リモート一家

ぐらっぱ

夜景が見える風景(脚本)

リモート一家

ぐらっぱ

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リモート一家
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〇綺麗な一人部屋
父さん「みんな揃ってるか? リモート会議を始めるぞ」

〇カラフルな宇宙空間
兄ちゃん「準備OK ずっとリモート渋ってたくせに どうして今頃?」

〇草原
母さん「はいはい、始めますよ 仕方ないわねぇ」

〇黒背景
「もしもし! じいちゃんです!」
じいちゃん「キャメラはどこかのぅ」

〇魔界
ばあちゃん「あらら爺さん カメラに映ってないじゃないですか」

〇綺麗な一人部屋
父さん「いやぁ 家族みんな色々あって バラバラに住むようになったからな」
父さん「父さん、北の方に転勤で 暫く帰れないから せめてリモートで会いたいなぁと」
父さん「死んだばあちゃんも 家族は大事にしろって 言ってたからなぁ」
父さん「そういうわけで たまにはリモートで家族揃って 近況報告しよう、な?」
父さん「ジイさんは⋯⋯ まぁ声さえ聞こえればいいか」

〇ファンタジーの学園
モトコ「それはいいんだけどさぁ」
モトコ「さっき何か映らなかった?」

〇綺麗な一人部屋
父さん「何も映ってない! き、気のせいだ」
父さん「な、何も飼ってない 飼ってないからな!」

〇ファンタジーの学園
モトコ「猫じゃなくってさぁ なんか他に見えたんだけど」

〇綺麗な一人部屋
父さん「気のせい気のせい とにかくリモートで話し合いをしよう な?」

〇黒背景
じいちゃん「キャメラは10年前に買ったのがあるのぅ それを繋ぐといいかぁ?」

〇魔界
ばあちゃん「あらあら 紹介してくれないなんて寂しいねえ」
ばあちゃん「全くもう」

〇ファンタジーの学園
モトコ(もしかして兄ちゃんが ドッキリでも仕込んだのかな)

〇SNSの画面
モトコ「兄ちゃん なんか画面に細工した?」
兄ちゃん「へ? 何にもしてないけど?」
モトコ「だってさっき ばあちゃんの姿が」
兄ちゃん「何言ってんだ? まぁ突然父さんがリモート参加するって 何かあったのかもだけどさ」
モトコ「兄ちゃんが仕込んだんじゃないの?」
兄ちゃん「おれは何もしてないよ」
モトコ「それじゃあ あれは一体」
兄ちゃん「まぁ、なんにせよ 計画通りだしいいんじゃね?」
モトコ「そうだけどさぁ」

〇仮想空間
  家族でリモート会議をしよう
  これは私と兄が計画した事
  1年前に亡くなったおばあちゃんの
  最後の遺言を叶える為に──
  私達家族は今、バラバラに暮らしている
  価値観の違い、すれ違い
  転勤、入学
  様々な要因はあったけれど
  私達家族の心は離れていった
  あまりにも色々な事があったのだ
  昔はもっとみんな仲が良かった気がする
  けれどあの時──

〇黒
  ──5年前
「いい加減にして」

〇明るいリビング
「いっつもいつも仕事仕事! もっとうちの事も手伝ってよ」
「僕はいつも家の事を大事に思ってる! その為に働いてるから仕方ないだろ」
「全然家に居ないじゃない 休みの日だって もう少し相談に乗ってくれたら」
「家の事は君の仕事だろう?」
「あなたはいつも私に全部押し付けて!! もっと相談したかったのに あの子の事だって」
「あいつが家を出て行ったのは 君のせいじゃないのか きちんと母親の役割してないから」
「なんでそんな事言うの? 私だって頑張ってる 頑張ってるのに」
「喧嘩はやめて! ねぇ、やめてよぅ」

〇黒
  それまで母は共働きと子育てで
  忙しい生活を送っていた
  父はその頃管理職に昇進したばかりで
  家に帰れない程忙しく
  出張の回数も増えていった
  お互いストレスを抱え
  口論も増え、そんな二人に嫌気がさし
  兄は家を出て遠くの地で就職した
  当時中学生だった私は
  父方の祖父母の家に預けられた
  そんなバラバラになった家族を案じ
  何かと家族が揃う機会を作ってくれたのは
  父方の祖母だった

