富田家、没落す

Nazuna

貧乏生活の心得その1(脚本)

富田家、没落す

Nazuna

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〇古いアパートの一室
富田 周平「ぷはあ!」
富田 周平「風呂上がりのビールは最高だ・・・」
  狭い部屋で一人、箱買いのビールを飲む
  お世辞にも豪華な生活とは言えないが、俺は幸せだ
富田 周平「さ、テレビでも見るかな」
富田 周平「ん?」

〇大会議室

〇古いアパートの一室
富田 周平「父さん!?」

〇テレビスタジオ
アナウンサー「続いてのニュースは、株式会社トミートミーの倒産についてです」
アナウンサー「本日夜、社長の富田亮一郎氏が会見を行いました」

〇古いアパートの一室
富田 周平「父さんの会社が倒産だって!?」
富田 周平「父さんが倒産・・・」
富田 周平「いや、言ってる場合か!」
富田 周平「ん?」
富田 周平「なんだ、こんなときに・・・」

〇古いアパート
富田 周平「と、父さん!?」
富田 富江「しゅーちゃん♡」
富田 周平「母さん!?」
富田 リコ「おにい、久しぶり~」
富田 周平「リコまで!?」
富田 亮一郎「周平!」
富田 周平「は、はい!」
富田 亮一郎「頼みがある」
富田 亮一郎「ここにしばらく泊めてくれ!」
富田 周平「え」
  えええええ!?

〇古いアパートの部屋
富田 周平「なるほど・・・」
富田 周平「事業に失敗して、会社が倒産してしまったと」
富田 亮一郎「その通りだ」

〇銀行
富田 周平「貯金は?」
富田 亮一郎「社員の退職金やら、提携先への支払いやらですべて使ってしまった」

〇ファンタジーの学園
富田 周平「あのバカでかい屋敷は?」
富田 亮一郎「売っちゃった・・・」

〇古いアパートの部屋
富田 周平「・・・・・・」
富田 リコ「ねえねえ、あれ、おにいの布団だよ」
富田 富江「あらまあ、あんなに散らかして・・・」
富田 周平「ほらそこ、今大事な話中!」
富田 周平「・・・それで?」
富田 亮一郎「住むところがなくなったので、息子の家に泊めてもらうしかないなと・・・」
「・・・・・・」
富田 周平「・・・まあ、いいけどさ」
富田 周平「ずっとってわけにはいかないでしょ」
富田 周平「これからどうすんの?」
富田 亮一郎「事業を立てなおす!」
富田 亮一郎「金がなくなっても知識はなくならない。何度だってやり直して見せるさ」
富田 周平「父さん・・・」
富田 富江「私はずっとしゅーちゃんと一緒でもいいわよ~」
富田 リコ「私もー」
富田 周平「はいそこ、静かに!」
富田 周平「ずっと泊めておくわけにはいかないからな」
富田 リコ「えー」
富田 リコ「でも、おにいが出て行っちゃって悲しかったんだよ?」
富田 リコ「急に『俺はひとりで生きていく!』とか言い出して・・・」
富田 富江「『俺はお金の力には頼らないんだ!』とか言っちゃってねえ・・・」
富田 リコ「そのくせ、一年後には『仕送りちょうだい・・・』ってメール来てたよね」
富田 周平「ヘイ、ストップストップ!!」
富田 周平「わかったよ、とりあえずしばらくは居ていいから!」
富田 周平「後のことはまた別で考えればいい」
富田 リコ「やったー♪」
富田 周平「じゃ、遅いから今日はもう寝よう」
富田 富江「私しゅーちゃんと一緒~」
富田 周平「全員リビングで寝なさい」
富田 周平「予備の布団貸すから」
富田 富江「あら、彼女さん用のかしら?」
富田 リコ「おにいは奥手だから、彼女とかいないでしょ」
富田 周平(余計なお世話だ)
富田 周平「俺は部屋で寝る」
富田 周平「あ、最後にもう一つ」
富田 富江「何?」
富田 周平「今までは金のことなんて気にしなくてよかったかもしれないけど、」
富田 周平「これからは贅沢なし!」
富田 周平「庶民の生活レベルに合わせること!」
富田 周平「わかった?」
「はーい」
富田 周平「父さんも、わかった?」
富田 亮一郎「ああ」
富田 亮一郎「ただでさえ金がないんだ」
富田 亮一郎「今までの暮らしは忘れて、一からやり直すつもりで生活するよ」
富田 周平「うん」
富田 周平「じゃあ、おやすみ」
富田 亮一郎「ああ、おやすみ」

〇古いアパートの一室
富田 周平(ああは言ったけど・・・)
富田 周平(本当に大丈夫かな)

〇ファンタジーの学園
  富田家では、昔から金に困るなんてこととは無縁だった
  いくらでも贅沢が出来る生活
  このままでは堕落してしまうと思った俺は、大学入学を機に家を出た

