エピソード2(脚本)
〇黒
8時間前
〇綺麗な一戸建て
〇おしゃれなリビングダイニング
高島守「物騒な世の中だな」
良子が台所から料理を運んでくる。
愛菜(まな)に目配せする良子(りょうこ)。
高島愛菜「ねぇ、パパ」
高島愛菜「来月ね、バレエの発表会があるの」
高島守「もうそんな時期か」
高島守「前回は最終選考まで残ったのに、惜しかったな」
高島愛菜「だからね。新しい衣装買って♪」
高島守「なんだ。 こないだ新しいの買ったばかりじゃないか」
高島愛菜「あれ、もう3回も発表会で着たもん」
高島守「3回しか着てないなんてもったいないじゃないか」
高島守「あれだって、けっこういい値段したんだぞ」
高島良子「愛菜はよく着た方よ。 毎回新しい衣装買う子も多いんだから。 写真だって撮るんだし」
高島守「そういうものなのか」
高島良子「そうよ」
高島守「よし。じゃあ、今度の日曜日買いに行こうか」
高島愛菜「やったー」
愛菜にウィンクする良子。
高島弘美「ママー。私のリップ知らない?」
高島良子「テーブルの上」
高島良子「昨日、洗面台に置きっ放しだったわよ」
高島弘美「もう。見つけたなら鞄に入れといてよ」
高島良子「はいはい。早くご飯食べちゃいなさい」
高島弘美「そんな時間ない」
高島弘美「やっばーい。もうこんな時間。 今日模試なのに」
高島守「どうだ弘美(ひろみ)? 勉強の方は」
高島弘美「まあまあ」
高島良子「聞いて。弘美、こないだA判定取ったのよ」
高島守「すごいじゃないか」
高島弘美「第二志望の茶の湯大がね」
高島弘美「本命の慶早大はまだB判定」
高島守「茶の湯大もいい大学だぞ。国公立だしな」
高島弘美「やだよー国公立なんて。私立がいい」
続いて、目黒区一家バラバラ殺人事件の続報です
高島愛菜「あ! この事件」
高島良子「まだ犯人捕まってないんでしょ。 近くだし怖いわね」
高島弘美「これ、サイレントの仕業だって学校で噂になってるよ」
高島守「サイレント? なんだそれは?」
高島愛菜「パパ知らないの? 人を食べちゃう化物だよ」
高島守「まさか。化物なんているわけない」
高島弘美「普段は人間と見分けがつかないけど、2人きりになると化物に変身して襲ってくるんだって」
高島良子「きゃー、こわーい」
高島弘美「ママは大丈夫」
高島弘美「若い人間の方がおいしいんだって」
高島良子「もう。何よー」
〇飾りの多い玄関
高島守「来週だけど、前に言ってた青山のフレンチ、予約しておいたから」
高島良子「本当?」
高島良子「でも、あのお店高いでしょ? 無理しないでね」
高島守「無理なんかしていない」
高島守「年に一度の結婚記念日くらい、盛大にやらないとな」
高島良子「ありがとう。 じゃあ今夜はハンバーグにしようかしら」
高島守「お、いいね。じゃあ、行ってくる」
高島良子「あなた」
高島守「ん?」
高島良子「早く帰ってきてね」
高島守「ああ」
〇住宅街
ふと、立ち止まる高島。
都内に一軒家を建て、
美人な妻を嫁にもらい、
2人の愛娘にも恵まれ、
何不自由のない家庭を築く。
俺の人生はまさに順風満帆。
〇ハローワーク
のはずだった・・・。