トランクの人

銀次郎

願いと希望(前編)(脚本)

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銀次郎

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〇古いアパートの一室
若宮はづき「‥‥」

〇荒廃した街
アナウンサー男性「続いてのニュースです」
アナウンサー女性「昨日、国内で初めての暴動が確認された場所で、再度の暴動が発生しました 再び多くの死傷者が確認され‥」

〇古いアパートの一室
若宮はづき「‥‥」

〇黒背景

〇アパートの玄関前
配達員「どーもー、はい、トランクです」
若宮はづき「はい‥じゃあ、昨日の、お返しします」
配達員「はい、確かに いやー、いよいよ最後ですね」
若宮はづき「そうですね‥いつもありがとうございました」
配達員「あー、いえいえ、お金貰ってますしね まあー、仕事ですから」
若宮はづき「仕事か‥そうですね」
配達員「あー、そう言えば知ってました? このアパート、来週には取り壊されるんですって」
若宮はづき「取り壊される?」
配達員「はい、近所に配達に来た時に聞いたんですけど、本当は先週に解体予定だったのが、急に1週間伸びたらしくて」
若宮はづき「‥そうなんだ」
配達員「トランクさんも今日までですか?」
若宮はづき「トランクさん?」
配達員「ほら、いつもトランク届けてるから、何となくそんな名前をつけてたんですよ この荷物は宛名も無いし、名前を聞くのもあれだから」
若宮はづき「あー、なるほど‥はい、私も今日までです」
配達員「何か今日も顔色良くないですけど、大丈夫ですか?」
若宮はづき「ははは、今日もですか‥ まあ、何とか」
配達員「そうっすか、何とかなら、何とかなりますかねー」
若宮はづき「うーん、どうでしょう‥」
配達員「何かねー、思うんすよ、最近なんか世の中物騒じゃないですか? なーんか、バタバタしてるし」
若宮はづき「ええ、まぁ」
配達員「でも、あんまピリピリしなけりゃ、 何とかなんのになーって思ってんすけどね」
若宮はづき「‥そうですね、そう思います」
配達員「まー、そう言っても、仕事がキツいのは変わらないから、腐りそうになりますけどねー‥」
配達員「おっと!トランクさんに愚痴ちゃいましたね」
若宮はづき「あっ、いえ‥あの、配達さん‥お名前は?」
配達員「配達さん?」
若宮はづき「あっ、何となく、すいません」
配達員「あーいいっすよ、名前‥うーん‥ じゃあ、配達さんで」
若宮はづき「えっ?」
配達員「いいじゃないすか!トランクさんと配達さんで、何か合ってますよ」
若宮はづき「‥そっか、そうですね」
配達員「そいじゃ、トランクさん! よくわかんないすけど、頑張って!」
若宮はづき「はい、配達さんも、お元気で」
配達員「じゃー、失礼しまーす」
若宮はづき「頑張って‥か」

〇古いアパートの一室
若宮はづき「最後の中身‥か」
若宮はづき「カード‥? 違う、カードキーだ メモは‥」
若宮はづき「××× ×××× ×××× ×××× ここか‥」
若宮はづき「よし!」

