エピソード1(脚本)
〇田舎の病院の病室
ここはとある科学者の持つ家の一室。
窓際に置かれた真っ白なベッドの上で老齢の科学者は今、その生涯を終えようとしていた。
千草マキ「世に生まれて92年。 ワシは人生の全てを科学に捧げてきた」
千草マキ「しかし、情けない事に最後に1人で逝くという寂しさを拭えずワシはお前達『家族』を造りあげた」
千草マキ「成人男性型のドモン」
千草マキ「成人女性型トモコ」
千草マキ「青年型の九郎」
千草マキ「そして少年型アムト。 我が生涯最後にして最高の発明品。そして我が最愛の家族達よ」
千草マキ「最後に...残されるお前達へワシから3つの課題を伝えておく」
〇黒
心して聞け...。
その内容は...
〇おしゃれなリビングダイニング
それから、マキ博士がこの世を去って数週間が経った。
街の隅にぽつりと建っている『千草』の表札が掲げられた一軒家では、今日も残された人造人間4体が博士からの課題に挑んでいた。
ドモン「皆テーブルについてくれ。 博士の遺品整理を始めよう」
トモコ「はぁー、またこの憂鬱な時間が来たわね」
九郎「てか博士の発明品を管理してるのはドモンなんだから1人でやれよ!」
アムト「ねぇー、ボクもうちょっとテレビ観てたい!」
ドモン「文句を言うなお前達! 博士の3つの課題を忘れたのか?」
ドモン「1つ、私達は人間社会で人間として生き、人間を学び人間の役に立つこと!」
ドモン「2つ、どんな時も4人で協力し合い争わぬこと!」
ドモン「そして3つ、博士が生前に造りあげた大量の発明品を『安全に』管理する事だ!」
トモコ「2つめまではまともな事言ってたのよね」
九郎「3つめはただ後始末を俺達に丸投げしただけだよな。あのジジイ」
アムト「この前の発明品はどんなだったっけ?」
トモコ「ええと確か」
トモコ「そう、装着した2人の移動速度を同じにする『イッショリング』」
九郎「恋愛経験ないジジイらしい、役立たずな恋愛用の発明品!」
九郎「その前はたしか...」
トモコ「将来人間が別の星に住んでも確実に好きな子へ手紙を届ける手の平サイズロケット『トドケール』ね」
九郎「そうそう! こっちは完全に失敗策だったよな」
トモコ「ええ。宇宙空間をとんでもない速度で移動出来るけど真っ直ぐにしか飛ばないし搭載燃料も少量」
アムト「そもそもメールでいいじゃん」
トモコ「発明品の中には危険なものもあるからちゃんと機能を調べなきゃいけないけど」
トモコ「大抵しょうもないゴミばかり出てきて時間を無駄にするのよね」
ドモン「お前らつべこべ言うな! とにかく次の発明品を出すぞ!」
一喝したドモンはスーツの内ポケットへ手を突っ込む。
ドモン「機能解放『ポケット』!」
千草博士は4人にそれぞれ特殊な『機能』をつけていた。
機能『ポケット』は博士が世界のどこかに所有している秘密倉庫からスーツの内ポケットを通じて発明品を自由に出し入れできる
一度取り出し、ドモンが発明品の内容を理解したアイテム以外は何が出るか完全ランダムである。
ドモン「出たぞ」
アムト「何これ?錠剤?」
ドモン「私にもわからん。 トモコ、頼む」
トモコ「はいはい。 機能解放『クリア』」
トモコのクリアは世界中あらゆるネットワーク、電子機器のセキュリティを突破し情報解析を行うことができる
トモコ「解析...完了...」
アムト「薬なら飲んで確かめた方が早いんじゃない?」
トモコ「待ってアムト! それは薬じゃなくて爆弾よ!」
アムト「え?」
ドモン「は?」
九郎「マジか」
トモコ「ええ、大マジ。 それもコレ、普通の爆弾じゃないわ」
トモコ「対隕石破壊用爆弾『バクハー』 この街1つは軽く吹き飛ぶ威力ね」
九郎「あ...」
九郎「あのジジイ! ガラクタのなかに何て物騒なもん紛れさせてんだ!」
アムト「も、もう少しで飲んじゃうとこだった」
トモコ「ドモン。さすがにこれは洒落にならないわ。 今すぐ仕舞って二度と出さないでちょうだい」
ドモン「そうだな。そうしよう」
九郎「まったく、何が対隕石だよ。 そんなもんが早々地球に落ちてたまるかって──」
『番組の途中ですが、ここで緊急速報です』
〇落下する隕石
『先ほどNASAは会見を開き、大型の隕石を観測したとの情報を明らかにしました』
『落下予想地点は日本の○○県付近、落下予想時間は2日後早朝とのこと』
『政府は周辺地域に緊急避難命令をーー』
〇おしゃれなリビングダイニング
九郎「うっそ...」
アムト「ちょうどいいじゃん。この爆弾で隕石ぶっ飛ばそうよ!」
九郎「簡単に言うな!」
トモコ「そうよ。だいたい爆弾が手元にあっても宇宙まで運べないわ」
アムト「ボクが思い切りぶん投げるのは?」
トモコ「地球外までは出せるでしょうけど、隕石までは届かないでしょうね」
ドモン「隕石が近づいてからアムトに投げさせるのはどうだ?」
