タピオカの正体(脚本)
〇雑踏
玄人の流儀
〇異世界のオフィス
漫画家・広林大苑
長年第一線で輝き続ける彼の
豊かな発想の源とは──
広林 大苑「君は「常識」を疑わずに受け取るタイプかい?」
広林 大苑「知らないことをおかっぱ女子に叱られて、すぐに納得しちゃう?」
広林 大苑「目新しい知識を見かけたら、すぐにSNSで共有しちゃう?」
インタビュアー「うっ・・・言われてみると、心当たりが」
広林 大苑「知識の吸収は悪いことじゃない」
広林 大苑「だが受け身に甘んじるのはどうかと思う」
広林 大苑「雲が綿菓子じゃないと説明されたときのガッカリ感、君にも覚えがないかい?」
インタビュアー「ああ・・・ありますね」
広林 大苑「ガッカリしたままでいいのかい?」
広林 大苑「人生に必要なのは「真実」だけじゃない」
広林 大苑「常に疑い、考え、想像するんだ」
広林 大苑「雲は綿菓子、心が沸き立つならそれでいいじゃないか」
広林 大苑「人生を豊かにするのは、ロマンと面白さだ!」
インタビュアー「なるほど、常に世界を面白く捉えた想像で心を沸き立たせる」
インタビュアー「それが先生の作品の原動力なんですね!」
広林 大苑「そう。そしていつもその力をくれるのは」
広林 大苑「家族、だよ」
〇異世界のオフィス
???「これ、いい話風にまとめてるけどさー」
〇シックなリビング
広林 時典「要するに家族にネタ提供させてるだけじゃね?」
広林 百果「でもまあ、わたしたちもその稼ぎでご飯食べてるし、報酬もいただいてるし」
広林 国子「そういえば、そろそろ開催されるんじゃない?」
???「夕食後、広林辞典採用会議!!」
広林 大苑「お前らのフレッシュな発想をくれ!!」
「父さん!」
広林 国子「やっぱり来た!」
広林 時典「母さん、すげー!」
広林 百果「今度こそ、小遣い増額は私がいただく!」
広林 大苑「テーマは、「タピオカ」だ」
広林 大苑「タピオカの正体は一体何だ? 真実に成り代わる解説をしてくれ」
広林 大苑「勝者は来月の小遣いに50%上乗せする」
広林 大苑「ファイっ!!」
〇黒背景
ついに来たな・・・この時が
今回は負けるわけにはいかない
なぜなら、欲しいゲームがあるから!
〇未来の店
広林辞典
それは広林家独自の辞書である
用語への自由な発想を家族に競わせ、父の独断と偏見で選定する
完全に父の趣味だが、内容が漫画に反映されることもある
事実上、家族をダシにした父のネタ帳である
量がまとまったらファン向けに出版しようなどと考えてるらしい
いいけど、ちゃんと家族も共著扱いにしろよ?
〇おしゃれなキッチン
母は夕食の支度をしながら時々スマホを見て思案にふけっている
いつも立ててくる作戦はシンプルだが
人生経験が長い分、知識の引き出しが多い
〇可愛らしい部屋
姉はタブレットとにらめっこしている
またタップノベルを使うつもりだな?
〇勉強机のある部屋
俺は他の家族に比べて経験も知識も足りない
でも勝率は悪くない
常識に縛られる以前に常識を知らない、子どもの発想力を甘く見るなよ?
さあ、閃け、俺の脳みそ!