〇大きい研究施設
若宮はづき「ここか‥ここがある場所か‥」

〇古いアパートの一室
  昨日の夜‥
若宮はづき「文月さん‥文月さん‥ ううう、文月さーん!」
白崎文月(しらさきふづき)「ちょっと、もー、泣かないのー」
若宮はづき「みんな、みんな、死んじゃったんです‥ 母も、瑠璃沢さんも‥」
白崎文月(しらさきふづき)「うん‥綴木から聞いたよ」
若宮はづき「綴木さんから‥?」
白崎文月(しらさきふづき)「そう、今はあいつと一緒に動いてるから」
若宮はづき「動いてる‥? そうだ、文月さん、何で生きて‥」
白崎文月(しらさきふづき)「そうだよね‥本当はね、はづきちゃんと会った後、みんなと同じようになるつもりだったの‥でも、何かさ、もったいなくってさ」
若宮はづき「もったいない?」
白崎文月(しらさきふづき)「そう‥はづきちゃんと話してたらさ、このごちゃごちゃした世界で、何だかもうちょっと暮らしてみたくなったの」
若宮はづき「でも、でも、それじゃあ、調整が、 綴木さんが‥」
白崎文月(しらさきふづき)「そう、来たのよあいつ、調整しにさ‥ その時はそんな事されなくたって、自分でけじめつけるわって思ったんだけど、そしたらさ‥」
若宮はづき「そうしたら?」
白崎文月(しらさきふづき)「あいつが、止めやがったのよ」
若宮はづき「止めた?綴木さんが?だって調整人って‥」
白崎文月(しらさきふづき)「そうなの! あいつ、自分の仕事を放棄しやがったの!」
若宮はづき「そんな‥でも、そうしたら‥」
白崎文月(しらさきふづき)「そうよー、そうとうやばいのにね‥ それでとにかく瑠璃沢さんに話そうって事で」
若宮はづき「瑠璃沢さん、知ってたんですか?」
白崎文月(しらさきふづき)「うん、それで、瑠璃沢さんがこっそりと裏で手を回して、遠野井さんに合わせてくれたの」
若宮はづき「遠野井さんって‥じゃあ、まさか!」
白崎文月(しらさきふづき)「いざなぐ手をしてもらった‥ それと、何かわかんないけど、これも‥」
若宮はづき「たっくんだ‥」
白崎文月(しらさきふづき)「たっくん?そんな名前なんだ‥ これを持ってればしばらくは大丈夫だって」
若宮はづき「遠野井さん‥」
白崎文月(しらさきふづき)「何か、みんなのおかげみたい、私が生きてるの‥だから‥何かさ、何かしたくてね」
若宮はづき「何かって?」
白崎文月(しらさきふづき)「今の仕組みがやってる事とは違う何か‥ あいつや瑠璃沢さんに助けてもらった命だからさ‥」
若宮はづき「瑠璃沢さん‥ファンだったんですよ」
白崎文月(しらさきふづき)「へぇっ!?」
若宮はづき「文月さんのファンで、写真集持ってるって言ってました‥」
白崎文月(しらさきふづき)「あの人、そんな事ひと言も‥」
若宮はづき「だから‥きっと、文月さんの事を‥」
白崎文月(しらさきふづき)「‥言ってくれたらさぁ‥ サインぐらいしてあげたのに‥」
若宮はづき「文月さん‥」
白崎文月(しらさきふづき)「‥‥やばい、いつまでも話してられないんだ」
若宮はづき「えっ?」
白崎文月(しらさきふづき)「いま、電気が消えたでしょ?」
若宮はづき「消えた?」
白崎文月(しらさきふづき)「そう、電源落としたから このアパート、センサーとカメラで見張られてるからね」
若宮はづき「消えてたんですね‥気がつかなかった」
白崎文月(しらさきふづき)「だって、部屋暗くなったでしょ?」
若宮はづき「あー‥電気点けてなかった‥」
白崎文月(しらさきふづき)「はぁ?何よそれ?」
若宮はづき「何か‥気持ちが落ちこんでて、忘れてました‥」
白崎文月(しらさきふづき)「まったく‥とにかく、電源が戻る前に言っとくね、いい、はづきちゃん?」
若宮はづき「‥はい?」
白崎文月(しらさきふづき)「明日、はづきちゃんは、ある場所に行く‥そして、決断を迫られる」
若宮はづき「決断?」
白崎文月(しらさきふづき)「その決断次第では、はづきちゃんに立ち向かわなければならなくなる」
若宮はづき「そんな‥じゃあ、私はふづきさんと一緒に‥」
白崎文月(しらさきふづき)「はづきちゃん‥瑠璃沢さんは陰ながら助けてくれたけど、結局私たちの側に来ようとしなかった、この意味わかる?」
若宮はづき「‥それは」
白崎文月(しらさきふづき)「きっと‥いや、必ず、その人それぞれに正しいと思う考え方があるの‥だからこそ、明日、その事と向き合って、そして、決めて」
若宮はづき「文月さん‥」
白崎文月(しらさきふづき)「もし、私達と来てくれたら嬉しい‥ けど、もし違っても、はづきちゃんと向き合うようになっても、私はあなたを大好きだから!」
若宮はづき「文月さん‥」
白崎文月(しらさきふづき)「はい、泣かないのー、まったく」
若宮はづき「ううう」
白崎文月(しらさきふづき)「はづきちゃん、ちゃんと向き合って、そして見極めて来て」
若宮はづき「文月さん‥」
白崎文月(しらさきふづき)「あなたなら出来るの!だって、私は、はづきちゃんに会えたから、今も生きてるんだから!」
若宮はづき「‥はい」
白崎文月(しらさきふづき)「しっかりね!それじゃ!」
若宮はづき「‥はい」
若宮はづき「文月さん‥」

