シュミそーぶ!

マツモトスギ

第2話「動画を観るのが趣味です。」(脚本)

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〇黒
  第2話
  「動画を観るのが趣味です。」

〇学校の部室
???「いやー、キミ本当に逸材だったからさ?」
???「来てくれなかったらどうしようって、心配してたんだ」
???「ち、ちょっと待ってくださいな!? この不審者、部長のお知り合いですか!?」
???「うん。というか、今日知り合ったんだけどね」
???「そっかー、不審者じゃ無かったのかー」
松本裕樹(・・・誰が不審者じゃゴラァ!)
???「ってか、何で部室に呼び寄せたんです?」
???「あ、それはね?」
???「はっ!ま、まさか・・・。 入部希望者!?」
???「・・・なーんて、流石に無いっすよねー」
???「この人が実は新部員でした! なんて言われたら私、面白すぎて気絶しちゃいま──」
???「あっ、流石だねまーちゃん」
???「・・・へ?」
???「その通りだよ?」
???「彼が、新しいシュミそーの部員」
???「・・・えっ」
???「・・・」
???「えええええええええええええええええええええええええっ!?!?!?!?」
「ええええええええええええええっ!?!?」
松本裕樹「えええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?!?!?!?!?」
???「あっ、あははははは・・・」
???「まっ、愛奈ちゃん!?」
???「ちょっ、意味わかんないわよ!?」
  ──いや違う。
  1番意味がわからないのは、この俺だ。
松本裕樹「ち、ちょっと待ってください・・・!」
松本裕樹「俺が新入部員って・・・一体どういうことですか!?」
???「あ、ごめんね? 何も説明してなかったね」
???「私たちね? "趣味捜索部" って部をやってるの」
松本裕樹「趣味捜索部・・・? 何ですかそれは・・・」
???「そのままの意味だよ? 趣味を探すっていう部活」
  いや、わからない。
  というか、そんな部活は聞いたこともない。
松本裕樹「・・・いや、それよりも!」
松本裕樹「俺は部活に入るなんて、一言も言って無いですよ!?」
松本裕樹「勝手に入部させられても・・・困りますって!」
???「あははっ、ごめんね?」
???「でも、松本くん?さっき "趣味が無い" って言ってたよね?」
松本裕樹「あー、言いましたね・・・。 それで趣味探す部活に連れてこられたわけですか・・・」
???「そうそう。そゆこと」
  だとしたら、余計なお世話だ。
  どうせ、俺が楽しめる趣味なんてあるわけがない。
  自分でも、探してみた事はある。
  だが、何も見つからなかった。
松本裕樹「・・・いいっすよ」
???「ん?」
松本裕樹「・・・いいじゃないですか。別に趣味なんか無くたって」
???「・・・」
松本裕樹「俺は・・・どうせつまらない人間なんです。 つまらない人生を歩むべきなんです・・・」
松本裕樹「どうせ俺なんて・・・何の価値も──」
???「そんなことないよ?」
松本裕樹「・・・へ?」
???「ふふっ、何だか懐かしいな」
???「私は、見つけてほしいよ」
松本裕樹「・・・」
???「キミに何があったのかはわからないけど、私は思う」
???「誰にでも、人生を "楽しく生きる" 権利はきっとあるはずだって」
松本裕樹「楽しく・・・生きる・・・」
???「趣味、ってさ。 人生において、結構大きなものなんだよ?」
???「遊びごとみたいなイメージかもしれないけど、趣味に生きる意味を見出している人だって、たくさんいる」
???「何なら趣味を仕事にしちゃう人もいるしね」
???「それくらい、可能性があるものだって事を、キミには知ってほしいな」
松本裕樹「・・・」
???「・・・もう一回、探してみない?」
???「今度は、私たちがいるから。ね?」
  趣味・・・か。
  俺は、諦めていた。
  つまらない人生でも、仕方がない。
  俺は、所詮その程度の人間だと。
松本裕樹「・・・無理かもしれないですよ?」
???「ん?」
松本裕樹「部活に入っても、結局何も見つけられないかもしれない・・・」
松本裕樹「自分だけ何も見つからない。そうなれば、皆さんに迷惑をかけるだけ・・・」
???「あははっ、やっぱりキミ、面白いね?」
松本裕樹「・・・何がですか?」
???「私たちも、まだ何も見つけられてないんだよ?」
松本裕樹「えっ、そうなんですか・・・?」
???「うん。それに、迷惑なんて考えなくていいよ?」
???「そもそもこれ、私がなんとなく立ち上げたもので、正規の部活動じゃないんだ」
???「だからほら、緩くやろう?友達の集まりみたいな感じでさ?」
松本裕樹「・・・」
  友達みたいな感じで・・・。
  あんな変な登場の仕方をしたのに、みんなと仲良く出来るだろうか。
???「あ、ってかさ?」
松本裕樹「・・・はい?」
???「私、未だに自己紹介してないね? やばいね?」
松本裕樹「あー、確かに・・・」
???「ちょうどいいね。 みんなで自己紹介しようか」
松本裕樹「自己紹介・・・か。 うっ、頭が・・・」
???「あははっ、大丈夫だよ? 緊張しなくても」
???「ほら、こっち来て?」
松本裕樹「あっ、はぁ・・・」

