募集 喫煙者保護地蔵 オムニバス(脚本)
〇オフィスビル前の道
地球民族党の政治家「皆さん!喫煙者は悪です!」
地球民族党の政治家「この情報社会において、自他へのデメリットが明確な事はすぐに分かるのにも関わらず」
地球民族党の政治家「依然平然と吸い続けているのです!!」
地球民族党の政治家「これを”悪”と呼ばずしてなんと呼ぶでしょうか!?」
地球民族党の政治家「我々地民党は・・」
地球民族党の政治家「タバコを吸う事を現在の禁止ドラッグと同等・・いや──」
地球民族党の政治家「それ以上の罰則を与えるよう法改正したいと考えております!!」
地民党支持者「その通りじゃなぁ」
地民党支持者「何の罰則も無いなんて本当に信じられないわ」
「応援してます」
地球民族党の政治家「ありがとうございます!!」
おじいさん「・・」
〇古いアパートの一室
おじいさん「・・」
おじいさん「ふぅー」
おじいさん「何とも喫煙者には肩身の狭い世の中になったもんじゃ」
おじいさん「喫煙所も街にせいぜい一つだけ」
おじいさん「この一箱で6000円もたばこ税を払っているというのに」
おじいさん「何故、ここまで言われなければならないんじゃ」
「コラァ!!ジジィ!!テメェたばこ吸ってんだろ!?」
「煙がコッチ来てんだよ!! アパートで吸うなつったろ!!」
おじいさん「ひ、ひいっ」
おじいさん「・・喫煙者に安息はないんかのぅ」
〇古いアパートの一室
数ヶ月後・・
おじいさん「家で吸えんと、落ち着かんのう」
おじいさん「TVでもつけるかの」
〇テレビスタジオ
司会「ここで臨時ニュースです!!」
司会「たった今国会での審議が完了し・・」
司会「『喫煙者迫害法』が制定されました!」
司会「・・・ようやく」
司会「ようやくこの法が制定された事で」
司会「喫煙者は重大な罰則を受けるようになります」
司会「平和な世の中の・・・到来です」
〇古いアパートの一室
おじいさん「なっ・・・!?」
おじいさん「まさかあの馬鹿げた法案が通るとは・・・」
おじいさん「いかなる場所でも喫煙をした者は」
おじいさん「5年以上の懲役に処する・・」
おじいさん(殺人罪と同じ重さじゃぞ)
おじいさん「これはやるしかないのかのぅ」
おじいさん「禁煙を・・」
〇オフィスビル前の道
一週間後
おじいさん(当然じゃが)
おじいさん「街のどこにも喫煙所はない・・・」
おじいさん「タバコもどこにも売っていない・・・」
おじいさん(ヤニが恋しいわい)
水島 浩明「おい」
おじいさん「な、なんじゃ!?」
水島 浩明「アンタその匂い・・・」
水島 浩明「喫煙者だな?」
おじいさん「い、言いがかりはやめるんじゃ!!」
おじいさん「ワシは法が施行されてからは一度も吸っておらん」
水島 浩明「おっと、すまねぇな」
水島 浩明「驚かせるつもりは無かったんだ」
水島 浩明「実は俺も喫煙者だ」
水島 浩明「アンタの服から僅かに漂ってきたんでな」
水島 浩明「喫煙者だった者の特有の残り香が」
おじいさん「はぁ・・・」
おじいさん「だから・・・どうだと言うんじゃ」
おじいさん「思い出話でもするのか?」
水島 浩明「単刀直入に聞く」
水島 浩明「タバコ・・・吸いたくないか?」
おじいさん「そ、そりゃあ」
おじいさん「吸いたいが・・・無理じゃろ」
おじいさん「見つかったら懲役確定じゃぞ」
水島 浩明「もし、興味があれば・・・」
水島 浩明「1時間後にこの場所に来てくれ」
おじいさん「な、なんじゃ、この地図は!?」
おじいさん「お、おい!?」
おじいさん(うむぅ)
おじいさん(行くだけ行ってみるか)
〇ツタの絡まった倉庫
おじいさん「さて、さっきの男の言う通り来てみたわけじゃが」
おじいさん「なんじゃこの倉庫は・・・?」
おじいさん「そして・・・」
おじいさん(倉庫の前に鎮座しているあの地蔵はなんなんじゃ?)
