銃刀の魔性天秤(デビルズリブラ)

ぐぅ先

第2話 VSお菓子と城のお嬢様・後編(脚本)

銃刀の魔性天秤(デビルズリブラ)

ぐぅ先

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〇洋館の玄関ホール
  前回のあらすじ!
  ダニーカがドーナツを食べたら、
  この男、クロフの内臓は
  グチャグチャにされました。
  でもクロフは生きてました。
  そしてクロフはティザミを撃ちました。
  以上!

〇洋館の玄関ホール
クロフ「悪ぃな。これが俺の「能力」だ」
ティザミ「ぐ、ぐおぉ・・・っ!」
  ・・・ティザミはその場に倒れた。
ダニーカ「なっ・・・!」
クロフ「足を撃っただけだ。 別にすぐ死にゃしねぇよ」
ダニーカ「コイツ・・・ッ!」
「お、お嬢・・・、様・・・」
ダニーカ「まだ痛い思いをしたいのね。 だったらお望み通り・・・」
ダニーカ「またグチャグチャにしてやる!」
ダニーカ「・・・!」
クロフ「うぐっ・・・!」
  ダニーカがドーナツを食べると同時に、
  クロフは血を吐き出した。
  この血はどう見ても偽物ではない。
  血液特有の臭いも漂っている。
ダニーカ「もぐもぐ・・・。 ・・・このっ!」
  ・・・そして、あっという間に
  残りのドーナツも食べ終えた。
「ぐはあぁッッッ!!!」
  クロフはまたも吐血した。
  ・・・だから、このドーナツが
  クロフ以外の内臓と繋がっているだとか、
  なんらかの手段でダメージを
  無効化しているだとか、ではない。
  間違いなく、クロフ自身が、
  死に至るほどのダメージを受けたのだ。
ダニーカ「ふん! いいザマね!」
  ・・・だが。
クロフ「クソが・・・」
  それでも、クロフは立ち上がった。
ダニーカ「な、なんで・・・ッ!?」
クロフ「これが俺の能力だって言ってるだろ」
クロフ「あー・・・、マジで痛ぇ」
  そう言い、
  クロフはダニーカへ銃を向ける。
クロフ「まー・・・、オレの感じた痛みを、 少しでも受けることだな」
  ダニーカへ向けて銃弾が撃ち放たれる。
  しかし・・・
ダニーカ「・・・」
ダニーカ「・・・え?」
  撃たれる瞬間、倒れていたティザミが
  クロフに対して足払いをした。
  そのせいで照準がずれて、
  ダニーカへの直撃は免れたのだ。
ティザミ「・・・お、お嬢様を、 傷つけは・・・、させない・・・っ!」
クロフ「ったく、めんどくせぇ・・・」
ダニーカ「まさか、私を殺そうとするなんて、 許せない・・・!」
ダニーカ「貴方は死なないみたいだけど、 でも、ダメージは受けてるようね」
ダニーカ「だからまた食べて、何度でも グチャグチャにしてやるんだから!」
  ダニーカはまた、ドーナツを作り出す。
  それを、2人とも注視していた。
  クロフは当然として、何故だか
  ティザミもその様子を注視していた。
  そしてティザミは、
  ダニーカへ手を伸ばし・・・

〇黒

〇洋館の玄関ホール
ティザミ「ぐおおおおおおおッッッ!!!?」
  ・・・ポトッ。
  なんと、ティザミが伸ばした「腕」は
  ウツシマにより「切断」された。
  その腕は、勢いにより吹き飛び、
  離れた位置に着弾したのだ。
ウツシマ「させると思ったか? 呆け老人め」
  再三の話だが、
  クロフとウツシマは同化している。
  ならば、クロフが復活した場合、
  ウツシマもまた復活していて当然なのだ。
ウツシマ「思ったとおり、お前が 細工をしていたのだな・・・」
ウツシマ「あのドーナツに」

