第五話「最後の六人」(脚本)
〇教室
小沼雄一郎「ディベート?」
久保桃子「つまり、話し合い・・・ 議論するってことでしょ」
サクマ「ええ。この場にいる六人で話し合って、 殺す人を一人決めてもらうのが 最終課題になります」
藤井美里奈「冗談でしょ・・・? 誰かが確実に死ぬってことじゃない」
山縣修一「そうだ! 理不尽だ!」
楠木良太「クックック・・・いいじゃねえか。 五人は確実に生き残れるってことだろ?」
サクマ「その通り。実に良心的なプログラムです」
伊良部輝明「バカげてる・・・! バカげているが・・・」
伊良部輝明「裏を返せば楠木に復讐する 最大のチャンスだ・・・!」
サクマ「ルールを説明しましょう。 明日から最終日までの三日間、 皆さんにディベートをしてもらいます」
サクマ「そしてこの中で社会に不必要だと 思う人を決めてもらいます」
サクマ「そして最終日。皆さんには投票用紙にその人物の名前を書いて投票してもらいます」
サクマ「一番、票の集まった人が その場で射殺・・・」
サクマ「というのはいつもの流れですね」
小沼雄一郎「あ、あの! もし得票数が並んだ場合は どうなるんですか?」
サクマ「得票数が並び、 一位が複数名いる場合・・・」
サクマ「該当者は全て死にます」
山縣修一「なっ! じゃあ極端な話、票が一票ずつ別れたら、 六人全員死ぬってことじゃないか!?」
サクマ「そうなりますね」
山縣修一「ふ、ふざけんな!」
サクマ「さっきの話を聞いてなかったんですか?」
サクマ「今回は五人が生き残れる 可能性もあるのです」
サクマ「心血注いで、 死ぬ気で話し合ってみてください」
サクマ「そうすれば、殺す人は一人でいいと 自ずとわかるはずです」
サクマ「なお二つ目の課題と同様、暴力などの 行為に及ぶことは禁止とします。 皆さんが使うのは、頭のみとします」
伊良部輝明「そうだ・・・! サクマの言う通りだ。 死ぬのは一人、生き残るのは五人・・・!」
伊良部輝明「だったら俺にとってこれ以上、 理想的な課題はない」
伊良部輝明「楠木良太・・・ あいつだけを殺すことができる──」
サクマ「さて、本日のプラグラムは終了です」
サクマ「二つ目の課題をクリアした皆さんには ご褒美があります。 今夜は楽しんでください」
〇田舎の学校
久保桃子「こんな状況で豪華な食事なんか出されても 食べる気しないわよ・・・」
小沼雄一郎「ね、ねえ・・・ 輝明君は最後の課題、どう思う?」
伊良部輝明「確率で言えば 6分の5は生き残れるが・・・」
伊良部輝明「残った5人は人殺しの十字架を 背負って生きることになる」
山縣修一「そ、そんなのが教育的って言えるかよ! なんなんだ、あのサクマってやつ!」
藤井美里奈「最悪・・・なんでこんなことに・・・」
伊良部輝明「考えよう。 もしかしたら、何か抜け道があるのかも。 全員で生き残れる方法が」
楠木良太「そんなものはない」
離れたところにいた楠木が、
骨付き肉に被りつきながら近寄ってくる。
楠木良太「甘い考えは捨てることだな」
伊良部輝明「くっ・・・!」
楠木良太「だいたい、お前にとってはこの課題、 うってつけじゃないか」
楠木良太「この中に殺したいほど憎んでいる奴が いるんだからな」
伊良部輝明「それは──」
小沼雄一郎「え? どういうこと?」
楠木良太「クックックッ・・・さあ誰だろうねえ」
小沼雄一郎「ね、ねえ。どういうことなの?」
山縣修一「そうだ。それに前から気になってたけど、 なんで楠木はこのプログラムについて 熟知してるんだよ?」
藤井美里奈「楠木が転校してきて、 そのすぐ後に輝明が転校してきて、 この変なプラグラムが始まった・・・」
藤井美里奈「それって全部 関係しているってことだよね?」
久保桃子「楠木は・・・ 過去にこの教育再生プログラムに 参加した生き残りなの」
山縣修一「はああ? なんだよ、それ!」
久保桃子「進んでこれに参加している イカれたジャンキーってこと」
藤井美里奈「嘘でしょ・・・? そんな奴いるの?」
伊良部輝明「俺も同じだ。 自ら進んでこのプラグラムに参加した」
小沼雄一郎「! 輝明君も!?」
伊良部輝明「俺の親友は・・・過去にこのプログラムに 参加して、楠木に殺されたんだ」
伊良部輝明「俺はあいつに復讐するためにここに来た」
藤井美里奈「なるほどね。それであなたみたいな エリートがこんなバカ校に来たのか」
久保桃子「ねえ。 最後の課題・・・ ディベートでしょ?」
久保桃子「話し合って殺す人を一人決めるんでしょ? だったら、もう、やること決まってない?」
小沼雄一郎「どういうこと?」
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楠の余裕はなんでしょうね。気になりますね。