異世界家族〜転生してチート魔法を手に入れたのに、家族も一緒だから全然「異世界デビュー」できない件〜

フカダタクヤ

魔王を倒せば、異世界デビューできますか?(脚本)

異世界家族〜転生してチート魔法を手に入れたのに、家族も一緒だから全然「異世界デビュー」できない件〜

フカダタクヤ

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〇神殿の門
ナオト「魔王、これで終わりだ!」
魔王「ぐぁぁ!!」
魔王「おのれ転生の勇者よ」
魔王「この恨み必ず返してくれる」
ナオト「何度でもかかってこい」
ナオト「この世界の平和は俺が守る」
  異世界に転生して1ヶ月
  手に入れた「チート魔法」の力で、ついに
  俺たちは悪の魔王を倒した
  しかし、冴えない俺が「異世界デビュー」
  するには、まだ乗り越えるべき問題が・・・

〇謁見の間
ナオト「勇者ナオト、ただいま戻りました」
王「よくぞやってくれた、転生の勇者ナオトよ」
王「お主がいなければ、この国は3丁目の魔王によって滅ぼされていたであろう」
姫「3丁目の魔王は全治2ヶ月の重傷で現在、 病院に入院中」
姫「駅前の魔王と、たばこ屋の角の魔王も、 転生の勇者の力を恐れて沈黙してますわ」
ナオト「なんでこの世界には、こんなコンビニ感覚で魔王がいるんだよ」
王「これでしばらくは、この国にも平和が訪れる」
王「我々の兵士が束になっても敵わなかった魔王を簡単に倒してしまうとは・・・」
王「転生の勇者の固有スキル「異世界詠唱魔法」は素晴らしい」
姫「いえいえ、お父様」
姫「たしかに、ナオトさんの魔法は素晴らしいですが、最も恐るべきは使役する魔獣の凶暴さだと聞いておりますわ」
王「おぉ、そうであったな」
王「できればワシも、その魔獣を一目見て見たいのじゃが、召喚してくれんかの?」
王「もちろん、魔王を倒してくれた礼も兼ねて、褒美はお主の望むものを与えよう」
ナオト「い、いや、それは・・・」
姫「私からもお願いしますわ」
姫「ナオトさんが使役する魔獣・・・」
姫「「オカン」を私も見てみたいです!」
ナオト「そんな、人に見せるようなものでは・・・」
???「ナオト!」
ナオト「げっ、オカン」
オカン「あんたいつまで待たせんの?」
王「おぉ、これがオカンか」
王「なんと凶暴な」
  俺が「異世界デビュー」するために
  乗り越えるべき大きな問題・・・
  それは一緒に転生した「俺の家族たち」だ
オトン「王様、ナオトがいつもお世話になってます」
カホ「お兄ぃ、はやく行こ〜」
ナオト「もう少し待っててくれよ」
ナオト「あとちょっとだから」
オカン「そんなんばっか言うて」
オカン「あんた、ゲームも「あとちょっと」言うて、いつも全然やめへんやないの」
ナオト「それとこれとは別だろ」
オカン「お母さん、もう行くで」
オカン「これから今晩の宿探して、晩御飯も作らな あかんのに」
ナオト「あと、もう少しだって」
ナオト「今、王様がご褒美くれるって言ってるから」
オカン「ナオト!」
オカン「アホなこと言うてんと、はよ行くで!」
ナオト「オカン!」
ナオト「待ってくれよ〜」
姫「噂の魔獣オカン様」
姫「恐ろしく、力強いお姿でしたわ」
王「街中で暴れられても困る」
王「勇者ナオトには褒美として、魔獣オカンも 伸び伸びと暮らせる館を与えよう」

