特異地蔵譚

わらやま

募集 乙女ゲーム地蔵 オムニバス(脚本)

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〇華やかな裏庭
  私は六道(ろくどう)ヤシャ
  私立聖マンダラ学園に通う、普通の高校生!
  そんな私は今凄く気になっている人がいて・・
  それが・・

〇教室
  同じクラスの蔵地くん!
  友達には、何であんな地蔵みたいなヤツをって言われてるけど・・
  彼の悟りをひらいているかのような優しい眼差しが
  私を涅槃に連れていっちゃうの!
蔵地くん「六道ちょっと話いい?」
六道 ヤシャ「え、う、うん」
  は、話って何なの!?

〇体育館の裏
蔵地くん「俺、実は・・気になっている人がいるんだ」
六道 ヤシャ(気になっている人!?)
六道 ヤシャ(それってもしかして私のこと!?)
蔵地くん「その人は・・」
蔵地くん「用務員のおじいさん」
六道 ヤシャ「へ・・なんで!?」

〇田舎の学校
おじいさん「ほっほっほ、これをどうぞ」
蔵地くん「あ、ありがとうございます」
蔵地くん「おじいさん、俺にいつもおやつをくれるんだ」
蔵地くん「すごい優しくて・・」
六道 ヤシャ(それって、お供物・・? 地蔵だと思われてるんじゃ・・?)
おじいさん「・・」
蔵地くん「それに急に神妙な面持ちで俺を拝んだりするし・・」
六道 ヤシャ(やっぱり地蔵だと思われてるじゃん!)

〇体育館の裏
蔵地くん「あれってなんだろ? 推しが尊い?って感情からなのかな?」
六道 ヤシャ(違うよ!信仰心からだよ!)
蔵地くん「あのおじいさん・・ 俺の事好きなのかもって意識したら・・」
蔵地くん「何だか俺も気になってきちゃって!」
六道 ヤシャ(え、えぇぇぇ!!)
蔵地くん「こんな事、六道にしか話せないから・・」
蔵地くん「また今後も相談に乗ってくれよな!」
六道 ヤシャ「そんなぁ・・」

〇空
「なんで私のライバルがおじいさんなのぉ!?」
  私の推しは地蔵の蔵地くん
  ”恋のライバルはおじいさん!?”
  NOW ON SALE

〇汚い一人部屋
朝倉 蓮華「・・」
朝倉 蓮華「予告動画もバッチリ・・」
朝倉 蓮華「やっと・・」
朝倉 蓮華「やっと完成した!」
朝倉 蓮華「『私の推しは地蔵の蔵地くん』」
朝倉 蓮華「通称”ジゾクラ”」
朝倉 蓮華「はぁぁあ、疲れたぁぁぁあ」
朝倉 蓮華「同人ゲーム製作って大変だったわ」
朝倉 蓮華「でも・・」
朝倉 蓮華「私の好きを詰め込んだ”傑作”が出来たわ!」
朝倉 蓮華「さて、サイトに公開して・・」
朝倉 蓮華「たくさんの人にプレイしてもらえるといいな」

