8月18日(脚本)
〇古いアパート
〇古いアパートの部屋
サユミ「じゃ、叔母さんの部屋の片付けは あたしがやっておくね」
ユキヒサ「ありがとう」
ユキヒサ「ごめんな、せっかくの夏休みなのに こんなことに つきあわせちゃって」
サユミ「うん! ほんとはデートしたかった!」
サユミ「それでも手伝ってあげてるんだから 元気出しなさいよね」
〇大樹の下
サユミ「ねえ・・・ この写真?」
ユキヒサ「うん」
サユミ「撮ったの、叔母さんなのかな?」
ユキヒサ「たぶん」
〇古いアパートの部屋
サユミ「かわいい子・・・ まだ ちっちゃかったんだよね・・・」
サユミ「かわいそうにね・・・」
ユキヒサ「・・・・・・」
ユキヒサ「ほかの親戚は関わりたくないって」
ユキヒサ「叔母さん一人で タケルを育ててたのに・・・」
サユミ「事故・・・なんだよね・・・?」
ユキヒサ「相手の運転手・・・」
ユキヒサ「二人を撥ねる前に 心臓発作で死んでたんだって・・・」
〇木造の一人部屋
タケルの部屋
ユキヒサ「タケルの絵日記・・・」
ユキヒサ「夏休みの宿題か・・・」
ユキヒサ「学校に提出するものなら 見てもいいよな」
〇海水浴場
7月21日
パパとママと海へ行った。
〇木造の一人部屋
ユキヒサ「ウソだ!」
ユキヒサ「タケルは自分の父親が誰かすら 知らないし」
ユキヒサ「叔母さんは海が・・・」
ユキヒサ「幸せな家族連れがいそうな場所が 大嫌いだったんだ」
ユキヒサ「この日記に書かれてるのは タケルの・・・」
ユキヒサ「ただの願望だ・・・」
〇公園の入り口
今日はパパとキャッチボールした
〇田舎のショッピングモール
パパといっしょで
ママがうれしそうだった
〇木造の一人部屋
ユキヒサ「見るんじゃなかった」
サユミ「も、もうちょっと大事に扱おうよっ」
〇黒
ちょうど最後のページが開いている
8月31日
〇木造の一人部屋
サユミ「今日って8月18日だよね?」
ユキヒサ「ああ」
ユキヒサ「タケルが死んだのは8月13日だ」
ユキヒサ「こんな先のページまで埋めるぐらい」
ユキヒサ「幸せな・・・妄想を・・・」
サユミ「うーん・・・ そうでもない、みたい、だよ・・・」
〇荒廃したショッピングモール
8月31日
ぜつぼう
〇木造の一人部屋
サユミ「なんか町、廃墟になってる」
ユキヒサ「幸せな妄想日記の・・・」
ユキヒサ「最後のページがこんなだなんて・・・」
〇荒廃した街
サユミ「30日のも似たような感じだね」
29日
28日
ユキヒサ「新聞記事のように淡々と 町の被害状況がつづられていて」
ユキヒサ「タケルも叔母さんも出てこない・・・」
〇木造の一人部屋
サユミ「なるほどー、あの国からミサイルが 飛んできたって設定なのかー」
サユミ「犠牲者リストまで しっかり作り込んでるね」
ユキヒサ「あ、ひどいな 僕らの名前まで入ってる」
ユキヒサ「子供にニュースなんか 見せるもんじゃないな」
サユミ「僕らの?」
サユミ「なんで、あたしの名前を タケルくんが知ってるの?」
玄関「ガチャ!」
〇古いアパートの部屋
???「ただいま~! や〜っと海外出張が終わったよー」
???「あれ?」
???「え?」
〇黒
???「そんな、まさか! ? ヨウコさんとタケルくんが! ?」
???「私は・・・ ヨウコさんと結婚の約束をしていました」
〇大樹の下
???「タケルくんとも うまくいっていて」
〇海水浴場
???「一緒に海へ行ったり」
〇公園の入り口
???「キャッチボールをしたりして」
〇田舎のショッピングモール
???「パパと呼んでもらえていました」
〇黒
叔母さんとタケルのお墓の場所を聞いて
その人は呆然とした様子で去っていった
〇木造の一人部屋
サユミ「海・・・」
サユミ「キャッチボール・・・」
サユミ「タケルくんが日記に 書いていたのは・・・」
ユキヒサ「・・・妄想じゃなかったんだ」
ユキヒサ「タケルと叔母さんが 死んだ日のページは・・・」
〇市街地の交差点
8月13日
うんてんしゅが
しんぞーほっさに なって
くるまが ぼくとママを
ひきころしました
〇木造の一人部屋
サユミ「タケルくん、 自分が死ぬってわかってたの! ?」
サユミ「偶然で運転手の心臓発作まで 当たるわけないよね???」
サユミ「え、でも、来るってわかってたんなら なんで車を避けなかったの?」
ユキヒサ「8月14日・・・8月15日・・・」
〇葬儀場
ユキヒサ「親戚の反応や 葬式の様子が書かれてる」
ユキヒサ「僕が実際に見た そのままだ」
〇木造の一人部屋
ユキヒサ「8月18日」
ユキヒサ「つまり今日」
サユミ「これ・・・マジ?」
サユミ「ウソ・・・どうしよう・・・」
サユミ「今から逃げても間に合わないよね?」
ユキヒサ「タケルが車を避けなかったのは」
ユキヒサ「車を避けても結局 死ぬって わかっていたからだったんだ」
〇田舎のショッピングモール
幼いイトコの日記によれば
この日のまさにこの時間に
〇荒廃したショッピングモール
めちゃくちゃゾッとしました……。段々と未来のことが書いてあると分かってくる感じが、ゾクゾクして凄かったです!
自分の死を変えられないなら、知らない方が幸せかも。
でも、他人の日記は見たくなるだろうな〜!と思ってしまいました。
タケルくん、ちゃんと幸せに過ごしていたみたいでちょっとホロリです。
日記の内容が不穏なものになるにつれて、ゾワゾワ感がどんどん増していきました。パパ(と読んでいた人)の登場で緊張感が緩和したのですが、以降は……。スゴいストーリー構成ですね