防衛会議-誰が指令長官を殺したか

塩味鷹虎

第1話 事件は警報とともに(脚本)

防衛会議-誰が指令長官を殺したか

塩味鷹虎

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〇黒
  未曽有の生物災害『怪獣』。
  それは未知の巨大生物による活動災害を指す。
  空想の産物だと思われていた怪獣が、人々に認知されたのは約20年前。
  突如現れた巨大な黒いトカゲ型怪獣が日本・東京に上陸。
  どうにか撃破はできたものの、結果として都市機能に壊滅的な被害をもたらしたのは記憶に新しい。
  世界各国は第二、第三の怪獣襲来に備え『地球防衛軍』を配備した。
  そして、時は流れて──

〇組織の廊下
  ウーーーーーーーーッ!
高野アラシ「この警報・・・まさか、怪獣!?」
  ある日の早朝。
  東京中に怪獣襲来の警報が鳴り響いた。
  『防衛会議-誰が司令長官を殺したか』

〇ブリーフィングルーム
  同日。地球防衛軍東京支部の会議室に防衛軍の精鋭が集結していた。
藤山コウゾウ「お前ら! 来たるべき日が来たようだぜ!」
  【副指令・藤山コウゾウ(58)】
的山ミイコ「うるさいですよ、副指令。 つばを飛ばさないでください」
  【的山ミイコ(23)】
藤山コウゾウ「悪い悪い! で、怪獣の情報は!?」
的山ミイコ「・・・確認された怪獣は宇宙から飛来したトカゲ型。 小笠原沖に着水したようです」
藤山コウゾウ「なるほど! つまりは今回も宇宙怪獣ってわけだ!」
大野タツノスケ「宇宙怪獣・・・か」
  【大野タツノスケ(33)】
高野アラシ「うう・・・あ、あの・・・!」
藤山コウゾウ「お? そこのやつは新人か!? 自己紹介をしてもらおうか!」
高野アラシ「え、あ、その──」
的山ミイコ「挨拶は社会人の基本よ。 時間がないから早くして」
高野アラシ「は、はい。高野アラシ、です」
  【高野アラシ(26)】
藤山コウゾウ「おう、アラシ! よろしくな!」
高野アラシ「それで、その・・・」
大野タツノスケ「不安か? 宇宙怪獣の襲撃が」
高野アラシ「それは・・・そうですね。 本当にあんな怪物に勝てるのでしょうか」
藤山コウゾウ「アラシ!」
高野アラシ「は、はい!?」
藤山コウゾウ「勝てるのか、ではない。勝つしかないのだ。でなければ、我々に未来はない。 そうだろう」
高野アラシ「っ・・・!」
藤山コウゾウ「大丈夫! ガッツと気合があれば隕石だって押し戻せる! そうだろう!」
  コウゾウの暑苦しい励ましが会議室にこだまし、アラシはより不安な表情をあらわにしていく。そこへ
  バンッ!
  「黙れ」と言わんばかりに机を叩く音が響いた。
的山ミイコ「・・・副指令、いいから会議に入ってください。怪獣が来てしまいます」
  机を叩いたのはミイコだった。
藤山コウゾウ「おっ、そうだな! すまんすまん!」
  ミイコに注意され、ようやくコウゾウのマシンガントークが収まる。
的山ミイコ「まったく。 あのおっさん、話し始めたら止まんないのよ」
高野アラシ「ありがとうございます。 それで、あの・・・」
的山ミイコ「あなたも、もっとはっきり言いなさい。 わかっているわ、こんな会議なんかしている暇はない。そう言いたいんでしょ?」
高野アラシ「え、いや・・・」
的山ミイコ「でも、こういうときだから冷静に行動する必要があるの」
高野アラシ「は、はい・・・いや、その・・・確かにミイコさんの言う通り、緊急時だから落ち着いた行動を」
高野アラシ「その行動理念は決して間違っていないと思います。ですが・・・」
的山ミイコ「じれったい。なにが言いたいの?」