〇学校の部室
???「はい、みんないい? 今から自己紹介するよ?」
???「あの、部長? この人、起きないんですけど・・・」
???「あひひひひ・・・新入部員・・・」
???「あ、そうだ。 いいものがあるの」
???「まーちゃん? アイス食べよ?」
???「ええっ、いいんですか?部長!?」
???「・・・はぁ!? あんた本当に気絶してたの!?」
???「愛奈ちゃん、アイス好きだもんね」
松本裕樹「・・・」
  俺は、女子たちの会話の中でただ1人・・・
  無になっていた。
  自己紹介・・・。自分を解説するだけなのに、どうしてこんなにも緊張するのだろう。
???「これでみんな起きたね?」
???「それじゃあ、私からいくよ?」
中川ひまり「私は、中川ひまり。 3年生で、一応この部活の部長をやってるよ」
中川ひまり「部長と言っても、特に何もしてないんだけどね?」
中川ひまり「うーん、後は特に言うこともないかな? そんな感じで、よろしくね?」
???「あはははっ!」
中川ひまり「ん?」
???「いやー、相変わらず適当ですね部長の自己紹介は!」
中川ひまり「そう?」
???「ここは私が! 自己紹介のお手本ってもんを見せてあげますよ!」
浜崎愛奈「私の名前は浜崎愛奈! 気軽に"まなりん"って呼んでねっ!!!」
???「誰もそんな呼び方したこと無いわよ・・・」
浜崎愛奈「そして、華のある高校2年生・・・。 ふふふっ・・・。3年生諸君。私が羨ましいですよね?」
浜崎愛奈「私はまだまだ青春を謳歌できるっ!!! そしてっ!!!!」
浜崎愛奈「好きな食べ物はっ!!!!」
浜崎愛奈「アイスっっっ!!!!!!! アイスが好きですっ!!!!」
???「言われなくてもわかるわよ・・・」
浜崎愛奈「はい!そうそうアイスっ!! 好きなんですよ〜!! 食べすぎるとお腹痛くなります!! 何なら今もちょっと痛いです!!」
浜崎愛奈「あっ!そうだ! せっかくの機会ですし、皆さんにアイスの素晴らしさをお伝え──」
???「いやいや!!もういいわよ!! あんたのくどい自己紹介で読者が離れて行くから!!!」
浜崎愛奈「え?何それ?」
???「・・・はぁ。まあいいわ。 次はあたしの番よ」
谷口理依奈「・・・あたしの名前は、谷口理依奈。 2年生よ」
谷口理依奈「・・・まあ、別に語ることも無いわね」
谷口理依奈「それより・・・!」
谷口理依奈「あんたよあんたっ!!!」
谷口理依奈「そこのボケーっとした顔で座ってるあんたよ!!!」
松本裕樹「えっ?あっ、はい」
谷口理依奈「あんた、部長に気に入られてるみたいだけど、あたしは認めてないから!」
松本裕樹「えっ、あっ、いや、別に入部するとは・・・」
谷口理依奈「あっ、いや、に、入部は別に・・・したらいいんじゃない?」
浜崎愛奈「あー、ヤバいよーりいちゃん?」
浜崎愛奈「その不審者さんが入部してくれなかったら・・・」
松本裕樹(だから不審者じゃねーっつーの!!!)
谷口理依奈「わっ、わかってるわよっ!?」
谷口理依奈「たっ、ただ、女の子に囲まれたからって、調子に乗らないでよ。いい!?」
谷口理依奈「わかった!?」
松本裕樹「いやっ、別に調子に乗ってないですけど・・・」
???「り、理依奈ちゃん?そ、その辺にしておこ?ね?」
谷口理依奈「あっ・・・うん・・・」
???「じ、じゃあ、次は私かな・・・?」
山口優奈「え、えっと、山口優奈と言います・・・。 一応、3年生だけど・・・」
山口優奈「あっ、ええと、ごめんね? あんまり人前で話すの、得意じゃ無いんだ・・・」
山口優奈「た、ただ嫌いとか、そういうわけじゃ無いから・・・。 その、仲良くしてくれたら、嬉しいな・・・」
谷口理依奈「はぁ・・・。さすが優奈ね。 ほら、自己紹介ってのはこうやって簡潔に行うものなのよ。わかる?」
浜崎愛奈「りいちゃんのは紹介じゃ無くて喧嘩だったけどね」
中川ひまり「あははっ、ゆうちゃん?頑張ったね?えらいね?」
中川ひまり「さてと、これで私たちの紹介は終わりだね」
中川ひまり「後は、松本くんかな」
松本裕樹(ひっ!ひいいっ!!)
  ──蘇る。
  入学初日のあの事件が、鮮明に蘇る。
松本裕樹(このままでは・・・! またあのわけのわからない自己紹介が始まってしまう・・・!)
  だが、さすがにここまで来て、俺だけやらないわけにはいかない。
松本裕樹(だ、大丈夫だ・・・! 俺は大丈夫だっ・・・!!!!)
  俺は深く息を吸い、呼吸を整える。
  大丈夫。あの時とは違う。
  今、俺の目の前にいるのは、たった4人。
  ──自分を、信じろ。
松本裕樹「・・・」
松本裕樹「・・・皆さん。どうも」
松本裕樹「初めまして」
松本裕樹「ぼぼぼ!!!!僕の名前はですね!!!??? ええ!!!ええとええ!!!はいっ!!!松本裕樹といいます!!!はい!!!!」
「・・・」
「・・・」
松本裕樹(やっぱりね・・・)

