尾張の風雲児!(脚本)
〇綺麗な一戸建て
〇おしゃれなリビングダイニング
頼城いざな(よりしろ いざな)「う~ん、いい匂い! ママ、夕ご飯なに?」
頼城まもり(よりしろ まもり)「ふふ、今日はちょっと挑戦したのよ」
頼城まもり(よりしろ まもり)「ネットで見つけたレシピの味噌だれに、 鶏もも肉を8時間漬け込んで焼いたの」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「美味しそうだね、ママ。 一口、あ~ん」
頼城まもり(よりしろ まもり)「だぁめ。 清和が塾から帰ってから」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「しゅん」
頼城まもり(よりしろ まもり)「もう、仕方のないパパね」
頼城まもり(よりしろ まもり)「じゃ、このちっちゃな端っこだけ」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「ん!」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「はふはふ、美味しいよ! さすがママ!」
頼城いざな(よりしろ いざな)「あー、パパだけずるい! 私だってお腹空いてるのに」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「・・・・・・」
頼城まもり(よりしろ まもり)「あと5分もすれば清和が帰ってくるから。 そしたらみんなで夕飯に・・・」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「ふ、ふふ・・・」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「ふははははは!!」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「これはなかなかの美味!! そこな女、褒めてつかわす!!」
頼城いざな(よりしろ いざな)「・・・・・・」
頼城まもり(よりしろ まもり)「・・・・・・」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「坪内の作ったものは水臭ぅて 食えたものではなかったが、 これは美味い!」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「何をぼさっとしておる! さっさと膳を整えよ!!」
頼城まもり(よりしろ まもり)「これは」
頼城いざな(よりしろ いざな)「来ちゃったね」
〇水の中
私のパパは憑依体質だ。
どういうわけか、頻繁に
歴史上の人物の魂に体を乗っ取られる。
〇おしゃれなリビングダイニング
頼城まもり(よりしろ まもり)「今日は誰に乗っ取られたのかしら」
頼城いざな(よりしろ いざな)「なんだか偉そうな人だよね」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「そこな娘! 今、何と言った?」
頼城いざな(よりしろ いざな)「へぁ?」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「手打ちにしてくれる。 そこになおれ!!」
頼城いざな(よりしろ いざな)「沸点、低!!」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「逃げるな、無礼者!」
頼城いざな「ちょ、ま!」
頼城いざな「ぎゃああああ!!」
〇飾りの多い玄関
頼城清和(よりしろ きよかず)「ただいまー」
頼城いざな(よりしろ いざな)「清和!! お帰り!! パパがまた!!」
頼城清和(よりしろ きよかず)「取り憑かれたの? 今度は誰?」
頼城いざな(よりしろ いざな)「わかんない! なんかすっごく偉そうで、キレやすい人!」
頼城いざな(よりしろ いざな)「確か、 坪内の料理が水臭いとかなんとか!」
頼城清和(よりしろ きよかず)「あぁ、織田信長だね」
※ 織田信長 ※
戦国時代から安土桃山時代にかけて
活躍した戦国武将で大名。
天下統一を目指したが、
明智光秀の謀反により本能寺で死去。
なお、
織田信長と坪内石斎の料理のエピソードは
後世の創作とも言われている。
頼城いざな(よりしろ いざな)「のぶなが、って 戦国時代の!?」
頼城清和(よりしろ きよかず)「うん」
頼城いざな(よりしろ いざな)「ビッグゲストじゃん!!」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「そこにおったか娘、 ちょこまか逃げおって」
頼城いざな(よりしろ いざな)「来たあぁああ!!」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「待たぬか!!」
頼城清和(よりしろ きよかず)「何やったんだよ、姉さん・・・」
〇綺麗な一戸建て
〇おしゃれなリビングダイニング
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「うむ、美味い! この焦がした味噌の風味がたまらんのぅ」
