殺し屋、出勤中。

吹宮良治

エピソード20(脚本)

殺し屋、出勤中。

吹宮良治

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〇黒
  「不破誠。これがお前の新しい名前だ。
  今日からそう名乗れ」
  「身寄りのないお前を拾ったのは、哀れんだからだと思うな。
  日陰の人生なら、その世界で一番になりゃいい」
  「この世の中にはろくでもない連中がいくらでもいる。
  そいつらを見返してやれ」
  「拳銃を扱うのは初めてか?
  ・・・相変わらず無口な男だな」
  「不破誠、その名を闇の世界で轟かせてやれ」

〇病室(椅子無し)
不破誠「・・・ここは」
東条昌弘「・・・目を覚ましましたか」
不破誠「・・・お前。結城あかりは!」
不破誠「うっ・・・」
東条昌弘「動かない方がいい。傷口が開きます」
不破誠「・・・・・・」
東条昌弘「あなたは、あの女を庇って、肩を撃たれた」
不破誠「・・・結城あかりは」
東条昌弘「あなたのお仲間が連れていきました」
不破誠「・・・灰島」
東条昌弘「・・・今頃はもう」
不破誠「お前の推測など聞いていない」
東条昌弘「無駄だとは思いますが、どうしても行くというのなら、あなたの拳銃や荷物はまとめて、そこに置いてあります」
不破誠「・・・・・・」
東条昌弘「勘違いしないでください。 病院の人間にあなたの正体がバレたら、私の立場も危うくなりますから」
不破誠「・・・警察に出頭するんだな」
東条昌弘「もちろん。 奥様の安全と、お金の無事を確認したら、そのつもりです」
不破誠「・・・全て、岩重君子の指示で旦那と、息子を殺害したんだな」
東条昌弘「自分の子供より大切なものなどない。 そんな家族愛を感じさせるセリフが似合う世の中は、とうの昔に終わってます」
不破誠「・・・・・・」
東条昌弘「奥様は何よりも自分を愛してやまない人です」
不破誠「お前が止めてやるべきだったんじゃないのか」
東条昌弘「間違ったことだと分かってます。 むしろあなたよりも」
不破誠「・・・・・・」
東条昌弘「ただ、飼い犬は飼い主の幸せだけを願うものです」
東条昌弘「それが人の道から外れたことだとしても」
不破誠「・・・・・・」
東条昌弘「この意味は、あなたにも理解できるはずです」
不破誠「・・・・・・」

〇病院の入口
不破誠「・・・急所は外れたとはいえ、腕が麻痺してきたか。 まともに拳銃を握れるのか・・・」

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