〇学校の部室
中川ひまり「とりあえず、これで松本くんもみんなも、お互いの事がわかったね?」
松本裕樹「はい・・・」
中川ひまり「そしたら、後は部活動の紹介をしようかな」
中川ひまり「松本くんも、私たちがどんな活動をしているのか、気になるよね?」
浜崎愛奈「別に、活動ってほどの大した事やってないっすけどねぇー?」
谷口理依奈「・・・それを言ったらおしまいよ」
中川ひまり「まあ、その通りかもね? ほんと、活動って言っていいのかも怪しいんだけど」
中川ひまり「私たち、趣味捜索部はね? 放課後、ここに集まって・・・」
中川ひまり「ゲームしたりとか、お菓子食べたりとか、色々な事をしてるんだ」
松本裕樹「・・・へ?ゲーム?お菓子?」
松本裕樹「それって部活ってより、ただ遊んでるだけなんじゃ・・・」
中川ひまり「あははっ、そう思う?だよね? でも、一応私たちの目的は趣味探しだからさ」
中川ひまり「例えば、ゲームは楽しかったらそのまま趣味に出来るし、お菓子も食べるだけじゃ無くて、作る側に発展することもあると思うの」
松本裕樹「遊んでるようで、常に趣味に出来ないか考えてる・・・って事ですか?」
中川ひまり「うーん。まあそんな感じ?」
中川ひまり「まあ、実際にやってみた方がわかりやすいかな?」
  そう言うと、部長は棚の上から何かを取り出す。
中川ひまり「はい、これ」
松本裕樹「パソコン・・・ですか?」
中川ひまり「松本くんは、NowTubeとか観る?」
松本裕樹「ああ、はい。まあ、観ますけど・・・」
  ──NowTube。
  2000年代後期より発展した、動画投稿サイト。
  世界中のあらゆる動画を視聴でき、中には動画を投稿する事で収入を得ている者たちもいる。
  俺も毎日のように観ているし、動画を投稿したこともある。
  退屈な世界を生きる俺たちには必須のコンテンツだ。
中川ひまり「良かった。じゃあ、今日はこれでいこう」
浜崎愛奈「おおっ、部長ー?今日はなうつべですか!? 私、観たい動画があるんですよっ!」
  そう言うと、彼女は待ちきれない様子で、PCを起動する。
谷口理依奈「はぁ・・・。愛奈のやつは本当に趣味無いの? やけに楽しそうだけど・・・」
山口優奈「り、理依奈ちゃんは、あまり、好きじゃ無いよね・・・?NowTube・・・」
谷口理依奈「あんなの全然有意義な趣味じゃ無いわ。 ボーッと画面見てるだけで1日終わっちゃうし・・・」
山口優奈「わ、わかるよ・・・その気持ち・・・」
松本裕樹(それにしても、すごいなぁ。 いくら非正規の部活とは言え、動画観るだけなんてのもありなのか・・・)
浜崎愛奈「あっ!これです!これですよ!!」
中川ひまり「何これ?やばいね?」
中川ひまり「ほら、おいで?松本くんも一緒に観よ?」
松本裕樹「あっ、はい・・・」
  ──こうして俺は、動画視聴の世界へと呑み込まれていった・・・

