タワマンにパンダがきた!?

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タワマンにパンダがきた!?(脚本)

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〇高速道路
  ──港区六本木一丁目
  夜の幹線道路を行き交う高級車
  毎日がせわしなく過ぎていく

〇超高層ビル
  ──高層ビルが乱立する六本木
  中でもひときわ高い超高層タワーマンション
  その36階で静かに暮らす少年がいた──。
  岩倉誠司 9歳
  父は外資系の企業に勤め
  年収はリンゴ60万個分
  出張で方々を飛び回り、週末にしか帰らない
  優しかった誠司の母は
  誠司が3つの時に病気でこの世を去った

〇おしゃれなリビング
  誠司はいつも独りで生活していた
  自分で作った朝食を食べて学校に行き
  学校帰りにお弁当を買ってまっすぐ帰る
  その繰り返しだ──
  学校がない日の食事はフードデリバリー
  学校と塾に行く以外は一人で外出することを許されていない
  一人で都会をうろつくのは危ないからだ
  そもそもこの都会のど真ん中に
  子どもが伸び伸びと遊べる場所なんてない
  そういう訳で、誠司には友達もいなかった
  「タワマンぼっち」
  ──誠司を形容する言葉だ
  タワマンの一室に閉じ込められた少年
  なにも望んでないのに
  生まれた時からすべて与えられ
  なぜ生きなきゃいけないのか
  それすらもわからなかった──

〇部屋の前
  今日も家はすこぶる静かだ
  時計の秒針の音が聞こえるくらい──。

〇一人部屋
岩倉誠司「ただいまー!」
岩倉誠司「今日は焼き鳥弁当にしたんだ!」
岩倉誠司「ふっふ〜」
岩倉誠司「駅前でタピオカも買っちゃった!」
岩倉誠司「一週間頑張ったもんな!」
  寂しさから一人で喋るクセがついていた
岩倉誠司「いっただきまーす!」
岩倉誠司「うん美味しいー!」
岩倉誠司「やっぱあそこの弁当は間違いないな!」
岩倉誠司「────」
岩倉誠司「────」

〇教室
「せーじって金持ちなんだろ!」
「六本木のタワマンに住んでるらしいぜ」
「金貸してくれよ〜!!」

〇一人部屋
岩倉誠司「あんな奴らと友達になるくらいなら」
岩倉誠司「独りでいる方が100倍マシだ!」
岩倉誠司「あんな奴ら、僕より勉強だってできないし」
岩倉誠司「いい大学にも入れないだろうし」
岩倉誠司「性格も悪いし」
岩倉誠司「あんなグループ、バカばっかだし」
岩倉誠司「どうせ最低な人生を送るんだ」
岩倉誠司「ざまぁ見ろ!!」
岩倉誠司「あははははははは」
岩倉誠司「ははははは」
岩倉誠司「ははは──」
岩倉誠司「・・・」
岩倉誠司「今日は約束を破って外に出ちゃおうかな──」
岩倉誠司「でもタワマンって エレベーターで下までいくの面倒だから」
岩倉誠司「外に出るハードルが高いんだよな」
岩倉誠司「そもそも」
岩倉誠司「外に出たところで、やることもないし・・・」
岩倉誠司「今日もアニメでも見て寝よう・・・」
  ピンポーン
  ──「お届け物でーす!」
岩倉誠司「なんだろう?」

〇玄関の外
パンダ「はいどうもはいどうもどうもーはいどうもねーここかなー?36階の角部屋ここかなー?ピンポンですピンポンピンポンー!」
パンダ「いや、ね~今日ちょっとサングラス忘れちゃってクマみたいじゃない?んもうやだぁ」
パンダ「あ、パンダですぅ!!!!」
パンダ「んめちゃくちゃパンダですぅ!!!! っっっっっはは!!」
パンダ「っっっっはは!!」
岩倉誠司「なんだこいつ!?」
パンダ「あどうもどうもねー 岩倉孝之さんで合ってますかねぇ?」
岩倉誠司「いや、それは父さんの名前で──」
岩倉誠司「僕は岩倉誠司」
パンダ「これは失礼!!せーじくんねーよろしくーう!!」
パンダ「今日からお世話になりますねぇ。まぁ細かい話は中でお茶でも飲みながらさせてもらうとして──」
パンダ「あ、ぼくハーブティーでいいですよええ!」
パンダ「あと笹団子なんてあったりしたら嬉しいんですがね!っっっっはは♪」
パンダ「ところで星野健って本名なんですかねぇ」
岩倉孝之「ただいまー」
岩倉誠司「あれ、父さんお帰り!!」
岩倉誠司「そうか、今日は金曜日か!」
岩倉孝之「せーじ、ただいま」
岩倉孝之「これは・・・」
パンダ「あらお父様!!おかえりなさいですぅ!!」
岩倉誠司「ここに間違って届いたみたい」
パンダ「いやー長い道のりでしてねー、ここまで何時間もトラックに揺られて話し相手もなく」
パンダ「まあ一人でずっと喋ってましたけど え?間違って?間違って?・・・間違ってってどゆことですかねえ?」
岩倉孝之「おやおや」
岩倉孝之「・・・」
岩倉誠司「悪いけど送り返した方がいいんじゃ──」
岩倉孝之「頼んでいたパンダが届いたか」

