第二話 音無雨(おとなめ)町(脚本)
〇空
〇飛行機内
初刷 論(はつずり さとし)「俺、長崎初なんだよ。 すげー楽しみ」
浜 伊織(はま いおり)「旅行のテンションか」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「まあ今回は人捜しだからね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「素行調査みたいに 始終張り付く業務じゃない」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「地域内ならある程度 自由に出歩いて構わないよ」
初刷 論(はつずり さとし)「マジで!? やった!」
キャビンアテンダント「ただいまお飲み物の サービスを行っております」
初刷 論(はつずり さとし)「お、来た来た。 すみません、コーヒーを──」
キャビンアテンダント「あ、はい。かしこまりました」
初刷 論(はつずり さとし)「・・・」
キャビンアテンダント「熱いのでお気をつけ下さい」
キャビンアテンダント「ただいまお飲み物のサービスを・・・」
初刷 論(はつずり さとし)「なあ、今の」
浜 伊織(はま いおり)「しっ!」
初刷 論(はつずり さとし)「はうっ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ロンくん。この業種はね、 注意しなきゃならないことがある」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「過去の依頼者と外で 挨拶を交わさないことだ」
浜 伊織(はま いおり)「職場で変に噂されて 困らせることになるでしょ」
初刷 論(はつずり さとし)「そ、そっか」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「僕らは感謝されるような 職業じゃない」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「できることは静かに 彼らの幸せを祈るくらいだよ」
初刷 論(はつずり さとし)「で、ですね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(おや?)
ありがとうございました
私は今、幸せです
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「・・・」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ふふ・・・」
キャビンアテンダント「・・・」
チーフパーサー「栄田さーん。前方座席のヘルプお願い」
キャビンアテンダント「あ、はーい」
〇空港の滑走路
〇空港のエントランス(人物なし)
初刷 論(はつずり さとし)「ふー、着いた。 結構かかりましたね」
浜 伊織(はま いおり)「よく寝た」
初刷 論(はつずり さとし)「長崎まではレンタカーでしたっけ?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「そうそう。 バスを乗り継いでもいいんだが」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「調査には足が必要だからね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「行こうか、こっちだ」
初刷 論(はつずり さとし)「あっ、所長どこ行くんですか?」
初刷 論(はつずり さとし)「レンタカー受付こっちですよ!」
〇駐車車両
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「あった、これだ」
初刷 論(はつずり さとし)「えっ、普通レンタカーの 受付で借りますよね」
初刷 論(はつずり さとし)「空港の駐車場で受け取りとか そんなサービスあります?」
初刷 論(はつずり さとし)「しかも『わ』ナンバーじゃないし」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「『わ』ナンバーは目立つからね。 調査には向いてない」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「だから僕らが出張先で使うのは カーシェアリングの車だよ」
浜 伊織(はま いおり)「地元ナンバーだから 目立ちにくいんですね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「そういうこと」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「じゃあロンくん、例の町まで 運転は任せてもいいかな?」
初刷 論(はつずり さとし)「あっ、はい!」
〇車内
初刷 論(はつずり さとし)「音無雨(おとなめ)町でしたっけ」
浜 伊織(はま いおり)「待って。今ナビ入れる」
初刷 論(はつずり さとし)「いらねーよ? 道ならさっき地図見たから」
浜 伊織(はま いおり)「地図って。 着陸前にパラパラ見てただけよね?」
初刷 論(はつずり さとし)「ああ、あれで十分」
初刷 論(はつずり さとし)「俺さー、地図だけは一回見たら 覚えちゃうんだ」
初刷 論(はつずり さとし)「だって道覚えないと時速120kmで 山道ドリフトとかできねぇって」
※真似してはいけません
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ああ、そうそう」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「あっちに着いたら 自由行動で構わないよ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「着いても多分夕方だ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「聞き込みをするには少し 遅いからね」
初刷 論(はつずり さとし)「ひゃっほー!」
初刷 論(はつずり さとし)「お土産買い放題じゃないすか」
浜 伊織(はま いおり)「・・・」
初刷 論(はつずり さとし)「よーし、張り切って行きますよ!」
〇繁華街の大通り
〇車内
初刷 論(はつずり さとし)「おっ、皿うどんの店ある!」
初刷 論(はつずり さとし)「美味しそうな中華も多いなぁ」
〇郊外の道路
初刷 論(はつずり さとし)「ちょっと郊外に入ったな」
初刷 論(はつずり さとし)「長崎ってなんか 坂道多くないですか」
〇田園風景
初刷 論(はつずり さとし)「音無雨町って割と田舎 なんすね・・・」
〇山間の田舎道
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ロンくん。運転お疲れさま」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「宿は徒歩圏内だからすぐ着くよ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「夕飯時までは自由行動としよう」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「じゃあ、一旦解散」
浜 伊織(はま いおり)「良かったわね。 念願の自由行動よ」
初刷 論(はつずり さとし)「・・・」
初刷 論(はつずり さとし)「カステラは? ハウステンボスは?」
浜 伊織(はま いおり)「あるわけないでしょ」
浜 伊織(はま いおり)「あれはもっと佐賀県寄りよ ここから車で二時間はかかるわ」
初刷 論(はつずり さとし)「皿うどん・・・」
浜 伊織(はま いおり)「あるといいわね」
浜 伊織(はま いおり)「夕飯までには宿に戻るのよ」
浜 伊織(はま いおり)「ぷぷぷ・・・」
初刷 論(はつずり さとし)「自由行動の意味!」
〇滝つぼ
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「へえ。綺麗な滝だなぁ」
???「あー、すみません!」
警官「ここは立ち入り禁止になっておりまして」
