#1 ブッシュクラフトを攻略せよ。以上!(脚本)
〇岩山の崖
太郎(タロウ)「私がクマに体当たりしたら、」
太郎(タロウ)「花子クンと萌花は振り返らずに、 走って逃げるんだ」
太郎(タロウ)「以上!」
花子(ハナコ)「筋力の無いアナタが体当たりした所で、弾き返されてジ・エンドよ」
花子(ハナコ)「私も体当たりする!! 以上!」
萌花(モカ)「パパァ、ママァ・・・」
萌花(モカ)「私が悪かったわ!」
萌花(モカ)「スマホなんて要らないから・・・神様助けて!」
〇一戸建て
1週間前
〇おしゃれなリビング
太郎(タロウ)「私はいつも通り役所で残業だ。 帰宅予定は21時」
太郎(タロウ)「夕飯は気にしなくても良い。 以上」
花子(ハナコ)「私も定時に業務終了後、新人職員の歓迎会があります」
花子(ハナコ)「同じく夕飯は気にしなくていいわ。 以上」
花子(ハナコ)「追伸!」
花子(ハナコ)「萌花にはいつも通り、 夕飯に宅配弁当を頼みました」
花子(ハナコ)「あとクリーニング店の集荷の日だから、 玄関先に集荷袋を出しておくように」
花子(ハナコ)「──萌花、聞こえたの?」
萌花(モカ)「ニャハハハハ〜♪」
萌花(モカ)「待って、 今エンスタにエエネしたら聞くから〜」
萌花(モカ)「・・・んと、何だっけ?」
太郎(タロウ)「萌花、ママが話をする時くらいスマホは置いたらどうだ?」
太郎(タロウ)「まるでスマホ依存症だな!」
萌花(モカ)「『まるで』じゃなくてえ、 スマホ依存症なの、私」
萌花(モカ)「だってパパもママも朝から晩まで仕事ばっかりで、全然私に構ってくれないじゃん!」
萌花(モカ)「スマホは24時間私の相手してくれるしぃ、 パパやママなんかよりだーいすき♥」
萌花(モカ)「スマホがあればぁ、何にも要らないよ!」
花子(ハナコ)「太郎クン・・・!」
太郎(タロウ)「花子クン、萌花が不良に・・・!?」
花子(ハナコ)「アアア・・・萌花がこうなってしまったのは、私たち夫婦の失態よ!」
太郎(タロウ)「家族会議だ!!!!」
萌花(モカ)「不良って大袈裟!」
萌花(モカ)「JKなんてみんな、こんなモノだよ?」
萌花(モカ)「わが親ながら 2人ともホントに真面目なカタブツだよね!」
太郎(タロウ)「現代社会において、 スマホを断捨離するのは並大抵のことではない!」
太郎(タロウ)「しかも、思春期の娘にスマホ断ちを強要するのは虐待に等しい!」
花子(ハナコ)「ならばどうするの?」
太郎(タロウ)「いっそのこと──」
太郎(タロウ)「一家で『文明を捨てる!』」
萌花(モカ)「ハアアア!? ど〜ゆこと〜!?!?」
〇山の中
萌花(モカ)「『文明捨てる』って」
萌花(モカ)「キャンプのことなの〜!?」
萌花「しかもアウトドアなのに 何でパパはスーツ着ているのよ!」
太郎(タロウ)「パパは寝る時以外はスーツは脱がない! 以上!」
萌花(モカ)「スーツしか着る服が無かった言い訳!? よくキャンプを提案できたよね?」
花子(ハナコ)「パパは初めてなんだから、 許してあげて!」
萌花(モカ)「そういうママも安定の白衣じゃん!」
花子(ハナコ)「ママは結婚初夜だって白衣は脱がなかったわよ。以上!」
萌花(モカ)「そんなコト、一生聞きたくなかったよ!」
花子(ハナコ)「萌花だってキャンプには不向きな軽装のようね?」
萌花(モカ)「まさか何の設備も無い、本格的な山に来るとは思っていなかったの!」
萌花(モカ)「ねえ、今からでもコテージかグランピングのある場所に行こうよ」
萌花(モカ)「お腹空いたし足痛いし〜 早く帰ってスマホチェックしたいよ」
太郎(タロウ)「駄目だ!」
太郎(タロウ)「萌花がスマホのことを忘れるまでは、絶対帰らないぞ!」
花子(ハナコ)「同意!」
