第四話(脚本)
〇古書店
ヨル「この少年がもし、"俺"だったら...」
ヨル「見つけたことになるな」
ヨル「...」
レティシア「で、殿下?」
ヨル「...」
ヨル「ッハ」
ヨル「あははははっ」
ヨル「なんてな」
ヨル「いやいや、俺の名演技すごいだろ」
ヨル「そういえば、そなたの名を 聞いていなかったな」
ヨル「俺はヨル・ガンドだ」
レティシア「ヨル...ガンド...?」
ヨル「ああ、そなたは?」
レティシア「わたしは、レティシア・キャロルです...」
ヨル「え・・・?」
レティシア「あの、もしかしてあなたは...」
ヨル「・・・っ」
ヨル「ほおー...」
ヨル「そなたも"レティシア"と言うのだな」
ヨル「俺の知り合いにもいてな...」
レティシア「それはきっとわたっ...」
ヨル「んああ!」
ヨル「もう城へ戻らねばっ、あ、 ちゃんと帰ってくるのだぞ?」
ヨル「テグリスのために...」
レティシア「あ!待って!」
レティシア「ドンちゃんっ!」
レティシア「殿下...」
レティシア「忘れてると思い込んでた、 けど名前を聞いて思い出したのに」
レティシアは、写真に写る少年の頬を
そっと撫でてみた
〇西洋の街並み
ヨル「はぁ、はぁ...」
ヨル「堪えられないっ...」
ヨル「テグリスの心を動かすあの子が、 レティなんて...」
ヨル「俺は、どうしたらいい...?」
テグリス「殿下?」
テグリス「なぜ城下に?」
ヨル「テグリス...」
ヨル(いま、お前に会いたくない気分だった)
ヨル「絶対幸せ掴むんだぞ?」
テグリス「は?」
ヨル「これは"命令形"だからな」
ヨル「じゃ!」
テグリス「...」
テグリス「もしや──」
〇古書店
レティシア「ふっうう・・・」
レティシア「どうして・・・っ」
テグリス「っ・・・」
テグリス「無事か?」
レティシア「あっ、テグリスさん・・・」
レティシア「ごめんなさい、いまはちょっと・・・」
テグリス「何も答えなくて良い」
テグリス「ただ俺の話を聞いてくれないだろうか」
〇古書店
テグリス「そなたのことは、会う前から知っていた」
レティシア「えっ」
テグリス「殿下が幼い頃の写真に、 そなたも写っていたからだ」
テグリス「もう、捨てようとされてた 本に挟まれていた」
テグリス「その写真のことを、殿下が覚えているのか 忘れているのかは俺にも分からなかった」
テグリス「だが、先ほど会った殿下の表情からして そなたのことを覚えていたみたいだ」
レティシア「っっ・・・」
テグリス「・・・殿下には敵わない、か」
テグリス「なあ、おかしなことを言っても良いか?」
レティシア「えっ」
テグリス「レティシア、」
テグリス「そなたが好きだ」
レティシア「っ!」
テグリス「そなたが許すのなら、 またそなたに口づけしても・・・良いか?」
レティシア「嫌ですっ」
テグリス「っ」
レティシア「そのっ、テグリスさんが嫌なわけでは」
レティシア「ただ、わたしには、ずっと・・・」
テグリス「クスッ」
テグリス「行け」
テグリス「殿下のもとへ」
レティシア「・・・・・・失礼しますね」
テグリス「・・・っ」
テグリス「これで良いのだ・・・」
テグリス「所詮は殿下の部下なのだから・・・」
〇西洋の街並み
図書館の外に出たレティシアは、
辺りをぐるりと見回し、
ヨルの後ろ姿を見つけた
レティシア(殿下、なんて叫んだら、みんな驚くよね)
レティシア(殿下は、軍服を脱いだら 王様でもなく軍人でもなく、)
レティシア(一市民として対等でありたいと)
レティシア(名前をドン・ウィルソンとしている)
レティシア(そうだよ、全部思い出した)
レティシア(思い出したんだよ・・・? だから──)
レティシア「ドンちゃん!」
ヨルは大声で呼ぶレティシアの声に
驚いて振り返った
ヨル「っ!レティ・・・シア」
レティシア「会いたかったよ?」
レティシア「会いたかったっ、ずっと、 ずっと好きでいたから!」
ヨル「え!マジか」
ヨル「いやっだが、テグリスがぁ・・・」
ヨル「テグリスの想いを尊重すべきだ!」
ヨル「・・・わ、悪いが」
ヨル「俺はドンちゃんではない・・・! ヨル・ガンドだ」
レティシア「え、どうして隠すの?」
レティシア「わたしだよ?レティシア!」
ヨル「くっ・・・・・・」
レティシア「待って!ねえ!」
レティシア「っ・・・・・・どうして?」