守り神の娘

ざとういち

Kodama(脚本)

守り神の娘

ざとういち

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〇黒
  ある日突然、娘が消えた

〇神社の本殿
  なんとなく気になって、
  フラッと神社に立ち寄っただけなんだ
  それ以外、何も変わったことはしてない
  だけど俺は、何故か気が遠くなって
  ・・・そして、気が付いたら
  手を繋いでいたはずの娘が
  ・・・いなくなってた

〇山の中
  はぁ・・・はぁ・・・!
  円花・・・!どこだ・・・!
  もちろん、必死に探した
  どこに行ったんだ・・・!?
  頼むから、返事してくれ・・・!!
  だけど、どこにもいなかった

〇神社の石段
  なんでだよ・・・!?
  なんで、こんなことに・・・!!
  まるで突然・・・
  この世から消えてしまったように
  お願いだから、返事してくれ・・・!

〇神社の石段
  円花────ッ!!
  まるで・・・
  “神隠し”にでもあったように

〇黒
  ・・・娘は消えた

〇古いアパート

〇古いアパートの一室
幸助「・・・はい、もしもし?」
担当編集「先生、そろそろ・・・ 妖怪系のお話、書いてくれませんか・・・?」
幸助「はぁ・・・またその話ですか?」
幸助「俺はもうそういうのは書けないって 言ったじゃないですか・・・」
担当編集「そう言わずに・・・ 先生のあやかし物は 人気があるんですから・・・」
幸助「書けないもんは書けないんです・・・ 他、当たってください・・・」
担当編集「ちょ・・・先せ」
幸助「・・・ふん」
幸助「まったく・・・分からん奴め・・・」
幸助「今度はなんだ・・・?」
幸助「めんどくさいな・・・ もう居留守だ・・・居留守・・・」
幸助「誰もいませんよっと・・・」
幸助「な、なんだなんだ・・・? 子供のいたずらじゃあるまいし・・・」
幸助「まったく・・・しょうがねぇな・・・」
幸助「はいはい、今開けますよ・・・」

〇古いアパート
???「ちょっと!なんで全然 出てくれないんですか!?」
幸助(ほ、ほんとに子供・・・!?)
幸助「あの・・・お嬢ちゃん、誰?」
こだま「私はこだまです!」
幸助「そんな子供は知らん・・・」
こだま「知ってるとか知らないとか、 そんな細かい話は良いんですよ!」
幸助「いや、全然細かくないと思うが・・・」
こだま「じゃあ、ちょっとお邪魔しますね!」
幸助「はぁ!?おいコラ!! 勝手に人ンち入るんじゃねぇ!!」

〇古いアパートの一室
こだま「うわぁ・・・きったない部屋ですね・・・」
幸助「うるせぇ・・・ほっとけ・・・」
幸助「そんなことより、早くここから出てけ 警察呼ぶぞクソガキ・・・」
幸助「大人を怒らせたらどんなに 怖いか、教えてやろうか・・・?」
こだま「・・・・・・」
幸助「な、なんだよ・・・?」
こだま「そこっ!!」
幸助「うおっ!?」
こだま「悪霊退散・・・!」
幸助「い・・・今のは・・・!?」
こだま「幸助に取り憑いてた悪霊です」
幸助「な、なんで俺の名前を・・・ ていうか、呼び捨て・・・」
こだま「私は幸助を守るためにやってきた、 守り神だからですよ!」
幸助「守り神・・・!?」
こだま「幸助は名前とは裏腹に、 それはもう可哀想なくらい 不幸な星の元に生まれた人間です」
こだま「でも、その不幸は全て、 悪霊に取り憑かれやすい 体質から来る物なのですよ」
こだま「だから!私がそんな不幸で 可哀想な幸助を助けに来てあげたと そういう訳なのですっ!」
幸助「そ、そうか〜!そうだったのか〜! なるほどな〜!うんうん!」
こだま「分かってくれましたか!?」

〇古いアパート
こだま「いでっ!?」
こだま「ちょ!?ちょっと幸助!? 入れてくださいよ!」

〇古いアパートの一室
幸助「まったく・・・忌々しい・・・」
幸助「俺はお前のような存在とは 一番関わりたくないんだよ・・・」
こだま「えーん!幸助開けてください〜!」
幸助「うるせぇ、帰れ」
こだま「良い子にしますから〜!」
幸助「間に合ってますぅ〜」
隣のおばちゃん「あら!?お嬢ちゃんどうしたの!?」
こだま「幸助がいじわるして お家に入れてくれないんです〜!」
隣のおばちゃん「まぁ!なんてこと!」
幸助「あ、あのガキ・・・!」

〇古いアパート
隣のおばちゃん「ちょっと!あんたこんな ちっちゃな子になんて仕打ちを!」
幸助「ち、違うんです!誤解なんです! こいつほんとに全然知らない子供で・・・」
こだま「えーん!幸助がいじめるー! えーんえーん!」
こだま「ふっ・・・」
幸助(こ、こいつ・・・!)
隣のおばちゃん「ギロリ・・・」
幸助「くぅ・・・!」

