10,000,000,000 ‐ヴィリヲン‐

在ミグ

第20話 ニン・アン・ナ(脚本)

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〇荒廃した市街地
  この子達が何をしたの?
  産まれてくる国が選べる訳じゃない。
  言葉にする事さえ憚られる酷い環境。
  一体誰がこんな事を望んだと言うの?
  争い。飢餓。人権。
  問題だらけ。
???「何とかしなくちゃ⋯⋯」

〇ヨーロッパの空港

〇車内
アメタ「同じアラムスタンといっても、都会は随分違うんだな」
ムルア「田舎で悪かったな」
ムルア「年中戦争している様な国だからな」
ムルア「地方との格差が大きいのさ」
アメタ「都市部でせっせと生産、地方の戦場で消費って感じか」
ムルア「軍需産業が国家事業だったりするからな」
アメタ「戦争は儲かるからな」

〇綺麗な病室
アメタ(待っててくれよウカ⋯⋯)
アメタ(必ず助けてみせる⋯⋯)

〇超高層ビル
  首都。アン・マディーナ。

〇古い大学
ムルア「中央の大学?」
ムルア「本当にこんな所に⋯⋯」
ムルア「え〜と、何て言ったっけ?」
アメタ「ニン・アン・ナ」
アメタ「秘密結社ウェスタの代表だ」
アメタ「しかしケレス代表からの情報は十年以上も前のものだ」
アメタ「今でもここにいるとは限らない」
ウリコ「手わけして探そ!」
ムルア「お! 心強いねぇ!」
アメタ「うん、まあ⋯⋯」
アメタ「校内でいきなり戦闘になる事もないだろうから良いけど⋯⋯」
アメタ「あんまり無茶するなよ?」
ウリコ「見つけたら、すぐ連絡するね」

〇中庭

〇大学の広場

〇綺麗な図書館

〇大教室
アメタ(流石に簡単には見つからないか⋯⋯)
アメタ(秘密結社だもんなぁ⋯⋯)
アメタ(本名だとは思えないし⋯⋯)
アメタ(異動や転職している可能性だって⋯⋯)
アメタ「どうだった?」
ムルア「さっぱりだ」
アメタ「やはり情報が古いのかも知れないな」
ムルア「お! 見つかった?」
ウリコ「うん!」
ムルア「え?」
ムルア「もう友達が出来たの?」
ウリコ「あのね⋯⋯ この子⋯⋯」
アメタ「大学に子供?」
アメタ(何だ、この感覚は⋯⋯)
アメタ(違和感? 違う、懐かしさにも似た⋯⋯)
アメタ「マスター・マザー⋯⋯?」
ニン・アン・ナ「その通りです」
ニン・アン・ナ「マスター・マザーは私が成長した姿をシミュレートしたもの⋯⋯」
ムルア「おいおい、待ってくれよ⋯⋯」
ムルア「本当に、こんな子供が?」
ニン・アン・ナ「本当ですよ」
ニン・アン・ナ「こう見えて貴方達の倍は生きています」
ウリコ「アンナちゃん?」
ニン・アン・ナ「大丈夫ですよ、ウリコちゃん」
ニン・アン・ナ「私は敵ではありません」
  なんてこった。
  こんな子供が本当に?
  しかし妙な余裕を感じさせる。
  ケレス代表と同じ、正体がバレてもまったく動じない。
  それこそ大人の落ち着きを感じる。
ニン・アン・ナ「LLPAWM」
ニン・アン・ナ「VMAT2」
ニン・アン・ナ「これで信じてもらえますか?」
  間違いないだろう。そんな単語を知っている子供はいない。
アメタ「もし⋯⋯」
アメタ「もし本当に貴女がニン・アン・ナなら⋯⋯」
アメタ「幼児退行現象を引き起こした張本人なのだとしたら⋯⋯」
ニン・アン・ナ「はい」
アメタ「お願いだ⋯⋯」
アメタ「退行現象を止めてくれ⋯⋯」
アメタ「幼児化した者を元に戻してほしい」
  Japanese・DOGEZA。
  誠意が伝わるかわからないが、もうこんな手段しか思い浮かばない。
  ウリコとムルアも見ているが構うものか。
ニン・アン・ナ「頭を上げてください」
ニン・アン・ナ「一度動き出した現象を止める事は出来ません」
アメタ「⋯⋯治療法は?」
ニン・アン・ナ「それは老化や死の治療法を聞いているのと同義です」
ニン・アン・ナ「幼児退行現象はLLPAWMを用いて、脳の構造、成長を逆行させます」
ニン・アン・ナ「一旦逆行した脳は胎児の状態になるまで続きます」
アメタ「胎児になったあとは?」
ニン・アン・ナ「脳の機能は完全に停止します」
  ⋯⋯終わり?
  ここまで来て、何も出来ない?
ニン・アン・ナ「わかったの? 良い子ね」
ニン・アン・ナ「あんまりワガママを言ってはダメよ?」
  ニン・アン・ナの言葉がどこか、重く響く。
  まるで絶対的な存在である母親の様な。
  或いは神のお告げの様な。
ニン・アン・ナ「でも悲しくないのよ?」
ニン・アン・ナ「滅びの宿命は新生の喜び⋯⋯」
ニン・アン・ナ「⋯⋯付いてきなさい」
ニン・アン・ナ「ウリコちゃんには、まだちょっと早いから、ママとお留守番ね」

