しあわせの対価

はちねこ

愛という名の、洗脳(前編)(脚本)

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〇仮想空間
神崎「この仕組みは・・・ 本当に、多くの人々を幸せにするのだろうか」
神崎「私と妻が、長い年月をかけて・・・ できた銀行・・・」
  銀行の創設者であり、若くして研究を成功させた神崎。
  
  彼は、儚げに微笑で部屋を出た。

〇銀行
  ここは、えのき銀行。
  
  命なのに、えのきとふざ・・・面白みのある名前の銀行。
  だが、名前の想像を上回って・・・
  
  なんと、”命をお金に換えることができる”
  のである。
  禁忌だ、命をはかるのはいかがなものか、尊い何にも代えがたいものを・・・
  
  という、真っ当な意見もあった。
  しかし、葛藤の中・・・多くの人々は、望んだ。
  
  私の命を、後世の家族のために。
  大切な誰かの、なにかのために。
  そんな、人々の思いと、重いを乗せて。
  
  今日も天秤が、揺れている。

〇仮想空間
神崎「さて・・・」

〇研究施設の玄関前
優「いらっしゃいませ。お客様。 本日のご用件を伺います」
  どこか、表情の硬い・・・若い女性の銀行員が挨拶する。
山田 昌子「銀行員さんかしら。 私、山田と言います。 今日は・・・」
山田 昌子「息子の・・・換金の手続きに来ました」
  母親の後ろに、少年が隠れている。
  
  これから自分がどうなるのか、分かっているのだろうか。
優「息子さんのお手続きですね。 こちらで、ご案内させていただきます」
  優は、二人を応接室へ案内する。

〇応接室
  応接室のソファへ、二人を座らせる。
  
  優は、書類諸々を用意する。
優「こちらが、ご契約の際の注意事項諸々やその他内容」
優「そして、契約書となります。 ご内容に納得して、書いていただければ」
優「ただし、一度契約してしまえば破棄することは不可能です」
優「それでもよろしいですか?」
山田 昌子「構いません」
優「では、今から順を追って説明します。 契約書の注意事項は、なるべく目を通していただきたく・・・」
山田 昌子「いえ、進めてください」
優「即決していただけるのはありがたいのですが、本当によろしいのですか?」
山田 昌子「大丈夫です。むしろ、早く・・・!」
山田 昌子「ねぇ、傑。 傑、お母さんの役に立ちたいって言ってたものね?」
山田 傑「うん! 僕は、お母さんの役に立ちたいんだ」
山田 傑「僕、何やっても上手くいかなくて・・・」
山田 傑「でも、やっと・・・ 誰かの役に立てる!」
  傑は、迷うことなく答えた。
  
  本当に・・・良いのだろうか。
  優は、淡々と説明していった。

〇応接室
優「以上が、ご契約内容となります。 額面は・・・こちらです」
  優は、独特な演算機を素早く打ち、机の上に天秤を置く。
  平均的な生涯年収、そこに寿命、換金する対象の命の価値、人格、ハンディーギャップなどを考慮し足し引きする。
  普通に過ごしていると、あまりお目にかかれない桁の額面に、母親が目を輝かせる。
山田 昌子「すごいわ・・・ さすが、傑。 私の自慢の息子!」
山田 傑「(やった!久しぶりにお母さんに褒められた。笑ってくれてる。嬉しいな・・・)」
山田 傑「そ、そうかな・・・ お母さん、僕はすごい?」
山田 昌子「すごいわよ!」
山田 昌子「ぜひ、この内容でお願いします!」
優「そうですか。かしこまりました・・・」
優「では、こちらにサインとはんこを、いただけますか」
  嬉々として記入する母につられて、傑もゆっくりと記入する。
優「では後日。 当銀行の通帳へ、お振込させていただきます」
山田 昌子「よろしくお願いします。 さあ傑、今日は何でも好きなもの、食べていいからね!」
  ご機嫌に帰っていく母の隣で、どこかぎこちない笑みを浮かべる傑。

〇研究施設の玄関前
  後日・・・
  
  彼女は、通帳を確認するため銀行へ訪れていた。
山田 昌子「ちゃんと、通帳に振り込まれてるわ。 それにあの子・・・」
山田 昌子「砂のように、消えたわ」
  狂気的な笑みを浮かべる彼女。
  
  傑を、どう思っていたのだろうか。
山田 昌子「さて、と。 これであの人とまた・・・」
優「山田様、それは無理ですね」
山田 昌子「!?」
  背後にスッ、と現れた優。
山田 昌子「な・・・あなた、いつから!? というか、無理ってなによ・・・?」
優「取りあえず換金したい。 急いてるお客様ほど、注意事項をよくお読みいただけないのですよ」
優「一人につき一度だけ。 そして、子供に関しては初めて妊娠した子供に限るんです」
  続く・・・

次のエピソード:愛という名の、洗脳(後編)

コメント

  • 命の対価…
    寿命かと思ったら本当に命なのですね。
    気になるので続きも読ませていただきます

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