〇オフィスのフロア
直樹（沙羅・・・）
直樹（今はちょうどバイトの時間だろうか？）
直樹（男性客に酒を飲ませて、会話をして・・・）
直樹（馴れ馴れしく触ってくる奴とかもいるかもしれない）
直樹（そんなとき、店の人はちゃんと沙羅のことを守ってくれるのだろうか？）
直樹（沙羅・・・）
直樹「ハッ！」
直樹（仕事中に俺は何を考えているんだ）
直樹（仕事に集中するんだ）
直樹「・・・」
直樹（沙羅、大丈夫かな・・・）

〇おしゃれなリビング
直樹（沙羅・・・）
美由紀「直樹さん」
直樹「・・・」
美由紀「直樹さん？」
直樹「・・・えっ！」
直樹「あ、ごめん、ごめん」
美由紀「どうしたの？　ぼーっとしてたわよ」
直樹「えっと・・・仕事でいろいろあって、ちょっと考え事をしてたんだ」
美由紀「ふーん」
直樹（電話？　沙羅からだ！）
直樹「沙羅、どうした？」
美由紀（!!）
沙羅「お兄ちゃん、この前は変なこと言ってごめんなさい」
直樹「変なこと？」
直樹「ああ、えっと、その・・・」
直樹「気にするな。俺もいきなり怒ってごめんな」
沙羅「お兄ちゃん。この間のお詫びをしたいんだけど」
直樹「お詫び？　いいよそんなの」
沙羅「今度晩ご飯用意するから食べに来てよ」
沙羅「少しの時間でいいから」
沙羅「この前みたいので終わるの嫌なの」
沙羅「お兄ちゃん・・・」
直樹「・・・わかった。じゃあ、明日はどうだ？」
沙羅「うん！」
沙羅「おいしい料理作って待ってるね」
直樹（沙羅・・・）
直樹「えっと、沙羅からの電話だった」
美由紀「そうなの？」
美由紀（何おどおどしてるのよ！）
直樹「実はこの前沙羅と会ったときに、少し喧嘩になって・・・」
直樹「沙羅がお詫びに食事をしたいって話なんだけど・・・」
直樹「その、明日の夜行ってもいいかな？」
美由紀「えっ・・・」
美由紀（あの小娘・・・）
美由紀（私が好意でバイトのことを直樹さんに教えてあげたのに・・・）
美由紀（それを利用して図々しく家に呼ぼうとするなんて）
直樹「もちろん、食事だけしたら帰るよ」
直樹「それ以外は何もしない」
美由紀（は？　何を言ってるの？）
美由紀（食事以外には何もしないって、何をする気だったの！）
直樹「ダメかな？」
美由紀（ここで私がダメって言ったら、私が悪い女みたいじゃないの）
美由紀（仕方ないわね）
美由紀「もちろんいいわよ」
美由紀「沙羅ちゃんも喜ぶわよ」
直樹「ありがとう、美由紀」
美由紀（今回は大人の余裕を見せてあげるわ）
美由紀（全く目障りな小娘ね）

〇豪華なリビングダイニング
沙羅「お兄ちゃん、お帰り」
直樹「ただいま」
沙羅「えへへ。久しぶりだからいっぱい作ったよ」
直樹「おいしそうだな」
直樹「いただきます」
沙羅「どう？　おいしい？」
直樹「うん、うまい」
沙羅「よかった」
直樹「やっぱり沙羅の料理はおいしいなあ」
沙羅「えへへ。たくさん食べてね」
直樹（沙羅が以前の姿に戻ってる）
直樹（やはりこの前のあれはちょっとおかしかっただけだろう）
直樹（慣れないバイトや一人暮らしで疲れていたのかもしれないな）
沙羅「お兄ちゃん、野菜も食べないとダメだよ」
沙羅「あまり働き過ぎはよくないよ」
沙羅「ちゃんと休みもとるんだよ」
沙羅「ほら、ネクタイ曲がってるよ」
直樹「ごちそうさま。おいしかったよ」
沙羅「お風呂沸いてるよ」
直樹「えっ？」
直樹「いや、少ししたら帰るから大丈夫だよ」
沙羅「今日は泊まっていくんじゃないの？」
直樹「いや、そろそろ帰るよ」
沙羅「お兄ちゃん、帰っちゃうの？」
沙羅「今日はずっと一緒にいるんじゃないの？」
沙羅「私と一緒にいるのは嫌なの？」
直樹「いや、嫌というわけじゃ・・・」
沙羅「じゃあ、泊まっていこうよ」
沙羅「ここはお兄ちゃんの・・・ううん。私たちの家だよ」
沙羅「今夜はお兄ちゃんとずっと一緒にいたい・・・」
沙羅「お兄ちゃん・・・」
直樹「沙羅・・・」
沙羅「お兄ちゃんの部屋に行こう♥️」
直樹「う、うん・・・」
直樹「わっ！」
直樹（美由紀からだ）
直樹「美由紀？」
沙羅（ちっ・・・）
直樹「今？　ああ、ちょうどご飯を食べ終わったところだよ」
直樹「ひと休みして帰ろうとしてたところ」
直樹「これから帰るよ」
直樹「それじゃあ」
直樹「沙羅、ごちそうさま」
直樹「すごくおいしかったよ」
直樹「俺はそろそろ帰るよ」
直樹「ちゃんと戸締まりして寝るんだぞ」
沙羅「うん・・・」
沙羅「わざわざ電話してくるなんて」
沙羅「新妻気取りもいい加減にしろ、ババア」
沙羅「本当、邪魔な女」

