血縁のアクロポリス

涼み

エピソード1(脚本)

血縁のアクロポリス

涼み

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〇明るいリビング
  ───都内のとある2DKマンションの一室
  ──家庭用Humanoid、起動中・・・
  ──主を設定してください
タイヨウ「・・・!」
トーマス「動きマシタ・・・!」
ヨゾラ「わあっ!ほんとに人間みたい。 ほっぺたも柔らかいよ! ほら、ふにふにする!」
義光「こらこら、急に触ったらびっくりするだろ。まずはちゃんと挨拶からだ!」
トーマス「Hi!Nice to meet you〜!」
タイヨウ「・・・(軽い会釈)」
義光「ええっと、はじめまして」
義光「主人は俺だ」
トーマス「反応が鈍いデスネ・・・?」
義光「ううん? 基本的な認知機能のデータはプログラムされてるはずだが・・・」
義光「もしかして個体差があったりするのか・・・?」
義光「えっと説明書は──」
タイヨウ「・・・性格とか外見の初期設定はランダムに出るみたい。でも後からいくらでもカスタムできるって説明書には記載されてる」
トーマス「Wow!それはすごいデスネ!」
ヨゾラ「私やるー! 私の手下にして、この星を消滅させたあとの片付けをやらせるー!」
タイヨウ「させない」
義光「まてまてまて!ストップ! 主は俺だって言ってるだろ!」
トーマス「ふたりとも!もう夜デスカラネ! 静かに!シー!デスヨ!」
トーマス「ほら、お夜食食べまショウ?」
ヨゾラ「んむ・・・」
タイヨウ「食べる・・・」
トーマス「何食べたいデスカ〜? ニホンのお料理、美味しいデスカラネ〜!(別室へ連れ出す)」
義光「(トム!助かる・・・!)」
義光「ふう、ようやく静かになったな」
義光「改めて、はじめましてだな。 俺は義光。おまえの主人だ」
義光「普通の大学生だ、って言って伝わるかな?」
義光「・・・」
義光「学生、大学生は分かるか?」
義光「そうか、よかった」
義光「ちなみに2年生だ。ついこの前20歳になったんだ」
義光「おまえがここにいる理由だけど・・・」
義光「近々、家事や育児、介護の負担を減らしたり、メルンタルケアとかを目的としたヒューマノイド型AIの家庭内導入が始まるらしい」
義光「たしか30世帯くらいだったかな。 そのテストケースとして、俺たちはたくさんの一般人の中から抽選で選ばれたんだ」
義光「きっとおまえも、たくさんの試作品の中から選ばれて、ここに来たんだ」
義光「そんなおまえに、この家で、俺が主人として頼みたいことがある」
義光「俺に代わって、あいつらの相手をしてやってほしいんだ」
義光「ああいや、別にあいつらのことが嫌いだとか、関わりたくないとかじゃなくて」
義光「なんていうか、その、 うちは所謂『ワケあり』なんだ」
義光「まず、 あの金髪の綺麗な男が留学生のトーマス。 日本語はたいへん上手だ」
義光「一人でも、難なくこの国で日常生活を送っていけるだろう」
義光「色々あってうちにホームステイしている」
義光「問題という問題はないが── 目があった人形やぬいぐるみ、こけし等を全てうちに連れてくる」
義光「おかげでうちは座敷わらしの住む宿みたいになってる。そろそろやめさせないとマズい」
義光「あと、そのうち子供や動物を連れ込んできそうで怖い」
義光「で、一番問題なのが、あの二人だ」
義光「大人しい方がタイヨウ、 元気な方がヨゾラ」
義光「端的に言って、二人とも、宇宙人だ」
義光「まあ俺も、あいつらからしたら宇宙人だろうけど」
義光「あいつらは、ホンモノの地球外生命体なんだ。太陽系ごと、地球を壊しにきた」
義光「どこぞの星のせいで宇宙の均衡が乱れて大変なんだと。太陽系ごと消し去るべく、遠い遠い星から派遣されてきた使者だそうだ」
義光「二人とも」
義光「タイヨウに、もうその気はないみたいだが、ヨゾラは隙さえあれば、いつでもヤる気だ」
義光「初めはわかりにくいかもしれないが、あれでも常に一触即発の状態だ」
義光「こちらも色々あってうちに住みついてる」
義光「この三人の問題児がうちに来てからというもの、俺は寝不足気味だ。 学校と課題もある。何より単位がやばい」
義光「ずっととは言わない。俺が学校に行ってる間と寝ている間だけでいいから、あいつらの世話と相手をしてほしいんだ」
義光「頼んでもいいか?」
義光「そうか。ありがとう」
義光「タイヨウとヨゾラは、人智を超えた不思議な力を持ってる反面、民間人には半端に手を出せないらしいから、そこは救いだな」
義光「詳しいことはよくわからんが、やる時はこの星諸共一発で決めないと駄目なんだと」
義光「でないと磁場のエネルギーだか宇宙全体のカルマだかが狂うそうだ」
義光「バチバチにやり合ってても、とりあえず間に割って入ればその場は収まる」
義光「日常生活においてもあいつらの相手はほぼ育児みたいなもんだからな」
義光「トーマスは気さくだから関わりやすいと思う。トムって呼んでやってくれ。喜ぶぞ」
義光「ん?目の下にクマができてるって? おわっ、どうしたんだ急に、腕を掴んでっ?」
義光「脈拍が上がってるって? 集中力と注意力が低下してる?」
義光「へぇ、そんなことがわかるんだな。 さすが最新型のAIだ」
義光「・・・生涯を共にできるヒューマノイド型AIは超高額らしいからな」
義光「おまえはレンタルみたいなもんだから、期限付きだけど」
義光「いつかはお別れの日が来ちまうけど、 その日が来るまで、大事にしないとな」
義光「血の繋がりはなくても、俺はあいつらのこと、家族みたいなもんだと思ってる」
義光「短い期間だったとしても、おまえともそうなれたらって思ってるよ」
義光「気がついた時には星ごと木っ端微塵になってるかもしれないけど」
義光「それでも俺は──」
ヨゾラ「手下〜!」
タイヨウ「ヨゾラの手下にするくらいなら、 僕の手下にする」
トーマス「No! このロボサンはヨシミツのテシタデスヨ!」
義光「どっちかっていうと、手下っていうよりお手伝いさんじゃないか? あとおまえら、もう夜だからな〜?」
トーマス「そうデスネ、そろそろ寝る時間デス」
ヨゾラ「眠くない」
タイヨウ「ヨゾラ。外へ。決着をつける」
タイヨウ「キミには大人しく帰ってもらうよ。 今日中にね」
ヨゾラ「今日中に、帰るよ。この星を消してから」

