殺人の衝動-高校生・来栖秀俊の場合-

YO-SUKE

第二話「殺人ファイル1 及川佐智子の場合(前編)」(脚本)

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〇広い公園
  菜々子が佐川に髪の毛を掴まれている。
筒井菜々子「お願い! 離して!」
佐川学「うっせえ! ブス!」
筒井菜々子「痛っ・・・!」
佐川学「お前マジでウザイよ。死ね」
  菜々子を踏みつけ、
  ジャングルジムへ登って行く佐川。

〇黒背景
  12年前。
  私はまだ6歳で、世界に絶望していた
  私はあの男に虐められ
  先生も親も誰も助けてくれなかった
  毎日が地獄だった

〇広い公園
  ジャングルジムの上にいた
  来栖が佐川の背中を突き飛ばす。
佐川学「うわぁぁぁぁ!!!」
  頭から真っ逆さまに地面に落ちて、
  ピクリとも動かなくなる佐川。
  でも私の地獄はある日突然終わった。
  王子様が現れたのだ
  ジャングルジムの上では
  興奮した顔の来栖が息を切らしている。
来栖秀俊「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

〇ゆめかわ
  来栖くん・・・
  君は覚えていないかもしれないけど
  あの日からずっと
  君は私の王子様なんだよ
  もちろん、今も

〇血しぶき
  第二話
  『殺人ファイル1
     及川佐智子の場合(前編)』

〇学校の校舎
筒井菜々子「おはよう! こんなところで会うなんて運命だね」
来栖秀俊「僕を待ち伏せしてたんだろ」
筒井菜々子「バレたか」
来栖秀俊「昨日も言ったが君と関わるつもりはない。僕に構わないでくれ」
筒井菜々子「はぁー。昨日は勇気を振り絞って 愛の告白をしたのに、その態度なくない?」
筒井菜々子「じゃあいいよ。 ここで大きな声で言うから。 来栖くんが橋本──」
来栖秀俊「よ、よせ!」
筒井菜々子「ふふふ。放課後。 東棟の非常階段のところで待ってるね。 あそこなら人もいないでしょ」
来栖秀俊「くそっ・・・!」

〇マンションの非常階段
  『来栖くんの殺人コーディネート』
来栖秀俊「な、なんだよ・・・これ」
筒井菜々子「新聞部に入ったりしてね、 校内を中心に極悪人をまとめたんだよ」
筒井菜々子「ぜーんぶ来栖くんのために」
来栖秀俊「君はいったい・・・何者なんだ」
筒井菜々子「んー? 来栖くんの恋人候補? なんて、気が早いかな? あはは」
来栖秀俊「・・・無理。僕は帰る」
筒井菜々子「待ってよぉ! みんなに本当のこと言ってもいいの?」
来栖秀俊「考えてみれば証拠は何もない。 優等生の僕と変人の君、 周りがどっちを信じるかなんて明白だ」
来栖秀俊「言いたければ言えばいい」
筒井菜々子「でも、私。 来栖くんの最初の殺人もよく知ってるよ」
来栖秀俊「え?」
筒井菜々子「幼稚園に通ってた頃、 佐川くんを殺したでしょ」
来栖秀俊「な、な、なにを!?」
筒井菜々子「いい顔してたなぁ、来栖くん」
来栖秀俊「!」

〇黒背景
来栖秀俊「あぁ。人を殺すのって気持ちぃなぁ」

〇マンションの非常階段
  座り込んで頭を抱える。
  菜々子は優しく微笑んで
  来栖の肩に手を置く。
筒井菜々子「ずっと我慢して生きてきたじゃん。 少しは素直になろうよ。 来栖くんの本心は、人を殺したいんだよ」
来栖秀俊「我慢なんか・・・してない」
筒井菜々子「小学校のときも、中学校のときも、 離れたところから、 ずっと来栖くんのこと見てきたんだよ」
筒井菜々子「来栖くんの近くにいたくて、 高校は頑張って同じところに入ったの」
来栖秀俊「そんなの・・・ まるでストーカーじゃないか」
筒井菜々子「来栖くんが好きで好きで仕方なかっただけ」
  菜々子はファイルを来栖に見せる。
筒井菜々子「大丈夫。 来栖くんは正義の味方なんだから。 一人目は、この悪人を殺しちゃおうよ」

〇渡り廊下
  来栖と菜々子が離れたところで見ている。
筒井菜々子「及川佐智子――教頭という立場を利用して 気の弱い男子生徒たちに過激なセクハラをしている。クズ中のクズだよ」
来栖秀俊「なぜそんなこと知ってる?」
筒井菜々子「調べるのは私の特技だよ」
筒井菜々子「来栖くんの下着の種類も、タンスの どこにしまってあるかも知ってる」
筒井菜々子「あと中学のとき──」
来栖秀俊「や、やめろ! わかったから」
筒井菜々子「及川はね、過去にある男子生徒を 自殺まで追い込んだこともあるの」
筒井菜々子「でも、当時はそれを揉み消した。 本物の極悪人だよ」
筒井菜々子「ね? あんな奴なら、 殺したって良心は痛まないでしょ?」
来栖秀俊「君は、法律というものを知らないのか。 この国には悪人だから殺していいなんて 法はないんだよ」

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