天才比べ

竜谷 晟

エピソード1(脚本)

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〇教室
先輩「勝負をしよう」
  先輩が、そんなトチ狂ったことを言い出したのは6月の暮れ、
  まだ昼の暑さが残る放課後であった
後輩ちゃん「勝負なら今していますが」
  パチッ!と軽快な軽い音を立てて歩を前進させる
後輩ちゃん「王手です」
先輩「ふむふむ、また勝てなかったか、これで私と君の将棋の戦績は0勝11敗か」
後輩ちゃん「いえ、私の13勝ですよ、数字は正確にお願いします」
先輩「ん、そうか、それはすまん ではこれで私たちの総合戦績は、えっと、どうなってるっけ?」
後輩ちゃん「チェスが20勝1敗で私の勝ち 囲碁が12勝1敗で私の勝ち ババ抜きが18勝1敗で私の勝ち 神経衰弱が10勝1敗で私の勝ち」
後輩ちゃん「将棋が13勝0敗で私の勝ち ・・・・・・じゃんけんが299勝0敗で先輩の勝ち」
先輩「ふむ、総合すると私の勝ちか」
後輩ちゃん「なんでだよ」
先輩「え?違うの?合計で303勝73敗だよ。私の圧勝じゃん」
後輩ちゃん「じゃんけんでな、運でな。  種目ごとなら5勝1敗で私の勝ちです」
後輩ちゃん(そう、先輩はとてつもなく運がいい)
後輩ちゃん(現在、 ソシャゲで爆死している私とは大違いだ)
後輩ちゃん「さてと、追加で課金しますか」
先輩「うわ、 財布の中に課金カードがたくさんある」
後輩ちゃん「先輩、ちょっとガチャ引いてもらってもいいですか?」
先輩「いや、仮にも先輩と話してる時にスマホゲームしてんじゃないよ」
後輩ちゃん「大丈夫です、先輩以外にはやりませんから」
先輩「それはそれで問題だろう!!」
先輩「君はこうなんと言うか、私への尊敬の気持ちというものが ちょっとはあってもいいんじゃないかな!!」
後輩ちゃん「スミマセン、ヨク、ワカリマセン」
先輩「Siriかお前は!!」
後輩ちゃん(って言いながらも結局回してくれるのが 先輩のダメなところだな)
先輩「なんかすごい失礼なこと考えてない?」
  チャッチャラーン
後輩ちゃん「凄え、最高レアを単発で引き当てた これからは全部先輩に引いてもらおうかな?」
後輩ちゃん「どうせ暇人なんだし、少しは役に立ってもらおう」
先輩「敬え、先輩を」
後輩ちゃん「運の良さには驚いてます」
先輩「敬えと言っているんだ驚かせてどうする。『馬』をつけるな」
先輩「敬  + 馬=驚く とか、普通にわかりにくいよ」
後輩ちゃん「では『言』を付けて警戒しますか」
後輩ちゃん「敬 + 言=警 です」
先輩「いや、警戒って、一体ナニを警戒するって言うんだよ」
後輩ちゃん「そうですね・・・・・・ もしかして先輩・・・・・・・・・」
先輩「な、なんだよ」
後輩ちゃん「私の運を吸い取ったりしてます?」
先輩「んなわけあるか!  人を都市伝説の怪物みたいにいうな!」
後輩ちゃん「うるさいですね 声を張り上げないでくださいよ」
後輩ちゃん「それ以上うるさくしたら先輩のこと 『ラッキー星人』 って呼びますからね」
先輩「私をラッキー星人にするな どんな嫌がらせだよ」
先輩「そのあだ名何かの間違いで定着したらどうするんだ」
後輩ちゃん「あだ名が定着して困るほど友達いないでしょう」
先輩「ひどいこと言うな! 居るよ!  友達いっぱい居るよ!」
後輩ちゃん「この学校って物好きな人多いんですよね」
先輩「どういう意味だこの野郎!?  いい加減にしろ!」
後輩ちゃん「はい、分かりました」
後輩ちゃん「ちなみにですが『野郎』は男に対して使うものです 私相手には『女郎』が正しいですよ」
後輩ちゃん(親切な私が丁寧に間違えを訂正してあげたのになんでプルプルしてんだろう?)
後輩ちゃん(怒っているのだろうか? 後輩からの親切な訂正を受け入れられないなんて、カルシウムが足りてないんじゃ無いだろうか)
先輩「もういい、分かった。 先輩として格の違いを見せてやる」
後輩ちゃん(なるほど、そういう事なら戦争だ)
先輩「あぶなっ!!」
  先輩は咄嗟に上半身を逸らし、拳は先輩の頬を掠る
後輩ちゃん「チッ、避けやがった」
先輩「え?なんで殴った!?  今なんで君先輩の顔面をグーで殴ったの?」
後輩ちゃん「いや、格の違いを見せるとか言われたので、喧嘩でもするのかなぁって」
先輩「危険思想かな?」
後輩ちゃん「え?殴り合わないんですか?」
先輩「殴り合わないよ!! ”次の勝負で” 格の違いを見せてやるってこと!!」
後輩ちゃん「いいじゃ無いですか、今から河原へ行きましょうよ 友情を育みましょうよ」
先輩「わかった、危険思想だな、まごう事なく」
先輩「君、もしかして友情を『クローズ』から学んでだりするの?」
後輩ちゃん「いえ、『赤毛のアン』で学びました」
先輩「余計こわいよ!」
後輩ちゃん「では喧嘩以外に何で勝負しろと?」
先輩「・・・・・・すげぇセリフだな」
先輩「だがよくぞ聞いてくれた!!!!」
先輩「ふふ、勝負の内容はズバリ!!」
後輩ちゃん「はよいえ」
先輩「『宝探し』だ!!!!」

次のエピソード:エピソード2

コメント

  • 「能力が高い人間」と「運が強い人間」、結局どちらが人生の勝利者になれるのか、ちょっと考えさせられました。「敬う」と「驚く」などの漢字遊びも面白かったです。

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