ミワちゃんはカワイイ後輩?(脚本)
〇女の子の一人部屋
先輩「ミワちゃん、ゆっくりくつろいでね」
ミワちゃん「はい」
どこか緊張した様子でミワちゃんは座布団の上にちょこんと座っている。
ミワちゃんは私の大学の後輩で同じ文芸サークル仲間だ。
ふわふわの髪に綺麗な顔立ち。小柄で可愛らしい彼女は私の憧れる『女の子』そのもの。
サークルに入部届を持ってきたミワちゃんと私はすぐに仲良しになった。
ミワちゃん「すみません先輩。課題の手伝いまでしてもらって」
先輩「いいのよ。気にしないで」
今日はミワちゃんが大学の講義で出された課題を手伝っている。
偶然にもその講義は私が去年取ったものだったので、資料を持っていたのだ。
先輩「きちんとポイントさえ押さえてれば大丈夫だから」
ミワちゃん「助かります」
にこりと笑うミワちゃんは本当に可愛い。
二人で黙々と課題をこなしていれば時間はあっという間に過ぎていく。
先輩「あ、もうこんな時間だね。ごはんにしょっか」
ミワちゃん「そうですね」
先輩「何食べたい? って言っても簡単なものしか作れないけど」
ミワちゃん「え!?」
ミワちゃん「先輩が作ってくれるんですか!」
先輩「うん」
先輩「あ、もしかして手作りとか苦手だった?」
先輩「それなら外に食べに行く?」
ミワちゃん「そんなことないです!」
ミワちゃん「先輩のごはん、食べたいです!」
先輩「ふふ。よかった」
私はスパゲッティを作ることにした。
といってもパスタを茹でて市販のソースに絡めるだけの簡単なものだけれど。
それでもミワちゃんは目をキラキラさせて喜んで食べてくれた。
ミワちゃん「ごちそうさまでした!」
先輩「ふふ。おそまつさまでした」
ミワちゃん「とっても美味しかったです」
満足そうにお腹をさするミワちゃん。
その頬っぺたにさっき食べたパスタソースが付いている。
先輩「じっとしててね」
ミワちゃん「え?」
私は指先でそのソースを拭う。
ミワちゃん「・・・・・・・・・・・・」
どうしたことかミワちゃんは真っ赤になって固まってしまった。
汚れた指先をティッシュで拭っているとミワちゃんがやけに真剣な顔でこっちを見てくる。
ミワちゃん「先輩」
先輩「なあに?」
ミワちゃん「先輩は・・・・・・その、彼氏とかいないんですか」
先輩「突然どうしたの?」
予想にもしなかった問いかけに私は固まる。
ミワちゃん「いや・・・・・・いつも私に構ってくれて迷惑じゃないかなって」
先輩「まさか!」
私は慌てて首を振る。
自慢じゃないが私はこれまで男性とお付き合いしたことはない。
読書が趣味の地味な私に声をかけてくれるような人はいない。
せいぜいバイト先の書店で、探している本について聞かれるくらい。
先輩「ミワちゃんを迷惑だなんて思ったことないよ」
先輩「私、地味で男ウケしないでしょ? 彼氏なんてぜんぜん」
先輩「ミワちゃんみたいに可愛かったらなぁ」
ミワちゃん「・・・・・・! 先輩は素敵な人です!」
先輩「わ!」
突然大声を上げたミワちゃんに私はちょっと驚く。
ずっとミワちゃんが距離を詰めてくる。
ミワちゃん「優しくて可愛くて・・・・・・とっても魅力的な人だと思います」
やけに真剣な口調で言われて私はちょっとドキドキしてしまう。
相手が女の子だってわかっているのに。
先輩「ふふ。ありがとうミワちゃん」
ミワちゃん「・・・・・・あ、いえ」
赤くなったまま俯くミワちゃんはやっぱり可愛い。
〇飲み屋街
ミワちゃん「はあ・・・・・・」
ミワちゃん「ヤバかった」
先輩のアパートはどこもかしこも先輩の匂いがして座っているだけでどうにかなりそうだった。
ミワちゃん「可愛かったなぁ先輩」
目立つ派手さはないが、先輩はとっても魅力的な女性だ。
ミワちゃん「クッソ・・・・・・」
ヨッパライ「ウイ~~~」
ミワちゃん「『げ。酔っ払いかよ』」
ヨッパライ「お、カワイイコがいる! 俺とデートしない?」
ミワちゃん「うるせぇ! 誰に向かって声かけてんだ!」
ヨッパライ「!!??」
ミワちゃん「『やべっ・・・・・・!』」
ヨッパライ「???」
〇本屋
俺、三和 貴志(ミワ タカシ)は自分の将来にも希望が持てず荒れた学生時代を送っていた。
ある日、偶然立ち寄った書店。
勉強なんてろくにしてこなかったが不思議と本は好きだった。
でもその時は何を選んでいいかわからず、ぼーっと本棚を眺めるしかできないでいた
先輩「何かお探しですか?」
三和「え!?」
それが先輩と俺の出会い
先輩は俺の見た目を怖がることもなく優しく微笑みかけてくれていた。
三和「え、あ・・・・・・何か面白い本がないかなって」
先輩「じゃあこの本なんてどうです?」
先輩は優しく俺に色々な本を勧めてくれた
勉強に興味が持てないと打ち明ければ、おすすめの参考書まで教えてくれて
これまで俺の周りにいた誰とも違う優しくてきれいな先輩。
気が付いた時には恋に落ちていた──
〇大学の広場
猛勉強して、俺はこっそり調べた先輩と同じ大学に入った。
仲良くなりたくて同じサークルに入ろうと思ったのに、先輩の所属する文芸サークルは恋愛沙汰厳禁かつ女性限定というルールが。
どうしても先輩と話したかった俺は
女装という道を選んでしまったのだ──
小柄な体型と手先の器用さが幸いして俺の女装は完璧だった。
完璧すぎた故に一切周りにバレずにここまできてしまった。
〇飲み屋街
ミワちゃん「切ない」
仲良くなれたのはいいが女装をしている限り俺は先輩にとって可愛い後輩のままだ。
自分の思いがけない才能のせいで始まらなくなってしまった恋に、俺は深いため息を零した。
禁断の恋のお話なのかなと思っていましたら、そういうことだったんですね。せっかく仲良くなれても伝えられないのは切ない。先輩だったら、正体がばれても受け入れてくれそうな気もするけどなぁ。
同じ名前という事もあってみわちゃんに共感してしまいました。こんな優しい先輩のことだから、いつか勇気をだして真実を伝えればわかってくれるどころか、きっと嬉しい告白になると思います。みわくんがんばって!
ミワちゃんの健気なところ好きです。
出会った先輩に近づきたくて、一生懸命だったんですよね!
最初の違和感は、まさか女装をしていたからとは思いませんでした!
でも先輩から見てもかわいい女性と言うことは、ミワちゃんががんばって女らしくしてるからなんですよね。
本当に一途な恋心が実ればいいな、と思っています。