〇古いアパートの一室
こだま「ふーっ、ようやく落ち着けます」
幸助「俺の家で落ち着くんじゃねぇ・・・」
幸助「で、結局お前は何しに来たんだよ? どうしたら帰ってくれるんだ?」
こだま「さっそく帰そうとしないでくださいよ!」
こだま「さっきも言った通り、 私は幸助の守り神なんです!」
こだま「だから、幸助を不幸から 守るのが私の役目です!」
幸助「別に、不幸なのは今に 始まった話じゃねぇし・・・」
幸助「なんで今さらお前みたいな奴が 来るんだよ・・・」
こだま「さぁ?分かりません」
幸助「はぁ・・・?」
こだま「気付いたら、私は自分が 守り神だということを認識していて」
こだま「それで、幸助のことを 守らなきゃいけないって そう思ったんです・・・」
幸助「自分でもよく分かってないのかよ・・・」
こだま「まぁまぁ!細かいことは 良いじゃないですか!」
こだま「では、不幸な幸助を助けるついでに、 まずはこの汚い部屋を綺麗にしますね!」
幸助「もう勝手にしてくれ・・・」

〇古いアパートの一室
こだま「ふんふんふーん♪」
幸助(はぁ・・・なんでこんなことに・・・)
こだま「あの・・・幸助?」
幸助「なんだよ?」
こだま「幸助は昼間っから家で ゴロゴロしてますけど・・・」
こだま「お仕事とかしてないんですか?」
幸助「そうだよ・・・悪いか?」
こだま「どうして?」
幸助「そういう気分じゃねぇんだよ・・・」
幸助「金なら当分ある・・・ 別に俺は何も困ってねぇ・・・」
こだま「ほんとに?」
幸助「うるせぇな・・・なんなんだよ・・・」
こだま「この本棚にいっぱいある本・・・ 幸助の名前が書いてある物が いくつかあります・・・」
こだま「幸助はお話を書く人なんですよね?」
こだま「どうして書かないんですか?」
幸助「はぁ・・・」
幸助「書かないんじゃなくて書けないんだよ・・・」
こだま「えっ・・・?」
幸助「俺は好き好んで妖怪の話とか、 怪異の話とか書いてたんだが・・・」
幸助「お前も知っての通り、 俺は不幸だからよ・・・」

〇黒
  円花・・・!どこだ・・・!

〇古いアパートの一室
幸助「それで、嫌なことがいろいろあって・・・」

〇黒
  なんでだよ・・・!?
  なんで、こんなことに・・・!!

〇古いアパートの一室
幸助「それから書けなくなったんだよ・・・」
こだま「そうですか・・・」
こだま「じゃあ私のこと書いても良いですよ!」
幸助「はぁ・・・!?」
こだま「だって私って、悪い妖怪と違って とっても親しみやすいじゃないですか!」
幸助「どこがだよ・・・」
こだま「幸助が嫌な思いしないで済むなら、 私はどんなことでもしますよっ!」
幸助「ふん・・・見ず知らずのクソガキを 家に入れてるのがもう嫌なんだっつーの」
こだま「じゃあさっそく、ネタを探しに お出掛けしましょうっ!」
幸助「おいコラ・・・何を勝手なことを・・・」
こだま「うるうる・・・」
幸助(くっ・・・また泣かれでもしたら、 隣のおばちゃんに通報されかねん・・・)
幸助(この疫病神め・・・)

〇線路沿いの道
こだま「ふふっ!幸助とお出掛け! とっても嬉しいですっ!」
幸助「お前・・・俺のネタのために 出掛けてるんだろ・・・?」
幸助「なんでお前が 楽しそうにしてるんだよ・・・」
こだま「まぁまぁ!細かいことは 良いじゃないですか!」
幸助「お前そればっかだな・・・」
こだま「・・・・・・」
こだま「むぅ〜・・・」
幸助「今度はなんだよ・・・?」
こだま「手・・・」
幸助「あ・・・?」
こだま「手、繋ぎたいです・・・」
幸助「はぁ・・・?」
幸助「なんで俺がそんなこと・・・」
こだま「うるうる・・・」
幸助「くそっ・・・!」
幸助「ほらよ・・・」
こだま「あっ!」
こだま「うふふふっ!」

〇黒
  うふふふっ!
  お父さんっ!

〇線路沿いの道
幸助(円花・・・!?)
こだま「ん・・・?」
幸助(いや落ち着け・・・ こいつは円花じゃない・・・)
幸助(円花は・・・こんな子じゃない・・・)
こだま「ふふっ・・・!」

〇黒
  それから俺は、その奇妙な子供と
  生活する羽目になってしまった・・・

〇古いアパートの一室
担当編集「せ、先生・・・」
担当編集「新作の小説、凄く良いじゃないですか!」
幸助「はぁ・・・そりゃどーも・・・」
担当編集「では、この作品を連載する方向で 進めてまいりますので、先生! これからもよろしくお願いいたします!」
幸助「はい・・・善処します・・・」
幸助「はぁ・・・」
こだま「ど、どうでしたか・・・?」
幸助「良いってよ・・・」
こだま「はぁ・・・良かったです・・・!」
こだま「じゃ、これからも私といっぱい 思い出作りましょうねっ!」
幸助「はぁ・・・」
幸助(これじゃ小説じゃなくて、 エッセイだっつーの・・・)

〇黒
  娘を失った俺の前に現れたのは、
  お節介な守り神だった

コメント

  • こだまちゃんと幸助の微妙な関係性、とても面白いです。幸助が「円花と居られる“不幸な”生活if」に閉じ込められる回とか、想像してしまいました。

  • こだまちゃんのあざと可愛さ……最高です!
    「守り神」「悪霊」といった非日常感と、アパートでの生々しい生活感(隣のおばちゃん含む)のギャップ感が好きです!

  • ぐいぐい行くこだまちゃんが可愛いですね☺️
    近所のおばちゃん達を使いこなしつつ、幸助を幸せに追い詰めて欲しい所です。

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