〇学校の部室
  ──動画を観始めてから、どのくらい経っただろうか。
  本当に、このサイトは時間泥棒である。
  部活だとかそんな事は忘れて、みんなと画面に釘付けになっていた。
浜崎愛奈「あははははははっ!!!!! あひひひひあはははははっ!!!!」
中川ひまり「あはははっ、まーちゃん笑いすぎだね?」
浜崎愛奈「いやあはははははっ!!!!! だってっははははははははっ!!!!」
谷口理依奈「あんた達いつまで騒いでんのよ・・・。 もう日が暮れちゃったわよ?」
山口優奈「あははは・・・。 全然聞こえて無いね・・・」
浜崎愛奈「あははははははっ!!!! あひひひひあはははっ!!!!!」
浜崎愛奈「し、死ぬあひひひひっ!!!!!! 笑いすぎてっひゃははははは!!!! 死んじゃあひひひははあははは!!!!!」
松本裕樹(よほどツボなんだなぁ・・・ この動画・・・)
松本裕樹(まあ、確かに面白いけどな・・・)
浜崎愛奈「あっ、ひひひひぃ・・・。 はぁ・・・。やっと終わったぁ・・・。 お、お腹痛いっひひひっ・・・!」
中川ひまり「あははっ、ねえまーちゃん?そろそろいい時間だし、この辺に──」
浜崎愛奈「あっ!待ってくださいこれ! メントスコーラですって!」
中川ひまり「ん?」
浜崎愛奈「いやー、メントスコーラとか懐かしいっすねぇ・・・」
浜崎愛奈「色んなNowTuberがこぞってやってましたけど、今やったら絶対流行んないですよこんなの!」
浜崎愛奈「でも、だからこそ懐かしい感じがしますよね!!ね!?」
松本裕樹「メントスコーラ・・・僕もやった事あります」
浜崎愛奈「おっ!マジ!? まさかの経験者!?」
浜崎愛奈「私、やった事ないなー。 あれ片付け大変そうだし!」
松本裕樹「ああ・・・あれは確かに面倒ですね・・・」
  ──あれは確か、俺がまだ中学生になりたての頃だっただろうか。
  今思えばあんなこと、馬鹿馬鹿しく思えてくる。
  でも、昔はそれで楽しかったのだ。
松本裕樹「あっ、そう言えば・・・」
浜崎愛奈「ん?」
松本裕樹「僕、昔動画投稿したことがあるんですよ」
松本裕樹「その時に、メントスコーラの動画も投稿したような・・・」
浜崎愛奈「えっ!? まさかNowTuber!?」
松本裕樹「いや・・・ただ投稿してみただけですよ・・・。 再生数とかほぼ無かったですし・・・」
浜崎愛奈「へぇ、いいじゃん!?」
浜崎愛奈「私もなぁ・・・。やってみたいんだけど、イマイチ踏み出せないんだよねー」
浜崎愛奈「コメントで暴言とか吐かれたら、どうしよう・・・。みたいな?」
中川ひまり「まーちゃんは気にしなそうだけどね?」
浜崎愛奈「いやいやヘコみますよー? それこそ部長の方が強いんじゃ無いですー?」
浜崎愛奈「何言われても笑って誤魔化してそうな気がしますよ?」
中川ひまり「あははっ、どうだろうね?」
  動画投稿・・・か。
  あの頃の俺には、まだそんな事をする気力が残っていた。
  いつから、消えてしまったのだろう。
浜崎愛奈「・・・まあいいや! 部長?最後にこの動画だけ観てもいいですか!?」
中川ひまり「うん。いいよ。 それで終わりね?」
浜崎愛奈「はーい!!」
  彼女は、嬉しそうな様子でマウスを動かし、動画へとカーソルを定める。
  動画のタイトルは
  「メントスコーラやってみた。」
  なんてシンプルなタイトルだろう。
  きっと俺みたいなつまらない人間が制作した動画に違いない。
浜崎愛奈「あはははっ!いきますよ? そいっ!!」
浜崎愛奈「・・・」
浜崎愛奈「・・・?」
浜崎愛奈「・・・えっ?」
中川ひまり「あれ?」
松本裕樹「あっ・・・え?」
松本裕樹「ま、まさか・・・」