〇シックなリビング
広林辞典採用会議
「タピオカ」
国子のターン
広林 国子「タピオカの正体・・・それは」
広林 国子「カエルの卵!」
広林 国子「カエルの卵はそのまま食べるとおいしくないし、毒もあって危険よ」
広林 国子「でも、例えばフグの肝は、ぬかに漬けて発酵させると毒が抜けるの」
広林 国子「同じように、カエルの卵も安全においしく加工できる」
広林 国子「ピータンを知ってる?白身部分が黒いゼリーのようになったアヒルの卵」
広林 国子「ピータンは、塩や灰を混ぜた泥に埋めて、強いアルカリ環境で熟成させて作る」
広林 国子「そのカエルの卵版が」
広林 国子「タピオカよ」
広林 大苑「流石の「ほんとにありそう」感だな」
広林 時典「ピータン・・・知らなかった」
広林 百果「次はわたしね」
〇シックなリビング
百果のターン
広林 百果「タピオカの正体・・・それは」
広林 百果「ブラジル産の海ぶどう!」
広林 百果「知ってる?海ぶどうは冷たさに弱く、冷蔵庫に入れると粒がしぼんでしまうの」
広林 百果「温暖な沖縄が産地なのも納得よね」
広林 百果「50年ほど前、仕事で沖縄に赴任したブラジル人がいたの」
広林 百果「続きはタップノベルでどうぞ!」
〇沖合
ブラジル人@海ぶどう好き「オゥ、ウミブドー・・・プチプチ!」
ブラジル人@海ぶどう好き「ウミブドー・・・ダイスキ!」
ブラジル人@海ぶどう好き「オキナワサイコー!」
〇朝日
ブラジル人@海ぶどう好き「タノシカッタ オキナワノシゴト オワル」
ブラジル人@海ぶどう好き「デモ ウミブドー ト ハナレタクナイ」
ブラジル人@海ぶどう好き「ブラジル アッタカイ」
ブラジル人@海ぶどう好き「キット ウミブドー ソダツ!」
〇海沿いの街
ブラジル
ブラジル人@海ぶどう好き「イロイロ クロウシタ ケド」
ブラジル人@海ぶどう好き「ウミブドー ノ サイバイキョカ ゲット!」
ブラジル人@海ぶどう好き「ガンバッテ ソダテルゾ!」
ブラジル人@海ぶどう好き「ウミブドー!」
〇シックなリビング
広林 百果「こうして彼の尽力が実り、ブラジルでの海ぶどう栽培が始まったの」
広林 百果「赤道直下の、沖縄より暖かいブラジルは栽培に適していると思われた」
広林 百果「・・・でも、適しすぎていたのね」
広林 百果「ブラジルで育てた海ぶどうの実は肥大化して熟し、全く別ものの食感になってしまった」
〇海辺
ブラジル人@海ぶどう好き「プチプチジャナイ・・・ブヨブヨ・・・」
ブラジル人@海ぶどう好き「ブラジル、アツスギタンダ・・・」
ブラジル人@海ぶどう好き「コンナノ、ウミブドージャナイ!」
ブラジル人@海ぶどう好き「デモ ガンバッテ ソダテタシ・・・」
〇シックなリビング
広林 百果「彼は絶望したけど、これはこれでブラジルならではの味として愛し育てようと決意した」
広林 百果「その栽培地の様子は膨らんだ粒が密集し、絨毯を敷き詰めたようで・・・」
広林 百果「彼はフランス語の絨毯という意味のタピと、沖縄を表すオカを組み合わせてこう呼んだ」
広林 百果「タピオカ、と」
広林 大苑「百果のタップノベルプレゼンは毎回面白えな」
広林 国子「でもどうして突然フランス語?」
広林 時典「次は俺行くよ!」
〇シックなリビング
時典のターン
広林 時典「タピオカの正体・・・それは」
広林 時典「地底生物の目玉!」
広林 時典「巨大なワーム系の生物だよ」
広林 百果「うげぇ・・・」
広林 国子「あまり想像したくないわね」
広林 時典「実は、人類はずっと地底生物の攻撃を受けていて、世界各地に秘密の戦場があるんだ」
広林 時典「知能は低いが数が多くて厄介」
広林 時典「身はぶよぶよしていて、乾燥させると高い保水力を持つ吸収材になる」
広林 時典「それは「ポリマー」として、紙おむつなどに使われてるよ」
広林 時典「身は苦すぎて食べられないけど、唯一、苦味やクセがないのが退化した目玉」
広林 時典「それが正体を伏せて流通し」
広林 時典「タピオカとして愛好されているんだ」
広林 大苑「各説出揃ったな」