〇洋館の玄関ホール
  ・・・少しだけ前のこと。
ウツシマ(っ! ・・・悪魔の気配)
  この時・・・
  ウツシマが感じた「悪魔の気配」とは、
  ダニーカのものではなかった。
  この、ティザミという男から
  感じたものだったのだ。
  ・・・どういうことか。
  ダニーカは、最初から
  悪魔の気配を放っていた。
  ゆえに、新たに気配を感じたのなら、
  それはダニーカのものではない。
  ウツシマはダニーカのほうではなく、
  ティザミのほうの気配を感じ取ったのだ。

〇洋館の玄関ホール
  ・・・そしてウツシマは、
  ティザミも「能力者」であること。
  そして、その「能力」で
  ダニーカになんらかの支援をしたこと。
  この2つを見抜いていた、
  というわけである。
  ・・・それを邪魔したことにより、
  どうなったか。
  ダニーカの手には、彼女の「能力」で
  ドーナツが作り出された。
  この、黒く濁ったドーナツが。
ダニーカ「あーんっ」
  ヌチャッ・・・!
  怒りのあまり、ダニーカはそのことに
  気づいていなかった。
ダニーカ「・・・ッ!!?」
  本来ならとても甘くておいしい
  ドーナツなのだろう。だが・・・
ダニーカ「うううううううううッ!!!?」
  とてもじゃないが、おいしいものを
  食べたような様子ではなかった。
  ・・・
  それは凄まじく不味いものか、
  本能的に食べるのを拒否したのか・・・
  ダニーカは
  その場にうずくまってしまった。
ウツシマ「ふむ、やはりな・・・」
ウツシマ「他者へ、たったの一手間で致命傷を与え、 なおかつ「おいしい」思いをする・・・」
ウツシマ「悪魔の力だぞ? そんなに都合良く、 得しかしない効果にはならん」
ティザミ「お嬢様・・・、お嬢様・・・ッ!!」
ウツシマ「たいていは、死ぬほど不味いものを食い 初めて致命傷を与えられる・・・」
ウツシマ「そして・・・」
ダニーカ「うう、うううううううう~~ッ!!」
  涙目になったダニーカは、
  なにかを吐き出そうとしている。
  だが・・・、身体が吐き出すことを
  拒んでいるようだった。
  本能から飲み込むことを拒絶し、
  しかし、身体が吐き出すことを拒絶。
  と、なると・・・。
  その不味い味は口の中に残り続ける。
  ・・・不味い味の正体とはなにか。
  ダニーカがドーナツを食べた時、
  クロフの内臓がグチャグチャとなった。
  これは、ドーナツとクロフの内臓が
  繋がっていたためである。
  であるなら今、ダニーカの口内には
  「人間の内臓」と同じものが・・・
ウツシマ「多くの場合、その不味いものを 最後まで食べきることがワンセットだ」
ウツシマ「・・・そして。まだ、 ひとくちかじっただけだな?」
ウツシマ「はっはっは! いいザマだな! 私を殺そうとした報いだ」
ティザミ「な、なんてことだ・・・!」

〇洋館の玄関ホール
  ・・・
  [プロムトラッシュ城 数か月前]
ティザミ「・・・」
ティザミ(旦那さま亡き今、お嬢様を守れるのは わたくしだけ・・・)
ティザミ(しかし、わたくしは老い先短い身。 いつか守れなくなる日がやってくる)
ティザミ「やはり・・・、アレに頼るしか ないようですね」

〇豪華な部屋
  ティザミは、とある部屋に入る。
  そこには、引き出しを鎖と鍵で
  強固に封じられた化粧台があった。
  そして、その鍵を外すと・・・
ティザミ「これが・・・!」
  かすかに禍々しい気を放つ、金色の天秤。
  そこにあったのは、魔性天秤
  (デビルズリブラ)と呼ばれるものだ。
ティザミ「これが、願いを叶えるという天秤・・・」
ティザミ「・・・」

〇黒背景
「お嬢様に・・・、ダニーカお嬢様に 力をお与えください・・・!」
  ・・・
  ・・・願いを聞いた

〇魔界
  ティザミは目を開けると、
  周囲が様変わりしていたことに気づいた。
ティザミ「こ、これは・・・!」
  お前の望むとおり・・・、
  ダニーカという娘へ能力を与えてやる
  ・・・確かに、声が聞こえた。
  しかし、辺りを見回しても、
  どこにも誰の姿も無い。
ティザミ「貴方は・・・、貴方はいったい・・・!?」