頼城まもり(よりしろ まもり)「うふふ、光栄ですわ」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「この味に免じて、そなたの娘の不調法、 不問にしてつかわす」
頼城いざな(よりしろ いざな)「アリガタキシアワセ・・・」
頼城いざな(よりしろ いざな)「それにしても、 なんで信長公来ちゃったんだろう」
頼城清和(よりしろ きよかず)「この鶏の味噌漬け焼のせいだよ」
頼城いざな(よりしろ いざな)「え?」
頼城清和(よりしろ きよかず)「信長公はやきとりが好きでさ」
頼城清和(よりしろ きよかず)「まぁ、当時は キジや鶴の肉だったらしいけど」
頼城清和(よりしろ きよかず)「それからこの味噌だれ。 生姜やゴマの風味がきいてる」
頼城清和(よりしろ きよかず)「信長公の好物、焼味噌に似てるんだ」
頼城いざな(よりしろ いざな)「今回の『触媒』、鶏の味噌漬け焼!? 信長公の魂、フットワーク軽すぎ」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「何か言うたか、そこな娘」
頼城いざな(よりしろ いざな)「い、いえいえ!? なぁんにも」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「ここにアレがあれば、 圧し斬ってやるところぞ」
頼城いざな(よりしろ いざな)(こっわ!!)
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「・・・・・・」
頼城まもり(よりしろ まもり)「どうかなさいまして?」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「思い出した。 儂は長谷部に会いとぉて 下りて来たのじゃ」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「あの輝きを、もう一度・・・」
頼城いざな(よりしろ いざな)「はせべ? 輝き?」
頼城いざな(よりしろ いざな)「え? 恋人か何か?」
頼城清和(よりしろ きよかず)「へし切長谷部、 国宝に指定されている刀のことだよ」
頼城清和(よりしろ きよかず)「信長公から黒田長政に下賜された 有名な打ち刀」
頼城清和(よりしろ きよかず)「知らない?」
頼城いざな(よりしろ いざな)「うっすらとどっかで聞いた記憶は」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「一目でいい。 へし切長谷部の輝きを もう一度目に焼き付けたいのぅ」
頼城いざな(よりしろ いざな)「そんなに大事なら どうして人にあげちゃったの? ・・・ですか?」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「功ある者に、 相応の褒美をやるのは当然のこと」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「黒田はアレに値する働きをしたのじゃ。 じゃが・・・、ぐぬぅ・・・」
頼城いざな(よりしろ いざな)(すっごい未練たらたら)
頼城清和(よりしろ きよかず)「『へし切長谷部を一目見たい』」
頼城清和(よりしろ きよかず)「それが信長公の『望み』ということで よろしいですね?」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「うむ」
頼城清和(よりしろ きよかず)「姉さん、『望み』は分かった」
頼城清和(よりしろ きよかず)「ちょうど今、国立博物館で 『へし切長谷部』が展示されている」
頼城いざな(よりしろ いざな)「じゃあ、そこへ連れて行けば!」
頼城清和(よりしろ きよかず)「うん」
頼城まもり(よりしろ まもり)「目的は決まったわね。 なら、今夜はのんびりしましょ」
頼城まもり(よりしろ まもり)「うふっ、ママね、一度信長さんと お酒を飲んでみたかったの」
頼城まもり(よりしろ まもり)「日本史上最も人気のあるイケメンと お酒が飲める機会なんて そうそうないもの」
頼城いざな(よりしろ いざな)「いや、顔はパパのままだよ?」
頼城まもり(よりしろ まもり)「うふふ、信長公 お酌いたします」
頼城まもり(よりしろ まもり)「今宵は現世をお楽しみください」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「酌? ぬしが?」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「ちんちくりんは趣味ではない」
頼城まもり(よりしろ まもり)「うふ」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「かふっ!」
頼城まもり(よりしろ まもり)「あら、信長公はもうお休みのようね。 ゆっくり眠っていただきましょ」
頼城清和(よりしろ きよかず)「偉人をシメた・・・」
頼城いざな(よりしろ いざな)「パパの体―!!」
〇綺麗な一戸建て
〇研究施設の玄関前
国立博物館
〇美術館
頼城いざな(よりしろ いざな)「すごい行列・・・」