広林 大苑「では、判定に移る」
〇シックなリビング
判定
広林 大苑「国子のカエルの卵版ピータン説はもっともらしいが、黒いタピオカが前提になってるな」
広林 大苑「タピオカの色は、黒がデフォルトじゃない」
広林 国子「くっ・・・確かに」
広林 大苑「百果のウミブドーはブラジル人に感情移入してしまって面白かった」
広林 大苑「でも国子がツッコんでいたように、フランス語がやや唐突だったな」
広林 大苑「タピで検索して使えると思ったか」
広林 百果「はは・・・うん、そう」
広林 大苑「時典の説は女性陣に不評だったな・・・まあ、気色悪いのはわかる」
広林 大苑「だが、面白い」
広林 大苑「地底生物の造形は伝説の未確認生物、モンゴリアンデスワームを彷彿とさせる」
広林 大苑「何も知らず平和に過ごす人類の陰で、危険な地底生物をハンターが駆逐する」
広林 大苑「タピオカや紙おむつは隠れた勝利の証・・・ロマンがあるじゃないか」
広林 百果「えぇ~っ、気持ち悪いよ!」
広林 国子「タピオカ食べられなくなりそう」
広林 時典「俺は滾る!モンゴリアンデスワームって何?カッコいい名前!」
広林 大苑「では、最終結論だ」
広林 大苑「「タピオカ」の広林辞典採用説は」
広林 大苑「「地底生物の目玉」!勝者は時典!」
広林 時典「やったー!新しいゲーム買うぞ!」
広林 百果「あーん、推しグッズ、買いたかった~」
広林 国子「新しいカメラのレンズ欲しかった・・・」
広林 大苑「ははは、次また頑張ってくれ」
広林 大苑「よーし、父さんは原稿やるぞー!」
広林 百果「ねー、あの説が出回ったら、タピオカ業界に怒られない?」
広林 国子「わからない。私は食欲なくすけど、男の子のハートは掴む・・・のかな?」
広林 時典「俺は食べたい!またブームこないかな」
「うぅ~ん・・・」
広林 時典「粘土でモンゴリアンデスワーム作ろーっと!」
〇異世界のオフィス
広林 大苑「ん?」
広林 大苑「そうだ、大事なことを忘れてた!」
本日の通説
広林 大苑「一般的に真実とされている情報を解説するよ」
広林 大苑「おっさんに解説されてもつまらないだろうから、アバターにチェンジしよう」
広林 大苑「チェンジ!」
〇電脳空間
ダイエン姫「はぁい、解説のダイエン姫だよ!」
ダイエン姫「今回の「タピオカ」の真実は~、」
ダイエン姫「『キャッサバのデンプン』!」
ダイエン姫「キャッサバは南米やブラジルで採れる芋の一種」
ダイエン姫「その根茎から取れたデンプンを水で溶いて加熱し、球状に加工すると」
ダイエン姫「タピオカパールと呼ばれる状態になるよ」
ダイエン姫「これを茹でるとプルプルもちもちの、みんなが知ってるタピオカになるよ!」
ダイエン姫「本来のタピオカは白色で、よく見る黒いタピオカはカラメルで色づけされたものなんだ」
ダイエン姫「ちなみにコンビニなどで売られているタピオカは、ほとんどが代用品の」
ダイエン姫「こんにゃく」
ダイエン姫「これからも真実を知った上で、虚構を楽しもう」
ダイエン姫「「自分で確かめる」これが一番大事」
ダイエン姫「それじゃみんな、まったねー!」
ステキナー!!オハナシー!!ウミブドー!!ダイスキー!!コノハナシーモットスキー!!!!!✨😍💖
コレハー!!オモシロイー!!✨😍
アリガトーゴザイマシター!!✨😊
個人的にはお姉ちゃんに1票でした笑。
タピオカ、確か台湾の屋台でカエルの卵のイラストが描かれてたような。お母さんはそこから取ったのかな…?
カオスな辞書を作りつつ、蘊蓄も教える構成。お見事です☺︎
……タピオカ?あれって実は日本の化学メーカーがカプセル接着剤を作る過程で生まれたそうですよ。加圧接着による工業用デンプンのりを応用したんです。開発者の名前は田岡さん……楽しいですね、コレ笑
これ、楽しすぎますって!
私自身も、ルーツや正体の嘘を語ってダマすことが好きなので、このようにバトル化されると高揚してしまいます!
ライター募集型+勝ち抜き制にすると、読者参加型のようになって盛り上がりそうですね!