〇豪華な部屋
ティザミ「・・・」
ティザミ「ハッ・・・!」
  気がつくと、元の部屋にいた。
  ・・・白昼夢でも見たのか、と思う反面。
  ティザミは現実に居たと自覚する。
ティザミ「『ダニーカ・プロムトラッシュへ  「能力」を与える』・・・」
ティザミ「それが、わたくしの「能力」・・・」
  ティザミには覚えのない記憶・・・、
  否、「情報」が植え付けられていた。
  あの声が発した内容どおりの、
  異質で鮮明な情報が。
  ・・・その日はそれ以外、
  何事もなかった。
  しかし、翌日・・・

〇黒背景
  ダニーカは、
  母の作るドーナツが好きだった。
  だが、始めに母が亡くなり・・・、
  それから一年で父が死んだ報せを聞いた。
  残されたのは、
  執事のティザミただ一人だった。
  そして、失意の中にいたダニーカへ、
  さらなる不幸が訪れることになる。

〇洋館の玄関ホール
  当主亡きプロムトラッシュ城へ、
  強盗が入り込んできたのだ。
  ダニーカの父の死は、公の事実では
  なかったのだが、どこから漏れたのか。
  ともかく、武器を持った男が
  ダニーカの前に現れたのだ。
  ・・・
  ・・・泣くことしかできないダニーカは
  最期に、ドーナツを食べたいと願った。
  そして、死にたくない、死にたくない、
  死にたくない・・・
  ・・・
  ・・・コイツが死んじゃえばいいのに。
  その時、駆けつけたティザミは
  彼女の手に黒いドーナツを見つけた。
  そんなティザミが一瞬だけ驚いた時・・・
  ・・・ダニーカは、
  臓物のドーナツを作る能力を得た
  そして、お前の新たな能力は、
  その臓物を変化させるものだ
ティザミ(こ、この声は・・・!)
  せいぜい、そいつが血肉を喰らわぬよう、
  見張り続けるがいい・・・
  ・・・
ティザミ「・・・ハッ!?」
  気がつくと、ティザミの手は勝手に動き、
  ドーナツの材質を変化させていた。
  それはティザミも見覚えのある、
  ダニーカの母がよく作っていたもの・・・
ダニーカ「あーん」
  そしてその直後、ダニーカは無意識的に
  ドーナツをひとくち食べた。
  すると・・・、そう。
  強盗は血を吐き出し、倒れた。
ダニーカ「・・・あはっ」
ダニーカ「あはははは! あはははははは!!」
ダニーカ「すごーい! なにこれー?」
ダニーカ「あーん」
  ・・・間もなく、強盗は息絶えた。
  そして・・・、
  以降もプロムトラッシュ家の遺産を狙い、
  多くの盗人が襲撃してきた。
  だが、今日までダニーカとティザミは
  2人とも生きている。
  ・・・そこでなにがあったかは、
  言うまでもないだろう。

〇洋館の玄関ホール
ダニーカ「うぅぅぅッッ・・・! うううううぅぅぅぅぅッ!!」
  ・・・ごくん。
  ダニーカはようやく、ひとくち分の
  「ドーナツ」を飲み込むことができた。
  ・・・それは約40度の熱と、
  強烈な臭み、粘土より不快な食感。
  そんなものと格闘したダニーカは、
  サウナにいたかのように汗だくだった。
  だが・・・、まだ終わりではない。
ダニーカ「いや・・・、いやぁぁぁ! 食べたくない、食べたくないッッ!!」
  ダニーカの「能力」の代償は
  「作ったドーナツは必ず食べきる」こと。
  これは絶対的ルールで、たとえ
  食べるのを拒もうとしても・・・
ダニーカ「・・・んぐッ!?」
  因果を修正するため、身体が勝手に
  動き出し、ドーナツを咀嚼する。
ティザミ「お嬢様・・・、お嬢様ぁぁぁっ!!」
  ティザミはそんなダニーカを見て、
  這いつくばってでも近寄ろうとする。
  ・・・しかし。
ティザミ「ぐあっ!」
  ウツシマはティザミの横腹へ、
  蹴りを入れた。
ウツシマ「余計なことはするなよ? お前を 殺さなきゃいけなくなるからな」
ダニーカ「ううぅぅぅぅッッッ!!!」
クロフ「ウツシマのヤツも、趣味が悪ぃな・・・。 わざわざ蹴る必要も無ぇだろうに」
クロフ「・・・ま。せめてお前は すぐに殺してやるよ」
  クロフはダニーカの胸ぐらを
  左手で掴み上げる。
  そして、今度は外すことのないよう、
  銃口をダニーカの眉間に密着させた。
クロフ「・・・あばよ」
  クロフは引き金を引くと同時に
  左手を離し、ダニーカは勢いで浮いた。

