第四話「暗記テスト(後編)」(脚本)
〇学食
久保桃子「小沼のバカ! 死ね! 犬はD、O、Gだって言ったでしょ! なんだよG、O、Dって! それは神だよ!」
小沼雄一郎「で、でもOは合ってたよ!」
久保桃子「はぁー。次元低っ!」
伊良部輝明「ダメだ・・・! こんな調子じゃ、二日後の テストで平均80点なんて取ることできない」
久保桃子「い、今の声は何・・・?」
小沼雄一郎「誰かが学校の外に出ようとしたとか?」
伊良部輝明「様子を見に行こう!」
〇田舎の学校
小沼雄一郎「高橋・・・! 鈴木も・・・!」
久保桃子「どういうこと? なんで二人が倒れてるの?」
伊良部輝明「死んでる・・・」
小沼雄一郎「嘘だろ!?」
久保桃子「そんな・・・どうしてこんなこと──」
楠木良太「俺が殺したんだよ」
伊良部輝明「! 楠木っ・・・!」
楠木良太「簡単な小テストをしたんだ。 学力を測るためにな」
楠木良太「結果・・・ こいつらは想像以上のバカだった」
楠木良太「二日後のテストでも、足を引っ張るだけだ」
伊良部輝明「それだけで殺したのか・・・!?」
久保桃子「ケダモノ! そんなの反則じゃない!」
楠木良太「サクマが言ったルールを覚えてないのか?」
楠木良太「他チームへの妨害行為は禁止されているが 裏を返せばチーム内なら問題ないということだ」
伊良部輝明「貴様っ・・・!」
楠木良太「あはは! 足切りだよ。 競争社会じゃ当然のことだろ」
楠木良太「お前もバカを二人も背負ったままだと 二日後には死ぬぞ」
小沼雄一郎「え! あ、バカって僕のこと・・・?」
楠木良太「じゃあな」
伊良部輝明「楠木・・・!」
小沼雄一郎「ね、ね、ねえ! 輝明くんは僕のこと殺したりしないよね? そんなことしないよね? 大丈夫だよね?」
伊良部輝明「当たり前だろ!」
久保桃子「なんなのよ、これ・・・ みんなどんどん死んじゃうし・・・ 私たちだって、明後日にはきっと・・・」
伊良部輝明「俺たちは大丈夫だ」
久保桃子「根拠のないこと言わないで。 もう無理。もう嫌・・・!」
伊良部輝明「ま、待て!」
〇学校の屋上
伊良部輝明「ようやく見つけた・・・ こんなところにいたのか」
久保桃子「来ないで・・・!」
伊良部輝明「教室に戻ろう。時間がない。 少しでも暗記をしたほうがいい」
小沼雄一郎「そ、そうだよ! 諦めちゃダメだ!」
久保桃子「あんたが言わないでよ! あんたが足引っ張ってるんでしょ!」
小沼雄一郎「うっ・・・」
伊良部輝明「言いすぎだ。 小沼は小沼なりに頑張ってるじゃないか」
久保桃子「こんな奴、ただの疫病神よ!」
伊良部輝明「俺たちはチームだろ? 一緒に課題を乗り越えるんだ」
伊良部輝明「暗記にはコツがある。 うまくやれば絶対大丈夫だ」
久保桃子「そんなこと言って・・・ あんたが楠木みたいなことをしないって 保証はどこにあるの?」
小沼雄一郎「! や、やっぱり輝明くんも 僕たちを殺すの!?」
伊良部輝明「誓ってもいい。そんなことしない」
久保桃子「私・・・ 楠木が言ってたことも少しわかる」
久保桃子「賢く生きている人って、 誰かを蹴落としても心が痛まない人だもん」
伊良部輝明「・・・頼む。俺を信じてくれ」
久保桃子「それ以上近づいたら飛び降りるから!」
久保桃子「あんたに殺されるなら 自分で死んだほうがマシ!」
小沼雄一郎「ちょ、ちょっと・・・!」
伊良部輝明「くっ・・・ダメだ。こんな調子じゃ、 楠木への復讐の前に殺される・・・」
伊良部輝明「よし、だったら──」
輝明は少し考え、地べたに座り込む。
伊良部輝明「・・・よしわかった。 今夜はとことん話そう。 勉強は明日からやればいい」
久保桃子「本気で言ってんの・・・?」
小沼雄一郎「じ、時間ないんだよね? 一つでも多くの 単語を覚えたほうがいいじゃん」
伊良部輝明「いや、それよりも大切なことがある・・・ 俺は二人から信頼されたい」
久保桃子「あんた・・・」
伊良部輝明「お互い、自分のことを話そう」
伊良部輝明「まずは俺から・・・ そうだな、小学生のとき、 教室でおもらしした話とかどう?」
小沼雄一郎「えー! 輝明くんでもおもらしとかするのー?」
久保桃子「・・・バカみたい。私、知らないから」
伊良部輝明「二人とも、ありがとう」
伊良部輝明「俺は、この課題で試されているのは チームワークだと思う」
伊良部輝明「なんで学校という場所で、 集団で勉強するんだと思う?」
伊良部輝明「それはそのほうが、効果的だからだ」
久保桃子「どういうこと?」
伊良部輝明「互いに教え合い、時には競い合い、 補完し合うことで学びは何乗にもなる」
伊良部輝明「人類がここまで発展したのは、 個の力じゃない。集団の力だ」
小沼雄一郎「うーん。 よくわかんないけど、一人だと無理だけど 三人なら課題をクリアできるってこと?」
伊良部輝明「ああ、その通りだ」
小沼雄一郎「よーし、じゃあ僕、頑張るぞ!」
それから俺たちは
夜通し自分たちのことを語り合った
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