〇おしゃれなリビング
直樹（危なかった・・・）
直樹（もし美由紀からの電話がなかったら、あのまま沙羅と・・・）
直樹（どうなってるんだ、俺）
直樹（沙羅は妹だぞ）
美由紀「・・・」

〇おしゃれなリビング
　　３日後・・・
美由紀「今度の休日にどこかに行きたいな」
直樹「いいね。温泉にでも行ってゆっくりするか」
美由紀「いいわね」
直樹（沙羅!?）
直樹「沙羅？」
直樹「どうした？」
沙羅「お兄ちゃん、頭痛い・・・」
直樹「大丈夫か？」
沙羅「お兄ちゃん、辛い・・・」
直樹「沙羅！」
直樹「すぐ行くから待ってろ！」
直樹「美由紀、沙羅のところに行ってくる」
美由紀「えっ、今から？」
直樹「かなり辛いみたいだ。心配だからちょっと見てくる」
美由紀「・・・」

〇綺麗な部屋
沙羅（お兄ちゃん・・・）
直樹「沙羅、大丈夫か！」
沙羅「お兄ちゃん！」
沙羅「来てくれたんだ」
直樹「当たり前だよ」
直樹「それで調子はどうなんだ？」
沙羅「うん。なんかよくなってきた気がする」
直樹「そうか、よかった」
沙羅「お兄ちゃん、ありがとう」
沙羅「そうだ」
沙羅「ご飯作ってたのあるから食べていきなよ」
直樹「えっ・・・調子悪いんじゃなかったのか？」
沙羅「なんか治ってきたみたい」
直樹「そうか。それはよかった・・・」

〇おしゃれなリビング
　　１週間後・・・
直樹「ん？」
直樹「沙羅、どうした？」
沙羅「お兄ちゃん、風邪引いちゃったみたい」
直樹「大丈夫か？　暖かくしてすぐ寝るんだぞ」
沙羅「熱い。気持ち悪い・・・」
直樹「大丈夫か！」
沙羅「お兄ちゃん。熱い、苦しい・・・」
直樹「待ってろ！　すぐ行く！」
直樹「美由紀、ごめん」
直樹「沙羅が風邪を引いて熱を出した」
直樹「ちょっと行ってくる」
美由紀「えっ!?」
美由紀（また？）
美由紀「ちょっと、何考えてんの！」
美由紀「風邪引いたくらいで」
美由紀「しかも、そんなのあの小娘の仮病に決まってるでしょ！」
美由紀「・・・」

〇壁
　　映画「Cross the line」
カレン「アリス、本当にムカつく女ね」
カレン「兄相手に色仕掛けに仮病・・・何考えてるの？」
カレン「アンソニーも甘やかしすぎよ！」
カレン「けど、あの女にとっては、それだけなりふり構っていられないってことなのね・・・」
カレン「それなら私も覚悟を決めないと」
カレン「アンソニーに、私と妹どっちを選ぶのか、はっきりさせてやる・・・」

〇おしゃれなリビング
美由紀「・・・」
美由紀「これ以上は無視するわけにはいかないわ」
美由紀「あの小娘がそこまでやるなら、こっちも覚悟を決めないと」
美由紀「直樹さんに、私と妹どっちを選ぶのかをはっきりさせてやる・・・」

〇おしゃれなリビング
直樹（沙羅は今日も元気だった）
直樹（本当に病気なのか？）
直樹（・・・いや、おそらく仮病の可能性が高い）
直樹（そうわかっていても、沙羅の声を聞くとそばに行かずにはいられない）
直樹（会って沙羅の顔を見ると安心してしまう）
直樹（さらに、最近は沙羅に会うとドキドキしてしまう）
直樹（ずっと一緒にいたかわいい妹だからか？）
直樹（それとも・・・沙羅をそれ以上の存在に感じているのか？）
直樹「馬鹿な。そんなことはありえない。あいつは妹だぞ」
直樹「沙羅・・・」