水島 浩明「よぉ」
おじいさん「おぬしはさっきの!?」
おじいさん「ここは一体なんなんじゃ!?」
水島 浩明「詳しくは中で説明する」
水島 浩明「入ってくれ」
〇荒れた倉庫
おじいさん「中にはこんなに人が・・!?」
水島 浩明「全員喫煙者だ」
水島 浩明「現役のな」
おじいさん「ば、バカな!?」
おじいさん「政府はあの法の施行に合わせ超高性能なカメラや探知機を導入しておるんじゃぞ」
おじいさん「こんな倉庫とは言え、すぐに見つかるぞ!?」
水島 浩明「普通ならな」
水島 浩明「みんな!! パーティーの始まりだ!!」
〇荒れた倉庫
おじいさん「な、おぬしら何を!?」
おじいさん「衛星式煙探知器に感知されるぞい」
おじいさん「すぐにここに警察がやってくる!!」
水島 浩明「・・・安心しな」
水島 浩明「ここは守護られている」
水島 浩明「喫煙者保護地蔵によって・・・」
おじいさん「な、なんじゃと!?」
おじいさん「た、たしかに・・・」
おじいさん「警察が来ないのぅ」
喫煙者保護地蔵 「水島」
喫煙者保護地蔵 「どうだ?みんなヤレたかい?」
水島 浩明「ああ、いつもすまねぇ 喫煙者保護地蔵」
おじいさん「ひいっ」
おじいさん「地蔵が喋っておる!!」
喫煙者保護地蔵 「おっと、驚かせてしまったようだな」
喫煙者保護地蔵 「俺は喫煙者保護地蔵」
喫煙者保護地蔵 「アンタら喫煙者を」
喫煙者保護地蔵 「守護るモンだ」
おじいさん「どういうことじゃ」
水島 浩明「喫煙者保護地蔵が結界を張ると」
水島 浩明「喫煙者は認識されなくなる」
水島 浩明「たとえ政府が用意した探知器だろうがな」
おじいさん「そんな事が・・!?」
水島 浩明「さしずめここは喫煙者にとっての聖域(サンクチュアリ)ってワケよ」
水島 浩明「さ、じいさんも一本いっとけ」
おじいさん「う、うむ、では・・・」
おじいさん「お・・・お・・お・・・ うまい」
おじいさん「なんて素晴らしいんじゃ・・」
喫煙者保護地蔵 「そんなにうまそうにされちゃあ、 こっちも嬉しいねぇ」
水島 浩明「喫煙者保護地蔵、いつもすまねぇ」
水島 浩明「アンタも一本いっとくか?」
喫煙者保護地蔵 「俺はいいよ もうタバコは貴重なんだ」
喫煙者保護地蔵 「アンタらのためにとっておきな」
おじいさん(なんてハードボイルドなんじゃ)
〇荒れた倉庫
おじいさん「今日は本当に最高の一日じゃった」
おじいさん「誘ってくれてありがたい」
水島 浩明「なぁに、同じ喫煙者じゃねぇか!! 気にするな!!」
水島 浩明「それに礼なら・・・」
おじいさん「そうじゃ!! 喫煙者保護地蔵!!」
おじいさん「おぬしのおかげでゆっくりタバコが吸えた」
おじいさん「感謝する」
喫煙者保護地蔵 「ああ、アンタ今日初めて来たんだったな」
喫煙者保護地蔵 「気にするな、今後も遠慮なくヤッてくれ」
おじいさん「今後も・・・!? また来てよいのか!?」
喫煙者保護地蔵 「ああ、もちろんだ」
喫煙者保護地蔵 「ここには5000ダースの在庫がある」
喫煙者保護地蔵 「数年は保つはずだ」
おじいさん「お、おう!!」
おじいさん「生きる意味を見失っておったが」
おじいさん「また活力が湧いてきたわい」
おじいさん「では、また来させていただくぞ」
喫煙者保護地蔵 「水島・・・いい愛煙家を連れてきたな」
水島 浩明「だろ?」
〇荒れた倉庫
おじいさん「くぅーー、たまらんぞぉ」
おじいさん「この一服のためなら辛い日々も耐えられるわい」
おじいさん「今日は2箱分吸うぞい」
〇荒れた倉庫
水島 浩明「俺の仕事は監視と勧誘だ」
水島 浩明「生半可な愛煙家だとこの場所の事をゲロっちまうかもしれねぇからな」
おじいさん「そうじゃったんか」
おじいさん「だが、リスクを負ってまでどうしてそんな事を!?」
水島 浩明「喫煙所保護地蔵の意向だよ」
水島 浩明「1人でも多くの喫煙者を救いたいんだとよ」
おじいさん「喫煙者保護地蔵・・・」
〇荒れた倉庫
おじいさん「喫煙者保護地蔵も一服どうじゃ?」
喫煙者保護地蔵 「ふっ、俺はいいよ」
喫煙者保護地蔵 「集中力がぶれて結界張る力が弱っちまったら」
喫煙者保護地蔵 「アンタらを守護れねぇから」
おじいさん(なんて格好いい地蔵なんじゃ!!)