〇大きい研究施設
若宮はづき「(文月さん‥見極めて来ます)」
若宮はづき「よし!いくよ、はづき!」

〇研究施設の守衛室前
若宮はづき「誰もいない‥行っていいのかな? ‥行くしかないか」

〇研究施設の廊下(T字路)
若宮はづき「どこまで行けばいいんだろう‥」

〇開発施設の廊下
若宮はづき「扉‥あっ! カードキーの差込口がある!」

〇研究機関の会議室
若宮はづき「ここは‥ あっ!あなた達は‥いったい?」

〇黒背景
  その、1時間ほど前‥

〇高層ビル
調整人・綴木(つづるぎ)「またここに来るとはな‥」

〇高層ビルのエントランス
宇津木「‥お待ちしてました」
調整人・綴木(つづるぎ)「そりゃどーも」
宇津木「こちらです」
調整人・綴木(つづるぎ)「奥のエレベーターだろ、知ってるさ」
宇津木「そうですか‥でしたら急がれたほうがいい」
調整人・綴木(つづるぎ)「そうなのかい?こっちには特に急ぐ理由はないんだがね」
宇津木「私達のためではありません 彼女のためです」
調整人・綴木(つづるぎ)「彼女?」
宇津木「はい 若宮はづきさんのためです」
調整人・綴木(つづるぎ)「あいつに! 彼女に何かあるのか?」
宇津木「だからとにかく急いで!」
調整人・綴木(つづるぎ)「‥わかった」

〇貴族の応接間
宇津木「千寿様、お連れしました」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「ありがとう、宇津木 お久しぶり、来てくれたのね、調整人さん」
調整人・綴木(つづるぎ)「彼女がどうした?何があるんだ?」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「ふふふ、挨拶も無しに要件とはね まあ、話しが早くてこちらも助かるわ」
調整人・綴木(つづるぎ)「おい!」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「まあまあ、落ち着いたら、まだ間に合うから‥それより、あなた‥いえ、あなた達と言った方がいいのかしら?」
調整人・綴木(つづるぎ)「‥何のことだ」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「ふふ、まあ、いいけど で、あなたはあの仕組から離れていると思って間違いないかしら」
調整人・綴木(つづるぎ)「‥なぜ、そんなことを聞く」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「それが重要な事だからよ もしまだあの仕組みにいるのなら、あなたにも影響があるからね」
調整人・綴木(つづるぎ)「影響?」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「そう‥これを運んでもらいたの」
調整人・綴木(つづるぎ)「これは‥?」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「小さな箱よ‥たっぷりの呪いが込められたね」
調整人・綴木(つづるぎ)「呪い‥?」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「そう、この箱をやつらの元に運んでほしいの」
調整人・綴木(つづるぎ)「それで、どうなる?」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「どうもしないわ あなたはこの箱をやつらに渡して、それで終わりよ」
調整人・綴木(つづるぎ)「‥意味がわからないが」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「あの連中への呪いを込めたのよ、この箱にね‥だからもしあなたがまだ連中の仲間だと、一緒に呪いを受けて貰うことになるの」
調整人・綴木(つづるぎ)「‥なるほど、理屈はわかった‥が、 呪い?そんなものに力があるのか?」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「それは信頼してるわ だって、あなたのお仲間がこれを見つけてくれたんだから」
調整人・綴木(つづるぎ)「仲間?」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「ほら、オカルト事に心血を注いでいた方がいたじゃない?」
調整人・綴木(つづるぎ)「オカルト‥はっ!」

