銃刀の魔性天秤(デビルズリブラ)

ぐぅ先

第1話 VSお菓子と城のお嬢様・前編(脚本)

銃刀の魔性天秤(デビルズリブラ)

ぐぅ先

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〇魔界
  魔性天秤(デビルズリブラ)・・・
  それは、悪魔が創ったと言われる
  「超能力」開発用の道具。
  触れながら念じるだけで、
  望んだ「超能力」を
  得られるというものである。
  ・・・ただし、
  能力を得ると同時に、想定外の
  「代償」を背負わされるのだとか・・・。

〇怪しげな酒場
  ・・・
  [キューモ街]
  とある酒場
クロフ「・・・」
男A「おい、また不審死だってよ・・・」
「へい、おまち!」
クロフ「・・・ああ」
男B「まったく、こえぇ世の中だよなぁ・・・ いつ死ぬかも分かんねぇ」
クロフ「・・・うるせぇな」
男A「ん・・・?」
クロフ「・・・あ、」
クロフ「いや、ち、違う!」
男B「・・・お、おい」
クロフ「テメェに言われる筋合いはねぇよ!」
  ・・・
男A「・・・アンタ、大丈夫か?」
クロフ「上等だ、表ぇ出ろ!!」
  ゴク・・・ゴク・・・
  バン!!
  クロフは酒を一気に飲み干し、
  代金を置いて立ち去った。
男A「・・・」
男B「・・・」
男A「なあ、俺は外に出たほうがいいのか?」
男B「・・・無視でいいだろ」

〇西洋の街並み
  [キューモ街]
  屋外
クロフ「・・・」
クロフ「あー・・・、気分悪ィ・・・」
「はっはっは! 酒なんてモノを飲むからだ!」
クロフ「黙ってろ、腰抜けが・・・!」
「腰抜け? 誰のことだ?」
クロフ「テメェのことだよ、言わせんな!」
  ・・・

〇黒背景
  [クロフの精神内]
クロフ「こういう時に全然外に出る気がない お前のことだ、腰抜け!」
クロフ「酒程度でいちいち喚くな! うるせぇんだよ!」
ウツシマ「バカかお前は。 わざわざ殴られに出る必要があるか?」
ウツシマ「はっはっは!」
クロフ「・・・覚えてろよ、お前」
ウツシマ「安心しろ! 私は昨日もおとといも 「なにをしたか覚えてる」からな!」
クロフ「・・・」

〇西洋の街並み
  ・・・クロフの中には「悪魔」がいる。

〇黒背景
  その悪魔の名は「ウツシマ」。
  クロフは魔性天秤のせいで
  彼女に取り憑かれてしまい、
  実にうるさい日々を過ごしていた。
  どうにかしてその悪魔を
  殺してやりたいと考えていたが、
  なんと能力の「代償」のせいで
  ウツシマを殺すことも、自殺すること
  さえもできなくなっていた。

〇西洋の街並み
  代わりに、ウツシマから
  殺されるようなこともないのだが・・・
クロフ「いつか殺してやるからな・・・」
「ん? なにか言ったか?」
クロフ「「いつか殺してやる」って言ったんだよ」
「なんだ、そうか」
  実際に殴ることができなければ、
  言葉で反抗するしかない。
  しかし、ウツシマは妙に弁が立ち、
  なにを言ってもお返しされる始末である。
クロフ「・・・」
  さて。
  そんなクロフは、なにをしに
  この街に来たのか・・・
「・・・ところでクロフ。 明日の準備は万全か?」
クロフ「いちおうな。 テメェの邪魔さえなければ もっと万全だったがよ」
  クロフはそう言うと、
  手荷物から一枚の紙を取り出した。
  それは・・・、

〇古い洋館
  ・・・ある依頼書だった。
  「怪異? プロムトラッシュ城付近で
   行方不明者多数!」
   調査報酬:500,000G(ゴルド)
  ・・・魔性天秤の存在は
  一般的に秘匿されている。
  しかし世の理(ことわり)を
  少しでも知る者なら知っているのだ。
  最近多発する行方不明のほとんどは
  「能力者」によるものである、と。

〇西洋の街並み
  しかしそれを知っていても、
  対抗できるのはやはり
  魔性天秤で能力を得た者のみ。
  ゆえにクロフは、街を巡って
  そういった依頼を集めているのだ。
「にしても報酬、五十万か。 山分けでも四十万だな・・・」
クロフ「言ってろ。 お前の取り分なんざ、ねぇよ」
  五十万ゴルドは、ひと月に貰えれば
  中々の高給取りと言われるほどの金額。
  それをたった一日で稼げるのは、
  普通の労働と比べて破格の報酬だろう。
  だが・・・、
  クロフの目的はそこではなく、他にある。

