ミカン畑

松岡公平

エピソード1(脚本)

ミカン畑

松岡公平

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ミカン畑
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〇海辺の街
  小春日和の日、ミカン畑のテニスコートは、元気な声であふれていた。
海斗「ワー!」
仲間たち「やったー!」
莉緒「ドンマイ、ドンマイ!」

〇海辺の街
  周りは、黄色く色づいたミカンが豊作だ。
  眼下は、青い海。テニスを楽しんでいる仲間は、みんな気心の知れた仲間たち。

〇沖合
  テニスボールの「ポーン」という乾いた音が周りに響いている。
  二人は至福の時を過ごしていた。

〇海辺の街
海斗「莉緒、少し休もうか?」
莉緒「そうだね!」

〇パチパチ
海斗「おーい、このコートあけるよ!」
  二人はベンチに座った。

〇黄色(ディープ)
海斗「喉が渇いたね。ミカンとってこようか?」
莉緒「ダメよ。監視カメラに写って捕まるよ!」

〇レトロ
  父は自慢していた。クラブ活動が終わって帰る途中、勝手に庭に入って、数人で甘柿を採った。
庭に甘柿が実っているところのおじさん「こらー!」
  家の人は、怒鳴るだけで追って来なかった。、クラブ活動を頑張ったねというご褒美だと父は思ったらしい。
  とんだ勘違いね!今だったら監視カメラで特定されて犯罪になっているわ。

〇オレンジ(ディープ)
  ミカン畑に目を向けた。食べごろのミカンは、父と行った”桃狩り”を想い出させた。
  桃を”皮ごと”食べたら美味しかった。カルチャーショックだった。
海斗「大袈裟だなあ!」

〇沖合
莉緒「蒼い空と青い海、黄色いミカン、自然ってエモいね!」
海斗「ミカン畑の中を猫が走って行くよ!」

〇アート
莉緒「近所のおばさんが子犬を連れてきたの。床下で生まれたんだって。飼ってくれる人はいないかって」

〇タクシーの後部座席
  母が飼い主をみつけてくれて、車で1時間ほどのお宅に連れて行くことになった。莉緒は、子犬をずーっと膝の上に抱いていた。

〇一軒家
  おばさんが私たちを出迎えてくれた。
子犬を飼ってくれることになったおばさん「待っていたわ、マロンって名前にしたのよ」
莉緒「宜しくおねがいします」

〇一軒家
  莉緒は、再び、そのお宅に行くことになった。子犬を連れて行ってから7年ほど経っていた。
子犬を飼ってくれることになったおばさん「あら、珍しいわね 知らない人を見るとうるさいほど吠えるのに!」
  マロンは莉緒のことを覚えていた。

〇一軒家
莉緒「マロンはいい居場所をみつけたわ!」
莉緒「お父さんが”ふるさと”にこだわっているの」

〇幻想2
  代替わりや都市計画があって父が,以前住んでいた家はもうない。親戚のひとも住んでいない。
莉緒「周辺も、田んぼから工業団地になっているのよ!」
莉緒「父の”ふるさと”は、心の中で描く幻になっているわ!海斗、”ふるさと”はある?」
  ”ふるさと”って生まれて、育ったところだろ それだったら 今すんでいるところだよ!
莉緒「家族、地域、自然に守られた”ふるさと”で 子供は、育つのかも知れないね!」

〇タワーマンション
海斗「タワーマンションで暮らしている子供達はそこが”ふるさと”なのかな?」
莉緒「へんかも!」

〇魔法陣のある研究室
海斗「優秀な遺伝子を持った卵子と精子を選別し、試験管の中で人間を誕生させる。そして、AIロボットで育児するイメージがするね!」

〇図書館
海斗「高杉晋作の辞世の句を詠んだ『おもしろきこともなき世をおもしろく』」
莉緒「お返しするわ 『人間の一生はまことに短いものである 好きなことをして暮らしたらよろしい』山本常朝」
莉緒「考えさせられるわね!」
海斗「そうだね!」

〇海辺の街
海斗「もう ひとプレーしようか!」
海斗「葎希ダブルスの試合しようか!」
律希(莉緒、海斗のテニス仲間)「OK!」
海斗「莉緒 いくぞ!」
莉緒「頑張ろうね!」

コメント

  • 物語の中でなんとも言えないゆったりとした時間が流れているような感じがして、読んでいて心地良かったです。ミカン畑と海と空、考えてみればとても贅沢なひと時ですね。

  • その土地、産物、気候、そして暮らす人達に対する愛と敬意が感じられる作品ですね。ゆったりと進む会話の中に温かみが感じられます。

  • ミカン畑というタイトルが、すごく爽やかに感じました。
    文章を読んでいても物語の風景を想像することが出来ました。今の子達のふるさとがタワーマンションになるという話、確かになあ…と思いました。

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