〇黒背景

〇貴族の応接間
調整人・綴木(つづるぎ)「野戸か‥」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「あの方が調達したものだもの、 効力についてはね、ふふふふ」
調整人・綴木(つづるぎ)「呪い‥か」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「さあ、早く言った方がいいわ たぶん、あの人が来ている」
調整人・綴木(つづるぎ)「あの人?」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「ガネーシャの裏側と言えばわかるかしら?」
調整人・綴木(つづるぎ)「ガネーシャ!あいつが来てるのか!」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「ええ、今朝日本に着いたって報告があったから」
調整人・綴木(つづるぎ)「まさか‥あいつが来るとは‥」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「彼だけじゃないわ、彼を含めた七賢全員が揃っているはず、どうしても彼女を自分達に取り込むため、勢揃いで乗り込んできたのよ」
調整人・綴木(つづるぎ)「七賢が全員‥わかった、直ぐに行ってくる」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「お願いね」
調整人・綴木(つづるぎ)「‥いや、ちょっと待ってくれ、もし‥」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「なあに?」
調整人・綴木(つづるぎ)「もし‥若宮はづきがやつらの仲間になったとしたら、この呪いは‥」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「‥もちろん、彼女も呪いの対象になるわ」
調整人・綴木(つづるぎ)「そんな‥」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「だから、急いで」
調整人・綴木(つづるぎ)「‥わかった」
宇津木「千寿様、よろしかったのでしょうか?」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「なにが?」
宇津木「ここまで明確に敵対行為をしてしまうと、今後連中からの妨害が‥」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「ふふふ、いいのよ どうせいつかは戦わなくてはならないんだし、今回はいいチャンスなの」
宇津木「なるほど‥余計な事をいいました」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「ふふふ、いいのよ それより、引き続き動きを探って置いてね」
宇津木「はい、かしこまりました 失礼します」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「‥瑠璃沢、出来る事はやったわよ」

〇研究機関の会議室
若宮はづき「あなた達は‥いったい‥」
手邑木「この子か‥」
長津「‥‥」
焔「若いな‥」
万丈「そうね、若いわね‥」
ロフコフ「年齢は関係ない‥良い青をしている」
魯「そうね、後はあの方に判断してもらいましょう」
若宮はづき「あの方‥?」
多聞沿十郎「私の事だよ」
若宮はづき「えっ!?」
多聞沿十郎「わざわざ来てもらってすまないね」
若宮はづき「あなたは‥炭屋さん?」
多聞沿十郎「私は多聞沿十郎と言う名だ」
若宮はづき「多聞‥でも、でも、炭屋さんに‥」
多聞沿十郎「炭屋か‥炭屋四十のことかな?」
若宮はづき「えっ?」
多聞沿十郎「間違えるのも無理はない 彼は私の双子の兄だからな」
若宮はづき「兄?双子? でも、双子なのに多聞って‥苗字が違う」
多聞沿十郎「私はね、生まれてしばらくして養子に出されたんだよ」
若宮はづき「養子‥?」
多聞沿十郎「まあ、昔はね、養子に出されることはよくあったんだよ‥特に炭屋家のような古く大きな家柄だと、双子は何かと忌み嫌われてね」
若宮はづき「嫌われる?」
多聞沿十郎「ああ、そもそもは家督を継ぐ事が大きな問題だから、ややこしい事は避けたかったんだろう」
若宮はづき「そうなんですか‥」
多聞沿十郎「それに炭屋の血を引くと言うだけで、繋がりがほしい名家では、その子を養子に迎えたいという家も多かったからな」
若宮はづき「でも‥なんでここに‥?」
多聞沿十郎「私がいる事が不思議かね?」
若宮はづき「‥それは」
多聞沿十郎「私の多聞家も炭屋には届かないがなかなかの資産家でね、それにこの仕組みの援助や運営には四十より前から関わっているからね」
多聞沿十郎「まあ、実質的な代表者だと思ってもらっていい」
若宮はづき「双子で二人ともこの仕組みに関わっているんですか‥」
多聞沿十郎「ああ、周囲の人間は確かに戸惑ったようだまあ、気持ちはわかるがね」
若宮はづき「‥ガネーシャに手が4本‥」
多聞沿十郎「ガネーシャ?」
若宮はづき「はい、炭屋さんのあだ名だって」
多聞沿十郎「ああ、確かにそう呼ばれていたようだが」
若宮はづき「最初は炭屋さんが色んな方に援助している事を指してるのかと思ったんですが‥それは炭屋さんと‥あなたの事を言っていたんですね」
多聞沿十郎「ふふふ、なるほど‥確かにな なかなか面白い事を言うやつがいるもんだな」
若宮はづき「あの‥」
多聞沿十郎「何だね?」
若宮はづき「‥あなたなら、全てがわかるんですか?」
多聞沿十郎「全てとは?」
若宮はづき「これは、これに関わる全ては、いったい何なんですか?あなた達と、この場所と‥」
多聞沿十郎「ふん、そうか‥」
若宮はづき「私はトランクの中身を届けに来たのに、それはもう使ってしまったし‥今ここで起きているこれは、何なんですか!?」
多聞沿十郎「いま、届けているんだよ」
若宮はづき「届けている? だってさっき‥」
多聞沿十郎「カードキーはただの鍵だ あれは届け物じゃない」
若宮はづき「じゃあ‥」
多聞沿十郎「若宮はづきさん、届け物はね あなた自身なんだよ」
若宮はづき「なっ!」
多聞沿十郎「あなたが最後のトランクの中身なんだよ」
若宮はづき「私が‥」
多聞沿十郎「君が過ごした10日余り、その間に起きた事、それら全ては、今日のこの日のために用意された道筋なんだよ」
若宮はづき「それじゃ、それじゃ、あの人たちの死は何なんですが!? 何か意味があるって言うんですか!」
多聞沿十郎「もちろんそうだよ なぜなら、君がここにいるじゃないか?」
若宮はづき「どういう‥意味ですか?」
多聞沿十郎「君という人間を覚醒させ、私達の元へ来させるため、やがては私達の指導者とさせるため」
若宮はづき「‥それじゃ‥それじゃ‥この10個のトランクは‥」
多聞沿十郎「全て君という人間を目覚めさせるため、 私たちが仕組んだ事だよ」
若宮はづき「そんな‥そんな‥私だけのために‥」
多聞沿十郎「君だからだよ、若宮はづき」
若宮はづき「私は‥何なんですか」
多聞沿十郎「それを瑠璃沢から聞かなかったのかな?」
若宮はづき「それは‥優秀な独裁者だと‥」
多聞沿十郎「優秀な独裁者か?はははは まあ確かにな、はははは」
若宮はづき「独裁者って‥どういう意味ですか?」
多聞沿十郎「今までの世界で数多に存在した独裁者たち、その中でも特に優れた独裁者には、青を操る術を持つものがいたと言われている」
若宮はづき「青を操る‥」
多聞沿十郎「そう、君と同じように、いざなぐ、いざなむを使える者がな」
若宮はづき「‥‥」
多聞沿十郎「独裁者というと悪く聞こえるが、末期にある状況を改善するには、カリスマ性を持った人物の圧倒的な力が必要になるんだよ」
若宮はづき「でも‥私はそんな人間じゃ‥」
多聞沿十郎「君は両方の手を持っている‥しかもその両方を、手を触れずに行う事が出来る」
多聞沿十郎「それは過去の指導者達をも上回る、稀代の指導者、導き手、まさに優秀な独裁者となれるんだよ」
若宮はづき「そんな‥」

