ミツルの守護者

鶴見能真

No.0 ある正月(脚本)

ミツルの守護者

鶴見能真

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〇散らかった部屋
  ミツルの部屋
ユノ「明けましておめでとう!」
ミツル「・・・」
ユノ「あれれ? ミツル君、元気無いね?」
ミツル「・・・」
ユノ「せっかくのお正月だから楽しもうよー」
ミツル「・・・」
ユノ「そっか・・・」
ミツル「・・・」
トーマ「相変わらず辛気臭い顔してるわねー?」
  突如窓から女性が入ってくる
ユノ「あ、トーマちゃん! 明けましておめでとう!」
トーマ「はいはい、あけめことよろー」
ユノ「はいこれ、お年玉」
トーマ「え、マジでこれ貰えるの!?」
トーマ「やったー! あたしの周りろくな奴居ないから誰もくれないのよねー、”ここは日本じゃない”って言う奴もいるしー」
トーマ「良かったー、遠路遥々海超えて日本まで来て! こんな事なら来年も来ようかしら?」
ユノ「うん! いいよー、楽しみにしてるねー!」
ミツル「お前、いい歳して・・・」
トーマ「なに? 何か文句ある?」
ミツル「・・・」
トーマ「こー言う貰える物は貰っとけばいいのよ!」
ミツル「・・・そっか」
ユノ「えー! ミツル君って喋れたのー!?」
トーマ「は? どう言う意味?」
ユノ「ミツル君が喋るの初めて見た・・・!」
トーマ「──って、いくらコイツ相手でも言い過ぎじゃね?」
ミツル「・・・」
ユノ「そっかー。わたし相手だと喋る必要無いから喋らないんだねー!」
トーマ「なによあなた、エスパー?」
ユノ「ううん、違うよー」
トーマ「あたしにはあんたがミツルとテレパシーしてた様に見えるけど?」
ユノ「え?」
ミツル「・・・ユノとは繋がりが強い。 という理由で僕の、えーっと。 考えてる事がわかる。 僕喋るの苦手。辛い、・・・障がい」
トーマ「あー、・・・アスペルがーとか障がいがーとかそう言えば言ってたわね?」
ミツル「・・・」
ユノ「そっかー。そーなんだねー」
トーマ「便利そうねー、それ」
ミツル「(まあ、お前相手でも出来るけどな)」
トーマ「──おわ、びっくりした!?」
トーマ「こっちだと随分と流暢に話すのね?」
ミツル「(まあな・・・。俺は頭の回転は速いんだ)」
ミツル「(ただ体が・・・その速さに付いていけないのか鈍感なのか行動を起こすのに時間が掛かって結果的に精神力が尽きて動けないんだ)」
ミツル「(確証はねぇけどな。 それでよくぼーっとしてるや突っ立ってるだけって言われる。 辛い25年間を生きてきたよ)」
ミツル「(それだと生まれた瞬間からになるから厳密には物心付く数年は数えず最初に思い当たるのは・・・)」
トーマ「──長いわよ! 聞いても無い自分語りして、そんなんだから友達も彼女も出来ないんでしょうが!!」
ミツル「(──で、中学の調理実習で・・・)」
トーマ「聞いちゃいねぇし」
ユノ「?」
トーマ「なに首傾げてるのよアンタは?」
ユノ「だって今、ミツル君トーマちゃんと話してるでしょ? わたしには2人の話聞こえないよー」
ユノ「トーマちゃんもわたしとミツル君の話聞こえなかったでしょー?」
トーマ「あー、確かにそうだったわね」
ユノ「──ところでトーマちゃんは何しに来たの?」
トーマ「え? ”アイツ”から新年会するからミツル連れて来いって言われて来たのよ」
トーマ「そもそもミツルが提案してみんなを集めたらしいけど・・・。アンタは呼ばれてないの?」
ユノ「──あ、そうだった! わたしもミツル君連れて行こうとしてたんだった!」
トーマ「だったらさっさと行くわよ? こんな狭くて散らかった部屋いつまでも居たくないわ」
ユノ「うん! 行こー」
ミツル「(──で、色々あって長い間・・・)」
トーマ「こいつ、動く気全くしないのだけど?」
ユノ「大丈夫! 行くよねミツル君!」
ミツル「(──ほんと、長い間だった・・・) (──ユノー、引っ張ってー) ・・・」
トーマ「まだ言ってやがる・・・」
  ミツルは重い腰を上げて服を脱ぎはじめる
ユノ「──すごいすごーい。引っ張らなくても自分で立てたねー、えらいえらーい!」
ミツル「(そりゃどうも。後で・・・いや、何でも無い)」
ユノ「うん! いいよー、後でしてあげるー!」
トーマ「っば──! てめぇ、レディの前でいきなり脱ぎ出すんじゃ無いわよ! この変態!」
ミツル「(いや、・・・着替えてるだけだげど)」
トーマ「それにユノ! アンタは裸のコイツと何話してるのよ!?」
ユノ「いい子いい子ー」
トーマ「・・・は?」
ミツル「(何言ってんだよ。・・・思春期拗らしてるにも程があるだろ、いい歳して?)」
  トーマが変な妄想をしていた事をミツルは察した様だ
トーマ「あ・・・、アンタこそ! いい歳して何餓鬼みたいな事──」
トーマ「・・・ははーん、アンタ恋人出来ないからってあたしらで気持ち良く癒されよーとしてんの? みじめねー」
ミツル「まあ、・・・ノーコメントだ。 僕みたいな・・・奴には恋人できない、わかった」
ミツル「(だからもう諦めて“お前ら”の中から生涯のパートナー決めようかなと思ってる。 まあ、強制はしねぇけど)」
ユノ「え・・・。ミツルと結婚出来ちゃうの?」
トーマ「まあ、・・・ミツルがそれでいいんならそれでいいんじゃないの? 拒否する奴もそりゃ、いるだろうけど? 好きにすれば」
ミツル「・・・」
トーマ「ま、・・・答えは随分昔に決まってるでしょうね」
ユノ「うん。そうだよね」
ミツル「・・・」
ユノ「それにしても・・・、ミツルの身体って本当にほっそいよねー」
トーマ「確かにねー。羨ましい限りだわー、うん」
ミツル「よく言われる。・・・お肉分けてあげたいとか・・・」
  ここで言うお肉とは、贅肉などの事だ
ユノ「たしかにー!」
トーマ「それはそうねー」
ミツル「・・・」
トーマ「──てか、それより早く服を着ろ!」