〇汚い一人部屋
朝倉 蓮華「さてさて、みんなの反応は・・?」
  総DL数 4
  レビュー数 2
朝倉 蓮華「へ・・?」
朝倉 蓮華「す、少っ!!」
朝倉 蓮華「いやまぁたしかに特殊な作品だとは思うよ」
朝倉 蓮華「でもこれはいくらなんでも・・」
朝倉 蓮華「あ、そうだレビュー!レビュー見なきゃ!」
  色々と言いたい事はありますが、そもそもこれって乙女ゲームなんですかね?
  イケメンいないし・・
  地蔵?の蔵地くんがおじいさんへの思いとヤシャへの思いとで揺れる部分は面白いと思いましたが・・
  主人公の恋敵がおじいさんというのはどうなんでしょうか・・
  せめてイケメンの仏像モチーフのキャラがたくさん出るハーレムものとかやりようがあるのでは?
朝倉 蓮華「そ、そりゃそうなんだけど・・」
朝倉 蓮華「次、次のレビューは!?」
  金をドブに捨てるつもりならオススメ!
  設定がワケがわからないし、私は初見でおじいさんルートに行ってしまったので、正直気持ち悪かった!
朝倉 蓮華「・・」
朝倉 蓮華「そりゃ私の趣味全開で作ったけど・・」
朝倉 蓮華「ここまで酷評されるなんて・・」
朝倉 蓮華「あ、新しいレビューが・・!」
朝倉 蓮華「でも、どうせ・・」
朝倉 蓮華「ん?」
  本当に最高でした!
  もう全編通して興奮が止まらなくて、特に蔵地君が覚悟を決めてヤシャの元に駆け出すシーンが至高です!
  あ、でも、だからといっておじいさんルートが嫌いなワケじゃないです!だんだんおじいさんも自分の感情に気づいていく様子とか
朝倉 蓮華「す、すご・・ 絶賛してくれてる・・」
朝倉 蓮華「こ、こんなに私の作品を好きになってくれた人が・・」
  ごめんなさい、興奮のあまり、色々書きすぎちゃいました!
  こんな名作が世に知られていないなんてダメです。
  私が・・
  全力で布教します!!!!!!
朝倉 蓮華「全力で布教だって・・ 嬉しすぎる・・」
朝倉 蓮華「この人が友達に布教してくれたら、倍くらいDLされちゃったりして!」

〇汚い一人部屋
朝倉 蓮華「あー、今日もバイト疲れたぁ」
朝倉 蓮華「DL増えてるかなぁ?」
  総DL数 1,582,358
  レビュー数 135,204
朝倉 蓮華「・・・・・・は?」
朝倉 蓮華「な、な、な、な、なにこれ!? 何かの間違いじゃ・・・!?」
朝倉 蓮華「えっ、なんか炎上した? クソゲーレビューの動画でも出回ったとか・・?」
  本当に面白かった・・。こんな素敵な恋を私もしてみたい!
  蔵地君の優しさが身に染みる!!
  ヤシャと一緒に涅槃にいきかけました!!
朝倉 蓮華「えっ!?絶賛コメントばかりなんだけど!?」
朝倉 蓮華「ど、どういうこと・・・?」

〇住宅街
朝倉 蓮華「・・・」
若い女性「はぁー、ジゾクラの展開ホント最高だわー」
若い女性の母「本当よねぇ。お母さんもトゥルーエンドは3周しちゃったわぁ」
若い女性「私はもう4周目よ! しかもおじいさんルート!」
若い女性の母「やるわねぇ」
水島 浩明「なぁ、じいさん! じいさん、ジゾクラのおじいさんに似てねぇ!?」
おじいさん「いやいや、滅相もないぞ!」
おじいさん「だが、どこか他人の様な気はせんの」
朝倉 蓮華(み、みんながジゾクラの話してる・・)
朝倉 蓮華(本当に大人気なんだ・・)
朝倉 蓮華(でも、どうして・・)

〇汚い一人部屋
  全力で布教します!!!!!!

