Round1. トリ料理対決(脚本)
〇地球
〇コックピット
総帥「ここが地球か」
カゾクスキー「総帥──」
カゾクスキー「本当に侵略するつもりですか?」
総帥「ああ」
総帥「人類を許すわけにはいかん」
〇駅前広場
只野フウコ「なんだか騒がしいわね」
只野ヒメ「パパ、ママ!」
只野ヒメ「UFOだよ!」
只野フウコ「ヒメ〜」
只野フウコ「何冗談言って──」
〇UFOの飛ぶ空
只野フウコ「へ」
総帥「我々は家族星人」
総帥「貴様ら人類は、家族を大切にしない者ばかり」
総帥「よって我らが滅ぼす」
総帥「このようにな」
〇島
〇沖合
〇駅前広場
只野フウコ「島が・・・」
只野ヒメ「一瞬で・・・」
〇UFOの飛ぶ空
総帥「──だが」
総帥「チャンスをやろう」
総帥「この星で最強の家族を出せ」
総帥「その家族が我に勝てたら、侵略は止める」
〇学校の校門
首相官邸
〇研究施設のオフィス
警備員「若狭秘書官、大変です!」
若狭秘書官「もう知ってる」
若狭秘書官「例の宇宙人だろ?」
若狭秘書官「SNSでバズってて──」
警備員「そいつが、ここに来たんですよ!」
若狭秘書官「え」
カゾクスキー「お初にお目にかかる」
若狭秘書官「か」
若狭秘書官「家族星人!?」
カゾクスキー「そう警戒するな」
警備員「・・・っ」
カゾクスキー「やれやれ」
カゾクスキー「人間の姿なら──」
カゾクスキー(人型)「話す気になるかい?」
若狭秘書官(一瞬で擬態!?)
若狭秘書官(なんて科学力だ)
カゾクスキー(人型)「私はカゾクスキー」
カゾクスキー(人型)「人類を救うためにここへ来た」
若狭秘書官「救うだと?」
カゾクスキー(人型)「ああ」
カゾクスキー(人型)「私は暴力は嫌いだ」
カゾクスキー(人型)「人類を滅ぼすことに反対でね」
警備員「何言ってる!」
警備員「あんな演説をしておいて──」
若狭秘書官「待て」
若狭秘書官「君はあの演説をした奴とは別人だな?」
警備員「え」
カゾクスキー(人型)「さすがこの国の中枢を担う場所」
カゾクスキー(人型)「頭が切れる男のようだな」
カゾクスキー(人型)「彼は総帥、私は別の個体だ」
若狭秘書官「──それで」
若狭秘書官「どう助けてくれるんだ?」
若狭秘書官「君も家族星人」
若狭秘書官「表だって総帥とやらに歯向かえないだろう」
カゾクスキー(人型)「ああ」
カゾクスキー(人型)「だから、総帥に対抗できる人間を探す」
若狭秘書官「・・・どうやって?」
カゾクスキー(人型)「大会を開くのだ」
若狭秘書官「大会?」
カゾクスキー(人型)「そう」
〇黒
カゾクスキー(人型)「最強の家族を決める大会をな」
〇テレビスタジオ
若狭秘書官「国民の皆様」
若狭秘書官「首相秘書官の若狭です」
若狭秘書官「家族星人は、最強の家族との戦いを求めています」
若狭秘書官「しかし、最強とは何か?」
〇おしゃれなキッチン
家事が上手いこと?
〇豪華なリビングダイニング
子供がたくさんいること?
〇超高層ビル
仕事で成功していること?
