第三話「暗記テスト(前編)」(脚本)
〇教室
楠木の手を掴み、睨みつけている輝明。
伊良部輝明「俺が相手になってやるよ」
楠木良太「てめぇ・・・」
サクマ「プログラム内ならともかく、それ以外の 時間に暴力行為は認められていません。 二人とも、席に戻ってください」
楠木良太「チッ。ほんの冗談だろ。ほら、放せよ」
伊良部輝明「・・・ふん」
サクマ「さて皆さん、 初日のプログラムは終了です」
サクマ「明日からは本格的な学びを 実践してもらいます」
サクマ「入り口で寝袋と食事を受け取ってください」
サクマ「どこにいても構いませんが、 学校の外には出ないように」
「・・・・・・」
サクマ「明日は朝九時にここに集合です。 遅刻したらどうなるかわかってますね」
〇学食
久保桃子「寝ないの?」
伊良部輝明「ああ。まだな」
久保桃子「携帯も使えなくなってたし、 学校の電話も全部ダメだった」
伊良部輝明「全プログラムが終わるまで、外との連絡は 取れないと思っていたほうがいい」
伊良部輝明「俺たちは課題を乗り切るしかないんだ」
久保桃子「ねえ。どうしてこのプログラムについて そんなに詳しいの?」
伊良部輝明「・・・過去に友達をこのプログラムで 亡くしたんだ。それで色々調べた」
久保桃子「そっか・・・それで──」
伊良部輝明「昼間はたまたまうまく行ったけど、 次はどうなるかわからない」
久保桃子「うん。昼間はありがとう」
伊良部輝明「お礼なんて別に・・・もう少しで 鬼にタッチされてたかもしれないし」
久保桃子「それもそうだけど、 楠木から助けてくれたでしょ?」
伊良部輝明「ああ・・・」
久保桃子「あいつもあんたと同じように、 少し前にここに転校してきたんだ」
久保桃子「でも、誰とも喋ろうとしない・・・ 変な奴なんだよ」
久保桃子「ぶっちゃけ私、あいつ嫌いでさ」
伊良部輝明「あいつは過去にこの教育再生プログラムに 参加したことがあるんだ」
久保桃子「うそ・・・? じゃあ、一人だけズルくない?」
久保桃子「もしかして 明日の課題も知ってるってこと?」
楠木良太「俺は何も知らない。 そんな面白くないことするか」
伊良部輝明「楠木・・・!」
楠木良太「俺は自分からこのプログラムに参加した。 このゲームを楽しみたくてな」
楠木良太「最初から勝てるとわかっている ゲームなんて面白くないだろ?」
伊良部輝明「ゲーム・・・?」
楠木良太「そうだ。退屈しのぎだよ」
楠木良太「死と隣り合わせのほうが 毎日ひりつく感じで楽しいじゃないか」
楠木良太「クックック」
伊良部輝明「貫地谷進を覚えているか?」
楠木良太「貫地谷? 誰だそいつは?」
伊良部輝明「過去の教育再生プログラム――バスケの 試合中にお前が追いつめて殺した男だ」
楠木良太「ああ、思い出した! あの間抜けな男か!」
楠木良太「フェアプレーにこだわって・・・ 俺は何度もあいつを潰してやった」
楠木良太「最後は足を引きずりながら コートを這いずり回ってたよ。 あはは」
久保桃子「最低・・・あんたって人間のクズよ」
楠木良太「人間は一皮むければみんなクズなんだ。 このプログラムを進めていけば、 お前もじきにわかる」
久保桃子「一緒にしないでっ・・・!」
伊良部輝明「楠木・・・俺は進のように甘くない。 お前に必ず復讐してやる」
楠木良太「ふん。やってみろ」
〇教室
サクマ「おはよう、皆さん。昨日は眠れましたか? 教育再生プログラム、二日目です」
サクマ「さて、さっそく 2つ目の課題を発表しましょう」
サクマ「内容は暗記テストです」
久保桃子「暗記・・・?」
サクマ「そうです。二日後の午後五時、 英単語のテストを行います」
サクマ「今から約50時間を有効に使って、 死ぬ気で英単語を覚えてください」
伊良部輝明「くそ・・・まただ。そんな課題で、 どうやって楠木を追い詰めればいいんだ」
久保桃子「ちょ、ちょっと待ってよ。 英単語の暗記って、何それ・・・ そんな課題なの?」
サクマ「ただの暗記テストじゃありません。 今回も死と隣り合わせの状況で、 死ぬ気で勉強してもらいます」
サクマ「日頃の生ぬるい暗記テストとは違います」
伊良部輝明「合格ラインがあるってことか・・・」
サクマ「その通り。二日後のテストで 80点以上取ってください」
サクマ「取れない方はその場で射殺します」
久保桃子「そんな・・・」
サクマ「なお、今回は三人一組のチーム戦です」
サクマ「チームの平均点が80点以上で 合格になります」
サクマ「不合格の場合は、連帯責任でチーム全員 死ぬことになりますのでご了承ください」
伊良部輝明「なっ・・・!」
サクマ「内容は中学生レベルなのでご安心ください」
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連帯責任、輝明の力が及ばない課題でピンチになりましたね。続きを読みます。