1-1.始まり(6/4①)(脚本)
〇教室
・・・
ふと、胸の奥に引っかかるような違和感が走った。
王滝 冴夜(ここは・・・どこ? ・・・私は、誰――?)
次の瞬間――。
堰を切ったように、記憶が一気に流れ込んできた。
王滝 冴夜「うっ──!!!!」
そうだ──。
私の名前は・・・
【王滝 冴夜《おうたき さや》】
ごく普通の高校一年生。
平凡な毎日を送る――はず、だった。
でも今の私は、それだけじゃない。
前世といえばいいだろうか──
王滝冴夜として生きる前・・・
ごく一般的な家庭の次女として産まれ、
何不自由なく生きていた前世の記憶が、確かにあるのだ。
そして、この世界。
前世で読んでいた“物語”の設定と、あまりにも似すぎている。
嫌な予感が、背筋を這い上がった。
このまま何もせずにいたら――
『王滝冴夜』は、死ぬ。
そのことを思い出した瞬間・・・
体が小さく震えた。
その時だった──
???「先生!! 体調悪いんで保健室行ってきます!!」
???「先生~!! 私も体調悪いので保健室行ってきま~す!!」
???「先生!! ごめんなさい!! 私も!!保健室行ってきます!!」
どう見ても元気そうなクラスメイト数名が、
勢いよく教室を飛び出していった。
王滝 冴夜(・・・便秘かな?)
そんなことはどうでもよかった。
突然よみがえった“前世”と“物語”。
そのことで頭がいっぱいだった。
混乱を整理しようと、何気なく窓の外を見ると──
王滝 冴夜「・・・え?」
冴夜の口から思わず言葉が漏れた。
そう――
現実ではありえない光景が広がっていたからだ。
〇田舎の学校
運動場──
【火神 竜也《ひがみ りゅうや》】
炎を操り、化け物へ真正面から殴りかかっている。
冴夜の幼なじみ。
そして前世の記憶では、この物語の主人公。
【天水 瑠花《あまみ るか》】
水を刃のように操り、斬撃を放つ。
竜也のことが好きで、
幼なじみの冴夜に敵対心を抱いている。
物語では、ヒロインの一人。
【宇土 玲奈《うづち れな》】
土を操り、足場を封じながら岩を落とす。
引っ込み思案だが、彼女もまた竜也が好き。
瑠花以上に、
幼なじみの冴夜へ強い敵意を向ける少女。
彼女もまた、物語のヒロインだった。
〇教室
信じられない光景に、
しばらく呆然としていた。
だが、ふと気づく。
王滝 冴夜(あれ? 誰も騒いでない・・・!?)
王滝 冴夜(もしかして・・・ 誰も気づいないの?)
周囲を見回すと、
前の席の男子も窓の外を凝視していた。
その男性も外をずっと凝視していた。
・・・・・・名前は確か。
【風野 貴斗《かざの たかと》】
あ!!
この人も物語の登場人物だった気がする!
確か──
風を操って戦うタイプで・・・・・・
竜也の友人、だったはず!!!!
王滝 冴夜「・・・」
王滝 冴夜(私は――『王滝冴夜』!!!!)
王滝 冴夜(主人公たちと深く関わった末に、 闇落ちして、死ぬ運命のキャラなんだよね・・・)
王滝 冴夜(そんな冴夜が大好きだった竜也は、 いつもヒロインたちと消え──)
王滝 冴夜(その理由を聞いてもはぐらされ・・・)
王滝 冴夜(何度も予定していた約束は破られて・・・)
王滝 冴夜(それでもずっと我慢した・・・)
王滝 冴夜(・・・ 好き、だったから──)
王滝 冴夜(・・・・・・でも)
王滝 冴夜(今の私は、前とは違う・・・!!)
王滝 冴夜(・・・ “物語”とは違う――!!)
王滝 冴夜(それに・・・)
王滝 冴夜(あんな優柔不断で何の説明もできず、 ハッキリしない男なんて・・・)
王滝 冴夜(論外よっ!!!!)
王滝 冴夜(竜也なんかより──)
胸が高鳴ったと思ったと同時に・・・
ある記憶が蘇る。
〇階段の踊り場
少し前の休憩時間のこと。
生徒会室に資料を届け、急いで教室に戻る途中。
階段で足を踏み外した瞬間――
体が宙に浮いた。
王滝 冴夜「うわっ!!!」
だが――
次の瞬間、腕を掴まれる。
王滝 冴夜「・・・え?」
そのまま胸の中に引き寄せられる。
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表紙がかっこいいですね!
いきなりバトルが始まって興味を惹きます。
2分の短さも読みやすくていいです👍