〇古いアパートの一室
富田 周平(俺はもうこの生活に慣れたけど)
富田 周平(父さんたちが贅沢生活から抜け出せるか・・・)
富田 周平(ま、お金ないって言ってたし、流石にちょっとは自重するだろう)

〇古いアパートの一室
富田 周平「ん・・・」
富田 周平「いい朝だ」
富田 富江「しゅーちゃん、ご飯できてるわよ~」
富田 周平「あ、ありがとー」

〇古いアパートの部屋
富田 周平「みんな、おは・・・」
富田 周平「ちょっと待てーい!!」
富田 周平「どうしたの、これ!」
富田 富江「お母さんの手作りよ、召し上がれ♡」
富田 周平「あなた料理出来ないでしょうが」
富田 富江「・・・・・・デリバリー」
富田 周平「なんでちょっと見栄張ったんだよ」
富田 周平「・・・じゃなくて! お金ないんじゃなかったのかよ!」
富田 富江「だって・・・」
富田 富江「お母さん、家事苦手だもん」
富田 周平(そういえばそうだった)

〇広い厨房
富田 富江「できた!」
富田 富江「さあ木之下、食べてみて!」
木之下 明日香「富江様、これは食べものに見えないのですが・・・」

〇洋館のバルコニー
富田 富江「洗濯ものを干すわよ!」
富田 富江「あ」
木之下 明日香「・・・取ってきますね」

〇システムキッチン
富田 富江「お皿を洗うわよ木之下!」
富田 富江「あ」
「・・・・・・」
木之下 明日香「あの・・・」
木之下 明日香「家のことは私にお任せください・・・」
富田 富江「・・・そうね」

〇古いアパートの部屋
富田 周平(苦手ってレベルじゃないな・・・)
富田 周平「・・・ とにかく!」
富田 周平「デリバリーにしても頼みすぎ! 朝から食べる量じゃないよ」
富田 周平「父さん!」
富田 亮一郎「む! むう・・・」
富田 周平「何普通に食べてんの!」
富田 周平「節約はどうしたの節約は」
富田 亮一郎「むう・・・」
富田 亮一郎「何食べたらいいのかわからなくて・・・」
富田 周平(メイドに頼りっきりだった富豪生活の弊害が・・・)
富田 周平「朝ごはんなんて、食パン一枚でいいの!」
富田 亮一郎「そうなのか・・・」
富田 周平「明日からは俺が作るから」
富田 周平「しょうがない、頼んじゃった物は食べよう」
富田 亮一郎「はい・・・」
富田 リコ「おいしかったねー」
富田 富江「ねー」
富田 周平「はい、全員注目!」
富田 周平「今日はこれから、ショッピングに行きます」
富田 周平「急に三人も住む人が増えたんだから、色々と買いこまないと」
富田 リコ「やった~。おっかいもの~」
富田 周平「ただし!」
富田 周平「高いものは買わないで」
富田 周平「出来るだけ安いものを買うこと!」
富田 周平「わかったか!」
「はい!」
富田 周平「じゃあ、着替えたら出発!」
富田 富江「タクシーを呼びましょう!」
富田 周平「歩いて行くんだよ!」

〇大きいショッピングモール
富田 周平「注目!」
「はい!」
富田 周平「今から買い物をする」
富田 周平「父さんはトイレットペーパーとかティッシュとかの消耗品」
富田 周平「リコは必要な着替えと下着類」
富田 周平「食品は俺と母さんで手分けして買う」
富田 周平「各自買い物が終わったら広場で集合!」
富田 周平「わかったら解散!」
「はい!」
富田 周平「母さんは俺と一緒に行くから待ってー!」

〇スーパーの店内
富田 周平「はあ、はあ、やっと追いついた・・・」
富田 周平「じゃあ、俺は生鮮食品を買いに行くから」
富田 周平「母さんは長く持つ物を買ってきて」
富田 周平「パスタとか、あとお米とか」
富田 富江「はーい♡」
富田 周平「ただし!」
富田 周平「高いものは買っちゃだめだからね」
富田 富江「はーい」
富田 周平(本当にわかってるのかな・・・)
富田 周平「買いものが終わったら先に広場に戻ってていいから」
富田 富江「了解♡」

〇モールの休憩所
富田 周平「ふう」
富田 周平「結構買っちゃったな」
富田 周平「あれ、みんなはまだかな?」
富田 富江「おまたせ~」
富田 周平「あ、かあさ・・・」
富田 周平「多いよ!」
富田 周平「安いのを買ってるのはいいけど・・・」
富田 周平「何年分あるんだよこれ」
富田 富江「?」
富田 周平「なんでわかんないんだよ」
富田 周平「はあ、まあいいや」
富田 周平「置いておけばいつでも食えるし」
富田 周平(父さんたちは大丈夫かな・・・)
富田 周平「あ、父さん」
富田 亮一郎「おまたせ。買ってきたぞ」
富田 周平(量は普通だな・・・)
富田 周平「でも、高いものを買ってるんじゃ・・・」
富田 亮一郎「問題ない」
富田 亮一郎「ちゃんと計算したからな」