〇黒背景
  それは「ウツシマ」の抹殺だ。
  彼女はクロフと同化してしまっており、
  普通の手段で殺すことはできない。
  だからこそ、
  うまくウツシマだけを殺すことができる
  「能力者」を捜す必要があるのだ。
  例えば、人間を傷つけず、
  悪魔だけを殺せるような「能力」・・・
  そんな「能力者」がいれば、
  クロフはウツシマとおさらばできる。
  しかし、それはウツシマも同じこと。
  ウツシマとしても、クロフを抹殺して
  自由の身になりたいと思っていた。
  そう、この二人はお互いに
  お互いを殺したいと考えている。
  そしてそれを実現できるような
  「能力者」を日々捜し求めているのだ。

〇西洋の街並み
クロフ(・・・今回も賭けになるが、 まあ仕方がない)
クロフ(最終的にあの女を殺してくれるなら どっちでもいいからな)
  クロフはそのまま、宿へ向かった。
  ・・・

〇空
  翌日・・・

〇古い洋館
  [プロムトラッシュ城]
クロフ「・・・ここだな」
クロフ「しっかし、こんな僻地で 行方不明者とはなぁ・・・」
「わざわざ来る人間がいたんだろうな。 きっとお前のような物好きなのだろう」
クロフ「チッ、減らず口が・・・」
  ・・・
  言い合いもほどほどに、
  クロフは玄関まで歩いて扉に手をかけた。

〇洋館の玄関ホール
  [プロムトラッシュ城]
  エントランス
クロフ(人の気配は・・・)
クロフ(・・・いるな)
  クロフは咄嗟に
  銃を取り出せるように、
  かつ、すぐに逃げられるように
  心の準備をしていた。
  ・・・「能力者」同士の戦闘は
  数手で終わることも珍しくない。
  ゆえに、すぐ殺せる場合は戦闘開始、
  そうでないなら、
  手の内を見せる前に逃走が基本だ。
  ・・・
「お客様でしょうか?」
クロフ「・・・!」
クロフ(男の声・・・)
???「本日はどのようなご用ですか?」
  クロフは念のため、
  後ろを横目で見てから答える。
クロフ「・・・「能力者」に会いに来た」
  ・・・
???「申し遅れました」
ティザミ「わたくしの名はティザミ。 どうぞお見知りおきを」
クロフ「・・・どういうつもりだ?」
  「能力者」に会いに来た、とは
  一種のカチコミ宣言である。
  しかし、ティザミと名乗った男は
  それを聞いて何故か自己紹介をした。
  どうにも言動が不自然だが・・・
ティザミ「いえ、わたくしに免じて ここはお帰りいただこうと思いまして」
ティザミ「・・・貴方をお嬢様に 会わせるわけにはいきませんからね」
クロフ「・・・フン。なるほど、上等だ」
  「お嬢様」。つまりそいつが
  「能力者」なのだろう。
  クロフはそう判断し、
  逃げの道を捨てることにした。
クロフ「よし・・・」
クロフ「ウツシマ、後は任せた」
  ・・・

〇黒背景
ウツシマ「・・・おい、腰抜け」
クロフ「それはお前だって言ったろ? 早く出てこいよ」
クロフ「それとも俺が 無抵抗で殺されるのを待つか?」
  クロフとウツシマは同化している。
  いわば、運命共同体。
  ゆえに、クロフが死ねば、
  ウツシマも死ぬこととなるのだ。
ウツシマ「その口振り、 本当に動く気が無いんだな」
ウツシマ「ハッ、まあいい」
ウツシマ「退屈はカンを鈍らせるからな・・・ 今回は出張ってやろう」
  ウツシマは「覚えてろ」と
  言ってやりたいところだったが、
  つい昨日クロフがそう言っていたことを
  思い出し、同レベルに落ちるのを嫌い、
  素直に出ていった。

〇洋館の玄関ホール
ウツシマ「ティザミと言ったか。 腕は立つようだ、私が相手になろう」
  ウツシマはそう言い、
  空中から「刀」を取り出した。
ティザミ「・・・ウツシマ、というのは 貴女のことでしょうか」
ウツシマ「ああ、そうだ」
ティザミ「ではウツシマ様、貴女をこの先に 通すわけには参りませんので・・・」
ティザミ「・・・お覚悟を」
「待ちなさい」
ウツシマ「・・・!」
ティザミ「・・・」
ティザミ「ダニーカお嬢様。 いかがなさいましたか?」
ダニーカ「別になにも。 ただ、アタシは見物したいだけ」
ダニーカ「さ、戻って始めなさい!」
ティザミ「・・・かしこまりました」
ティザミ「ではウツシマ様。 ・・・改めて、お覚悟を」
ウツシマ「いいだろう」

〇黒

〇洋館の玄関ホール
ウツシマ「フッ・・・」
  ウツシマはティザムを斬ろうとしたが、
  途中で刀に裏拳を当てられた。
  それにより剣の軌道がズレて
  ウツシマに隙ができてしまい・・・
  追撃を察知し、後ろに飛び退いたのだ。
ウツシマ「まあ、やるな・・・ 力を抜きすぎたか」
ウツシマ「ならば、次はどうだ?」

