殺し屋、出勤中。

吹宮良治

エピソード19(脚本)

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吹宮良治

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〇古めかしい和室
結城あかり「鍵まで開けられるなんて、何でもできるのね」
不破誠「あいにく盗みはしたことがない」
結城あかり「お金はこの部屋にあるの?」
不破誠「おそらく」
結城あかり「あいつらが寝ている隙に盗み出せれば・・・」
不破誠「そう簡単にはいかないと思うがな」

〇古めかしい和室
「!!」
不破誠「・・・おでましか」
岩重君子「随分と野蛮なことするねぇ」
結城あかり「どっちがよ」
東条昌弘「盗み出そうだなんて、警察呼びますよ」
不破誠「盗む?」
不破誠「さっきもこの女に言ったが、盗みはしたことがない」
東条昌弘「?」
不破誠「お前らとやりあうことは、計画に織り込み済みだ」
東条昌弘「これは正々堂々とした盗人さんですね」
不破誠「鍵を開けるときは、その中の人間を消す時だけだ」
東条昌弘「・・・なるほど」
岩重君子「まさか、私たちが依頼した殺し屋に命を狙われることになるとは。 おかしな話だねぇ」
結城あかり「・・・彼のお金はどこ」
岩重君子「彼? 私の息子のことかい」
岩重君子「ふざけんじゃないよ。金は私のもんだよ」
結城あかり「彼が命をかけて残してくれたもの」
結城あかり「あなたに取られると知って、受取人を私にした時、彼がどんな気持ちだったか」
岩重君子「知らないね」
結城あかり「・・・もう諦めなさい」
岩重君子「黙りな! この金は私のもんなんだよ!」
  奥にあったバッグを取り出す君子。
岩重君子「この金は死んでも渡さない」
結城あかり「・・・狂ってる」
岩重君子「東条、あとは頼んだよ。 私が逃げる時間稼ぎをしな。 命に代えてもね」
東条昌弘「かしこまりました」
  部屋の窓から逃げていく君子。
結城あかり「待ちなさい!」
不破誠「俺から離れるな!」
  あかりは君子を追っていく。
東条昌弘「あの女一人の追っ手など、取るに足らず。 奥様の返り討ちにあっておしまいです」
不破誠「・・・・・・」
東条昌弘「さて、我々だけで楽しみましょう」
不破誠「二分あれば、俺も後を追うことができる」
東条昌弘「みくびられましたね。 もう少し粘ってみせますよ」
不破誠「岩重君子はお前を駒として捨てたんだぞ。 分かってるのか」
東条昌弘「駒として使って頂けただけで嬉しいですね」
不破誠「どうしてそこまでして、岩重君子に忠誠を誓う」
東条昌弘「あの方は、私が国から捨てられ、失意のどん底にいるところを救ってくださった」
不破誠「・・・・・・」
東条昌弘「あの方が私を利用しているのは最初から分かっていました」
東条昌弘「でもそれがなんです? 私はあの方のために働きたい」
不破誠「・・・・・・」
東条昌弘「もともと私は国の駒だった。 その親が代わっただけです」
東条昌弘「駒は、親がいるだけで幸せなんです」
不破誠「・・・・・・」
東条昌弘「あなたも私と同じ穴の狢だと思いますがね」
不破誠「・・・話は終わりか」
東条昌弘「・・・行きますよ」
不破誠「時間が経過しすぎた。一瞬で終わらせる」
  その場に倒れる東条。
不破誠「頚椎(けいつい)へのダメージ。 しばらくは思うように身動きはとれない」
東条昌弘「・・・伝説の殺し屋。 殺し屋にしておくのは惜しいですね」

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