エピソード17(脚本)
〇学校の屋上
星桐彦「鍵が・・・」
姫路伊織「君たちはもう決めたのか」
伊織の手には鍵が握られている。
星桐彦「伊織! その鍵って・・・」
夏川乙女「・・・光ってる。同じだわ」
姫路伊織「その鍵穴に、ぴったりのはずだよ」
夏川乙女「あなた・・・誰なの?」
星桐彦「え? 夏川も友だちだろ? 伊織は夏川のこと知って——」
夏川乙女「友だち? 全然知らない人よ」
姫路伊織「ふふふ。ひどいなあ。君は僕の産みの親なのに」
「親?」
姫路伊織「うーん、厳密にいうと君だけじゃなく、桐彦も含まれているのかな。 不服だけどね」
星桐彦「え? 俺も親? ていうか、親って?」
夏川乙女「どう見ても私たちと同年代だけど・・・」
星桐彦「え、そういう話? 親って、そういう親なわけ?」
姫路伊織「うーん、確かに語弊があるな。 もっと正確に表現するなら・・・ああ、宝箱かな」
星桐彦「宝箱? ・・・友だちってことか?」
姫路伊織「はずれ」
姫路伊織「でもそう思ってもらうまで、随分努力したから、そう思ってもらえるのはうれしいな」
星桐彦「は?」
夏川乙女「・・・それは、私があなたを知らなくて、星くんがあなたを知ってることに関係しているの?」
姫路伊織「察しが良くて助かるよ」
〇学校の屋上
うわぁ!
星桐彦「いてて・・・」
姫路伊織「大丈夫? 桐彦」
星桐彦「!?」
星桐彦「お前、誰? なんで俺の名前・・・」
変わらない平穏な毎日を求める桐彦にとって、
突然現れて名前を呼ぶ僕はお化けみたいなようなものだったのかも
〇学校の屋上
うわぁ!
星桐彦「いってえ・・・」
姫路伊織「桐彦大丈夫? どこか打った?」
星桐彦「あ、ああ。お前か。大丈夫。痛いけど」
何度も繰り返すうちに、僕の記憶を桐彦に刷り込んだんだ。
僕のこと桐彦だけが知っているのは、そういうことだよ
〇学校の屋上
星桐彦「刷り込み・・・どうして俺だけ」
姫路伊織「座敷童って知ってるかい? 知らないうちに増えてる友だち。 あれに近いんじゃないかな」
夏川乙女「繰り返してる?」
姫路伊織「ああ、君は眠ってしまったんだったね」
星桐彦「あ、そっか! 実は今、毎日7月6日を繰り返してて・・・」
姫路伊織「まあ、詳しい話はいいか」
星桐彦「おい!」
姫路伊織「桐彦だけに刷り込んだ理由か・・・」
姫路伊織「僕が桐彦にぶつかったあの瞬間に“今日”がはじまるからね。 接触を回避できないというのが主な理由かな」
夏川乙女「今日が始まる・・・」
姫路伊織「それに僕は乙女の願いから生まれた存在だもの」
姫路伊織「だから君と・・・桐彦と仲良くしたかったのかもしれない」
星桐彦「夏川の願い?」
姫路伊織「そう。あの時、君はその鍵に願ったんだ。 “明日になりませんように”って」
夏川乙女「え?」
姫路伊織「それから、こうも願った。 “桐彦との思い出をなくしてしまいたい“って」
星桐彦「俺との・・・それって」
夏川乙女「・・・・・・」
姫路伊織「ふたつは相反する願いだったけど、強い思いは奇跡を起こした」
姫路伊織「それで生まれたのが、僕。 そしてその結果・・・は、桐彦の知る通りさ」
星桐彦「生まれたってお前・・・一体」
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