地球に隕石が・・・

Akiyu

地球に隕石が(脚本)

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〇落下する隕石

〇渋谷のスクランブル交差点
ニュースキャスター「地球に向かって急接近してくる巨大な隕石は、明日には地球に衝突します。もう誰にも止められないのです」
ニュースキャスター「皆様、私は最期の時まで一人の報道関係者としての使命を全うしようと思っています」
ニュースキャスター「街は閑散としております。最期の時という事で店は閉まり、人々が街を出歩く姿もありません」
ニュースキャスター「まるで私だけが、この世界にたった一人なのではないかという錯覚に陥りそうです」
ニュースキャスター「私がこうして街を歩き回る事は意味があるのか?自問自答してしまいます」
ニュースキャスター「いや、きっと意味はあるはずです」
ニュースキャスター「今、テレビをご覧になって下さっているあなた」
ニュースキャスター「そう。私はあなたが観てくれているから、今こうやってリポートをしているのです」

〇落下する隕石

〇渋谷のスクランブル交差点
ニュースキャスター「隕石の地球衝突までの推定残り時間が、あと1時間を切りました」
ニュースキャスター「それに伴い、空の様子がなんだか曇り空に変わってきました」
ニュースキャスター「最期の日は、晴れであって欲しかったですが、そういう訳にはいかなかったようです」

〇渋谷のスクランブル交差点
ニュースキャスター「私は今、たった一人で撮影をしております」
ニュースキャスター「カメラは三脚に固定し、一人でカメラに向かって話しております」
ニュースキャスター「皆様。大変申し訳ございませんが、私個人の話をさせてください」
ニュースキャスター「私にも家族がいます」
ニュースキャスター「私は五年前に結婚し、妻と二歳になる息子がいます」
ニュースキャスター「毎日、仕事から帰ってくると玄関まで走ってきて出迎えてくれる息子」
ニュースキャスター「おかえりと言って私に抱きついてきます」
ニュースキャスター「とても甘えん坊な息子です。可愛くて仕方がありません」
ニュースキャスター「妻は料理上手です」
ニュースキャスター「毎日、家に帰ってきて妻の作った夕食を食べながらお酒を飲む」
ニュースキャスター「それが私の何よりの楽しみです」
ニュースキャスター「私は妻と相談しました」
ニュースキャスター「私はどうしても最期の時まで、報道関係者でありたかった」
ニュースキャスター「本当なら家族と過ごすのがいいでしょう」
ニュースキャスター「でも私のわがままを聞いてくれました」
ニュースキャスター「ありがとう」
ニュースキャスター「本当にありがとう」
ニュースキャスター「そう伝えたい」
ニュースキャスター「皆様にも大切な方がいる事でしょう」
ニュースキャスター「最期の時を大切な方と一秒でも長く過ごしてください」
ニュースキャスター「そして最後の瞬間まで幸せを噛みしめてください」

〇落下する隕石

〇渋谷のスクランブル交差点
ニュースキャスター「隕石衝突までの残り時間が5分を切りました」
ニュースキャスター「5分で何をする事ができますか?」
ニュースキャスター「皆様。よく考えて下さい」
ニュースキャスター「本当に最後の5分間です」
ニュースキャスター「美味しい物を食べますか?」
ニュースキャスター「家族にちゃんと愛してるを伝えましたか?」
ニュースキャスター「いよいよです。もうすぐです」
ニュースキャスター「うっ・・・・・・ううっ・・・・・・くぅ・・・・・・」
ニュースキャスター「ううっ・・・・・・ううっ・・・・・・ああっ・・・・・・ああっ・・・・・・」
ニュースキャスター「ううっ・・・・・・ううっ・・・・・・」
ニュースキャスター「うわぁああああああああああ」
ニュースキャスター「うっ・・・ぐうっ・・・ううっ・・・ううっ・・・」
ニュースキャスター「すみません。取り乱しました。もうまもなくです。もうまもなく私達は・・・」

〇落下する隕石

〇渋谷のスクランブル交差点
ニュースキャスター「隕石衝突まで残り1分となりました」
ニュースキャスター「最後の一分間です。皆様」
ニュースキャスター「最後に言わせてください。私は・・・」
ニュースキャスター「生きていて幸せだった!!!!!」
ニュースキャスター「最高の人生だった!!!!!!」

  その時だった。
  拍手が聞こえてきた。

〇渋谷のスクランブル交差点
ニュースキャスター「・・・えっ?」
大島キャスター「田村さん。お疲れさまでした」
ニュースキャスター「こ、こんな感じで良かったのかな?」
ニュースキャスター「私、映画の撮影なんて初めてで緊張しちゃって・・・」
ニュースキャスター「上手く演技できてたかな?」
大島キャスター「ええ。バッチリですよ。凄い迫力でした」
大島キャスター「さすが田村さんです。後輩の僕も鼻が高いですよ」
ニュースキャスター「よしてくれよ。私は映画出演のオファーが来たから、人の役に立とうと必死だっただけなんだ」
大島キャスター「いやー、でも本当に隕石が衝突するみたいな緊迫感ありましたよ。凄かったです」
一般人「おーい!!た、た、大変だ!!!!」
ニュースキャスター「どうかしたんですか?」
一般人「地球に隕石が落ちてくるって!!」
ニュースキャスター「ああ。それはドラマの撮影の話ですよ」
一般人「違うんだって!!ほら!!俺のスマホ見て!!」

〇落下する隕石
  地球に向かって巨大な隕石が落ちてきている模様です。物凄い速度です。
  1時間後には、地球に衝突して全ての生命が絶滅するでしょう

〇渋谷のスクランブル交差点
ニュースキャスター「えええええええええええ!?」

コメント

  • ニュースキャスター魂を貫く姿素敵だなーと読んでいたのも束の間撮影だったのかとホッとしたのもほんと一瞬で最後までまさかまさかの展開ですごく面白かったです!

  • いやぁ、文章だけでもアナウンサーの気持ちが凄く伝わってきました…。
    短くなるカウントダウン…そしてそれに合わせた心情の変化…とてもリアリティがありました!

  • アナウンサーの臨場感には引き込まれました。もし、この地球に隕石が落ちてくると分かったら、私は絶対好きな事をします。でも、好きなことって何だろう。

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