〇大きい研究施設
調整人・綴木(つづるぎ)「まさか、七賢全員が集まっているとはな‥」

〇研究施設の廊下(T字路)
調整人・綴木(つづるぎ)「呪いの箱か‥」

〇黒背景
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「‥もちろん、彼女も呪いの対象になるわ」

〇研究施設の廊下(T字路)
調整人・綴木(つづるぎ)「あいつがもし仲間に加わったら‥」
調整人・綴木(つづるぎ)「まったく‥」

〇研究機関の会議室
手邑木「人々がゆるやかな終わりに向かうためのプロセスとして、今があり、私達がいる」
焔「私達は、善意であり、良心である」
長津「戦争や災害などの極端な事でなく、小さな小さな禍の集合体から人々は滅んでいく」
万丈「私達は、好意であり、正義であるの」
ロフコフ「誰かのために命をかける、結果として、あなたの命は誰かの救いになる」
魯「青い光は自分の命の終わり、その終わりを、ただ亡くなるのではなく、誰かの救いになれたら‥それが、届け物を受け取る意味」
若宮はづき「誰かの救い‥」
多聞沿十郎「若宮はづきさん、君はこの世界が良い方向に向かうと思うかい?」
若宮はづき「それは‥」
多聞沿十郎「小さな争いが様々な場所で、あらゆる形で行われている、もう滅びる事が決まっている、それが今の世界だよ」
若宮はづき「‥‥」
多聞沿十郎「せめて、穏やかな滅びに導いてあげたいとは思わないか?」
若宮はづき「でも‥でも‥」
多聞沿十郎「そうすれば、暴動で命を落とす、誰かに責められ自ら命を絶つ、自暴自棄になり意味無く周囲に刃を向ける‥」
多聞沿十郎「そんな残酷な出来事は無くなるんだよ」
若宮はづき「だけど‥」
多聞沿十郎「若宮はづき‥君の導きが、力が、 必要なんだよ」
若宮はづき「‥‥」
  続く

次のエピソード:願いと希望(後編)

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