花子(ハナコ)「ココならスマホどころか電気もないし、必ずやり遂げることができるわ!」
萌花(モカ)「私の・・・ため?」
「萌花のためだよ!」
萌花(モカ)(トンデモないやり方だけど・・・)
萌花(モカ)(パパとママが初めて真剣に考えて企画してくれたんだよね)
萌花(モカ)(家族でキャンプなんて初めてだし)
萌花(モカ)(今日1日くらいなら、 付きあってあげても良いか・・・)
萌花(モカ)「ちなみに、道具は何を持って来たの?」
太郎(タロウ)「ご覧あれ!」
太郎(タロウ)「究極のキャンプとは野営!」
太郎(タロウ)「必要最低限の持ち物で、最大限のパフォーマンスを発揮するんだ」
太郎(タロウ)「ナイフ一本あれば火起こしも出来れば道具も使えるし、外敵から身を守り調理器具にもなる!」
太郎(タロウ)「以上!」
萌花(モカ)「ま、まさかパパは ナイフしか持ってきていないの!?」
太郎(タロウ)「ワイルドだろぉ〜?」
萌花(モカ)「ネットで見たけど」
萌花(モカ)「ナイフで火をつけるにはファイヤースターターが必要って知ってる?」
太郎(タロウ)「・・・」
花子(ハナコ)「ママはちゃんと考えてきたわよ♪」
萌花(モカ)「流石ね! ママは何を持ってきたの!?」
萌花(モカ)「山菜百科事典・・・?」
花子(ハナコ)「自然の植物には毒性があるものも多いわ。似たような山菜を見分けるのがキモよ」
花子(ハナコ)「健康管理はお任せあれ。 以上!」
萌花(モカ)「ママ、これ・・・」
萌花(モカ)「山菜じゃなくて、山菜(やまな)って名前の料理研究家のレシピ本だよ」
萌花(モカ)「持ってきたのはただのナイフと山菜さんのレシピ本だけ・・・」
萌花(モカ)「それキャンプじゃなくてサバイバルやんッ!!!!」
萌花(モカ)「2人ともポンコツすぎ! もう私1人で帰る!!」
太郎(タロウ)「萌花! どこに行くんだ!?」
花子(ハナコ)「待って萌花! 1人で行動するのは危ないわ!!」
〇山中の坂道
萌花(モカ)「ムカついてデタラメに走ったら、 変な所に出ちゃったな」
萌花(モカ)「内緒でスマホは持ってきたけど・・・」
萌花(モカ)「チェッ、やっぱり電波届かない場所か・・・」
萌花(モカ)「雨も降ってきたし道に迷うし、サイアクな日だよ」
萌花(モカ)「・・・誰!?」
萌花「驚かさないでよ」
萌花(モカ)「クマかと思った──」
「ウギャーア!!!!」
太郎(タロウ)「これは山びこ・・・? イヤイヤ」
太郎(タロウ)「萌花の叫び声では!?」
花子(ハナコ)「今、音の音圧レベルの周波数特性と頭部伝達関数から,音源の角度を割り出すわ!」
太郎(タロウ)「流石だ花子クン!」
花子(ハナコ)「北北東に進路を取るわよ!」
太郎(タロウ)「了解!」
〇岩山の崖
太郎(タロウ)「萌花を発見したら、熊さんにも出会ってしまった!」
太郎(タロウ)「これがホントの崖っぷち!」
太郎(タロウ)「以上!」
萌花(モカ)「こんな時にシュールなギャグは止めてェー!」
太郎(タロウ)「いいかチャンスは一瞬だぞ」
太郎(タロウ)「3つ数えた後、パパとママが熊に飛びかかったら、」
太郎(タロウ)「萌花は振り返らずに走るんだ!」
花子(ハナコ)「補足! 全速力でね」
「以上!」
萌花(モカ)「イヤイヤイヤ!! パパとママを置いてなんて行けないよ!!」
萌花(モカ)「ずっと反抗していたけど、パパとママが大好きだもん!」
花子(ハナコ)「太郎クン!萌花は良い子に育ったわね」
太郎(タロウ)「その言葉だけで充分だ!」
太郎(タロウ)「2人とも愛しているよ!!」
太郎(タロウ)「以上!」
太郎(タロウ)「行くぞ3・2・1・・・!!」
萌花(モカ)(元はと言えば、 私がスマホ依存症になったからだ!)