〇洋館の一室
  次の日
オカン「ナオト!」
オカン「いつまで寝てんの!はよ起き」
ナオト「いいだろ、学校もないんだから」
オカン「ダラダラしてんと、お父さん見習って早起きしなさい」
オトン「おはよう、ナオト」
ナオト「オトンはスーツなんて着てどうしたんだよ?」
オトン「異世界に来て1ヶ月」
オトン「無断欠勤が続いている会社は、クビになっているだろう」
オトン「お父さんは転職活動を始めようと思う」
ナオト「異世界の転職ってスーツでやるようなもん じゃねぇだろ」
ナオト「なんかこう、魔法使いとか、剣士とか、 そういうのじゃねぇの?」
オトン「父さんこう見えて、「請求書管理の魔術師」と会社では呼ばれてるんだぞ」
オトン「資格だって、ほら簿記一級」
ナオト「異世界に簿記が必要な仕事なんてねぇよ!」
オトン「それじゃあ、面接行ってきます」
オカン「行ってらっしゃい」
オカン「ナオト、あんた家おるなら買い物手伝ってや」
オカン「今日、道具屋が特売日やねん」
ナオト「あ、そーいや俺も用事あるんだった」
ナオト「そ、それじゃあ、オカン行ってきます!」

〇西洋の街並み
ナオト「ふぅ〜、危なっ」
ナオト「オカンの買い物に付き合わされてたら、命がいくつあっても足りねぇよ」
カホ「あ、お兄ぃ」
カホ「どこ行くん?」
ナオト「なんだ、カホか」
ナオト「お兄ちゃんは、「異世界デビュー」を果たすために、これから街の見回りに行くのだ」
カホ「暇なん?」
カホ「お兄ぃも、うちの友達と一緒に「タピオカ ポーション《回復薬》」飲みに行く?」
ナオト「その回復薬、ほんとに回復すんのか?」
ナオト「タピオカに栄養なんてねぇだろ」
ゾン美「カホち、誰この人?」
カホ「うちのお兄ぃ」
ゾン美「こんにちは〜!ゾンビのゾン美です」
ナオト「カホ、ずいぶん個性的な友達だな」
ゾン美「あはは、カホちと全然似てないじゃん」
ゾン美「ウケる!ちょっと待ってお腹痛い」
ゾン美「死ぬ、死ぬ〜」
ナオト「いや、お前はもう死んでるだろ!」
カホ「そんじゃ、お兄ぃ、うちらもう行くから」
カホ「フラフラしてんと、お兄ぃも友達つくりや〜」
ナオト「くそっ、カホのヤツ オカンに似てコミュ力は無駄に高いんだよな」
ナオト「俺にもそのコミュ力、少し分けてほしいぜ」
姫「ナオトさん?」
ナオト「ひ、姫!?」
ナオト「どうしたんですか?こんなところで・・・」
姫「あの日からずっと胸がドキドキして・・・」
姫「城を抜け出して、会いに来てしまいましたわ」
ナオト「姫様」
ナオト(これまで家族に邪魔されてきたけど、ついに俺も異世界デビューのチャンス?)
ナオト(姫のハートを射止めて、 ラブラブ異世界ライフの始まりだ!)
ナオト「姫様、立ち話もなんですから我が家へどうぞ」
姫「今日はオカン様いらっしゃらないのですか?」
ナオト「オカンは今買い物に出かけてますよ」
ナオト「さぁ、さぁ、お入りください」