〇走行する車内
  旅行に行きたいから連れていって
  家の水道が壊れた
  あのデパートの菓子を買ってきて
  何かにつけて祖母は家族を呼びつけた
  家族がバラバラで暮らす事に
  変わりはないが
  祖母のおかげで家族が揃う機会は増えた
  そしてみんなの笑顔も
  少しずつ増えていったのだ
  けれど

〇病室のベッド
ばあちゃん「ばあちゃんの最後の願いを 聞いてくれないかい?」
ばあちゃん「みんな家族なんだから 前みたいに仲良くしておくれ」
ばあちゃん「家族仲良くしてくれないと 化けて出てくるからね」
  1年前、そう言い残し
  祖母はあっけなく亡くなった
  重病である事を家族に隠して

〇ファンタジーの学園
モトコ(ばぁちゃん亡くなってから 兄ちゃんと相談したのよね みんなバラバラに住んでるし)
モトコ(私は大学進学で南の方、 兄ちゃんは西に移住、 父さんは北に転勤、母さんは都心)
モトコ(住んでるとこバラバラだし とにかくリモートでもなんでも 何か話し合いする場を作ろうって)
モトコ(なんとか母さんも納得させたし)
モトコ(あれ? そういやばぁちゃん最後に 化けて出てくるって)
モトコ「まさかね」

〇魔界
ばあちゃん「モトコや」
ばあちゃん「あんた見えているね?」

〇ファンタジーの学園
モトコ「え!? ばぁちゃん?」

〇魔界
ばあちゃん「あんた達の事が心配で ばあちゃん成仏できんかったのよ」
ばあちゃん「他にも心残りはあるんだけどねえ 叶えてくれないかい?」

〇ファンタジーの学園
モトコ「えぇぇ!?」
モトコ(マジなの? 父さん達見えてないみたいだし)

〇魔界
ばあちゃん「見えているあんたに頼みがある」
ばあちゃん「北のH市から見える夜景が見たいんだ 写真を撮ってきてくれるかい? 旅行行けなかったのが心残りでね」
ばあちゃん「あんたの父さんに頼むんだ もし断られたら──」
ばあちゃん「あんたの父さんは猫が好きすぎて 猫コスしてる事をバラしておやり」
ばあちゃん「この写真を公開するって 脅してやんなさい」

〇ファンタジーの学園
モトコ(そんな写真どこから)
モトコ(マジで父さん猫コスしてる)
モトコ「もしや転勤から中々帰って来ないのは この趣味のせい?」
モトコ(ばあちゃん本当に成仏できなかったのか 私達の事心配しすぎて)
モトコ(安心させて成仏させなきゃ まずは心残りの事を解決させよう 私がやらなきゃ)

〇綺麗な一人部屋
父さん「モトコ? 何ぶつぶつ言ってるんだ?」

〇カラフルな宇宙空間
兄ちゃん「今日なんだかおかしいぞ どうしたモトコ?」

〇ファンタジーの学園
モトコ「父さん お願いあるんだけど」

〇綺麗な一人部屋
父さん「なんだ?」

〇ファンタジーの学園
モトコ「ちょっとH市に行って 夜景撮ってきて」
モトコ「私が行ってあげたいけどうちからじゃ 遠いすぎてすぐ行けないのよね」

〇綺麗な一人部屋
父さん「いきなり何を言ってるんだ 無理に決まってるだろ」

〇ファンタジーの学園
モトコ「猫コス⋯⋯」

〇綺麗な一人部屋
父さん「な、なな 何を言ってるんだ 知らん、知らんぞ!」
父さん「それに ここからすぐ行ける距離じゃないし 無理無理!」

〇ファンタジーの学園
モトコ「証拠もある ばあちゃんが旅行したかった所だし 写真を仏壇に飾ってあげたい」

〇草原
母さん「モトコ何言ってるの? あなた今日おかしいわよ」

〇魔界
ばあちゃん「あんたの母さんの推しのアイドル ○日にH市でゲリラライブするよ そう伝えな」

〇ファンタジーの学園
モトコ(どこでそんな情報を)
モトコ「母さんも行ったら? 推しのマッキィー君が○日に H市でゲリラライブするって」

〇草原
母さん「えぇ!? 本当に? ねぇ、あなた 一緒に行きましょうよ!」

〇綺麗な一人部屋
父さん「う、うーん 丁度○日は休みだけど」

〇カラフルな宇宙空間
兄ちゃん「H市かぁ 好きなアニメのご当地グッズが 売ってるんだよなー」
兄ちゃん「父さん! 行くなら買ってきて」
兄ちゃん「おれも行きたいんだけど 休みが合わないんだよなあ」

