第三話 探偵、散る(脚本)
〇屋敷の門
初刷 論(はつずり さとし)「音の無い雨!?」
〇屋敷の大広間
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「そうなんだ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ベランダに出て初めて 雨が降ってると気付いてね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「急いで外に出てみたが、 雨は降ってなかった」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「地面も濡れてなかったんだ」
初刷 論(はつずり さとし)「寝ぼけてたんじゃないですか」
初刷 論(はつずり さとし)「久々の旅行だーって 浮かれちゃって」
浜 伊織(はま いおり)「それ自分のことでしょ」
浜 伊織(はま いおり)「小雨だと音はしないですよね?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「結構な本降りだったよ。 君たちは気付かなかったかい?」
初刷 論(はつずり さとし)「俺テレビ観てたから わからなかったのかなぁ」
浜 伊織(はま いおり)「私PCいじってましたけど ミュートにしてましたから」
浜 伊織(はま いおり)「外で物音がすれば気づいたはずです」
初刷 論(はつずり さとし)「そもそもどうして 雨なんか気にするんですか」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ああ、それは──」
旅館の先代女将「──」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「車の中で話そう」
〇屋敷の門
〇車内
浜 伊織(はま いおり)「所長、さっき言いかけたことって?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ああ、雨を気にする理由だね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「実は昨日この町で 警視庁の人間に会ったんだ」
初刷 論(はつずり さとし)「えっ? 東京からわざわざ?」
浜 伊織(はま いおり)「国会議員の件ですね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「さすが浜くん。ご明察」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「知り合いの警部がいて 少し話したんだが」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「妙なことを言っていた」
浜 伊織(はま いおり)「それが雨ですか」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ああ、それもただの雨じゃなく ”音の無い雨”、とね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「だから昨日のことも 気のせいでは済ませられなかった」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「議員の死には ”音の無い雨”が関係している」
初刷 論(はつずり さとし)「でも雨なんかで人が 死にますかね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「さあね。現状では何とも言えない」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「とりあえずロンくん、 一回戻ってもらっていいかな」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「旅館の裏手を調べたい」
初刷 論(はつずり さとし)「了解です」
〇田園風景
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「旅館の裏はただの畑か」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「噴水でもあればあるいはと 思ったんだが」
初刷 論(はつずり さとし)「あっ、でも スプリンクラーがありますよ」
浜 伊織(はま いおり)「四方に張り巡らせてますね」
浜 伊織(はま いおり)「小規模の農村にしては お金をかけてますね」
初刷 論(はつずり さとし)「あっ、わかった! 雨の正体、俺わかりましたよ」
初刷 論(はつずり さとし)「きっとこのスプリンクラーが・・・」
初刷 論(はつずり さとし)「うーん、低いな」
初刷 論(はつずり さとし)「これじゃないか」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「そうだね、二階から見て 雨に見えたわけだから」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「もしやるならもっと高い噴射が 必要そうだね」
浜 伊織(はま いおり)「作物にそんな高さから 水は撒かないでしょう」
浜 伊織(はま いおり)「それに音だってするはずだし」
???「やあ、旅館のお客さんかい?」
???「音無雨町へようこそ!」
???「この町はいかがですか?冬は寒いし夏も蒸し暑いですがその分色々な作物が採れるんですよ。旅館の料理、召し上がりました?あの作」
???「物はだいたいこの地域の畑から採れた物が多いんですよ。地産地消というでしょう?やはりコストを安くしようと思うと地元の作物を」
浜 伊織(はま いおり)「あの・・・」
浜 伊織(はま いおり)「ちょっと何言ってるか わかんないんですけど」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「浜くん!」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「失礼しました」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「我々、そこの旅館に 宿泊している者でして」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「少し辺りを散策していたんです」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「地元の方ですか?」
???「ああ、これは申し遅れました」
???「僕は、音無雨町の町長をしている 志田勘九郎と申します」
浜 伊織(はま いおり)(うざ・・・)