〇大学の広場

〇中庭
アメタ「どこへ行く気だ?」
ニン・アン・ナ「⋯⋯」
ニン・アン・ナ「少し、私の話でもしましょうか?」
ニン・アン・ナ「私は或る時から肉体の成長が止まってしまいました」
ニン・アン・ナ「そういう病気です⋯⋯」

〇オフィスのフロア
  若く見られて良い?
  いいえ。
  私にとっては苦痛でした。
  嘲笑。蔑み。差別。
  常に孤独でした。

〇綺麗な図書館
  だからでしょうか?
  周囲を見返そうと、私は必死に努力した。
  守られてばかりだったせいか、とりわけ『誰かを守りたい』、『誰を助けたい』という気持ちが強かった。

〇荒廃した市街地
  UNICEFに入ったのも、そんな想いからでした。
  でもそこは、想像以上に酷い場所でした。
  何の罪もない子供達の生活が脅かされている。
  大人達の都合で、政治や経済の為に、犠牲になっていた。
  子供達の泣き声が、まるで祈りのように聞こえました。

〇中庭
ニン・アン・ナ「貴方も食料監察官なら、世界が如何に酷い状況なのかは知っているでしょう?」
アメタ「それが僕を仲間に引き入れようとした理由か⋯⋯」
アメタ「僕なら理解出来ると」
ニン・アン・ナ「先進国では想像も出来ないような劣悪な環境で、」
ニン・アン・ナ「途上国では今日も大勢の子供が死んでいる」
ニン・アン・ナ「幾ら支援をしても、援助をしても、状況は変わりませんでした」

〇地下に続く階段
ニン・アン・ナ「LLPAWMは、単に人口を数える為だけのものではありません」
ニン・アン・ナ「名前、生年月日、家族構成、出身、職業、学歴、宗教⋯⋯」
ニン・アン・ナ「指紋や光彩、クレジット歴、医療記録までもが記録されます」
ニン・アン・ナ「人はより良く導かれなければなりません」
ニン・アン・ナ「母親が子育てをする様に」
ニン・アン・ナ「指導出来る保護者が必要なのです」
アメタ「だからLLPAWMを作った?」
アメタ「すべての人類を監視出来る様に」
アメタ「でも、子供は母親の所有物じゃないだろ」
ニン・アン・ナ「私は支配を望んでいる訳ではありません」
ニン・アン・ナ「ただ愛情で包んであげたいだけ⋯⋯」
アメタ「母親ごっこがしたいなら独りでやってくれ」
アメタ「他人を巻き込むな」
ニン・アン・ナ「ダメよ?」
ニン・アン・ナ「遊びの時間は終わりなの」
ニン・アン・ナ「そんなオモチャは仕舞いなさい」
  ダメだ。まるで聞き入れちゃいない。
  銃を突きつけられても、あの余裕。
  子供の戯言を聞き流す母親の様だ。