〇住宅街
朝倉 蓮華「まさかあのレビューしてくれた人が・・」
朝倉 蓮華「凄いインフルエンサーとかなのかな?」

〇汚い一人部屋
朝倉 蓮華「あのレビューした人にDMしてみよ」
朝倉 蓮華「もしかして布教していただきました?」
朝倉 蓮華「返事早っ!?」
  きゃーーー、まさか神からご連絡いただけるなんてぇ!え、え、ど、ど、どうしよ、無理なんだけど!!
  えっと、えっと、たしかに私が布教しました⊂((・x・))⊃
朝倉 蓮華「やっぱり」
  で、あの、これ言っちゃっていいのかな?
  実は私・・
  乙女ゲーム地蔵なんです
朝倉 蓮華「乙女ゲーム地蔵!?」
  きゃー、言っちゃったぁ!!
  特異地蔵っていうんですけど、ちょっと特別な力があってぇ
  好きな乙女ゲームを人の根源欲求に結びつけて・・
  あ、意味わかんないですよね(^_^;)
朝倉 蓮華「そんなの信じられな・・」
朝倉 蓮華(まぁでも・・)
朝倉 蓮華(それくらいこの人気っぷりは異常事態よね・・)
  ジゾクラの良さが皆に分かってもらえて私も感無量なんですぅ
朝倉 蓮華「私もまさかこんなにたくさんの人に好きになってもらえるなんて思わなかったよ」
朝倉 蓮華「布教してくれてありがとう」
  そ、そんな恐れ多い!!
  神にそんな事言っていただけるなんて・・
朝倉 蓮華「他のレビューはどんなのあるんだろ」
  ヤシャルートを選ぶヤツはニワカ
  アレがトゥルーエンド扱いされるのマジありえない
  おじいさん一択すぎるのにおじいさんルートのボリュームが物足りなくておじいさん成分不足
朝倉 蓮華(つ、強火のおじいさんファンがいっぱいいる・・)
朝倉 蓮華(派閥が出来てて殺伐としてるよ・・)
  皆さん全然わかっていませんね
  ヤシャの通う学園、聖マンダラ学園という名前
  本来、聖〇〇はキリスト教系の学校につく名前です。つまりこれは・・
  宗教戦争の様を乙女ゲームで表しているんです
朝倉 蓮華「なんか謎の考察まで生まれてる・・」
朝倉 蓮華(なんとなく響きが良くてつけただけなんだけど・・)
朝倉 蓮華(なんだろう・・この人達・・)
  本当に私の作品・・
  好きなのかな・・?
朝倉 蓮華「・・またDM?」

〇テーブル席
朝倉 蓮華「・・」
梵天堂 営業「お待たせしました朝倉先生」
朝倉 蓮華「こ、こんにちは」
梵天堂 営業「私、DMさせていただきました”梵天堂”のモノです」
朝倉 蓮華(あの世界的ゲームメーカー梵天堂の名刺・・本物だ!!)
梵天堂 営業「いやー、ジゾクラすごい人気ですねぇ!」
梵天堂 営業「私も夢中でプレイしました」
朝倉 蓮華「い、いや、そんな・・」
朝倉 蓮華「あ、あの、私にお話って・・?」
梵天堂 営業「率直に申し上げますが・・」
梵天堂 営業「我が社の新作ゲームのシナリオ担当に名前をいただきたいんです」
朝倉 蓮華「わ、私が梵天堂さんのゲームのシナリオ担当!?」
朝倉 蓮華「・・ん!?名前?」
梵天堂 営業「えぇ、本来であれば一から作成依頼したいところですが」
梵天堂 営業「まずは名義だけお借りしたい」
朝倉 蓮華「・・それはどういう事ですか?」
梵天堂 営業「鉄は熱いうちに打て という事です」
梵天堂 営業「ジゾクラは今凄まじいまでの盛り上がりを見せています」
梵天堂 営業「マーケティング的にはこの勢いの中、リリースするのがベストなんです!」
梵天堂 営業「タイトルは『特異地蔵譚』 変わった地蔵が織りなすノベルゲームで、誰もがあなたの新作だと信じます」
梵天堂 営業「『あのジゾクラ作者の最新作』という触れ込みで我々も最大限広告に勤しみます」
朝倉 蓮華「・・」
梵天堂 営業「あなたも名前が売れますし、お互いメリットのあるお話だと思いますよ」
朝倉 蓮華「・・少し」
朝倉 蓮華「考えさせてください」

