Purgatorium(Ⅵ)(脚本)
〇古いアパート
〇和室
武藤「・・・」
武藤「・・・マリアさん?」
〇アパートのベランダ
武藤「・・・」
武藤「・・・!」
武藤「・・・」
マリア「おはよう」
マリア「この辺、コンビニ遠いね。タバコ買うのもひと苦労だったよ」
マリア「あ、もしかしてこの部屋禁煙?」
武藤「いえ。むしろ喫煙です」
武藤「母もここでよく吹かしてました」
マリア「ここから見る町の景色が好きだったとか?」
武藤「そうは見えなかったです」
武藤「むしろ睨みつけてました」
マリア「やった。私と一緒だ」
マリア「ん?ここからって・・・」
マリア「君、わざわざ昔と同じアパートに戻ってきたの?え?何で?マザコン?」
武藤「あ、そういやそうですね?何でだろ?」
マリア「やっぱマザコンだ~♪」
マリア「・・・」
マリア「違うみたいね・・・」
マリア「暁ルナとの生活か。ファンとしちゃ羨ましいな」
マリア「きっとエキサイティングだったんだろうな」
武藤「そんな素敵なもんじゃないです」
マリア「でも憧れるっていうか・・・」
武藤「何が分かるんです?」
マリア「え?」
武藤「あなたに、ここでの暮らしの何が・・・」
マリア「・・・」
武藤「・・・すみません」
マリア「こういう場合、謝るのこっちじゃん」
武藤「でも、すみません」
マリア「ゴメン」
武藤「・・・」
マリア「ゴメンけど、やっぱり分かるよ。君がここに戻ってきたわけ」
武藤「え?」
〇和室
マリア「これって部屋に備え付けじゃないよね」
武藤「・・・」
マリア「ずっと持ってたんだよね」
武藤「・・・」
〇ライブハウスの控室
〇和室
マリア「分かるよ」
マリア「どこにいても心はずっとこの町に留まったまま」
マリア「足がすくんで動けない」
マリア「まだ知らない痛みが怖いから、もう知ってる痛みに塗れて」
マリア「いじけて」
マリア「諦めて」
武藤「まだ知らない痛み・・・」
マリア「・・・」
〇観覧車のゴンドラ
『まだ知らない、痛み』
〇和室
マリア「・・・」
マリア「君にもあるんじゃない?目を背けてる痛み」
マリア「逃げ回ってる、痛み」
武藤「・・・」
マリア「きっと私じゃないよ」
マリア「君に与えられるものは今も『その人』しか持ってない」
マリア「痛みも」
マリア「温もりも」
マリア「本当は気付いてたんでしょ?」
武藤「・・・」
〇CDの散乱した部屋
〇和室
武藤「・・・」
武藤「今さら、です」
マリア「私だって今さら、だよ」
マリア「今さらだけど・・・」
マリア「・・・」
マリア「うん」
マリア「決めた」
マリア「この町、出てく」
武藤「ここを?」
マリア「やっと決心できたんだ」
武藤「そうですか」
マリア「君のおかげかな?」
マリア「ありがとう。武藤さん」
武藤「・・・」
マリア「ありがとう」
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