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「これはこれは。 町長さんでしたか」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「旅館の方からお伺いしましたよ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「町を活性化してくれた方だって」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「いやあ、照れちゃいますね」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「元々僕は関東の生まれですが母がこちらの方が出身で。自分探しの途中、こちらの町を見つけてあまりにも自然が美しくて一目惚れし」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「ましてね。聞けば高年齢化が進んで後継者問題が発生しているというじゃないですか。僕は許せなかったんです。こんな素敵な町が社」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「会の流れに押されて駄目になっていくなんて。そこで自分が変えてやるとばかりに町長になってこの町を立て直すことにしたんです」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「・・・なるほど、素晴らしいですね」
浜 伊織(はま いおり)「マジで言ってんすか」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「浜くん!」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「彼女も感心してましたよ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「治水がしっかりしてるって」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「不作の原因は乾期と雨期が 極端だったからです」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「水路の配備でようやく 安定した栽培が可能になりました」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「なのに国と来たら・・・」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「我々の努力を見ようともせず、ダム計画なんて突きつけてきたんですよ。確かにこの辺り水不足が多発する地域ですが音無雨町のよう」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「に各町で貯水池と水路の確保をすれば年間降水量としては決して不足しているとは言えませんダムなんて必要ないんですよ。何故音無」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「雨町ばかりがそんな憂き目に逢わなきゃならんのですか!ああ、この憂き目というのは別に雨期とかけたダジャレじゃなくて・・・」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「町長さん、町長さん!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「えっ?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「誰か呼んでますよ」
音無雨町 町民「おーい、町長! 次こっちの水路直すんじゃろ!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「あっ、そうだ。 つい話に夢中になって」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「すみません、 ゆっくりされて下さいね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「あっ、ひとついいですか」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「はい、何でしょう」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「”音の無い雨”って、ご存知ですか?」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「──」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「ええ、まあもちろん。 でもあんなの古い迷信ですよ」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「すみません。 ゆっくり話したいところですが」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「こちらこそお引き留めして すみませんでした」
音無雨町 町民「町長さん、早くしてくれよ!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「すぐ行きまーす!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「では、失礼」
初刷 論(はつずり さとし)「・・・」
初刷 論(はつずり さとし)「な、なんか強烈な人でしたね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「面白い人だね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「あのバイタリティが この町を変える力なんだろう」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「さて、そろそろ行こうか」
〇車内
初刷 論(はつずり さとし)「次はどこに行きます?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「町役場だ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「戸籍の附票があれば 佐々木の現住所を調べられる」
初刷 論(はつずり さとし)「わかりました」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ああ、そうだ浜くん 一つお願いがあるんだが」
