メタリアルストーリー

相賀マコト

エピソード41(脚本)

メタリアルストーリー

相賀マコト

今すぐ読む

メタリアルストーリー
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇西洋の市場
  ゼノンとガルバニアスの襲来に加え、ニルの処刑騒動という怒涛の日々から2週間が経過していた。
  メタリカ騎士団が主導となり、散在していた瓦礫などの撤去が行われた。
  ガルバニアスによって崩壊した住居や店舗で生活していた者は、ギルドの仮住居で日々を過ごしている。
  ギルドはこの際、ギルド広場周辺の建物を一新しようと動いているようだ。
  大変な状況だからこそと、メルザムの住民は一致団結して町の復興させようと盛り上がっている。
  そのおかげか、町は着々と復興が進み、以前ほどとは言えないが本来の活気を取り戻しつつある。

〇西洋風の受付
  ニルは衛兵のひとりとともに、日光が差す長い廊下の赤絨毯の上を歩いていた。
  ギルド評議長に呼び出され、評議長室へ向かう廊下を歩いているのだ。
  衛兵はとある扉の前で立ち止まり、強めに2回ノックをする。
衛兵「評議長閣下。 上級コレクターのニルをお連れいたしました」
  数秒後、扉が内側から開かれる。

〇西洋の円卓会議
  評議長室にはステンドグラスを背後に、豪奢な机についている議長がいた。
  議長は視線を衛兵に向ける。
議長「ご苦労。下がれ」
衛兵「はっ」
議長「入るがよい、ニル」
  ニルは議長にうながされ室内へと一歩踏み出す。
  衛兵は頭を下げると、扉の向こうへ姿を消した。
  無表情の秘書は扉を閉めてから、扉の傍らへと静かに控えている。
  議長はニルの顔をまじまじと見つめた。
  なにかを確認するような視線だ。
議長「・・・似てはいないな」
ニル「え?」
  発言の意図がわからず、ニルは困惑した。
  ゴホンと議長はひとつ咳払いをする。
議長「気にするな。こちらの話だ」
ニル「はあ。・・・それで何の用ですか?」
  議長はゆっくりと頷(うなず)いてから、机に広がっていた書類を片づける。
議長「うむ。まずは先の件についての謝罪だ」
  椅子を少し引くと、議長は両手を膝に置く。
  それから深々と頭を下げた。
議長「今思えば、処刑の判決を下す前にお主に事実確認をすればよかった」
議長「謝っても無罪で投獄した時間が戻せるわけではないが・・・」
議長「本当にすまなかった」
  ニルは議長の突然の謝罪に少し驚いたが、すぐに顔に笑みを浮かべる。
ニル「・・・もう過ぎたことですし。 気にしてはいません」
  ニルはあっさりとした口調で言った。
  議長は少し拍子抜けしたような表情でニルを見る。
議長「・・・そうか。 それにしても、お主は死ぬ間際だというのにやけに落ち着いていたな」
議長「衛兵からの話では、特に抵抗もなく牢獄内でもおとなしかったと聞いている」
議長「なにか策でもあったのか?」
  ニルは苦笑して首を横に振る。
ニル「いえ、特には」
ニル「その時は死ぬってことが怖くなかったんです、あんまり実感がなくて」
  ニルはそう言ってから「でも、仲間には散々怒られました」と肩をすくめた。
  議長はニルの言葉を聞いて小さく鼻で笑う。
議長「どこぞの馬鹿も同じようなことを言っておったな・・・天命というやつか」
ニル「?」
  ニルは首を傾(かし)げた。
  議長は机の引き出しを開け、その中から宝石のようなものを取り出す。
  ゆっくりとニルの元へ歩み寄ると、それを手に乗せ差し出した。
  その宝石のようなものは、きらびやかに輝くブローチだった。
  細部まで精密な黄金の装飾の中に、濃紺の宝石が埋め込まれているブローチだ。
  どこかで見たことがあるそれを、ニルはそっと受け取って眺める。
ニル「・・・これは?」
議長「選ばれた者のみが手にすることができる、ギルド・メタリカ特級コレクターの証だ」
議長「評議会は先の功績を認め、お主を特級コレクターへ昇級させることを決定した」
  ニルはわずかに間を空けて頷く。
ニル「・・・なるほど。 では、ありがたく頂戴します」
  ニルはポケットにブローチを仕舞う。
議長「そしてもうひとつ──」
  議長がそう言うと、ニルの背後にある扉から2回ノックが聞こえた。
  秘書は事前に来客が来ることがわかっていたのか、すぐに扉を開ける。
  開いた扉の先には、今となっては見慣れた人物が姿勢を正して立っていた。
エミリア「エミリア・グレイス・ブッシュバウム、参りました」
  きりっとした表情をしているエミリアは、議長からニルへと視線を移す。
  そしてニルと目が合った瞬間、エミリアは満面の笑みを浮かべてニルのもとへと駆け寄った。
エミリア「ニル!」
ニル「エミリアさん」
  ニルはエミリアに笑いかける。
  エミリアは少し唇を尖らせた。
エミリア「“さん”をつけるのはやめてくれと以前言っただろう?」
エミリア「それと一応言っておくけど、敬語もだぞ」
ニル「あっ・・・ごめん。エミリア」
  エミリアは“エミリア”と名前を呼ばれ、すこし赤くなった。
  議長はふたりのやりとりを見て、ゴホンと咳払いをする。
  エミリアは我に返ると、バッとその場に膝をついた。
エミリア「し、失礼しました!」
エミリア「それで、何用でしょうか」
議長「うむ。ひとつ相談があってな。 メタリカ騎士団の副団長の席はずいぶんと空いておっただろう」
  議長の言葉に、エミリアは顔をあげる。
エミリア「・・・まさか」
  目を見開いたエミリアに、議長は頷く。
議長「その副団長の席だが、このニルを推薦しようかと考えておる」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:エピソード42

成分キーワード

ページTOPへ