〇豪華なリビングダイニング
  都内某所
チヒロ「新年──」
「明けましておめでとう!」
  家主である青年の呼び掛けによりその場に集まる老若男女人種問わず様々な人々が新年を祝う
「yeh! ヒャッハー! 飲みまくるぜ!」
チヒロ「えー、本日はお集まり頂きありがとうございました!」
チヒロ「本日この場を仕切らせて頂きます、”折原(オリハル)コーポレーション”CEO”折原修(おりはらおさむ)“こと、」
チヒロ「”ミツルさんの守護者”経理担当の”チヒロ”です! 本日は大いに楽しんでいってください!」
「hyuーhyuー! 社長太っ腹ー! 社長は俺の嫁ー! 俺と結婚してー! 玉の輿ー!」
ミツル「おれのもんだー!」
トーマ「──うっせーぞクソヤロー共! チヒロの貞操と財産はあたしのもんだー!」
  トーマが立ち上がり声を荒らげる
チヒロ「あの・・・、僕お付き合いしてる方がいるのですが・・・」
トーマ「──知るかそんなの! 生まれた時からあんたはあたしのもんだよ!」
チヒロ「そんな殺生な・・・」
「だまれ貧乳ー! さみーんだよ、この雪女! 引っ込め中二BBAー!」
ミツル「・・・アホー!」
トーマ「──黙れミツル! ぶっ刺すぞ!?」
  そう言うとトーマはミツルに向かい手をかざして無数の氷の槍を出現させる
ミツル「・・・!?(ぎゃー、死ぬー!?)」
  命の危機を察知したミツルは明後日の方向に目を向ける
トーマ「・・・ふん! あんたなんかヤる価値もないわ!」
ミツル「・・・(ふう、・・・また死に損なったよ)」
トーマ「何言ってるのよ・・・。あんたが死ぬとあたしも死んじゃうから死なれちゃ困るしヤれないのよ!」
トーマ「あんたと違ってあたしはまだ死にたく無いからね、それもあんたの道連れだなんて真っ平よ!」
ミツル「(・・・そっか)」
ユノ「──それよりミツルくーん、ジョッキ空だよー、お酌してあげるー! ハハハー!」
  頬を赤く染め出来上がったユノはミツルのジョッキにビールを注ぐ
ミツル「ああ、・・・ありがとう」
???「おう、ミツル! いい飲みっぷりだなー!」
???「──ほら、イッキイッキ!」
???「こらこら、今のご時世イッキはダメでしょ。もう古いわよ、オヤジ共」
ミツル「──グッグッグッ・・・。かぁーっ!!」
???「──って、言ってる側からあなたは・・・。若い子が真似するから、程々にしなさいよねー?」
  こうして皆は新年会を大いに満喫するのであった。

