エピソード33(脚本)
〇西洋の城
エミリア、アイリ、エルルの3人は再びガルバニアスと対峙(たいじ)する。
アイリ「はああっ!」
最初にアイリが攻め込む。
しかしガルバニアスが起こした巨大な竜巻に吹き飛ばされてしまった。
エミリア「はっ!」
エミリアが駆け出し、襲い来る竜巻に自ら突っ込んでいく。
吹き荒れる風の軌道に乗り、エミリアはどんどん加速していく。
しかしエミリアの加速にあわせるかのように竜巻もその勢いを増していく。
そのあまりの速度に、エミリアの身体はガルバニアスから引き離されるように吹き飛ばされた。
——ように見えた。
エミリア「はあああああっ!!」
エミリアは、自分を支柱にハンマーをグルグルと回すエルルのもとへ一直線に向かう。
そして凄(すさ)まじい勢いを保ったまま、エルルのハンマーの側面に足を合わせた。
エルルは回転を緩めず、そのままエミリアを打ち出す。
エルル「エミリアさんッ!!」
〇西洋の城
ギュンッと音を立てながら、エミリアは疾風のごとくガルバニアスへ向かっていく。
竜巻の軌道に乗ることで得た加速の勢いと、エルルのハンマーで打ち出された力が重なる。
その強烈な一撃はエミリア自身が槍となったかのようなスピードを生み出した。
ガルバニアスは自身を守るように幾重もの風の層を作り出す。
エミリア「甘いッ!」
エミリアは槍にはめ込まれたコアの力を使い空中でさらに加速した。
エミリアの槍の先が、ガルバニアスの作り出した風の層を瞬く間に突き破る。
エミリア「うおおおおおおおッッ!」
風の盾を抜け、エミリアがガルバニアスの目の前に姿を現した。
そしてそのままガルバニアスの胴体を貫く。
〇西洋の城
ギャイイイ!
ガルバニアスの悲鳴が響き渡る。
エミリアは下腹部にむき出しになっているコアを狙ったのだが、ギリギリのところで身を反らされ、翼膜を貫いただけだった。
しかし、ガルバニアスにはたしかにダメージを与えている。
その感触が3人の目を輝かせた。
エミリア「よし、いけるぞ!」
アイリとエルルが笑顔で頷いた瞬間、ひときわ大きなガルバニアスの咆哮(ほうこう)が鳴り響いた。
ビリビリと空気が震え、3人はとっさに耳を塞(ふさ)いで顔をしかめた。
ガルバニアスは上空を猛々しく旋回し、その大きな翼が地面に巨大な影を落とす。
呆然と見上げることしかできない3人の目にブレスをチャージするガルバニアスの姿が映った。
周囲の空気を全て巻き込まんとするような、今までの規模をはるかに凌駕する巨大な風の塊が渦巻いている。
ガルバニアスは喉首をしならせ、勢いよく下を向く。
次の瞬間、ガルバニアスを中心にして全方向へ猛烈な突風が吹き抜けた。
ゴオオオッ
言い表せられないほどに強烈な風に3人の身体はいとも簡単に吹き飛ばされる。
〇荒廃した街
風が過ぎ去ったあとの光景は悲惨なものだった。
広場の石畳(いしだたみ)は剥がれ、建物のほとんどが倒壊している。
先ほどの祭りの賑わいなど見る影もない。
パラパラと崩れた瓦礫が散る中、メルザイアスのコアだけは傷ひとつつかず、じっとその場に鎮座している。
異様な静けさに支配された広場で、もう動く者はいなかった。
〇草原
ニルは息を荒げ、目の前のゼノンを睨(にら)んだ。
電流が走る身体を引きずりながら立ち上がると、ブレードを構えて即座にゼノンとの距離を詰める。
再びふたりの剣が交わった。
無数の斬撃の応酬(おうしゅう)が続く。
しかし、ブレードが交わるたびにニルの身体にはゼノンのブレードを介して電流が流れ込む。
応酬が続けば続くほど、ニルだけが傷ついていった。
ゼノン「まだまだいけるよね?」
そう言ってニヤッと口角をあげると、ゼノンの腕がさらに巨大なブレードへと変形した。
柄本から刀身にかけて雷の脈が走り、刃の部分は青白く光っている。
ゼノンが加速する。
ニル(まずいッ!)
ニルはとっさに腕をシールド状に変形して防御の体勢をとった。
しかし、シールドは呆気(あっけ)なく破られてしまう。
ニルは衝撃を殺しきれず、全身に電流を浴びて10メートルほど吹き飛んだ。
ニル「グアアアアア!」
痛々しい声をあげながら、ニルの身体が地面を滑る。
そのまま気絶したニルの腕はシュルシュルと元の形状へと戻っていった。
ゼノン(・・・死んじゃったかな?)
ゼノンはブレードを元の形状に戻し、ゆっくりとニルに近づいた。
ゼノン「・・・見当違いだったかな」
ニルのそばにしゃがみ、投げ出されている機械の右腕に手を伸ばす。
触れようとしたその瞬間、膨大なエネルギーの圧がゼノンを襲った。
ゼノン「ッ!?」
ゼノンはとっさに大きく後ろに飛びのき、ニルから距離をとる。
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