〇テレビスタジオ
若狭秘書官「どんな戦いになるか、予想もつきません」
若狭秘書官「そこで──」
若狭秘書官「全家族同士、あらゆるジャンルで戦って頂きます!」
若狭秘書官「その勝者が人類代表となるのです」
若狭秘書官「これが『スーパー家族大戦』すなわち──」
若狭秘書官「人類存亡のため、協力をお願いいたします」
〇おしゃれなリビングダイニング
只野フウコ「とんでもないことになったわね」
只野ヒメ「全家族強制参加だって」
只野フウコ「まあ」
只野フウコ「私たちみたいな普通の家族はすぐ負けるわよ」
只野ヒメ「そんなことない」
只野ヒメ「パパとママは最強だもん」
只野フウコ「え~そうかな」
只野フウコ「あなたはどう思う?」
只野ダンシ「・・・」
只野ダンシ「別に」
只野フウコ「もう!」
只野フウコ「人類の一大事というのに、反応薄すぎない!?」
只野ヒメ「まあまあ」
只野ヒメ「パパは仕事で疲れてるんだよ」
只野フウコ「む〜」
只野フウコ(疲れてるわけじゃない)
只野フウコ(この人は昔から──)
〇オフィスのフロア
只野ダンシ「──完成」
同僚「わぁ!」
同僚「教えて頂きありがとうございます」
同僚「ねえ」
同僚「只野さんって、クールでカッコよくない?」
フウコ(独身時代)「そう?」
フウコ(独身時代)「無口なだけでしょ」
フウコ(独身時代)(まあ)
フウコ(独身時代)(悪い人じゃなさそうだけど)
〇おしゃれなリビングダイニング
只野フウコ(私はもっとお話したいのに・・・)
只野フウコ「誰かしら」
〇シックな玄関
若狭秘書官「只野さんですね」
只野フウコ「そうですけど」
只野ヒメ「この人!」
只野ヒメ「さっきテレビに出てた!」
只野フウコ「ホントだ!」
若狭秘書官「ご存知なら話は早い」
若狭秘書官「皆さんには、SFW1回戦へ参加頂きます」
若狭秘書官「我々について来てください」
「え」
〇一軒家
「ええええ!!」
只野ダンシ「・・・御意」
〇闘技場
若狭秘書官「これよりSFW1回戦を始めます!」
カゾクスキー(人型)「今回の対決テーマは──」
「料理!!」
只野フウコ(なんでこんな大々的?)
若狭秘書官「料理をするのは代表者一人」
若狭秘書官「我こそはと思う者は前へ!」
「・・・」
只野フウコ「ま、私がやるしかないか」
只野ヒメ「ママ、頑張って!」
只野フウコ「は~い」
只野フウコ(適当に頑張りますか)
若狭秘書官「対決で使うメイン食材は──」
若狭秘書官「これだっ!」
???「──ほう」
???「トリ料理ですか」
只野フウコ「誰!?」
味間ヨシ「私たちは味間家」
味間ヨシ「あなた方を葬る者です」
只野フウコ「その服装──まさか」
味間ヨシ「そう、私は料理人」
味間ヨシ「小さな居酒屋で日々戦っております」
味間ヨシ「主婦ごときに負けるはずがありません」
只野フウコ「──へえ」
只野ヒメ「あ!」
只野ヒメ「ママの殺る気スイッチが!」
只野フウコ「主婦舐めんなよ」
味間ヨシ「フッ」
味間ヨシ「続きはこれの上で語り合いましょう」
若狭秘書官「それでは──」
若狭秘書官「試合開始っ!」
〇闘技場
若狭秘書官「ヨシ選手、すごい包丁さばきだ!」
味間ヨシ「私の千切りキャベツは──」
味間ヨシ「切られたことすら気づかないのです!」
若狭秘書官「フウコ選手もなかなかだ!」
只野フウコ「私の切ったジャガイモはね」
只野フウコ「切られたことに気づかず変色しないのよ」
若狭秘書官(何言ってんだ、コイツら)
味間ヨシ「──やりますね」
只野フウコ「てめえもな」
「うおおおお!」
〇闘技場
味間ヨシ「あがりです!」
只野フウコ「こっちもよ!」
若狭秘書官「それでは実食タイムに移ります」
カゾクスキー(人型)「まず味間家からだ」
若狭秘書官「唐揚げか」
味間ヨシ「・・・フッ」
カゾクスキー(人型)「このカラッと揚がった衣──」
カゾクスキー(人型)「あれがほしくなりそうだ」
若狭秘書官「あれ?」
カゾクスキー(人型)「泡立ち麦茶さ」
若狭秘書官(宇宙にもビールあんの!?)