〇黒背景
  ・・・少なくとも、
  ダニーカの目線からは即死ではなかった。
  まず額に猛烈な熱さと固い痛み。
  そして固い痛みは、頭を通り抜ける。
  すると・・・、口の中の不快感は
  溶けるように無くなっていった。
  さらには、手に持っていたはずの
  食べ残したドーナツも、無くなった。
  「能力」の代償で、手から離すことが
  できなかったドーナツが、だ。
(・・・ああ。アタシ、 解放されたのね)
  死ぬ間際は、
  時間の流れを遅く感じるらしい。
  ダニーカは、それを全身で実感していた。
(でも、せめて・・・)
(最期に、お母様に・・・、 会いたかったな・・・)

〇洋館の玄関ホール
  ・・・ダニーカは宙を舞う。
  彼女は自分が撃たれたことと、それが
  致命的な一撃であることを自覚していた。
  ・・・きっと、落っこちてる間に、
  アタシの意識は消えて無くなる。
  これが、本当に最後・・・
  ・・・
  バタン!
ダニーカ「痛ッ!!」
  ・・・
ダニーカ「・・・」
ダニーカ「・・・あれっ!?」
  ダニーカは尻餅をついた姿勢で、
  周囲を見回していた。
  ・・・周囲を見回した?
  死んだはずなのに?
ティザミ「・・・お、お嬢様ッ!?」
  「少なくとも
   ダニーカ目線で即死ではない」。
  これは、たとえ「誰がどう見ても
  即死ではない」としても嘘にならない。
  つまり・・・
ダニーカ「い、生きてる・・・?」
  多少の血液は付着しているものの、
  ダニーカは傷ひとつなく無事だった。
ダニーカ「なんで・・・? なにが起きたの・・・?」
クロフ「だから言ってるだろ? これが俺の「能力」だって」
クロフ「・・・まー、まだ「能力」について なんも言ってなかったがな」
  クロフはダニーカの無事を確認し、
  銃をしまう。
クロフ「もう、怖いものはねぇから説明してやるよ」
クロフ「俺の「能力」は・・・」
クロフ「「女に殺されない」ことだ。 そしてその代償は、」
クロフ「「女を殺せない」こと」

〇魔界
  クロフが魔性天秤に願おうとしたのは、
  「誰からも殺されない」ことだった。
  しかし、強い効果に付随する代償は、
  それよりも重くなる傾向にある。
  そのことをクロフは知っていたので、
  彼が願ったのはその「半分だけ」。
  その結果・・・、
  世界の半分から殺されない、すなわち
  「女に殺されない」という「能力」。
  それがクロフに与えられることになった。