〇汚い一人部屋
  先生!あの天下の梵天堂からの話って何の話だったんですか!?
朝倉 蓮華「・・」
  えー、それは酷い!!
  でも・・
  ジゾクラを生み出した先生にはいい暮らしをして欲しいんで、わたしまた全力で布教しますよ!
朝倉 蓮華「乙女ゲーム地蔵さん・・」
朝倉 蓮華「私この話断ろうと思うの」
  えーーー、何でですか!?
朝倉 蓮華「私、薄々気付いてるよ・・」
朝倉 蓮華「自分の作品がこんなに万人受けするわけないって」
朝倉 蓮華「あなたの不思議な力ありきの人気だって・・」
  そんなこと・・
朝倉 蓮華「そりゃね、梵天堂の看板借りてゲーム出したら名前は売れるかもしれないけど」
朝倉 蓮華「私はただ・・自分の”好き”を詰め込んだゲームが作りたかっただけなの」
  ・・蔵地くんが、おじいさんからの施しが自分という存在ではなく、偶像に向けられたものと気付いたシーンみたいですね
朝倉 蓮華「ほんと・・よく遊んでくれてるね」
朝倉 蓮華「あなたみたいに一部のファンでもいい」
朝倉 蓮華「まわりの評価や雰囲気に流されず私の作品を好きになってくれるファンに届けたいんだ」
朝倉 蓮華「だから、乙女ゲーム地蔵さん・・」
朝倉 蓮華「もう布教は大丈夫だから」
  ・・わかりました。でも、
  先生のジゾクラがここまでヒットしたのは作品が純粋に面白かったこと・・
  そして私にはジゾクラという作品は本当に本当に心に刺さった名作だったってこと
  それだけは紛れもなく真実だってこと
  忘れないでください
朝倉 蓮華「うん・・」
朝倉 蓮華「ありがとう・・」

〇汚い一人部屋
  あれから2週間
  あの熱狂が嘘の様に、まるで波が引くかのように、ジゾクラブームは終焉した。
  梵天堂は私の名前を使わずに『特異地蔵譚』を発表して
  『まだ地蔵を擦るのか』とか叩かれちゃってる。
  私は今、新作作りに熱中している。
  それはジゾクラと同じで、自分の”好き”を詰め込んだ
  自分が心から愛せる作品だ。
朝倉 蓮華「なんだか、ジゾクラのヤシャルートみたい」

〇華やかな裏庭
蔵地くん「ヤシャ!!」
六道 ヤシャ「・・どうしたの蔵地くん」
六道 ヤシャ「おじいさんと四国八十八か所霊場めぐりに行ったんじゃなかったの?」
蔵地くん「ハァハァ・・断ってきた」
六道 ヤシャ「どうして・・!? それが自分の運命だとか言ってたじゃない!?」
蔵地くん「俺は・・地蔵じゃない」
蔵地くん「気づいたんだ・・」
蔵地くん「ヤシャの言葉で・・ 俺自身の気持ちに・・」
六道 ヤシャ「それって・・」
蔵地くん「ああ・・ヤシャ・・」
蔵地くん「俺は自分の気持ちに正直になるよ」
蔵地くん「君が・・好きだ!!」
六道 ヤシャ「蔵地くん・・」
六道 ヤシャ「私も大好き」
六道 ヤシャ「地蔵だからじゃなく」
六道 ヤシャ「等身大のあなたが・・」
  Thank you for playing!

次のエピソード:募集 サウナ地蔵 対策課

コメント

  • 最後にホロりと泣かせますねぇ…!
    おじいさんルートが気になる😂

  • そんで、この地蔵特異譚が産まれたってワケ、ね!

    驚愕の真実、だからこれらのエピソードでおじいさんがヒロインになっていたのかよ…!
    作者ネキの手を離れて、一人浄土へ向かう暴走特急に……!!

    でも案外配信者には受けそうなゲームかと思います😄

  • ジゾクラのお話が始まると思ったら、乙女ゲームの中身だったのですね!
    ゲームの中身も現実もツッコミが止まりませんでした😂

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