〇綺麗な一人部屋
父さん「わかったわかった! H市に行ってくるよ 母さんも来るだろ?」

〇草原
母さん「H市久しぶりだわ 早速飛行機の手配しなきゃ」

〇魔界
ばあちゃん「ふふふ」

〇ファンタジーの学園
モトコ(父さんが猫コスしてる事は 知りたくなかったけど)
モトコ(でも写真撮ってきてもらったら ばあちゃん成仏してくれるかな)

〇黒

〇堤防

〇赤レンガ倉庫

〇街の全景

〇ライブハウスのステージ

〇黒
  父と母は旅行を楽しみ
  多くの写真を撮ってきてくれた
  そして私はその写真を持ち
  祖母の仏壇へ飾った
  きっと生きているうちに
  行きたかったであろう
  その美しい夜景の写真を

〇綺麗な一人部屋
父さん「この前は楽しかったなぁ 母さん」
父さん「そういやあ 初デートもあそこだったよなぁ」
ネコチャン「うにゃー」
父さん「わわ、出てきちゃだめですよう ネコチャーン」

〇草原
母さん「覚えていてくれたのね また旅行しましょう 今度は家族揃って」
母さん(マッキィー君かっこよかったぁ)

〇カラフルな宇宙空間
兄ちゃん「お土産ありがとう 今日届いたよ」
兄ちゃん(限定コラボグッズゲットォ 欲を言えば保存用にもう一個ほど 頼めばよかったな)

〇ファンタジーの学園
モトコ(二人とも楽しそう 行ってもらって良かったかも)
モトコ(少し家族仲良くなった気がするし ばぁちゃん成仏してくれたかな)

〇魔界
ばあちゃん「まだだねぇ」

〇ファンタジーの学園
モトコ「え? なんで」

〇魔界
ばあちゃん「まだ見てみたい風景があるのさ」
ばあちゃん「今度は南の方の⋯⋯ モトコの家から近いかねえ?」
ばあちゃん「あとは じいちゃんのカメラも直してほしいね」
ばあちゃん「よろしくね、モトコ」

〇ファンタジーの学園
モトコ「今度はこっち!?」
モトコ「仕方ないなぁ」
モトコ「じいちゃんのカメラは この前電話で伝えたけど 直ってなさそうだね」

〇黒背景
じいちゃん「おかしいのう 確か取り付けたような」

〇綺麗な一人部屋
父さん「じいちゃん! カメラ近いんじゃ」
父さん(一瞬パンツが見えたなぁ)

〇カラフルな宇宙空間
兄ちゃん(パンツの柄派手)

〇草原
母さん「あらあら」

〇魔界
ばあちゃん「笑顔が一番」
ばあちゃん「まだまだ見たい風景は沢山あるよ」

〇ファンタジーの学園
モトコ(ばあちゃんの願いは きっと家族の幸せ)
モトコ(安心して成仏できるよう 願いを叶えたい)

〇SNSの画面
  今度は家族みんなで集まろうね

コメント

  • リモートで家族の再生ってだけでも斬新なのに死んだ婆ちゃんからのお願いという超強力な動機が加わって最強に見える。
    いや、婆ちゃん。バラバラの家族を仲直りさせるために生前と同じようなお願いを家族にしてくるとか、これは泣けますね。
    ネココス好きなお父さんやじいちゃんのパンツも手伝って、コミカルかつ泣ける絶妙な味付け!

  • 家族の秘密を知っているお婆ちゃん、他界しても目を光らせていますね。(笑)
    あと爺ちゃんのパンツの柄w

  • リモート通話が家族の絆を繋ぐ様子を垣間見えた気がしました!
    敢えて距離を取るか、成程🤔
    おばあちゃんはエンマちゃんにお願いして守護霊として家族を見守っているのでしょう、きっと。
    おじいちゃんのお茶目っぷりに笑顔が華咲きました🌹
    受賞作品のシリーズ化にはリモート通話でプレゼンするとの事ですが、こんな風に楽しくリモートできたら良いなと心から願っております✨
    とても素敵なお話で面白かったです♪

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