〇洋館の玄関ホール
クロフ「要するに、俺はお前を殺せない」
クロフ「で、お前も俺を殺せない。 ってわけだな」
  魔性天秤の「能力」、特にその代償は、
  世の理を無視して作用することが多い。
  実際、クロフはダニーカの「能力」により
  内蔵を潰されていた。
  しかし「内臓が潰れていると死ぬ」→
  「女であるダニーカが内臓を潰した」→
  「ダニーカがクロフを殺した」
  となるところを、
  「クロフは女に殺されてはいけない」
  という代償で上書きされ、
  クロフの内臓は潰される前の状態に
  復元され、結果、死ななかったのである。
クロフ「殺されないってわけだから、 最初からお前は怖くはなかった」
クロフ「むしろ驚異だったのは・・・」
クロフ「・・・不確定要素のあの男だけだった、 ってことだ」
ダニーカ「ティ、ティザミ!? う、腕が・・・!?」
  ティザミの腕はウツシマにより
  切り落とされてしまっていた。
  ・・・ダニーカはようやく、
  そのことに気がついたのである。
ティザミ「・・・お、お嬢様が、 ご無事であれば・・・!」
ダニーカ「なに言ってるの!? どうして、こんなことに・・・!!」
ウツシマ「私が斬ったからだな」
ダニーカ「・・・!!」
ダニーカ「よくも・・・、 よくもティザミを・・・!」
  ・・・ダニーカは手に力を込める。
  ・・・
ダニーカ「・・・あれ?」
  ウツシマを対象とし、いつものように
  ドーナツを作ろうとしたのだが・・・
ダニーカ「出ない・・・?」
クロフ「どうやら、今回も上手くいったようだな」
ダニーカ「お前、いったい アタシになにをしたの!?」
クロフ「「殺してやる」って言っただろ? だから死んだんだろうな」
クロフ「お前の「能力」が」
ダニーカ「え・・・?」

〇黒
  ダニーカの性別は、
  見た目どおり女である。
  だが、後天的に魔性天秤の力で
  「能力」を得ていた。
  後天的に、ということは、
  それはダニーカ本来のものではないのだ。
  ゆえに、「『能力』も女」
  というわけではない。
  ・・・そこで、「女を殺せない」男が
  ダニーカを殺害した。
  「女を殺せない」ということは、
  言い換えれば「女以外を殺せる」。
  つまり・・・、
  クロフの銃により
  ダニーカの「能力」だけが殺されたのだ。

〇洋館の玄関ホール
クロフ「よかったな。 あんな物騒な「能力」が無くなって」
ダニーカ「「よかったな」って、 ティザミの腕が・・・!」
クロフ「・・・「プロムトラッシュ」」
クロフ「・・・「プロムトラッシュ」って 製薬会社の社長だったんだろ?」
クロフ「ティザミだったか、 あの男が飲んでた薬も、覚えがあるぞ」

〇洋館の玄関ホール
ティザミ「お嬢・・・、様・・・っ」
  敵が倒れたのを見たティザミは
  懐から小瓶を取り出し、中身を飲んだ。
ティザミ「・・・」
ティザミ「ありがとうございます」