〇学生の一人部屋
まっちゃん「ブンブンハローナウチューブ!!!!! どうもまっちゃんです!!!!!」
まっちゃん「今日は!巷で話題のですね?」
まっちゃん「メントスコーラ!をやってみようと思います!!!」
まっちゃん「じゃあ、早速やっていきましょう!!!」
まっちゃん「はい!えーと、これコーラですね? 家の冷蔵庫に入ってたやつなんですけど!」
まっちゃん「多分、僕のお父さんの飲み掛けですね!? はい!!まあ、これしか無いので、これでやります!!」
まっちゃん「後はこれ!えー、メントスですね! これを、この中に入れていきたいと思います!!」
まっちゃん「じゃ、いきまーす!!!」
まっちゃん「・・・」
まっちゃん「・・・あれ?」
まっちゃん「・・・あれー?おかしいですねー? 何も起きないなー?」
まっちゃん「ま、まあいいでしょう! とりあえず、飲んでみます!」
まっちゃん「炭酸ねぇええええええええ!!!!!」
まっちゃん「炭酸全部抜けとるやんけええええええええええ!!!!!!!」
まっちゃん「・・・」
まっちゃん「なるほど、だから何も起きなかったのか・・・」
まっちゃん「皆さんは、メントスコーラをする時は、炭酸が抜けてないか確認してください!!」
まっちゃん「と言う事で、まっちゃんでしたー!! チャンネル登録よろしくお願いします!!!」
まっちゃん「それでは、バーイ!!!」