〇黒

〇洋館の玄関ホール
  ・・・
  カラーン・・・
ウツシマ「・・・!」
  再度刀を振るったウツシマだったが、
  同じように拳によって防がれた。
  そしてそれどころか、今度は
  刀を弾き飛ばされてしまったのだ。
ティザミ「・・・」
ウツシマ「・・・随分と舐めたマネをしてくれるな?」
  今、ウツシマの手に刀は無い。
  そしてティザミは素手だが、
  元々持っている拳が武器のようなもの。
  つまり武器を持っていない
  ウツシマが不利な状況・・・
ティザミ「ぐああっ!!?」
ウツシマ「それとも、老衰で判断力が鈍いのか?」
  ・・・ではない。
  ウツシマの手には、
  吹き飛ばされたはずの刀があった。
ウツシマ「せっかく見せてやったのにな。 ・・・刀を取り出すところを」

〇洋館の玄関ホール
ウツシマ「ティザミと言ったか。 腕は立つようだ、私が相手になろう」
  ウツシマはそう言い、
  空中から「刀」を取り出した。

〇洋館の玄関ホール
ウツシマ「・・・お前が刀を弾いた瞬間、 実に隙だらけだった」
ウツシマ「だから斬らせてもらった。 それだけのことだ」
ティザミ「ぐ・・・ 小癪な・・・!」

〇洋館の玄関ホール
ダニーカ「なかなか強いのね、あの女・・・」
ダニーカ「援護するわ、ティザミ」
  ダニーカはそう言うと、
  手元にドーナツを作り出した。

〇洋館の玄関ホール
ウツシマ(っ! ・・・悪魔の気配)
ウツシマ(手にドーナツ・・・? あの小娘、なにをする気だ)

〇洋館の玄関ホール
クロフ「・・・ッ!」
クロフ(なんだ、この感覚は・・・!?)
クロフ(身体の中を縛られているような、 これは・・・)
ダニーカ「あーん」
  ダニーカがドーナツをひとかじり。
  すると・・・
クロフ「ぐはあっ!!?」
  ・・・クロフは血を吐き、
  その場に崩れ落ちた。

〇洋館の玄関ホール
ウツシマ「ぐ・・・あ・・・っ」
  そして、クロフと同時にウツシマも
  血を吐き、しゃがみこんだ。
ティザミ「お嬢・・・、様・・・っ」
  敵が倒れたのを見たティザミは
  懐から小瓶を取り出し、中身を飲んだ。
ティザミ「・・・」
ティザミ「ありがとうございます」
  すると、ウツシマに斬られた傷が
  何事も無かったかのように治った。
ダニーカ「んー。おいしー!」
ダニーカ「・・・」
ダニーカ「あーあ」
ダニーカ「やっぱ、ひとくちで 「こうなっちゃう」の、つまんないなぁ」
クロフ「く・・・そ・・・っ」
クロフ(なにが・・・起きた・・・? まるで身体を「喰われた」ような・・・)
クロフ「・・・うっ!」

〇黒
  ダニーカ・プロムトラッシュが
  魔性天秤(デビルズリブラ)で手に入れた
  「能力」・・・、
  それは、相手の臓物とリンクした
  ドーナツを作り出すことができる力。
  作り出されたドーナツを食す。
  それだけで、相手の内臓は
  グチャグチャに潰されてしまうのだ。

〇洋館の玄関ホール
  そして、
  ウツシマとクロフは同化している。
  ゆえに1人を対象とする攻撃も、
  2人同時に受けてしまうのだ。
ウツシマ「こ、こんな・・・、もの・・・」
  今、ウツシマはクロフの外に出ているが、
  これは彼女自身の力によるもの。
  一時的に取り憑いた相手の身体から
  離脱することができる、
  というものなのだが・・・
  大きなダメージで維持できなくなり、
  クロフの身体へと戻っていった。
  ・・・魂が滅びたわけではないが、
  クロフが死亡してしまえば
  ウツシマも同じ運命を辿ることになる。
  そして、ダニーカは・・・

〇洋館の玄関ホール
ダニーカ「あーん」
  ドーナツを歯で千切ろうとしていた。
  クロフとダニーカの距離は
  離れており、当然・・・
ダニーカ「ぱくっ」

〇洋館の玄関ホール
  ・・・間に合う道理などない。
  ・・・
ダニーカ「あーあ。動かなくなっちゃった」
ダニーカ「あーん」
  ・・・ぱくり。
  そしてダニーカは、
  残り半分のドーナツも食べ終えた。
  ・・・・・・
  ・・・クロフは微動だにしなかった。
  当然だろう。彼は身体の内側を喰われ、
  壮絶な痛みとともに意識を手放していた。
ダニーカ「・・・ごくん」
ダニーカ「じゃあティザミ。 後片付けはお願いね」

〇黒
  ・・・その時。

〇洋館の玄関ホール
ティザミ「うぐッ!?」
クロフ「・・・」
クロフ「悪ぃな。これが俺の「能力」だ」
  ・・・つづく

次のエピソード:第2話 VSお菓子と城のお嬢様・後編

コメント

  • 悪魔と人間が一つの体に同居していて互いを殺したがっているという極限の設定に痺れました。それにしても、ダニーカの能力の前では誰も文字通り手も足も出ませんよね。この窮地をクロフ&ウツシマがどのように脱したのか、続きが気になります。

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