〇洋館の玄関ホール
クロフ「アレはたぶん「エリクシル剤」、 どんな怪我でも治る魔法薬だ」
クロフ「欠損でも治るって聞いたことがあるが、 だからこそ高額だったはず」
クロフ「・・・それを、少し斬られた程度で あの男は使っていた」
クロフ「ってことは、まだ懐にあるんだろ?」
ティザミ「く・・・」
  ティザミはクロフが言っていたとおり、
  懐から薬瓶を取り出した。
  ・・・ティザミはウツシマの様子を
  うかがっている。
ウツシマ「・・・なんだ? 私はもう邪魔などしないぞ」
ウツシマ「お前が私を殺したい とでも言うなら、返り討ちにしてやるが」
  ウツシマはクロフの精神内で、
  エリクシル剤のことを聞いていた。
  ・・・実は本来、ウツシマは
  好き好んで人を殺そうとしない性格だ。
  しかし、薬で完治できると踏んだので、
  容赦なく腕の切断や蹴りを実行したのだ。
ティザミ「・・・」
  ウツシマが敵意を捨てたと分かり、
  薬瓶の蓋を取り、中身を一気飲み。
  するとなんと、
  切り落とされた腕が元に戻った。
ダニーカ「ティザミ! 良かった・・・」
クロフ「さーて、これで一件落着だな。 俺は去らせてもらう」
ティザミ「お待ちなさい!」
クロフ「なんだ?」
ティザミ「貴方は、ダニーカお嬢様を 捕らえに来たのではないですか?」
クロフ「あー・・・、そうだな」
ティザミ「ならば、代わりにわたくしを 連れていってほしいのです」
ティザミ「お嬢様が「能力」に目覚めたことは、 わたくしに全責任があります」
クロフ「・・・ああ、そうなんだな。 じゃあ」
ティザミ「・・・!」
  クロフは顔色ひとつ変えず、
  入り口のほうを向く。
ティザミ「何故です! これは わたくしが招いたこと! であれば・・・」
クロフ「・・・お前さん、 なんか勘違いしてねぇか?」
クロフ「なら聞くが、そこのお嬢様は なにをしたんだ?」
クロフ「この近辺で行方不明者が続出してた らしいが、それがそいつのせいだと?」
ティザミ「それは・・・。 ・・・その、お嬢様が」
クロフ「んじゃ、その手口は? なにより、「証拠」は?」
クロフ「そのお嬢様が、どう人を殺したのか 「証明する方法があるのか」?」
ティザミ「・・・!?」
  ダニーカはこれまで「能力」により、
  押し入る強盗たちを殺害してきた。
  しかし「能力」を殺された今、
  その手口を証明する方法が無い。
  そして「どう殺したのか」が不明なら
  犯人と断定することができず・・・、
クロフ「なら、捕らえるべき悪人はいない。 そういうことだ」
クロフ「・・・じゃあな」
ウツシマ「・・・お前のことを斬ったり蹴ったり、 無礼な行いを何度もした」
ウツシマ「が、詫びる気などカケラも無い。 せいぜい、私のために生きていろ」
ティザミ「・・・待ってください。 わたくしは貴方たちを殺そうとした」
ティザミ「何故、なにもせず去ろうとするのです」
ウツシマ「・・・良いことを教えてやろう」
ウツシマ「悪魔は、人間の命を糧として生きている。 私にとってはな・・・、」
ウツシマ「食い物が減らないほうがいいんだ。 だからムダに殺す気などない」
ウツシマ「・・・と、いうわけだ。 ではな」
  ウツシマはクロフの体内に戻り、
  クロフは外へ出ていった・・・。

〇空
  ・・・

〇草原の道
  [どこかの道]
  クロフは1人で、開けた道を歩いていた。
「・・・ひとつ、いいか?」
クロフ「あん?」
「私の報酬の四十万(ゴルド)、 支払いはいつになりそうだ?」
クロフ「・・・なんの話だよ」
「あの依頼書の報酬の話だ。 ガキも男も捕らえなかっただろう」
「私が貰うはずの四十万、 どこから捻出するつもりなんだ?」
クロフ「あるわけねぇだろ、バカが。 お前が勝手に言ってただけだ」
「いやいや、私はそこまでバカではない。 報酬が出ないことくらい知っている」
「だから、お前が「身銭を切れ」 と言っているんだ」
「酒などという愚かしいモノに使う 端金(はしたかね)はあるのだろう?」
クロフ「そこまで金が欲しかったら、 あの男でも殺してれば良かっただろ」
「・・・」
ウツシマ「お前がいなければ、 あの2人の命を貰っていたがな」
ウツシマ「それにお前のことだ。私が殺しても、 死体を運ぶ気など無かっただろうが」
クロフ「俺は重い荷物なんて、ゴメンだからな」
クロフ「それに、取り憑いたのはお前の勝手だ。 頼んでねぇから、とっとと出てけ」
ウツシマ「・・・」
ウツシマ「・・・!」
ウツシマ「・・・よかろう」
ウツシマ「身銭を切らぬなら、 その身を切ってくれる!」
クロフ「上等だ、殺せるものなら殺してみろよ」
「死ね!!」

〇黒

〇草原の道
  ・・・しかし、クロフは女に殺されない。
  そして、女を殺すこともできない。
  いかに血を流し、致命傷を与え、
  どれだけ殺しても、互いに死なない。
「はぁ・・・、はぁ・・・っ!」
  無論、2人ともそんなことは
  嫌と言うほど理解している。
  だが、
  殺そうとせずにはいられなかった。
ウツシマ「死に晒せぇぇぇ!!!」
クロフ「お前がなぁぁぁ!!!」
  ・・・
  VSお菓子と城のお嬢様 おわり

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