〇学校の部室
「・・・」
谷口理依奈「あれ?なんか急に静かになったわね・・・?」
山口優奈「な、何だろう・・・?」
浜崎愛奈「・・・」
浜崎愛奈「・・・え、えーと、わ、私は何も観てないですよ!?」
松本裕樹「僕も何も観てません」
松本裕樹「何も無かった。ええ、何も無かった」
松本裕樹「本当に何も無かった。もう真っ暗です。本当に画面に何も映っていなかった。これはもう絶対間違い無いです。絶対に」
中川ひまり「あははっ・・・」
中川ひまり「あはははははっ!」
浜崎愛奈「ぶ、部長・・・?」
中川ひまり「あはははっ、やばいね?最高だね?」
浜崎愛奈「えっ・・・?」
中川ひまり「私は面白かったよ?松本くん。 楽しそうだったし。ね?」
松本裕樹「いやそんな事ないですあれはもう存在してはいけないものなんですこの世にあっては害をなすものなんです」
中川ひまり「あはははっ、そうなんだ?」
中川ひまり「ねぇ、みんな?」
中川ひまり「私、いい事思いついちゃった」
浜崎愛奈「いい事・・・ですか?」
中川ひまり「うん。えっとね?」
中川ひまり「シュミそーのみんなで動画撮って、投稿してたら面白そうじゃない?」
浜崎愛奈「なんですと!?」
谷口理依奈「ちょ、ほ、本気で言ってるの・・・!? 私たちが動画撮ったところで・・・」
中川ひまり「あはははっ、びっくりした?」
中川ひまり「別に、すごい動画を作ろうってわけじゃないよ?」
中川ひまり「ただ、一回やってみてもいいかなって」
中川ひまり「みんなで動画を撮って、それをネットに投稿する」
中川ひまり「私は楽しいと思うよ? 新しい世界が見えるかもしれないし」
浜崎愛奈「うーん。まあ、部長が言うならー。 私はやってみてもいいですよー?」
山口優奈「わ、私もいいと思うな・・・? 楽しそうだし・・・」
谷口理依奈「し、仕方ないわね・・・ あんた達がやるなら・・・私も・・・」
中川ひまり「あはははっ、じゃあ決まりだね?」
中川ひまり「そしたら、明日の放課後、校庭のプールに集まろうか」
浜崎愛奈「えっ、プールですか?」
谷口理依奈「な、何の動画を撮るつもりなの・・・?」
中川ひまり「あはははっ、それは秘密だよ?」
中川ひまり「それと・・・松本くん?」
松本裕樹「えっ、あっ、はい」
中川ひまり「松本くんにも是非、参加してほしいな」
松本裕樹「えっ、僕は・・・」
中川ひまり「その後で、決めてほしいの」
中川ひまり「私たちの部に、入ってくれるかどうか。ね?」
松本裕樹「は、はぁ・・・」
中川ひまり「合わないと思ったら、無理にとは言わないよ」
中川ひまり「でも、もし少しでも楽しいと思ってくれたら・・・」
  ──俺には、何も無い。
  だが、少なくとも、彼女はそんな俺を受け入れようとしてくれている。
  俺みたいな"無"の存在を、受け入れようとしてくれている。
松本裕樹「・・・」
松本裕樹「・・・わかりました」
松本裕樹「・・・行きます」
中川ひまり「あははっ、やっぱりキミ、最高だね?」
松本裕樹「・・・わからないですよ。入部するかどうか」
中川ひまり「あははっ、それは焦らなくていいよ?」
中川ひまり「ゆっくり、考えてくれたらいいよ」
松本裕樹「・・・はい」
  ──こんな事は初めてだ。
  俺はずっと、人に避けられ続けて来た。
  それだからか、実感が湧かない。
中川ひまり「あっ、そうだ」
中川ひまり「松本くんには、水着を持って来てほしいな」
松本裕樹「えっ、水着・・・?」
中川ひまり「そうそう、お願いね?」
松本裕樹「は、はぁ・・・」
中川ひまり「そしたら今日は解散かな? みんなお疲れ様だね?」
中川ひまり「明日の放課後、校庭のプールに集合ね?」
「はーい!」
松本裕樹「・・・」
松本裕樹「・・・はい」
  ──こうして俺は、趣味捜索部で行われる動画撮影会に参加することになった。
  うまくいくかはわからない。楽しいかどうかわからない。
  それでも、やってみたいと言う気持ちが少しでもあるのなら・・・
  ──つづく

次のエピソード:第1話「隠れるのが趣味です。」

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