うつし世はゆめ

深山瀬怜

1-8「VS吸血鬼」(脚本)

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〇謎の施設の中枢
  ―民間警備会社サーペンティン本部―
天堂斎「どうやら先を越されてしまったようですね」
百瀬蛍「すみません・・・」
天堂斎「いいんですよ。あの夢魔は排除されたのだから」
天堂斎「あの夢魔は政府に引き取られて取り調べを受けているようです」
天堂斎「我々が捕らえたとしても結果は同じ」
天堂斎「世界にとっては、誰がやったかより何が起きたかの方が重大ですから」
百瀬蛍「そうですね・・・」
天堂斎「ああ、でも褒美をあげると言っていましたね」
天堂斎「今回は君に過失があるわけではないので・・・特別に少しだけあげましょう」
百瀬蛍「いいんですか!?」
天堂斎「君にはこれからも頑張っていただきたいですから」
  天堂は左腕を小さなナイフで切り付ける。
  傷口から滲んだ血を、蛍は夢中で舐めとった。
百瀬蛍「ああ、本当に美味しい──」
天堂斎「そうですか」
天堂斎「しかし、あの夢魔・・・背後に何がいるのか、ちゃんと吐きますかね」
百瀬蛍「天使様の見立ては?」
天堂斎「おそらくは掴めないでしょう」
天堂斎「ああいった存在は排除されなければならない──」
百瀬蛍「はい、心得ております」
  人と怪異の共存を脅かすもの──
  それを取り除くのが民警の仕事。
  目的は同じはずだった。
  第8話「VS吸血鬼」

〇体育館の中
市来紅羽「ふぁ・・・ねむ・・・」
古井戸六花「昨日、お仕事大変だったの?」
市来紅羽「まあいつもよりはね」
市来紅羽「邪視を使うと疲れちゃうから」
古井戸六花「そういえば前から疑問なのだけど、雪女の血って美味しいのかしら」
市来紅羽「夏には良さそう」
古井戸六花「私のだったら怨霊成分もあるから、さらに夏向けね」
市来紅羽「でも、その人本人からもらうのはあくまで緊急の対応だからね!」
市来紅羽「基本はパックの血があればいいわけだし」
古井戸六花「そうね、それでこれだけ動けるんだもの」
市来紅羽「バスケはね、前に暮らしてたところが高架下のストリートバスケのとこのすぐ横だったから」
市来紅羽「何なら毎日人狼とかとバスケしてた」
古井戸六花「人狼のバスケ、めちゃくちゃダンクシュートとか決めそうね」
市来紅羽「力強すぎてゴール破壊した奴もいたよ」
古井戸六花「すごいわね・・・私なんて運動はからっきしだから」
市来紅羽「それなら私は勉強がからっきしだよ」
市来紅羽「そもそも机に座ってじっとしてるのが嫌い」
  六花と紅羽は、学校にいる間はよく一緒に行動していた。
  紅羽は学校があまり好きではなかったが、六花と過ごすのは好きだった。
古井戸六花「あ、そういえば知ってる?」
古井戸六花「最近、この近くで吸血鬼が出るって噂があって」
市来紅羽「噂の前にここに一人いるけどね」
古井戸六花「紅羽じゃなくて、なんか男の吸血鬼が人を襲ってるって」
市来紅羽「そうなの? それが本当ならそのうち榛兄あたりがなんか言ってくるかなぁ」
市来紅羽「六花も気をつけなよ」
市来紅羽「まあ魔法で対抗できるかもだけど・・・」
  六花は魔法を使うための鉱物、アンタークチサイトを手に入れてから、めきめきと力をつけていた。
  もう六花に嫌がらせをするような人はいない。
  何故なら返り討ちに遭うのがわかりきっているからだ。
市来紅羽「それにしても、吸血鬼か・・・」
古井戸六花「どうかしたの?」
市来紅羽「同じ吸血鬼でも、人間の血を吸ってるのと、人工血液パックだけなのとじゃ、全然強さが違うんだよね・・・」
市来紅羽「魔法使ってる人間の血ならすごく強くなるんだけど・・・」
市来紅羽「だから噂の吸血鬼が本当なら、すごく強いだろうなあって」
古井戸六花「もしかして・・・不安なの?」
市来紅羽「不安っていうか・・・私が弱いってのは、まあそうなんだろうなって」
市来紅羽「・・・でも、強くなるのはわかってても、本当は人間の血を吸うのも抵抗があって」
市来紅羽「でも、本来は人間の血を吸うのが普通の種族だったんだよなとも思っちゃって」
古井戸六花「優しいね、紅羽は」
市来紅羽「優しいのかな。自分ではわからないけど」