カゾクスキー(人型)「だが今は職務中──」
カゾクスキー(人型)「我慢するか」
「それでは一口──」
「なっ!」
若狭秘書官「骨がある!」
味間ヨシ「これは唐揚げではありません」
カゾクスキー(人型)「こ、これは・・・」
カゾクスキー(人型)「もしや──」
味間ヨシ「正解(ジュースト)!」
若狭秘書官「なんです、それ?」
カゾクスキー(人型)「『せんざんき』とは、愛媛県の東予地方に伝わる料理」
カゾクスキー(人型)「普通の唐揚げと異なり、骨ごと揚げるのが特徴だ」
若狭秘書官(ウィキ〇ディアでも見てんのか!?)
味間ヨシ「骨ごと揚げることで、骨から旨味が染み出る」
味間ヨシ「それと漬け込んだ下味が絶妙に合わさり──」
味間ヨシ「味のハーモニーを奏でるのです」
カゾクスキー(人型)「見える・・・見えるぞ」
〇大衆居酒屋
「居酒屋の光景が!」
カゾクスキー(人型)「きつい仕事が終わった後・・・」
若狭秘書官「キンキンに冷えたビールを片手に頬張る・・・」
「宇宙に生まれてよかったー!」
〇闘技場
味間ヨシ「ありがとうございます」
若狭秘書官「対する只野家は──」
カゾクスキー(人型)「チキンカレーか」
若狭秘書官「見た目はいかにも家庭的な感じですね」
「では──」
若狭秘書官「おお!」
若狭秘書官「柔らかく仕上がった鶏肉!」
若狭秘書官「ジャガイモもまったく煮崩れしてない」
若狭秘書官「ルーも市販品のようにも思えるが──」
若狭秘書官「香りがとてもいい」
只野フウコ「当然」
只野フウコ(長年キッチンに立ってきたんだ)
只野フウコ(料理人にだって負けない)
若狭秘書官「──だが」
若狭秘書官「プロのそれと比べると劣る」
只野フウコ「な!」
若狭秘書官「この勝負──」
カゾクスキー(人型)「若狭」
カゾクスキー(人型)「早とちりするな」
若狭秘書官「え?」
カゾクスキー(人型)「我々が探してるのは最強の家族」
カゾクスキー(人型)「日々の生活において、料理は誰のためにする?」
若狭秘書官「・・・家族のため?」
カゾクスキー(人型)「そうだ」
カゾクスキー(人型)「だから審査するのは我々ではない」
カゾクスキー(人型)「食べてもらおうじゃないか」
カゾクスキー(人型)「彼ら自身の家族に」
味間ヨシ「フッ」
味間ヨシ(私の料理は誰が食べてもうまい)
味間ヨシ(結果は変わりませんよ)
味間ミカ「美味しいー!」
味間ミカ「さすがお店の人気メニューね!」
味間ヨシ「当然です」
味間ミカ「タダシもそう思うよね?」
味間タダシ「・・・う、うん」
カゾクスキー(人型)「待て」
カゾクスキー(人型)「タダシ君は、そうは思ってないぞ」
味間ヨシ「え?」
カゾクスキー(人型)「私には聞こえる」
カゾクスキー(人型)「彼の心の声が」
〇モヤモヤ
味間タダシ「ちょっと味が濃いな」
味間タダシ「それに骨があってなんだか食べにくい」
〇闘技場
味間ヨシ「何・・・だと」
味間タダシ「ご、ごめんなさい!」
味間タダシ「本当は僕・・・」
味間タダシ「もっと子供らしい料理を食べたい・・・」
味間ヨシ「く・・・」
若狭秘書官「まさかの展開!」
若狭秘書官「客の心は掴めても、子供の心を掴めてなかったとは!!」
若狭秘書官「只野家の方は──?」
只野ヒメ「私、ママの作るカレー大好き」
只野ヒメ「お店のものなんて目じゃないよ」
只野フウコ「ヒメ~!」
只野フウコ「あなたはどう?」
只野ダンシ「・・・」
只野ダンシ「普通」
若狭秘書官「夫の反応が薄い!」
若狭秘書官「これは引き分けか!?」
只野フウコ「あなたはいつも──」
カゾクスキー(人型)「待て」
カゾクスキー(人型)「私には聞こえる」
カゾクスキー(人型)「彼の心の声が」
只野フウコ「え?」
〇幻想2
只野ダンシ「う」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「うまああああい!!」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「ここはどこ?」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「僕は誰?」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「あまりのうまさに記憶が飛んでしまうー!!」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「この柔らかく仕上がった鶏肉は、ヨーグルトに漬け込んでいるからだ!」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「僕は知ってる」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「いつも色んな家事をこなしながら──」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「下ごしらえにも手を抜かない妻のことを!」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「それにこのルー!」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「二種の市販品をブレンドすることで、スパイシーさがアップ!」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「僕は知ってる」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「この組み合わせを見つけるまで──」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「何度も試行錯誤を繰り返した妻のことを!」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「極めつけは、隠し味のコーヒー」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「香ばしさとほのかな苦味がプラスされるのだ!」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「なんて料理上手!」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「キッチンに舞い降りた天使!」
只野ダンシ(闇の衣を脱いだ姿)「そんな妻が──」
〇闘技場
只野フウコ「な」
只野フウコ「なななななななななな」
只野フウコ「何言ってんのよ!」
只野フウコ「この人がそんなこと思ってるわけ──」
只野ダンシ「・・・」
只野フウコ(何その顔!?)