〇謎の部屋の扉
ニン・アン・ナ「すべての人類は赤子に還る⋯⋯」
ニン・アン・ナ「そして滅びるのです⋯⋯」
ニン・アン・ナ「それは不幸ではなく、究極の幸福」

〇飼育場
アメタ「こ、れは⋯⋯」
ニン・アン・ナ「人口が過剰になっている」
ニン・アン・ナ「食糧が足りない」
ニン・アン・ナ「ならば考えられる事はひとつです」
  ⋯⋯そうだ。
  どんなバカでもわかる。
  答えなんて始めからコレしかないだろう。
  誰もが想像し、しかし実行出来ないプラン⋯⋯
アメタ「人肉工場⋯⋯」
ニン・アン・ナ「何の事はありません」
ニン・アン・ナ「人工肉とは名ばかりで、実態はただの人間の肉なのです」
ニン・アン・ナ「だっておかしいでしょ?」
ニン・アン・ナ「人口が増えて、食糧は制限されているのに、どうして性欲は規制されないのか?」
ニン・アン・ナ「答えは簡単」
ニン・アン・ナ「人口が減り過ぎると困るから」
  おぞましい。
  人が人を食べるなんて。
  しかもそれを管理するだなんて。
アメタ「こんなものを見せて、どういうつもりだ?」
ニン・アン・ナ「人にとって、最初の食糧とは何でしょう?」
アメタ「母乳か? 母親の⋯⋯」
アメタ「でもそれが何の⋯⋯」
ニン・アン・ナ「正確には血液」
ニン・アン・ナ「母乳とは乳腺を通って出た母親の血液なのです」
アメタ「何だよ。哺乳類はみんな吸血鬼だって言いたいのか!?」
ニン・アン・ナ「いいえ⋯⋯」
ニン・アン・ナ「子供にとって母親とは、保護者であると同時に⋯⋯」
ニン・アン・ナ「食糧でもある、という事です⋯⋯」
アメタ「⋯⋯うっ」
アメタ「ぅゲエエェェげえェえエゑえぁぁ⋯⋯っ!」
  部屋に入ってから我慢していたが限界だった。
  すべて悟ってしまった。
  僕は、母さんを食べてしまったかも知れない。
  僕は母さんが火葬されるところを見ていない。
  今日もどこかで誰かが死んでいる。
  だが、その末路まで把握している者は極僅かだろう。
  どこへ行って、どんな処理を施されて、どこで最後を迎えるのか?
  その最後が食肉工場じゃないなんて、誰が言える?
  飢えと栄養不足、戦争、病気⋯⋯ その最後を誰が知っている?
ニン・アン・ナ「あらあら、こんなに汚して⋯⋯」
ニン・アン・ナ「イケない子ね」
  ダメだ。勝てない⋯⋯
  人類を監視、管理し、
  こんなイカれた施設を正気で運営する。
  圧倒的な存在感。
  勝てる筈がない。
  そりゃそうだ。
  ママなんだから⋯⋯

次のエピソード:第21話 真相

コメント

  • なるほどー人肉を食べてるからナノマシンの濃縮が一気に進むわけだ。ナノマシンを食べた人間を食料にしてさらにそれを食べた人間が食料に。放射線濃縮と同じ原理。面白いですね。

  • 全自動人肉工場のインパクトが凄い……
    思わず「うわぁ……」と変な笑いが出ました。
    ラスボスロリバアさん、圧巻の風格です。

    では最終回まで一気に行って来ます!

  • ラスボスは予想以上にぶっ飛んだ奴でしたね。この先、あくまでアメタ個人の範囲の解決にとどまるのか、それとも世界全体解決に向かうのか、どう物語が収束するかも楽しみです^^
    オートメーション人肉化のくだり、1人目はまだ意味がつかみ切れず、2人目で意味が分かり、3人目で「ひえ~」となる名シーンでした!

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