浜 伊織(はま いおり)「”音の無い雨”について 調べたいから」
浜 伊織(はま いおり)「佐々木哲司の調査を 進めておいて、ですか?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「その通り!」
〇田舎の役場
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ここが町役場だね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「じゃ、そういうわけで」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「僕は県立図書館とか色々回ってくる 夕方には戻るよ」
浜 伊織(はま いおり)「さ、行きますか」
浜 伊織(はま いおり)「離婚後も元妻だと言えば 戸籍は出せるはずだから」
初刷 論(はつずり さとし)「なあ、伊織。所長のとこで どれくらい働いてる?」
浜 伊織(はま いおり)「なによ、急に? 四、五年ってとこかしら」
初刷 論(はつずり さとし)「俺思うんだけどさ、 所長って自由すぎねぇ?」
初刷 論(はつずり さとし)「まあ、給料もらってる以上 何も言えねーし」
初刷 論(はつずり さとし)「堀田所長には恩もあるけどさ」
浜 伊織(はま いおり)「まああの人、知りたいって 思ったら勝手に動いちゃうからね」
浜 伊織(はま いおり)「けどね、ロン」
浜 伊織(はま いおり)「一見関係ないように見えるけど」
〇車内
浜 伊織(はま いおり)「今まであの人が 依頼中にやったことで」
浜 伊織(はま いおり)「依頼に関係ない調査を したことって一度もないのよ」
〇田舎の役場
初刷 論(はつずり さとし)「ってことは議員の死が 佐々木哲司と関係が?」
浜 伊織(はま いおり)「さあね」
浜 伊織(はま いおり)「でも多分”雨”と佐々木哲司は 何らかの関係があると思う」
浜 伊織(はま いおり)「何を考えているのか 近くで見ていてもわからないけど」
浜 伊織(はま いおり)「所長がおかしな行動をするときは 必ず理由がある」
浜 伊織(はま いおり)「控えめに言って天才なのよ あの眼鏡は」
浜 伊織(はま いおり)「行くわよ」
初刷 論(はつずり さとし)「マジか・・・」
〇役所のオフィス
町役場 職員「ええ!? あんたが、佐々木さんの奥さんだって?」
浜 伊織(はま いおり)「元・妻です。 離婚届の写しもあります」
〇黒
浜 伊織(はま いおり)(確かに元配偶者には 戸籍取得の権利がある)
浜 伊織(はま いおり)(けど、佐々木哲司が閲覧制限を かけてたらアウトだし)
浜 伊織(はま いおり)(そもそも泉礼華の母、 泉弥生子は既に死んでいる)
浜 伊織(はま いおり)(下手すれば身分詐称で 一気に捕まる可能性もある)
浜 伊織(はま いおり)(うまくいけばいいんだけど・・・)
〇役所のオフィス
浜 伊織(はま いおり)「信じられません? 写真もありますよ」
初刷 論(はつずり さとし)「ぶっ・・・」
ギュウウウウウ(足)
初刷 論(はつずり さとし)「ぐっ・・・」
町役場 職員「驚いた。確かに佐々木さんだ」
町役場 職員「こんな若い奥さんがいたとはね・・・」
浜 伊織(はま いおり)「美容整形で若作りしてるだけですよ」
浜 伊織(はま いおり)「離婚したのはもう20年も前ですから」
浜 伊織(はま いおり)「こう見えてアラフォーなんです、私」
町役場 職員「はー、女の人ってのは 怖いねぇ」
町役場 職員「あ、戸籍の附票だったね ちょっと待っててくれよ」
浜 伊織(はま いおり)(良かった、通った・・・)
初刷 論(はつずり さとし)「何、今の衝撃写真」
浜 伊織(はま いおり)「え? 合成だけど」
初刷 論(はつずり さとし)(いや、合成の元だよ)
〇田舎の役場
浜 伊織(はま いおり)「よし、附票が手に入った あとはこの住所を・・・」
初刷 論(はつずり さとし)「ちょっと気になってることが あるんだけど」
浜 伊織(はま いおり)「なに?」
初刷 論(はつずり さとし)「写真、出す必要あったの?」
初刷 論(はつずり さとし)「役場のおじさんは 離婚届だけで信じたと思うけど」
浜 伊織(はま いおり)「町役場に佐々木哲司を 確認させるためよ」
浜 伊織(はま いおり)「こんな小さな町だもの 顔見知りの可能性があるでしょ」
初刷 論(はつずり さとし)「あっ、そういうことか! 確かに佐々木さんだって言ってた」
浜 伊織(はま いおり)「あんたね。あんな写真 意味もなく見せると思うの?」
浜 伊織(はま いおり)「それにあれ、首から下は グラビア女優の体だから」
初刷 論(はつずり さとし)「いや、そこは別に興味ねぇよ」
〇中央図書館(看板無し)
〇図書館
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(なるほど、これが伝承ね)
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(おっと、もうこんな時間か 音無雨町に戻らないと)
〇山間の田舎道
〇車内
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「すっかり暗くなっちゃったな」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「調査はどうなったかな」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「僕の読みでは 佐々木は自宅にはいないと思──」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「なっ、なんだ!」
〇山間の田舎道
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「フロントガラスに水滴もないのに 雨だって!?」
〇車内
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「なんだ!? タイヤが取られ・・・うわっ!」
〇黒
18:07
音無雨町にて交通事故発生
運転していた男性は
意識不明のまま
近くの病院へ搬送された
毎話見せ方うまくてグイグイ引っ張られてしまいます。細かな知識や言葉や、相手の行動心理を巧みに利用していたり探偵としての説得力を感じ物語へ夢中にさせてくれます😆😆😆
ホッターがが😇
交通事故で病院搬送という事は、一時的な離脱か……?突き指くらいであってほしいですね。
音の無い雨、本当になんなんや……。今回に関しては犯人に視界ジャック的な用法で使われたんですかね?怪しい町ですわホンマに😇
町長さん…いちばん怪しいポジションですね😅
ホッター無事でありますように…🙏