Story#0007:Why me?(脚本)
〇雪山
リュサエラのヴェルザンディが姿を消して、もう一億五千万年経つ。
マリオン・リュスト「ウルズ様、スクルド様」
王を持たない霊翼人にとって唯一の行政機関である”ノルンの巫女”は、神々と繋がる三人の巫女を擁する機関である。
マリオン・リュスト「フレイのマリオン、只今戻りました」
ネイディアのウルズ「・・・・・・」
その補佐役を勤めるマリオンは、
ネイディアのウルズ「そなたは、何者だ?」
レティシアのスクルド「私たちに敵うと思ったの?」
蜥蜴「やはり分かったか。敵うとは思っていない」
レティシアのスクルド「あなたのお名前は?」
蜥蜴「・・・・・・ロト。ロト・サティアス」
ネイディアのウルズ「どうする気だ、レティシア」
レティシアのスクルド「私の娘に任せてみるわ」
〇貴族の応接間
サアラ・リュスト「お呼びですか、スクルド様」
ロト・サティアス「・・・・・・」
レティシアのスクルド「サアラ、この子に蜜酒を。それから私たちの仲間として受け入れましょう」
〇洋館の廊下
サマナは、サアラに好意を寄せていた。
サマナ「サアラちゃん、あの蜥蜴を手懐けろって言われたんだって?」
サアラ・リュスト「ええ。今から懲罰房に行くところよ」
上司でもあったサアラの兄マリオンが吸血鬼の城で眠りに就いて一億五千万年。
サマナ「気を付けてね」
ずっとずっと言えずにいた。
サマナ「あなたの時間を、僕にください」
〇貴族の部屋
懲罰房と言うには豪奢な部屋だ。ロトはベッドに腰掛けて考え事をしていた。
ロト・サティアス(ポータルはベッドの下に設置した。あとは、合図を待つだけだ)
昔、父が弟子だと言ってキメラの少年を連れてきたことがあった。
黒竜王の執事であった父が死んでから、あのキメラの少年には会っていない。
父は優秀な執事であり、有能な犯罪請負人でもあったが、ある時任務に失敗し、死を以て報いよと言われたのだ。
その時に処刑を命じられたのが、父の弟子であったあのキメラの少年だった。
無口で表情のあまり動かない少年だったが、あれ以来あの少年は、快活に利発に良く笑うようになった。
何故だろうか。霊翼人に押し倒され、口移しに何か甘いものを飲まされた。
抵抗はしない。
あの少年の哄笑が耳に甦るから。
〇研究所の中枢
スパイとして霊翼人達の元に赴かせた部下のポータル装置から反応があった。
どうやら無事に設置出来たらしい。他のポータル装置も次々に反応が返ってきた。
生きていた頃に、兄は良く地球の話をした。植物が繁茂する水と緑の星だと。
今、我々蜥蜴族は絶滅の危機に瀕している。強さのみを求めた遺伝子操作の結果、遺伝子自体が弱くなっているのだ。
それを回避出来る鍵を、このソル系の第三・第四惑星に自生する”植物エリクシル”の花蜜が握っている。
エネルギー生命体であるエリクシルは鉱物、金属、ガスの三つの形態をもつとされるが、隠された第四の形態があると、兄は語った。
それが、”植物エリクシル”だ。以前、”植物エリクシル”の花の蜜は、遺伝子回復の特異性がある事を、兄から聞いて知っていた。
遺伝子が弱くなり始めた頃に、女王イライザ様にこの事を伝え、植物エリクシルを探しに来たのである。
我々は黒竜王の隷属種でしかなく、上の位の奴らは我々を助けてはくれない。
ならばこれを機に、隷属する事自体を止めてしまおうと、私は女王に言った。
女王は頷き、我々を地球に向かわせたのだ。地球を支配下に置き、ここを拠点として黒竜王に反旗を翻すのだ。
ザズ・ル・ハール「後は、突入命令を待つだけだ」
女王イライザ様、どうか熟慮の上で、ご命令を。
〇謁見の間
サアラ・リュスト「ウルズ様、スクルド様。彼は無事、我らの手に落ちました」
ネイディアのウルズ「そうか。良くやった」
レティシアのスクルド「では、今後は引き続き、あの蜥蜴の監視役を頼むわね。あの子はサマナの下に付かせるわ」
ネイディアのウルズ「サマナには、私から納得せよと言っておく」
サアラは一礼して謁見の間を去った。
〇貴族の部屋
シルエット1「サマナ様、少し見てほしいものが」
サマナ「どうしたの?」
侍女はそっとベッドの下を見せた。
シルエット1「これを、どう思われますか?」
サマナ「どう、って。触らない方が良いと思うよ」
シルエット1「そうですか」