〇駅前広場
市来紅羽「ふう・・・すっかり遅くなっちゃったね」
古井戸六花「楽しかったよ。また一緒に買い物行こうね」
  放課後、買い物に出掛けていた紅羽と六花は、駅前で別れようとしていた。
  しかしそのとき、どこからか女性の叫び声が聞こえ、二人は声がした方へ走って行った。
市来紅羽「大丈夫ですか!?」
市来紅羽「・・・って、これはもしかして」
  そこには女性の首筋に噛み付いている男がいた。
市来紅羽「今すぐその人から離れなさい!」
古井戸六花「もしかして‥.噂の吸血鬼?」
市来紅羽「多分ね。六花はこの人連れて逃げて。 あと榛兄に連絡してほしい」
古井戸六花「わかった!」
吸血鬼「誰かと思ったら、まさかの同族じゃないか」
吸血鬼「人間と馴れ合い、牙を抜かれた同族など、我が敵ではない!」
市来紅羽「・・・っ!」
市来紅羽「(こいつ・・・どれだけ人間の血を吸えば、こんな強く)」
  どうにか攻撃魔法をぶつけて相殺するが、力に差があることはすぐにわかってしまった。
  しかしここで引くわけにもいかない。
吸血鬼「やはり弱いな。本来は我々は人の血を吸って生きる存在なのだ」
吸血鬼「人間は餌でしかない」
市来紅羽「そんなことない!」
市来紅羽「これまで沢山の吸血鬼が苦労して人と生きていく方法を見つけたんだから!」
吸血鬼「お前は何も知らないんだな」
吸血鬼「そうやって吸血鬼が人間に歩み寄ってしまったがために、我々は不利益を被っている」
吸血鬼「人間にとっては吸血鬼なんてどうでもいいのだ。だから人工血液の欠点はいつまでも解消されない」
吸血鬼「我々は再び、人間にとって脅威であるということを知らしめなければならない!」
市来紅羽「くっ・・・!」
吸血鬼「人と馴れ合った吸血鬼など敵ではない」
市来紅羽「っ・・・それでも私は、今の生活を守りたい!」
吸血鬼「愚かな娘だ」
市来紅羽「うっ・・・!」
  攻撃をまともにくらい、紅羽は血を流してその場に倒れた。
吸血鬼「・・・同族だから多少情けをかけてやろうかと思っていたが」
吸血鬼「どうやらお前とは永遠に分かり合えないらしい」
市来紅羽「(っ・・・邪視が・・・体が、動かない・・・!)」
吸血鬼「せめてもの情けだ、楽に死なせてやろう」
???「そこまでよ!」
吸血鬼「っ・・・誰だ・・・!?」
百瀬蛍「サーペンティン所属、百瀬蛍」
百瀬蛍「ここからは私が相手をするわ」

次のエピソード:1-9「至高の血」

コメント

  • うおおおおドキドキした!!!
    すごくいいところで助けに入ってくれたけど、どうなってしまうのか…!組織の思惑も気になります😇
    紅羽ちゃんは優しいと思いますよ…こんな風に人間の血を吸った方が強くなるからって利害しか見ない奴もいるのに、そこで切り捨てないで共存を選んでくれるのは本当に優しいと思う…エモい…
    ところで雪女の血は夏に飲んだらひんやりして美味しそうだなと思いました。クー◯ッシュみたいな←

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