藤山コウゾウ「はっはっは。今日もきついな! 彼氏とケンカでもしたか?」
的山ミイコ「・・・セクハラ」
藤山コウゾウ「おぉう、すまん、すまん! で、アラシ。 他に不安なことがあれば今のうちに聞いておくぞ!」
大野タツノスケ「・・・ことが始まったら質問などしている時間は無くなる。今のうちに聞いておけ」
高野アラシ「・・・わかりました。では──」
  アラシはスッと立ち上がり、ゆっくりと言葉を発し始めた。
高野アラシ「・・・司令長官はどこでしょうか?」
「・・・・・・」
高野アラシ「いや、黙らないでくださいよ!?」
  そう。作戦を指揮する司令長官がまだ会議室に到着していなかったのだ。
的山ミイコ「集合がかかってから、もう1時間。 あのスケベオヤジ・・・・・・。 ったく、ロクでもないとは思ってたけど」
藤山コウゾウ「まったく、昨晩も飲み歩いていたのだろう! 嘆かわしい!」
大野タツノスケ「・・・長官の自覚が足らん」
  防衛軍のメンバーは全員、呆れたように司令長官に悪態をついている。
  その内容たるや──
的山ミイコ「だいたい、いつもいやらしい目つきを向けてきて。 ホント、セクハラで訴えてやろうかしら」
藤山コウゾウ「悪いおっさんじゃねぇんだ! ただ、少しばかりドスケベで若い女の子と酒が好きなだけで!」
大野タツノスケ「呆れたものだ・・・」
  散々な言われようだった。
高野アラシ「あの。それはいいんですが・・・ミイコさんの言う通り、もう1時間たちますから」
「・・・・・・」
高野アラシ「はやく長官を連れてこないと、怪獣が来ちゃいますよ?」
藤山コウゾウ「あー、残念だが! 俺は会議の準備で忙しいもんでな!」
高野アラシ「いやいや、とっくに準備は終わっているでしょう」
大野タツノスケ「・・・今日は会いたくない」
高野アラシ「ケンカしたカップルじゃないんですから!」
的山ミイコ「セクハラされるから嫌」
高野アラシ「ストレートですね!? 確かにセクハラは問題ですけど、そんなこと言っている場合じゃないでしょう!?」
  どうやら全員、長官に会いたくないらしい。それも、とても私的な理由で。
  アラシは、やれやれといった表情でため息をつき
高野アラシ「わかりました。 僕が呼びに行けば解決なんでしょうけど──」
高野アラシ「残念ながら指令室への出入りは許可されていませんので、みなさんでいっしょに行きませんか?」
高野アラシ「そうすればセクハラも避けられるでしょうし」
藤山コウゾウ「・・・ま、新人ひとりにってのもアレだしな。気は乗らねーけど」
大野タツノスケ「・・・仕方あるまい」
  こうして、全員が立ち上がり――指令室へと向かった。

〇黒
  だが――。
大野タツノスケ「な、ちょ、長官!?」
的山ミイコ「えっ!? 嘘!?」
  司令室では思わぬ事態が起きていた。

〇コンピュータールーム
  なんと、司令長官が頭から血を出して倒れていたのだ。
高野アラシ「そんな・・・長官が、殺された? まさか、殺人事件が!?」
大野タツノスケ「ありえない・・・絶対に!!」
的山ミイコ「ここには私たち、地球防衛軍の中心メンバーしか入れないはず」
高野アラシ「と、ということは・・・」
藤山コウゾウ「ああ、信じがたいことだが!」
高野アラシ「犯人は、このなかにいる・・・?」
  未曽有の怪獣災害が迫るなか、司令長官が何者かに襲撃されたようだ。
  怪獣は今、小笠原半島沖からゆっくりと東京へ迫りつつある。
  はたして、犯人は誰なのか。
  そして、地球防衛軍は東京を守ることができるのか!?

次のエピソード:第2話 現れた証拠

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