〇大会議室
地民党本部
地球民族党の政治家「喫煙者迫害法の反応は上々だが」
地球民族党の政治家「民衆はこの状態に慣れてしまっている」
地球民族党の政治家「それにまだ懲役を覚悟の上で吸っている輩もいれば」
地球民族党の政治家「秘密裏に組織的な喫煙活動を行なっている団体もあるとの噂」
地球民族党の政治家「これでは来年の選挙の目標議席に届かない」
地球民族党の政治家「・・・」
地球民族党の政治家「少々・・・強引な手をつかうか」
〇古いアパートの一室
おじいさん「さて、そろそろ倉庫に向かおうかのう」
おじいさん「なんじゃ!?水島からじゃ・・」
おじいさん「はい、もしも・・・」
じいさん、TVをつけろ
おじいさん「なんじゃ藪から棒に」
いいから早く!!
おじいさん「ふむぅ、わかったわい」
〇テレビスタジオ
司会「臨時ニュースです」
司会「政府は『喫煙者迫害法』の罰則の段階的な強化を発表」
司会「さらに」
司会「密告した喫煙者1名につき・・」
司会「50万円の懸賞金を支払うことを決定しました」
司会「さぁ、みなさん」
司会「我々の平穏を脅かす悪・・・ 喫煙者を・・・」
司会「炙り出しましょう!!」
司会「喫煙者狩りの時間です!!」
〇古いアパートの一室
おじいさん「な・・・」
おじいさん「なんじゃと・・・」
政府のヤツら強硬策に出やがった
民意を得てるからってありえねぇ
おじいさん「ど、どうする!?」
俺達は周囲の人間には昔タバコを吸っていた事がバレている
いつ誰が押しかけてきてもおかしくねぇ
とりあえず急いで喫煙者保護地・・・
あん!?なんだオメェら!!
おい、やめ、やめろぉ
おじいさん「み、水島!!」
おじいさん「ワ、ワシだけでも急がねば!!」
〇ツタの絡まった倉庫
喫煙者保護地蔵 「・・・」
おじいさん「ハァ・・・ハァ・・・」
喫煙者保護地蔵 「アンタは無事だったか!!」
おじいさん「ハァ・・・ワシ以外のみんなは!?」
喫煙者保護地蔵 「誰も・・・連絡がつかない」
おじいさん「そんな・・・!?」
喫煙者保護地蔵 「俺の力も、この圧倒的な喫煙者狩りの想いの力の前ではどこまで続けるかわからねぇ」
喫煙者保護地蔵 「だが」
喫煙者保護地蔵 「喫煙者狩りにあっている皆はまだ容疑の段階のはずだ。現物はここにしかないんだからな」
おじいさん「じゃったら・・・」
喫煙者保護地蔵 「ああ、口惜しいがタバコを全て処分するしか──」
こっちが怪しいぞ
地民党支持者「さっきの倉庫には何も無かったが」
地民党支持者「この辺は使われていない廃倉庫が多いからな」
地民党支持者「喫煙者達が隠れてるかもしれないわね」
喫煙者保護地蔵 「まずい・・・喫煙者狩りの連中が来た」
喫煙者保護地蔵 「急げ!!ココは俺が食い止める」
おじいさん「だ、だが、奴らの顔・・・」
おじいさん「見つかったらおぬしとてタダではすまんぞ!!」
喫煙者保護地蔵 「・・・覚悟の上だ」
おじいさん「くっ」
おじいさん「わかった!!ワシに任せろ!!」
地民党支持者「この倉庫が怪しいぞ」
地民党支持者「何よ!?この邪魔な地蔵!?」
地民党支持者「私達の平和を脅かす”悪”よ」
喫煙者保護地蔵 「ふっ、悪ねぇ」
喫煙者保護地蔵 「自由を履き違えてる連中の戯言だな」
喫煙者保護地蔵 「やはり俺が守護りたいのは」
喫煙者保護地蔵 「迫害の中、強く生きる」
喫煙者保護地蔵 「喫煙者達よ・・・」
地民党支持者「わけわからん事をのたまいやがって!! このクソ地蔵が!!」
地民党支持者「どかないならぶっ壊してやるわ」
〇荒れた倉庫
おじいさん「うおぉぉぉぉ」
