中占地なめ子「ってガソリンスタンドやないか〜い！」
雷紋響「GSってグループサウンズじゃなく ガソリンスタンドって意味だったのね─」
海野幸「ガソリン入れて、すぐ帰っちゃうから 私たちの歌、あんまり聞いて貰えないね」
中占地なめ子「あのババア！帽子の広ツバにパンケーキの バター落ちろ！」
海野幸「位置関係で物理的に無理だと思う──」

〇炎
十六夜鶴子「路上ライブはアイドルの基本よ！ 話題が炎上しないかしら？ スタンドだけに」
十六夜幻夜「ないだろ、路上じゃなくGSだし」

〇レトロ喫茶
　　帽子の上にパンケーキが落ちる
ウエイトレス「申し訳ございません!!」
capa社長「どうなってんのよ！ 帽子がバターまみれじゃない！」

〇劇場の座席
「何はともあれ 頑張れ、九クラ！ 源平出場の夢を叶えるその日まで」