エピソード19(脚本)
〇施設の展望台
今日の16:00までに、百万円を持ってエリートピア本社に集まってください
紅音のスマホから、エリートピアの試験官である戸川の声が流れる。
真田紅音「二時間で百万・・・」
若山柿之介「えええ、世の中やっぱり金だべか」
方法は問いません、貯金してたらラッキー
家族に借りたり、友達に借りたり、あるいはお気に入りのお洋服を売ったり、思い出の指輪を質にいれたり・・・
何か信じられないような方法で稼いだり、とにかく百万円を工面してください
もちろん、犯罪はダメですよ。
エリートピア選考どころか、人生も続けられなくなってしまう、ふふふ
柿之介が財布を取り出して中身を確認する。
若山柿之介「840円だべ」
百万円ぽっち集めてこられないようでは、エリートピアの社員としてあまりに規模が小さい
人間としての器が足りてません。
皆さん、こんな試験軽々パスしてくださいね
私は本社で皆さんが来るのを待っていますので、また後程お会いしましょう
それでは、エリートピア社二次選考試験、スタートです!
若山柿之介「百万って、どうするべか。 そんな大金、おら見たこともねえだ」
財布を確認する紅音。
中には4000円が入っている。
若山柿之介「紅音さは百万円持ってるだか?」
真田紅音「持ってる金かき集めて、たぶん十万ぐらい」
若山柿之介「弱ったべ。 二時間で百万円稼げるような仕事ってあるべか?」
真田紅音「あるわけないだろ、あったってそれこそ犯罪みたいなことだ」
若山柿之介「はー、そうなんだべか」
真田紅音「誰かに借りるしかない、友達か、あるいは・・・」
若山柿之介「ええ、そんな大富豪様みてえな友達いるだか?」
真田紅音「ここからすぐに、大学の寮があるから、とりあえず行こう」
真田紅音「行く間も、チャットで方々にあたってみる」
若山柿之介「はあ、またバタバタだべ」
〇電車の中
窓の外を眺めている柿之介。
紅音はスマホでメッセージを送っている。
「エリートピアの選考で、金が必要。貸して欲しい」
若山柿之介「おー、紅音さ、あれなんだべか」
真田紅音「競馬場だよ。ちょっと前に新しくできた」
若山柿之介「はー、あれが競馬場だべか! たくさんお馬さんが走ってるだか」
若山柿之介「おらの師匠がよくお馬の新聞読んでただ」
そのとき、紅音のスマホに通知音が鳴る。
瑚白「百万用意できた、先に本社で待ってまーす(´艸`*)」
腕時計を見る紅音。時刻は14:20である。
真田紅音「早い」
若山柿之介「んだ、電車ははえぇべ」
真田紅音「違うよ、瑚白、百万円用意できたって」
若山柿之介「おおお、すげえべ!」
真田紅音「ふん、どうせ元々持ってただけだろ」
〇公園の砂場
公園のベンチで、鼻歌を歌いながら日向ぼっこする柿之介。
〇マンションの共用廊下
友人「あー、ごめん、ちょっと金の持ち合わせないわ」
〇一軒家の玄関扉
友人「んー、ちょっと、うちも就活で色々と物入りなんだよね、ほんとごめんねー」
〇おしゃれな廊下
友人「金は貸すな借りるな。 うちの家訓なんだ、悪いな」
〇一戸建て
真田紅音「今、エリートピアの二次選考中なんだけど――」
手島「知ってる、動画見てたから。 百万集めて来いってやつだろ」
真田紅音「あ、そう、なら話は早い」
真田紅音「手島、君たしかかなりお金持ってたよね?」
真田紅音「まあ、もちろんすぐ返すし、何かしらのお礼はするから、今だけ、貸して欲しいんだ」
真田紅音「だって見ただろ? いきなり二時間以内に百万集めろなんて、無茶なこと――」
手島「なんで俺のとこ来た?」
真田紅音「それは・・・」
真田紅音「もちろん、友達だから。頼りにしてるんだよ」
手島「・・・はあ」
手島「嘘言うなよ」
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