警官「お引き取り願えますか」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ああ、そうでしたか」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「こちらに有名な滝があると 案内があったもので」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「何かあったんですか?」
警官「事情はお話しできません」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「うーん、困りました」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「入院中の妻にここの滝を見せたくて」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「せめて写真だけでもと」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ちょっとだけ! お願いできませんか?」
警官「ええっ!? うーん、参ったな」
???「参らなくていいぞー、巡査」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「俺が対応する。 下がっててくれ」
警官「はっ」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「・・・ったく」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「呼んでねーぞ、探偵」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「僕も呼ばれたつもりはないですよ 牧村警部」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「あなたが来てるとは思いませんでした」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「どうしてここにいる?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「たまたま通りがかっただけですよ」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「腹のさぐり合いはやめようぜ」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「大学同期じゃねぇか」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「同期でも職業上の制約は あると思うけどね」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「んで、もう一度聞くが、 お前は依頼でここへ来たのか?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「うーん、半分はそうかな」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「半分?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「この町に依頼で来たのは本当だ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「人を探してるんだ どうもこの町にいるらしくてね」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「んじゃ何か? この場所に来たのは偶然だと」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「調査地にあった観光スポットへ 寄っただけだって?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「まさか」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「議員が亡くなった現場が 近くにありそうなんで見ておこうかなって」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「お前って奴は・・・」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「議員が亡くなった現場は まだ情報公表されてないだろ」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「勝手に推理して観光気分で 来るんじゃねぇよ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「いやあ、警視庁が出てきてるなら かなり大事になってるんだね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「こいつは大変だ」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「なに面白がってんだ」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「その人探しとやらは 国会議員の知り合いか何かか?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「いや、今のところ関係は 無さそうだね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「というわけでちょっと 見学していってもいいかな」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「いいわけあるか、この馬鹿っ」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「もう終了だっつーの。 帰れ帰れ!」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ははは、じゃあそうするよ。 邪魔して悪かったね」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「・・・」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「おい、堀田」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「何?」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「『音の無い雨』ってあると思うか?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「・・・?」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「あ、いや。ただの妄言だ 忘れてくれ」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「じゃあな。くれぐれも 警察の邪魔するんじゃないぞ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(・・・)
〇屋敷の門
〇屋敷の大広間
初刷 論(はつずり さとし)「いっただきまーす!」
初刷 論(はつずり さとし)「もぐもぐ、はむはむ・・・」
初刷 論(はつずり さとし)「う、旨い!」
浜 伊織(はま いおり)「泣くほどか」
旅館の女将「そりゃ良かった。 おかわりもあるからね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「いや、しかし本当に見事だ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「こんなに美味しいご飯が 食べられるなんて」
旅館の女将「嬉しいねぇ」
旅館の女将「でも確かにこの数年で 料理もうんと美味しくなってるのよ」
初刷 論(はつずり さとし)「はむはむ・・・それは 何故ですか?」