〇本棚のある部屋
  チヒロの寝室
ミツル「・・・ぐー」
  食い疲れたミツルは横になって仮眠をとっていた
???「すぅー・・・、すぅー」
  隣にも誰かが寝ている
ミツル「・・・んー、エビフライ見ると中学の頃給食で出たシシャモの天ぷらを担任の先生がエビフライって言って・・・」
ミツル「それから先生のあだ名がエビフライになったのを思い出す・・・。すぅー」
  寝言を言いながらミツルは次第に目を覚ます
ミツル「・・・!? (こいつは、・・・面倒くせー。関わらんどこ)」
  隣の女性に気付いたミツルはそれを起こさぬ様にそっとベッドから降りようとする
???「んー・・・、待ちなさいよー」
ミツル「──!?」
  ガシッ──と腕を掴まれベッドに引き戻されミツルは倒れる
ミツル「いった・・・ (背中打ったよ、つーか寝起きで力入らねー)」
  部屋を早く出たいと思うミツルだが、その時ガチャリと部屋の扉が開く音を耳にする
???「──おっす”ミツル”ちゃん! 調子はどうや?」
ミツル「・・・???(誰だよ、このチャラ男?)」
???「うん・・・、誰やキミ?」
ミツル「(──いや、さっきお前おれの名前言って無かったか? いや、それとも・・・) ・・・あー、僕は──」
???「──そっかー! ”キミも”ミツルなんやねー!」
ミツル「・・・はい。そうです」
  自分より先に答えたのでミツルは相手に合わせる事にする
ミツル「あなたは?」
???「あたしは──」
ミツル「・・・」
???「・・・えっとなー、なんやったっけ?」
ミツル「(なんだよ、自分の名前忘れるって?)」
???「──おわ、びっくりしたわ! なんやあんさん、テレパシー使えるんかー!?」
ミツル「・・・まあ、はい」
???「う・・・ん」
  すると、ミツルの隣に寝ていた女性が起き上がる
???「──お、起きたんやな”ミツル”。 おはようさん」
ミツル「うーん、・・・えーっとあなた名前なんだっけ?」
???「いやー、確かまだ決まってなかったよー。 それとも本名教えたろか?」
ミツル「そっかー。ところで私に何か用?」
???「んー? 新米守護者としてちょいと様子見にな。水かなんか持ってこようか?」
ミツル「そうねー。お茶がいいわー。ジャスミンかホージー、この際麦茶でもいいわよ」
???「はいよ! ミツルは何かいるか?」
ミツル「だからお茶って言ってるじゃないー」
???「・・・?」
ミツル「・・・(あ、俺か。そうだな、食事はもう下げちまったか?)」

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