只野フウコ(そういえば・・・)
只野フウコ(昔どこかで──)
〇桜並木
フウコ(独身時代)「急にこんな所に呼び出してどうしたの?」
只野ダンシ「・・・」
フウコ(独身時代)「え」
フウコ(独身時代)「これって・・・」
只野ダンシ「・・・装着」
只野ダンシ「・・・婚姻」
フウコ(独身時代)「・・・」
〇宇宙空間
只野フウコ「・・・御意」
そうだった
言葉はいつも足りないけど・・・
私は、こういう不器用な彼が好きだったんだ
〇闘技場
只野フウコ「ねえ」
只野フウコ「美味しかった?」
只野ダンシ「・・・」
只野ダンシ「普通」
只野フウコ「まったくもう」
只野フウコ「いつも反応薄いんだから」
カゾクスキー(人型)「見える・・・見えるぞ!」
〇おしゃれなリビングダイニング
彼らの囲む──
温かい食卓が!!
〇闘技場
カゾクスキー(人型)「これぞ家族の力!」
若狭秘書官「──この勝負」
「只野家の勝利!!」
「・・・」
味間ヨシ「いつの間にか──」
味間ヨシ「料理で最も大切なことを忘れていたようです」
味間タダシ「お父さん・・・」
味間ヨシ「今日の夕飯」
味間ヨシ「こんな料理を作ろうと思うのですが、どうでしょうか?」
味間タダシ「・・・」
味間タダシ「すっごく楽しみ!」
〇闘技場
只野フウコ「私たち──」
只野フウコ「勝っちゃったみたいね」
只野ダンシ「ああ」
只野ヒメ「当たり前だよ」
只野ヒメ「パパとママは最強だもん」
只野フウコ「ふふ、そうかも」
只野フウコ「それじゃあ──」
只野フウコ「最強目指して、いっちょ頑張ってみますか!」
只野ダンシ「御意」
「御意!!」
〇闘技場
???「あの家族──なかなかの手練れのようだ」
???「そうだね、パパ」
???「だがどうということはない」
???「そうだね、パパ」
???「家族の絆など、粉々になるだろう」
???「そうだね、パパ」
「我ら力石家の──」
「圧倒的パワーの前にな!!」
只野家の戦いは──
まだまだ終わらない!!
目指せ最強の家族!楽しかった〜😆
口数少ない旦那に、家族星人のナイス心の透視🤣
家族バトル、ただ戦うだけでなく、勝利の仕方に絆や思いやりを描けそうですね!『旦那の育児勝負』とか見てみたいなーと思いました!笑
油断してました、飯テロ作品だった。唐揚げ食べたくなりました。
反応ない旦那嫌だー。あのプロポーズで受ける彼女はすごいです。返事も御意。子供もよく生まれましたね。奥さんも十分普通じゃない。
次話は子供のクセが見たくなりますね。
スーパーなロボットの大戦かと思ったら、天下一の家族を決める武闘会だった!?
せんざんき、知らない鶏料理で今調べてます。美味しそう…
秘書官がノリノリで審査員してたり、次回予告でどう見てもパワー系の家族が出てきたりと、細部まで面白かったです!
ですが一番惹かれたのは、表紙のフウコだったり。ポーズと表情が素敵でした☺︎