トモコ「それもだめ。爆発で隕石がバラバラになって余計広範囲に被害が出るわ」
トモコ「被害0で抑えるには今日中に隕石に爆弾をぶつけないといけないわね」
九郎「俺達は人間の役にたたないと行けない。 けど、さすがに今回は」
ドモン「トモコ。爆弾を真っ直ぐ投げるとして高い確率で隕石にぶつけるには何処から投げるのがベストだ?」
ドモン「『クリア』も使って演算してくれ」
九郎「ど、ドモン?」
トモコ「一応落下予測地点とされる○○県の✕✕町から30分以内に爆弾を射出するのがベストとでたけど」
トモコ「ここから県を8つも跨いでる所に30分以内で移動するのは無理よ」
ドモン「お前の足なら行けるだろ。九郎」
九郎「ギリ間に合うかもだけど、俺のパワーじゃ爆弾投げても大気圏にも届かねーよ」
九郎「仮にアムトが投げたとしても隕石まで届かねーんだろ?」
ドモン「俺に考えがある」
ドモン「信じろ」
ドモン「俺達4人が力を合わせれば」
ドモン「最強だ」
〇一戸建て
その後ドモンは3人を連れて家の外へ出た
ドモン「機能解放『ポケット』! 出でよ『イッショリング』」
リングを取り出したドモンはそれをアムトと九郎の手首に取り付ける。
九郎「なるほど。 これでアムトも俺と同じ速さで移動出来る」
アムト「でも爆弾を隕石まで運ぶ手段は?」
ドモン「更にポケット! 『トドケール』」
続けてトドケールを出したドモンは収納スペースに爆弾を入れてアムトに渡した。
ドモン「こいつの燃料は少ないが、アムトが地球外まで投げてからジェットを点火すればギリギリ隕石まで届くはずだ」
ドモン「それでも確実とはいえないが」
九郎「俺は乗った。 うじうじ言っても始まらねーしな!」
アムト「ボクもやるよ!」
トモコ「ルートのナビは任せて。 最短コースを案内してあげる」
ドモン「皆、ありがとう」
ドモン「よし、やろう!」
九郎「よっしゃ! まず俺だな!」
九郎「アムト、目回すんじゃねーぞ!」
九郎「機能解放『アクセル』!」
瞬間、凄まじい突風とともにアムトと九郎が姿を消す
〇道玄坂
九郎「ひゃっほー!」
アムト「あばばば! 速い速いぃいいい!」
九郎の機能『アクセル』は文字通り自身の動きを加速させ、人知を越えた速度を出せる。
走っている車や電車、新幹線をギュンギュン追い抜き九郎は走る
イッショリングで同じ速度を出しているアムトはあまりのスピードに目を回していた。
トモコ「『九郎、聞こえる?』」
トモコ「『あんたに口で道案内しても間に合わないだろうから九郎の目にナビを表示させるわ』」
九郎「サンキュートモコ! うっしアムト、突っ走るぞ!」
アムト「ひょええええ」
〇屋上の端
二十数分後、○○県にある雑居ビルの屋上
九郎「おっしゃ!間に合ったぜ」
アムト「死ぬかと思った」
九郎「下は阿鼻叫喚のパニックになってるな」
アムト「もうすぐ隕石が落ちてくるんだもん。当然だよ」
九郎「アムト、俺に出来んのはここまでだ」
九郎「あとはお前次第」
アムト「うん」
九郎「俺達4人で人間を助けようぜ」
アムト「うん!」
トモコ「『目標地点に着いたわね。既にアムトの目に発射コースのデータは表示してるわ』」
トモコ「『頼んだわよ』」
九郎「ぶちかましてやれ」
アムト「機能解放『アストロ』!」
トモコに教えられたデータ通りのコースでトドケールを放り投げるアムト
アムト「1000万馬力のパワーで飛んでけー!」
〇地球
ドモン「トドケールが宇宙にでた!」
ドモン「超加速エンジン点火!」
〇落下する隕石
ドモンの遠隔操作でエンジンを点火したロケットは超光速で宇宙空間を直進する
そして数分後、隕石と爆弾が入ったトドケールは衝突して大爆発を起こした
〇おしゃれなリビングダイニング
『そ、速報です。観測されていた隕石が突如分裂!』
『破片はそれぞれ地球を外れたコースを流れるとのこと!』
『奇跡です!バンザーイ!バンザーイ!』
ドモン「ふ、テンションの高いテレビだ」
トモコ「ねぇドモン」
ドモン「なんだ?」
トモコ「アタシ、あなたのあの台詞好きだったわ」
ドモン「何だ?」
トモコ「あれよアレ」
〇屋上の端
九郎「俺達4人が力を合わせれば!」
アムト「最強だー!」
アムト「イエーイ!」
終わり
人造人間がそれぞれの特異能力をもって問題解決に挑む、これって定番のみんな大好きな設定ですよね!博士のアレな発明品ももっと見てみたくなります。
発明品もすごいけど特殊能力を持った人間を4人も生み出した博士はノーベル賞どころじゃないですよね。前半に出てきた発明品やセリフが後半で次々と伏線回収されていって解決に至る展開は爽快でした。読み終わった後、一本の映画を見たような満足感がありました。
まさしく人と入れ物は有り次第、といった感じですね。『イッショリング』は汎用性も高く、実生活でも役立ちそうなので普通に欲しいなと思いました。