〇薬局の店内
富田 亮一郎(6ロールで750円)
富田 亮一郎(こっちは900円で300メートルか)
富田 亮一郎(こっちをメートルに直すと・・・)
富田 亮一郎「安いのはこっちだ!」

〇モールの休憩所
富田 周平「父さん・・・」
富田 亮一郎「経営者としての経験が生きたな」
富田 周平「あれもある、これも・・・」
富田 周平「あれ、ティッシュは?」
富田 周平「もしかして買い忘れた?」
富田 亮一郎「周平・・・」
富田 亮一郎「ネットで頼んでおいた」
富田 亮一郎「ここで買うより10円安い」
富田 周平「パパァ・・・!」
富田 亮一郎「あとはリコを待つだけだな」
富田 周平「噂をすれば・・・」
富田 周平「遅かったな」
富田 リコ「おまたせ」
富田 周平「お、どれどれ・・・」
富田 周平「なかなか攻めたチョイスだな・・・」
富田 リコ「ちゃんと着るもん!」
富田 周平「まあいいか」
富田 周平「よし」
富田 周平「帰るぞー!」
富田 富江「タクシーは・・・?」
富田 周平「呼ばない! 歩く!」
富田 富江「ふええ・・・」

〇古いアパートの部屋
富田 周平「重い・・・(主に母さんのせい)」
富田 リコ「疲れたあー」
富田 富江「お腹空いたわね・・・」
富田 周平(母さんが物欲しそうにこちらを見ている)
富田 周平「・・・・・・」
富田 周平「母さんたちは休んでていいよ」
富田 周平「昼飯は俺が作るから」
富田 富江「やった~」
富田 リコ「おにい、ご飯作れるの?」
富田 周平「三年も一人で暮らしてたら当然だ」
富田 周平「まあ見てろって」

〇安アパートの台所
富田 周平「タイムセール中に買った豚肉」
富田 周平「おひとり様三パック限定の激安卵」
富田 周平「地域最安値の玉ねぎを切って・・・」
富田 周平「ご飯は昨日の残りを使えばいいか」
富田 周平「よし!」

〇古いアパートの部屋
富田 富江「しゅーちゃんまだなのお・・・?」
富田 周平「おまたせ!」
富田 周平「原価百円以下の激安かつ丼だよ!」
「やったー!」
富田 周平「はい、父さんも」
富田 亮一郎「お、おう」
富田 亮一郎「これは・・・!」
富田 リコ「おいしーい!」
富田 富江「肉汁があふれ出してくるわ~」
富田 リコ「お腹が空いてるときに食べるとより美味しく感じるね」
富田 周平「お、いいところに気付いたな」
富田 周平「貧乏生活の心得その1!」
富田 周平「それは、”空腹は最高のスパイス”だ」
富田 周平「歩いて疲れた後に食べるご飯はいつもより美味しく感じるだろ?」
富田 周平「高級料理を食べなくたって、」
富田 周平「工夫次第でどんなものでも美味しくなるんだってことを知ってほしかったんだ」
富田 亮一郎「周平、成長したな・・・」

〇古いアパートの部屋
富田 周平(父さんも母さんもリコも、もっと不満を口にするかと思ったけど)
富田 周平(お金を使わない、ということの意味を少しでもわかってくれたみたいでよかった)
富田 周平(ん?)

〇古いアパート
配達員「あ、配達でーす」
富田 周平「あ、どうも」

〇古いアパートの部屋
富田 周平(何も頼んだ覚えはないけど・・・)
富田 リコ「あ、届いてるー」
富田 周平「おいリコ、これはなんだ?」
富田 リコ「昼に食べたかつ丼が美味しかったからってお母さんが」
富田 リコ「最高ランクの豚肉だって」

〇古いアパートの部屋
富田 富江「百円であんなに美味しかったんだから、いいお肉を使えばもっと美味しいわね!」

〇古いアパートの部屋
富田 周平「・・・・・・」

〇古いアパート
  全然分かってなーい!
  ー完ー

コメント

  • 私エロ本の話のときも思いましたがNazunaさんのギャグスキです!
    分かりやすいしツッコミもしっかりしてるし👍
    配達員さん、借金取りかと👍😂

    今回も楽しかったです!

  • いつどんなトンチキ無駄遣いをするか、ハラハラスリル満点でした!意外にお父さんは経済観念優秀なんですね✨️やはり曲者はお母さんかー😂
    スーパーで母を放流するなんて、危険な……!と思ったけど、おかしいのは量だけでほっとしました。でも帰り道は地獄だったでしょうね😅
    庶民は「丁度いい余らない量」を買おうとしますが、裕福だと「絶対に足りないと言わせない量」を買いがちですよね。

  • コメディって難しいですよね!
    でも楽しかったですし、お金持ちが六畳一間に住んでるだけで十分リアルです!
    ホームコメディも好きだけどラブコメも好きだなぁ😲

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