〇洋館の一室
ナオト「それで、オカンが屈強なプロレスラーたちを次々と薙ぎ倒して、最後の卵1パックをゲットしたんですよ」
姫「オカン様のお話は本当におもしろいですわ」
ナオト(よっしゃ、姫にウケてる)
ナオト(これって、いい感じなんじゃね?)
姫「あの、私ナオトさんにお聞きしたいことが」
ナオト「な、なんでしょう?」
姫「実は・・・」
オトン「ただいま!」
ナオト「オトン!?」
オトン「聞いてくれ、ナオト!」
オトン「「面接で何かスキルはありますか?」って 聞かれたから」
オトン「「前職で鍛えた会計処理スキルです」 って答えたら」
オトン「すぐに面接落とされた〜」
ナオト「だから、異世界で求められてるスキルは 剣とか魔法のスキルだって!」
オトン「うわぁ〜、勤続20年の努力はなんだったんだ」
姫「オトン様、心配ですわ」
ナオト「だ、大丈夫ですよ」
ナオト「どうせすぐ立ち直って、明日にはまた面接に行ってるんだから」
ナオト「それより姫様、話の続きを・・・」
姫「そ、そうでしたわね」
姫「今日、私が来たのは・・・」
カホ「ただいま〜!」
ナオト「カホ!」
魔王「お邪魔します」
ナオト「魔王!?」
魔王「ふははは、また会ったな転生の勇者よ」
ナオト「てめぇ、全治2ヶ月じゃなかったのかよ」
魔王「あれしきの傷、タピオカポーションを飲んですっかり回復したわ」
ナオト「タピオカポーション?」
ナオト「それってカホが飲みに行ったヤツじゃ・・・」
カホ「そうだよ」
カホ「美味しかったよね、魔王っち」
魔王「ねー」
ナオト「カホ、お前いつの間に魔王と仲良くなった んだよ?」
カホ「この前SNSで魔王っちからDM届いて・・・」
カホ「そっから仲良くなったんだ〜」
ナオト「魔王てめぇ、人の妹にちょっかい出してんじゃねぇ!」
魔王「グハハハ、我は3丁目の魔王」
魔王「我を止めたくば、力づくでかかってこい」
ナオト「なんでやねん!」
魔王「グハッ」
姫「これが噂の「異世界詠唱魔法カンサイベン」ですわね」
姫「なんとも野蛮な響きですわ」
ナオト「普通に喋ってるだけなんだけどな」
  転生によって手に入れたチート魔法
  「カンサイベン」
  この世界の生物は怒りがこもった「関西弁」を聞くと、なぜか大ダメージを受けらしい
魔王「やるな、転生の勇者」
魔王「ならば、我も最強の闇魔法で相手をしよう」
ナオト「へっ、おもしれぇ」
ナオト「やっぱり、異世界はこうでなくっちゃな」
ナオト「いくぜ、魔王」
オカン「あんたらなにやってんの!」
ナオト「げっ、オカン!?」
オカン「暴れるなら、外でやり」
オカン「部屋の中で暴れたら、ホコリ立つやろ」
ナオト「で、でも、魔王がまた現れたんだ」
オカン「でもやない! いつまでも遊んでんと、ご飯の用意するで!」
魔王「グハハ、でたな魔獣オカン!」
魔王「前回は未知の魔法「カンサイベン」に不意を突かれたのみ」
魔王「今日はこの前のようにはいかんぞ!」
オカン「やかましい!」
オカン「あんたもご飯出したるから、準備手伝い!」
魔王「ぎやぁ!」
ナオト「さすが、オカン」
ナオト「魔王を一撃で倒しやがった」
姫「やはり、なんという強さでしょう」
ナオト「姫!」
ナオト「よかった怪我がなくて」
姫「さすが、オカン様」
姫「その強さを思うと、胸がドキドキしますわ」
ナオト「へっ?」
ナオト「じゃぁ、姫が会いに来たのって・・・」
姫「お待ちください、オカン様〜」
ナオト「そんなぁ〜」
ナオト「俺のラブラブ異世界デビュー作戦が・・・」
オカン「ナオト、あんたも早く手伝い!」
ナオト「やっぱり、家族も一緒だと全然 「異世界デビュー」できねぇ!」

コメント

  • キャラが多いですが、皆々様キャラが立っているのでNOストレスでスラリと読めました(これって凄い事ですよねぇ…)。
    今回は長男君がメインでしたが、オカン・オトン・妹ちゃんからの目線の異世界話も出来たら面白かったろうにで……!オトンの就職活動の結末はいかに(笑)。
    コンビニ感覚でいる魔王もいいですねぇ……常に新鮮な敵を使えるのも凄く強みがある……。

  • 異世界にも3丁目があるんですねww
    単にギャグだけで作られてるのかと思ったら、作者様には深い計算があったんですね 💦
    日常ダメ男が異世界ではヒーローというのが パターンなので、そこに自分のダメな面を知る家族が日常を伴ってやってくると困りますよね!! 深い洞察に感心いたしました🤩

  • 異世界どころかこの世界でも「オカン+カンサイベン」の破壊力は想像を絶するパワーだと思う。普段どんなにカッコつけててもオカンとオトンが出てきたら築き上げてきたものが最大瞬間風速で木っ端微塵ですよね。でもなんだかんだナオトもカホも三丁目の魔王もみんな仲良くて幸せそうでほっこりしました。

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