萌花(モカ)「スマホなんて・・・」
萌花(モカ)「これでも喰らえ──!!」
クマ「キャイン!」
萌花(モカ)「やったあ! 熊の顔面にヒットしたわ・・・!!」
萌花(モカ)「パパ、ママ、今のうちに逃げ・・・」
太郎(タロウ)「ついに萌花が、文明を捨てた!!」
花子(ハナコ)「やったわね♪太郎くん!」
「サプラ〜イズ!!」
萌花(モカ)「ギャッ!熊が生き返った」
太郎(タロウ)「ゴメン。こんなに危険な目に合わせるつもりじゃなかったんだけど」
「ドッキリ大成功!」
萌花(モカ)「エエ〜!?」
太郎(タロウ)「実は後輩に頼んでひと芝居打ったんだよ」
花子(ハナコ)「萌花が自分で携帯を捨ててくれるのが、私たちのミッションだったの」
花子(ハナコ)「流石太郎クン、段取り上手!」
萌花(モカ)「メチャクチャなやり方ぁ・・・。 我が親ながら、破天荒過ぎ!」
萌花(モカ)「でも」
萌花(モカ)「良かった・・・パパとママが居なくならなくて・・・」
太郎(タロウ)「私たちも仕事ばかりしていて、家族と一緒に過ごすことの大切さを軽んじていたよ」
花子(ハナコ)「同意よ!」
萌花(モカ)「でもコレ、ホントにリアルな熊だね!」
太郎(タロウ)「そうそう! 田中後輩、今日はありがとう」
太郎(タロウ)「おかげ様で娘との絆を再確認出来たよ。 以上!」
クマ「・・・」
太郎(タロウ)「あ、着ぐるみは1人じゃ脱げないんだったな」
太郎(タロウ)「ファスナーファスナー・・・」
太郎(タロウ)「オイオイ、もう演技はイイよ」
「せんぱ──い!」
田中後輩「腹が痛くなって草むらの陰で用足してたら」
田中後輩「クマの着ぐるみが誰かに引きちぎられていて、着られなくなっちゃったんです!」
田中後輩「あれ、 誰かにクマの代役頼んだんですか?」
太郎(タロウ)「て、ことはコッチは本当の・・・」
「熊ダアアーッ!!!!」
この夫婦頭が良いのに抜けてるなーと思ったら、最後の方ではそんな意図があったとは……全部、熊に持ってかれましたが😂😂😂
萌花もちゃんも両親思いの良い子ですね。
でも、依存症は治ったのか……次話もあることから、ダメそうですね(。ŏ﹏ŏ)
最後はお約束でしたが、見事に作戦成功ですね。
萌花ちゃんもただのスマホ依存症でなくて、本当は両親が大好きないい子でよかったです。
短編読み切りでも楽しかったですが、2話以降もあるみたいで楽しみです。
やけに感想長いやついると思ったらBOTくんでした。うちにはまだこないな…。
いやー、しっかり作ってあって読み応えありました。父の「以上」は決まってますね。
続きってどうするんだろ。毎回スマホ捨てさせるのか!?しかし楽しみです。