鬼面人の唐紙

キリ

-勝利の鬼-(脚本)

鬼面人の唐紙

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〇森の中
環「・・・っ」
僥杞「それは、奴の墓か?」
環「っっ!」
環「そっ、そうだ」
僥杞「ほお~まあ あれから2日経ったからなぁ」
僥杞「俺にしてやられた程度でくたばったなんざそんなに大したことねえ鬼だったって訳か」
環「してやられた...だと?」
僥杞「んああ」
僥杞「俺のお手製でな、1針撃ち込めば 人間ならその日のうちに息絶える」
僥杞「鬼だとてその効果は絶大さ」
環「くっ...猪口才な...」
僥杞「環、おめえも奴の後を追うか?」
僥杞「おんなじやり方でくたばらせてやるよ」
環「私は、貴様を許さない」
環「この手で葬(ほうむ)り去ってやる!」
僥杞「はあああっ! ! ! !」
環「ふっっ! ! ! ! !」
僥杞「ガバッッ...」
僥杞(なんだ?この感覚はっ...っ)
僥杞(正面からの一撃は環の、 背後からも刺された感覚が...)
僥杞「なっ! ! ?」
唐紙「誰の、墓っつった?」
唐紙「あ?」
僥杞「かっかか唐紙ぃ? ? ? ! ?」
僥杞「てめえは、死んだはずっ...」
唐紙「オイラも驚いたわ、まさか人間の薬で 痛みが和らぐなんてな...」
唐紙「ほんと、人間ってやつぁ...」
唐紙「つーわけで、毒は完治してねえが」
唐紙「お前を倒せるだけの気力はあるぜ」
僥杞「くっ...環ぃ! ! !」
僥杞「侍が鬼と組んでいいのかよ! ! ?」
環「生憎、私は侍の看板を 下ろしているところだ」
環「誰と組もうが言われる筋合いは無いっ!」
環「はあっ! !」
僥杞「フン!」
環「ううっ!」
唐紙「お侍様っっ!」
僥杞「よそ見してる余裕あんのかよおおおお!」
唐紙「ぐぅっっっ!」
僥杞「ハエ共に俺を倒せる力があるかよ!」
僥杞「戯れ言は俺に、喰われてから死ねええええ」
環「っ! ! ?」
環「くっぬぅ...っっ」
  僥杞の牙を剥く口を、刀を噛ませたことで
  噛みちぎられずに済んだ
僥杞「ッヒヒヒヒ」
  ケタケタと笑う僥杞が、環を喰らおうと
  している姿を見ていると、唐紙はある
  光景がよぎる━━

〇森の中
紫苑「なあ、お前さん...」

〇森の中
唐紙「チッ......」
唐紙「思い出させんじゃねえよ...」
唐紙「分かってら...っ」
唐紙「もう、紫苑殿の二の舞になんて」
唐紙「させねえええええっっ! ! ! ! !」
僥杞「んっ?」
唐紙「くらえええええ! ! ! ! !」
僥杞「ギギッ...っ! !」
環「今だっ! !はああっ! !」
僥杞「...っガバハッ」
  吐血した僥杞は、背中から倒れ、
  地面に背中を強打した
環「ハァ...ッハア、やったのか...っ?」
唐紙「死なれちゃ困るんだわ」
唐紙「おい、まだ生きてっかぁ?」
僥杞「チックショ...ッ」
唐紙「てめ人間に姿を変えれるんだったよな?」
唐紙「なれよ」
僥杞「ハア?...命令スンナ...テメエノ望ミ、答エルカヨ」
唐紙「このまま生殺しでいいのか」
僥杞「環ヲ喰エバ 俺トやり合う必要ナカッタロ...ッ」
僥杞「ソコマデ、人間ハ嫌イダッテカ...?」
唐紙「・・・」
唐紙「ちげーよ」
唐紙「人間が...」
唐紙「大事なんだ...」
唐紙「...オイラは鬼でも、」
唐紙「オイラにとっちゃ...」
唐紙「くっっ....ぅ」
唐紙「ッグハア...ッ...」
環「唐紙殿! !」
環「毒がっっ...」
僥杞「・・・」
僥杞「・・・」
「っ? !」
上司「コレデチャラカ...?」
環「僥杞...」
上司「タマ....キ...」
上司「オマエハ...っ...生きろ...ぉ」
環「え...」
上司「ホラ、殺セヨ...」
唐紙「くっ...」
  トドメを刺そうとする唐紙だが、
  人間に扮した僥杞を傷つける
  ことができない
環「唐紙殿?」
唐紙「くそっ...っちきしょっ...っっ」
上司「世話ガ妬ケル」
環「あ、それはっ!」
上司「うぐぅううううっ!」
環「僥杞! ! ?」
唐紙「ハ...ッ」
上司「コレデ...イッ...」
  僥杞は、環の刀を自身の心臓に突き刺し
  自ら命を経った──
  最期の言葉が環たちを気遣っての言葉の
  せいで、憎くても憎みきれないまま
  僥杞は息絶えた...
環「...唐紙殿、はやく僥杞を喰え」
唐紙「くっふ...っ...」
唐紙「嫌だ、オイラ、人間はっ...」
唐紙「人間だけはっっ! ! !」
環「っ...」
環「唐紙殿...」
唐紙「ハッ...」
  唐紙の顔は、一枚紙を身に付けている
  その紙の上から、環は手のひらで
  瞳の部分を覆(おお)った
環「これで、鬼だと思って喰えるか?」
唐紙「・・・っ」
唐紙「お侍様...」
唐紙「酷だと思うが、ずっと手を抑えてて くれないだろうか...?」
環「良いぞ」
  刹那の思いをぐっとこらえ、唐紙は
  人間の姿になった鬼にかぶり付いた
唐紙「ッフッ...ウッ...ッ...美味いぃぃ...」
  鬼の身体を喰うよりも、人間の身体を
  味わうほうがはるかに格別だった
  その事は、唐紙自身もよく知っていたが
  一度として喰いたくはなかった
唐紙「・・・」
唐紙「っ...」
環「唐紙殿...」
環(あ、そういえばこの光景──)
環(昔、見たことがある...)

〇森の中
「てめーが弱いだけじゃろぉよぉ」
「雑魚鬼が」

〇森の中
環(あのときの...鬼は、唐紙殿なのか?)
環(いやあり得ん)
環(・・・・・・だが)
環(もし本人だとすれば、一時期 鬼が 村に現れなくなったのは)
環(唐紙殿が食べてくれたから...)
環(そういうことにしといてやろう)

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