おじいさん「喫煙者保護地蔵!!」
おじいさん「頑張って耐えてくれ!!」
〇荒れた倉庫
地民党支持者「ハァハァ・・・タフな地蔵だ」
地民党支持者「この中に大量のタバコと喫煙者が・・・」
地民党支持者「ない」
おじいさん「誰じゃおぬしら?」
おじいさん「ココはワシの採石場用の倉庫じゃよ」
地民党支持者「くそ、ココでは無かったか」
おじいさん「・・・不法侵入の詫びぐらいしたらどうじゃ?」
地民党支持者「五月蝿いわね!!紛らしいところに倉庫がある方が悪いのよ」
地民党支持者「コレは民意の元による正義の活動なのだ」
地民党支持者「次に行くぞ」
おじいさん「・・・とんだ民意じゃな」
おじいさん「タバコでも吸って落ち着いたらよいわ」
おじいさん「・・・喫煙者保護地蔵!!」
〇ツタの絡まった倉庫
おじいさん「・・・ッッ!?」
おじいさん「喫煙者保護地蔵!!」
喫煙者保護地蔵 「お、おお・・・ アンタ無事だったか・・・」
喫煙者保護地蔵 「タバコは・・・見つからなかったか・・・?」
おじいさん「ああ!!全部燃やせたわい」
喫煙者保護地蔵 「そうか・・それは良かっ・・・」
喫煙者保護地蔵 「グハッ」
喫煙者保護地蔵 「もう身体がもたねぇなぁ」
おじいさん「ワシらのためにどうしてここまで!?」
喫煙者保護地蔵 「喫煙者は・・・ずっとずっと虐げられてきた」
喫煙者保護地蔵 「そりゃあ昔はマナーの悪い輩が多かったよ」
喫煙者保護地蔵 「だがな、社会に容認してもらえるよう不断の努力を続けてきたのにこの仕打ちは・・・」
喫煙者保護地蔵 「あんまりじゃねぇか・・・」
おじいさん「喫煙者保護地蔵・・・」
喫煙者保護地蔵 「だが、今回の件でタバコ入手も吸うのも絶望的になっちまったな・・・」
喫煙者保護地蔵 「喫煙者保護地蔵の・・・名折れだ・・・」
おじいさん「いや・・・」
おじいさん「実は一本だけ隠しもっておいたんじゃ」
喫煙者保護地蔵 「・・・見つかるかもしれねぇのに豪胆なじいさんだ」
喫煙者保護地蔵 「良かったな・・・俺がまだ意識があるうちなら微弱な結界だが張れる」
喫煙者保護地蔵 「今のうちに・・・吸いな」
おじいさん「・・・いや」
おじいさん「コレはお前さんが吸うんじゃ」
おじいさん「ワシはもう十分喫煙者保護地蔵のおかげで吸わせてもらった」
おじいさん「せめてもの・・・せめてもの礼をさせてくれ」
喫煙者保護地蔵 「・・・」
喫煙者保護地蔵 「すまねぇな」
〇黒背景
「ああ・・・」
「どうじゃ?うまいか?」
「ああ、格別だ」
「こんなにうまいタバコが吸えたヤツは」
「そうはいないだろうよ」
「喫煙者保護地蔵・・・」
「守護ってくれて・・・」
「ありがとう」
「ふっ、湿っぽいのはやめようや タバコが湿気っちまう」
「・・・煙のせいだな」
「なんだか目が霞んで・・・」
おじいさん「さらばじゃ喫煙者保護地蔵」
おじいさん「お主の事、ココで吸ったタバコの事」
おじいさん「ワシは吐き出す事無く胸の内に」
おじいさん「永遠に留めておくわい」
リクエストが叶っていたのに、だいぶ気付くのが遅れてました😅
しかし、まさかこんなに素敵なお地蔵様になるとは!
強く、優しく、格好良く! こんなお地蔵様に守護られたい!!
今夜の一服は喫煙者守護地蔵様に捧げます😃🚬
愛煙家を衛星監視までするとはとんだディストピア(笑)
こんな意味不明な地蔵(褒め言葉)にもかかわらず、最期はジ~ンと来ちゃいました😂
喫煙者なのでフィクションとは思えない😱 中々真に迫る面白さでした。
いやしかし切ない! こんな地蔵がいてくれれば、綺麗に棲み分けが出来るんですけどねぇ。