私立桜田高校演劇部 ~春は舞台で青く色づく~

YO-SUKE

第十七話「最後のお願い」(脚本)

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〇病院の待合室
  雄一郎が病院のソファで待っていると、診察室から寿子が出て来た。
青野雄一郎「先生はなんて?」
青野寿子「無理するなって、そればっかり」
青野雄一郎「・・・なあ、そろそろきちんと沙也加に話しておかないか?」
青野雄一郎「沙也加だって、もう子どもじゃないんだ」
青野寿子「・・・今さら母親面するつもりはないし、母親扱いされたくない。わかるでしょ?」
青野雄一郎「それはまあ・・・」
青野寿子「あの子と私は、全く別世界の人間なの」
青野雄一郎「ったく・・・別世界の人間にしては、頑固なとこはそっくりじゃないか」

〇花模様
  第十七話「最後のお願い」

〇大きな木のある校舎
  地区大会 一週間前

〇生徒会室
  三鈴と陽菜は部室の棚に飾ってある表彰状を見ていた。
  『全国大会優勝』
海東三鈴「全国大会優勝か・・・今から三十年前だね」
小山内陽菜「去年、先輩から聞いたけど、優勝はそれきりで、以降は全くダメだったみたい」
海東三鈴「最近は地区大会で敗退だもんね・・・」
小山内陽菜「おまけに私たちの代は、廃部ギリギリからのスタートか・・・」
小山内陽菜「ねえ三鈴。今のメンバーなら地区大会は突破できるよね?」
海東三鈴「このメンバーなら地区大会は絶対突破できるでしょ!」
小山内陽菜「うん・・・そうだよね!」
  二人は表彰状に向かって、パンパンと両手を合わせる。
海東三鈴「歴代の先輩たち・・・! 私たちに力を貸してください!」
小山内陽菜「私も! よろしくお願いします!」
海東三鈴「うーん。まだ不安だなぁ・・・」
海東三鈴「やっぱり、ちゃんと最後のお願いしときますか!」
小山内陽菜「最後のお願い?」

〇神社の本殿
青野沙也加「なんて書こうかな・・・」
摂津亜衣「思った通り書けばいいんだよ」
青野沙也加「絵馬なんか書いても、効果あるのかなぁ・・・」
摂津亜衣「剣道やってたときもそうだったけど、最後の一押しになるんだよ」
海東三鈴「え? 沙也加と亜衣? なんで?」
摂津亜衣「なんだ、二人も神頼みか?」
海東三鈴「はは。みんな考えることは同じか~。 よし、私たちも絵馬書こう!」

〇神社の本殿
海東三鈴「ねえねえ、陽菜はなんて書いてる?」
小山内陽菜「やだ。教えない」
海東三鈴「なんでよ~。どうせ後でわかるんだからいいじゃん。教えてよ~」
小山内陽菜「ああっ! もううるさいわね。 ほら、私はこれ!」
海東三鈴「地区大会で台詞を噛みませんように・・・か」
海東三鈴「あはは。何それ、なんか願い事が小さくない?」
小山内陽菜「うるさい! 初心者なんだからしょうがないでしょ!」
海東三鈴「亜衣はなんて書いた?」
摂津亜衣「私はこれ。全国大会優勝!」
海東三鈴「うーん。さすが・・・陽菜とは対照的」
摂津亜衣「勝ち進むだけ、みんなと舞台に立てるんだろ?」
摂津亜衣「だったら全国まで行って、少しでも長くみんなとやりたい」
小山内陽菜「ねえ。三鈴はなんて書いたのよ?」
海東三鈴「私? 私はね、これ!」
青野沙也加「・・・大物女優になる、か」
小山内陽菜「なにそれ! 部活のこと全然関係ないじゃん!」
海東三鈴「私さ、昔から神社でこのお願いしかしたことないんだよね~」
海東三鈴「なんか今回だけ部活のお願いしたら、神様が戸惑っちゃうかなぁって」
小山内陽菜「ったく・・・自分が神社に行こうって言ったくせに」
摂津亜衣「なあ、沙也加はなんて書いたんだ?」
青野沙也加「私? 私は別に・・・いいよ」
海東三鈴「教えてよ~。 みんな教えたんだからいいじゃーん」
平井智治「ちょっと皆さん! こんなところで何やってるんですか!?」
海東三鈴「え!? 智治まで神頼み!?」
平井智治「へ? なんの話ですか? ここは僕の実家なんですよ」
海東三鈴「な~んだ、実家かぁ・・・」
海東三鈴「って、実家? ここが!?」
平井智治「言ってなかったでしたっけ?」
海東三鈴「ショック・・・小さい頃からよくここに来てたのに」
平井智治「いやいや、別にショックを受ける必要ないですよね?」
海東三鈴「なんとなく・・・身内に願掛けしてたみたいな気持ちになる・・・」

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