百合の葉に隠れないで

美野哲郎

第六話 『新しい台本』(脚本)

百合の葉に隠れないで

美野哲郎

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〇ネオン街

〇シックなバー
月居ゆず葉「私、風間くんとは付き合えない」
風間 泰人「あ・・・ハイ」
月居ゆず葉「ごめんなさい ろくに返事もしないで、こんな急に」
風間 泰人「というか、覚えていてくれた事に感動だよ」
風間 泰人「正直もう、僕に対してカケラも興味ないでしょ?」
月居ゆず葉「そんな い、イイ人だなって思ってます」
風間 泰人「それ、『可能性ゼロ』と同義だから!」
月居ゆず葉「はぁーあ それにしたって、 初めて告白してくれた人を ないがしろにしていたなんて」
月居ゆず葉「普通に考えて、普通じゃないわ」
風間 泰人「告白された事ないので、それが普通じゃないかどうかもわかんないけど・・・」
月居ゆず葉「私、自分でも気づかない内に、 きっと浮かれていたんです」
風間 泰人「レインには、そういう力があるよね」
月居ゆず葉「別に、誰のせいでとは言ってませんけど・・・」
月居ゆず葉「”こういう事”って、あると思います?」
風間 泰人「あるんじゃないかな  俺は『恋』も知らずに 映画のラブストーリーを楽しんでた」
風間 泰人「映画が教えてくれた  この世界の大体のことは、 信じられなくても『ある』と思っていたよ」
風間 泰人「まだ自分が知らないだけでね」
月居ゆず葉「・・・宇宙なのに爆発したり?」
風間 泰人「撃たれまくってるのに無事だったり」
月居ゆず葉「クラスで地味で目立たないポジションって設定の女のコが」
「めちゃくちゃ可愛い!!」
風間 泰人「まして同性愛なんて、ちっとも驚くに値しないよ」
風間 泰人「いや あのコと会ってそう気づけたのかな」
月居ゆず葉「・・・なにが言いたいの?」
風間 泰人「いやさ 繋がりも薄いし、俺くらいだとちょうど吐き出せることってあるんじゃないかな」
風間 泰人「なんて思ったりして」
月居ゆず葉「・・・優しすぎて気味が悪いです」
風間 泰人「いつか訊いてくれたじゃん 『恋』が何かわかったかって」
月居ゆず葉(そんなこと訊いたっけ・・・?)
風間 泰人「まあ、短絡的かつ暫定的な回答だけど」
風間 泰人「『恋』って、ミジメなものじゃないかな」

〇大きな木のある校舎

〇教室
レイン「・・・」
灰島 建志「よーうレイン えらくシュンとしちゃってるじゃねえの」
灰島 建志「いつも孤独なんて屁でもねえって顔してたクセによ」
レイン「・・・」
灰島 建志「チッ 無視を・・・」
灰島 建志「どうした? あの女にフラれたんだろ」
灰島 建志「そりゃそうだ そもそもこんなイカれたガキなんか、例えレズビアンでも誰が彼女になんか・・・」
レイン「う・・・」
レイン「ヒック・・・ヒック・・・」
灰島 建志「えっ?」
男子生徒「あーっ 灰島泣かしたー」
女子生徒「灰島くんはまずデリカシーって言葉を覚えなよ」
灰島 建志「いや、なんなんだよ、その手のひら返し」
灰島 建志「お前らだって、同性愛とか生理的に無理って陰口叩いてたじゃねーか」
レイン「・・・」
女子生徒「い、いつの話っ? それに、 だからって泣かせていいなんて言ってないし」
灰島 建志「チッ これだから女の涙はズリぃよな」
レイン「もういいっ!!」
レイン「そうよっ 孤独なレズビアンは 失恋してひとりぼっち、 打ちひしがれてるの」
レイン「強気なフリして本当は弱いんだから せめて放っておいてよ・・・」
灰島 建志(強い人間の台詞だ・・・)
(強い。。。)
レイン(ええい いつまでもへこたれるな、私)
レイン(自分の心がこんなに弱いなんて、思わなかった・・・)
レイン「誰だろう」

〇並木道
新山ルミ「ふんわ~あ・・・バイト疲れた」
月居ゆず葉「私も こうしてルミちゃんとまったりしてる時だけだよ、大学生だなって実感してられるの」
新山ルミ「まだまだ子供 本当は、レインちゃんと大差ないもんね、私たち」
月居ゆず葉「なんで急にあの子の名前!?」
新山ルミ「別に~ 『あのコをフッた私に恥じない大人でありたい』 そんなこと考えてそうだなって」
月居ゆず葉「・・・ルミちゃん観察眼ヤバい」
新山ルミ「さて そろそろちゃんと大学生やりますか」
月居ゆず葉「なんの話?」
新山ルミ「じゃーん」
新山ルミ「よ~~~やく、監督が台本書き上げてくれました 動き出すよ、うちらのサークル活動 映画撮影が!」
月居ゆず葉「本当に映画観るだけじゃないんだ、うちのサークル」
新山ルミ「当たり前でしょ!!」
月居ゆず葉「タイトルは? もう決まってるの?」
新山ルミ「うん これ──」

〇新緑
  ──『百合の葉に隠れて』──

〇学校の部室
浅倉玲司「えー・・・長々とお待たせして 大変申し訳ない」
浅倉玲司「ここで、 新作映画『百合の葉に隠れて』 クランクインに向けて」
浅倉玲司「主演を引き受けてくれた俳優さんより一点だけお願いがあるとのことだ」
浅倉玲司「出来れば、部員の協力を願いたい」
月居ゆず葉(あれ? 風間くんだ どうしたんだろ)
月居ゆず葉(目を伏せた なに?)
浅倉玲司「それではどうぞ、お入りください」
レイン「ご紹介にあずかりました 『百合の葉に隠れて』主演を務めます」
レイン「新海雨音 新しい海に響く雨の音と書いて、 レインって言います」
レイン「私からは一つだけ」
レイン「本作は女性同士のラブストーリーということで──」
レイン「相手役は、 そちらの月居ゆず葉さんにお願いできたら、 私も演じ易いかなって」
月居ゆず葉「○※□◇#△!!!」

〇空
  なんでぇ~~~??????

次のエピソード:第七話『百合の葉に隠れて』

コメント

  • レインちゃんがしおらしく引き下がるとは思ってませんでしたが、ここに来たか!という感じです!これだけグイグイいけるのは尊敬です。純粋さと悔しい経験が彼女を押してくれるのでしょうね。
    ゆず葉はどうなっちゃうのでしょうか……?

  • レインちゃんのぐいぐい行く前向きさは見習いところですね。それにしても、風間くんは当初軽い印象でしたが、実はいい人そう^^(ウラがないことを祈ってます。笑)
    次回からの自主製作映画編、ゆず葉がさらにどう変化していくか楽しみにしてます!

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