頼城いざな(よりしろ いざな)「へし切長谷部の展示してあるとこまで あとどれくらいかかるかな」
頼城清和(よりしろ きよかず)「国宝だからね。 それに今、刀はブームだし」
頼城いざな(よりしろ いざな)「そうなんだ」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「ぬぬぬぬ・・・」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「いつまでこの儂を待たせるつもりじゃ! 早ぅ、へし切長谷部の元へ案内せよ!」
頼城いざな(よりしろ いざな)「みんな順番に並んでるんだから。 もう少し我慢して」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「この儂に指図するか! 不調法者めが!」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「えぇい、皆まとめて斬り捨ててやるわ!」
頼城まもり(よりしろ まもり)「順番ですから、ね?」
コキッ
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「・・・・・・(スンッ)」
頼城いざな(よりしろ いざな)(黙った)
頼城清和(よりしろ きよかず)(母さんが指鳴らしただけで黙った・・・)
〇黒
〇美術館
頼城清和(よりしろ きよかず)「あ、あれだ!」
頼城清和(よりしろ きよかず)「信長公、ほら へし切長谷部ですよ」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「なに!?」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「・・・おぉ」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「儂の手元にあった時と変わらぬ輝き」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「へし切長谷部よ、ぬしは黒田の元で 大切に扱われていたのだな・・・」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「この場に集う民草どもも皆 ぬしを崇めるように見ておるわ」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「美しいのぅ・・・」
頼城清和(よりしろ きよかず)「姉さん、今だよ」
頼城清和(よりしろ きよかず)「信長公の『望み』は叶った。 姉さんの出番だ」
頼城いざな(よりしろ いざな)「よっしゃ!」
頼城いざな(よりしろ いざな)「信長公・・・」
頼城いざな(よりしろ いざな)「お帰り下さーい!!」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「がっ!?」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「・・・・・・」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「あれ? ここは?」
頼城いざな(よりしろ いざな)「戻った!」
頼城清和(よりしろ きよかず)「ここは博物館だよ」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「てことは・・・」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「僕、また憑かれてた? 今度は誰? 誰に!?」
頼城まもり(よりしろ まもり)「うふふ、信長公よ。 とてもワイルドだったわ」
頼城圭介(よりしろ けいすけ)「えぇ~っ!? 僕も会いたかったなぁ・・・」
頼城清和(よりしろ きよかず)「父さん、大声出さないで。 みんなの迷惑になるから」
〇空
私のパパは憑依体質だ。
どういうわけか、頻繁に
歴史上の人物の魂に体を乗っ取られる。
何を『触媒』にして誰が現れるか
それは私たちにも予想がつかない。
彼らが現世で何がしたいか
私たち家族は『望み』を聞き
そして満足してお帰りいただく。
〇中庭
最終的にパパの体から
歴史人物の魂を叩き出すのは
霊能力のある私の役目だ。
頼城いざな(よりしろ いざな)(信長公、満足して帰ってくれたかな?)
頼城いざな(よりしろ いざな)「でも、次はもっと 穏やかな人物だといいなぁ」
憑代DADDY『尾張の風雲児』
──おわり──
面白かったですー!!✨😊
まさかのあの方に憑依されるなんてっ!!
そしてお母様が強くて何者!?となりそれも面白いです✨
歴史上の人物の願いを叶えるって話の広がりがめっっちゃありますね!!!!✨😊
これは面白いですね!
歴史好きなので興味深く読めました。
続きが読みたくなる作りです。
これは面白すぎますって!設定が強固なので、いろんな偉人や変人で物語がどんどん作れそうですね!
個人的には、在原業平が憑依してママの前で他の女性をナンパし続けるストーリーを見てみたいですね(パパの肉体がバッドエンドを迎えそうですが…)