〇おしゃれなリビング
岩倉孝之「いやー実はな」
岩倉孝之「このパンダはうちの会社で取引している中国の製造会社で作られた製品で」
岩倉孝之「家庭用の話し相手ロボの試作品さ」
岩倉孝之「最新のAIが搭載されており」
岩倉孝之「言ってみれば人間とパンダのハイブリッドだな」
岩倉孝之「ただ人間の言葉が喋れるようになったパンダだと思えばいいさ」
岩倉孝之「せーじの話し相手に丁度いいと思ってな」
岩倉孝之「家を空けることが多くてすまんな」
岩倉孝之「あいつにはせーじの面倒も見てもらおうと思ってる」
岩倉孝之「今日からあのパンダも家族だ」
岩倉孝之「あいつと一緒なら、外に出てもいいぞ」
岩倉誠司「ホントに!?」
岩倉孝之「ただし、門限はきちんと守ること」
岩倉誠司「わかってるよ!17時ね!」
岩倉孝之「しかしあの試作品 あそこまで喋るとはなぁ!ハハハ」
岩倉孝之「騒がしすぎないといいんだが」

〇一人部屋
パンダ「せーじせーじなあせーじせーじせーじなあせーじなあせーじせーじ!!」
パンダ「好きな韓国ドラマあるか?」
パンダ「あ、あとで一緒にお風呂入ろうぜ!」
パンダ「最低なク◯ッシュの登場やります!」
パンダ「デンデレデンデンデンデンデンデン」
パンダ「さぁ〜いてぇ〜〜〜〜〜!」
岩倉誠司「・・・」
パンダ「明日はどこへ行く!?」
パンダ「ここプールもあるんだろ!」
パンダ「明日行ってみようぜ!!」
岩倉誠司「えっと・・・明日は塾があって・・・」
パンダ「塾・・・?」
岩倉誠司「うん」
パンダ「塾って面白いのか?」
岩倉誠司「いや、面白いというか・・・」
パンダ「・・・?」
岩倉誠司「行かなくちゃいけないから・・・」
パンダ「・・・」
パンダ「・・・好きじゃないのに通わされてるのか?」
岩倉誠司「・・・将来のために勉強するのは当たり前だろ?」
パンダ「・・・」
パンダ「せーじが好きなものはなんだ?」
岩倉誠司「えっ?」
岩倉誠司「ぼくが好きなもの?」
岩倉誠司「うーん・・・」
岩倉誠司「そんな急に言われても」
岩倉誠司「わかんないよ」
パンダ「そうか!!俺は笹が好きだぞ!!」
パンダ「あんまり食べ物たくさん知らないんだが」
パンダ「あ──納豆はひきわり派だ!」
岩倉誠司「え・・・?」
パンダ「あと韓国ドラマ好きだ」
岩倉誠司「・・・」
パンダ「せーじも好きなものできたら教えてくれよ!」
岩倉誠司「う・・・うん」
パンダ「そういやさっきスポーツのニュースで初めて知った──」
パンダ「ジョコ◯ッチってテニスプレーヤーなんだな!」
岩倉誠司「へ?」
パンダ「お菓子の名前かと思ってたぞ」
パンダ「クリームジョコ◯ッチみたいな」
岩倉誠司「──────」
パンダ「──────」
岩倉誠司「・・・・・・へへへ」
パンダ「・・・ん?」
岩倉誠司「あはははは!!」
パンダ「ん?俺なんかおかしいこと言ったか?」
岩倉誠司「あははははは!!!!」
パンダ「っっっっっっはは!!」
岩倉誠司「アハハハハハハハハ!!!!!」
パンダ「っっっっっっっははははは!!!!」
パンダ「スマ◯ラって掴み技ばっか狙ってると負けるんだな」
岩倉誠司「ハハハハハハハハハ!!!!」
岩倉誠司「それは常識だろ!!」
パンダ「そうなのか・・・!?」
パンダ「これから俺にこの世界のこと色々教えてくれよ!」

〇超高層ビル
「じゃあ明日は塾行く前にプール行こうぜ!」
「う・・・うん!」
  誠司の日常は少しずつ明るくなっていく──

コメント

  • パンダじゃなくて白熊なのには読者を含めて誰もツッコまない優しさがいいなあ。誠司くんに笑顔が増えてよかった。キティちゃんの身長・体重と同じ計算方法のお父さんの年収、今度私も使ってみよう。

  • 『渋谷行きのバス』が、あのコンテストで1番大好きな作品でした!
    お久しぶりの投稿ですか?
    ワクワクしながら読んだら、スゴい圧力のパンダにヤラれてしまいました。流石です。面白いです。
    パンダがずっとテンション高くて、一緒に暮らすのが楽しそう!うちにも送って欲しいです。

  • タワマンぼっち。初めて聞きました。私の実家もタワマンです。確かに一軒家よりも外出のハードル高いかもですね。誠司くんがひとりぼっちなのを無理に肯定しようとしている思いが痛く、だからこそパンダの言葉で笑えた時にこちらもうれしくなりました。続き読みたいです。

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