旅館の女将「三年前、町長が若い人に変わったのよ」
旅館の女将「このままじゃ駄目だって 町の改革をしてくれたんだ」
旅館の女将「ここの宿泊プランにも 積極的に関わってくれてね」
旅館の女将「お客様も増えて嬉しい限りさ」
旅館の女将「はあ・・・なのに、あんな事件が あるとはね」
初刷 論(はつずり さとし)「ひけん?(事件?)」
浜 伊織(はま いおり)「議員のですね」
旅館の女将「そうなのよー!」
旅館の女将「お客さん減るんじゃないかって 心配でね」
???「はっ、遅かれ早かれ この旅館には誰も来なくなるさ」
〇屋敷の大広間
旅館の女将「先代!」
旅館の先代女将「この町はダムに沈むんだよ」
旅館の先代女将「町おこしなんてやるだけ無駄さ」
旅館の先代女将「ふん」
〇屋敷の大広間
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「今のは?」
旅館の女将「ごめんなさい。 先代が失礼しました」
旅館の女将「ダム建設の話が来てから ずっとあんな感じで」
浜 伊織(はま いおり)「ダム建設?」
浜 伊織(はま いおり)(そういえばテレビでも言ってたわね)
旅館の女将「ええ、急な話でね。 一年前くらいかしら」
旅館の女将「町長さんも落ち込んじゃって」
旅館の女将「湿っぽくなってすみません」
旅館の女将「ま、まあでも時期はまだ 決まってませんから」
旅館の女将「しばらくは頑張ってここを 盛り上げるつもりなんですよ」
旅館の女将「では、ごゆっくり お召し上がりくださいね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「・・・」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ダム建設か」
初刷 論(はつずり さとし)「所長、何とかなりませんか」
初刷 論(はつずり さとし)「こんなに美味しいご飯が出る旅館、 俺は潰したくありません」
浜 伊織(はま いおり)「おーい、何しに来たか 忘れてないか」
初刷 論(はつずり さとし)「・・・」
初刷 論(はつずり さとし)「人探しだ!」
浜 伊織(はま いおり)「頼むよ、ホント」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「・・・」
浜 伊織(はま いおり)「所長、何考えてるんですか?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「あ、いやもちろん 佐々木哲司のことさ」
〇山の中
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「依頼人、泉礼華の話だと 彼は歴史学者ということだった」
〇山間の田舎道
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「きっとこの地にいた理由も、 発掘のためだろう」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「そこへダム建設の話がきた」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「──」
〇屋敷の大広間
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「佐々木がこの地で何か見つけていたなら 恐らくダム建設計画は中止だ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「だが議員が亡くなったのは数日前」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「この一年、ダム建設計画は 止まらなかったんだ」
浜 伊織(はま いおり)「何も見つからなかった ということでしょうか」
浜 伊織(はま いおり)「泉礼華が父親から手紙が 届かなくなったのが半年前」
浜 伊織(はま いおり)「彼はこの地を見限って どこかへ行ってしまった・・・?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「その可能性もあるね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「まあ、まずはこの町にいるという 佐々木哲司を見つけ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「彼が依頼人の探している 父親かどうか確認する」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「そこから始めよう」
「了解しました」
〇屋敷の門
〇旅館の和室
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ふう」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「たまには遠方出張もいいもんだな」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「長閑な田舎、旨いご飯・・・」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ははは。こんな事言ってると 浜くんからジジ臭いって言われるな」
〇明るいベランダ
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「さて、明日から本格的に・・・」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「何っ!」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(なんだこれは!)
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(雨だ! こんなに静かな夜に!)
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(一体どういうことだ!)
〇旅館の受付
旅館の女将「お客さん、どこへ!?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「すみません、急いでるんで!」
〇屋敷の門
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「はあ、はあ、はあ・・・」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「降ってない・・・」
〇滝つぼ
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「『音の無い雨』ってあると思うか?」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「あ、いや。いや妄言だ 忘れてくれ」
〇屋敷の門
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(『音の無い雨』・・・)
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(そしてこの町の名前が音無雨町)
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(無関係とは思えないな)
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ふふ・・・これはまた 悪い癖が出てしまいそうだ」
???「・・・」
村、ダム建設計画、人探し。何も起きない筈はなく…😇
音の無い雨、旅館の片側?窓側しか見えてなかった?というところが推理ポイントなのか……?割と振り方横殴りだったし……うーん……
堀田&komarinetマジックにかかってしまってる気がする…一体全体何が起きてるんや……😇
探偵業の内側がいろいろと見えるお話でしたね☺️
しおりさん出てきて嬉しいです。
本当に、テレビのサスペンスドラマ見てるようです。
ここで栞里さんの登場とは…!!にくい演出ですね😆
謎の音の無い雨…この地にも魔法使いが!?
続きが気になる展開です!!