〇団地のベランダ
トーマス「念のため寝る前に言っておきマスネ! サヨナラ!ヨゾラ!タイヨウ!ヨシミツ!ロボサン!ミナサン愛してマシタヨ!」
トーマス「もし帰ってきた時はちゃんと鍵を閉めるんデスヨ!」
義光「おいおい縁起でもないな!」
義光「ヨゾラ、タイヨウ!窓から外に出るなって言っただろ! って聞いちゃいないな、まったく・・・・・・」

〇明るいリビング
トーマス「もしも二人が帰ってきた時お布団がなかったら可哀想デスネ」
トーマス「ボクが敷いておいてあげまショウ」
トーマス「川の字になって寝るニホンの文化、ボクはとても好きデス」
トーマス「ロボサンはスイミン、とるのデスカ・・・?」
義光「ああ。 たしか、スリープモードが確かあったはず」
義光「そのうち学習して自分でオンオフ切り替えられるようになるらしいけど、最初のうちは手動でやるみたいだからな」
義光「後ろ向いてくれるか?」
義光「あった。 ここを押して・・・」
義光「はあ、眠いな・・・ とりあえず、明日からよろしく頼んだ」
義光「おやすみ、AI」

コメント

  • 設定の面白さや奇抜さに好奇心がそそられました。後は4人+AIの家族としての日常生活の様子がもっと知りたいですね。いろいろな出来事を通してこの家族ならではの問題点や絆がどのように描写されるのか興味があります。

  • この時代、家族の形も色々なんだなあと考えさせられました。生活にAIを導入することって抵抗がありますが、それによって助けられる人もいるのだと思える気がしました。

  • この「家族」構成、面白くて好きです!非日常の要素を集めて構築した家族関係、普段の生活風景を想像すると楽しくて仕方ないですね!

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